進歩性判断の補助要素が、進歩性判断基準の不一致を避ける為に主観的又は判断不明になってしまう場合に、参考として判断する副次的参考要素

2013-12-30 2012年

■ 判決分類:特許権

I 進歩性判断の補助要素が、進歩性判断基準の不一致を避ける為に主観的又は判断不明になってしまう場合に、参考として判断する副次的参考要素

■ ハイライト
進歩性判断の補助要素が進歩性判断基準の不一致を避ける為に、主観的又は判断不明になってしまう場合に参考として判断する副次的参考要素については、もし特許要件の進歩性の判断ステップに基づき、出願前の先行技術に開示、教示されている内容に関してその技術分野で通常の知識を有する者により、確かに出願特許が容易に完成できるので進歩性を有さないと十分に判断できる場合、単なる空言により輔助要素又は提出した理由が当該進歩性判断を覆すには足りないと主張するものに対し、裁判所は再度逐一論究する必要がない(資料元:法源資訊)。

II 判決内容の要約

最高行政裁判所判決
【裁判番号】101年度判字第829号
【裁判期日】2012年09月14日
【裁判事由】特許無効審判請求

再審原告 勝開科技股份有限公司
再審原告 経済部知的財産局
再審被告 華泰電子股份有限公司

上記当事者間に於ける特許無効審判請求事件について、再審原告は2011年8月4日付本裁判所100年度判字第1356号判決に対し再審の訴えを提起したが、本裁判所にて以下のように判決する。

主文
再審の訴えを棄却する。
再審訴訟費用は再審原告勝開科技股份有限公司の負担とする。

一 事実要約
再審原告勝開科技股份有限公司(以下、再審原告勝開公司と称する)は2000年2月29日以前に「コンピューターカードの製作方法」を以って再審原告経済部知的財産局(以下、再審原告知的財産局と称する)に特許を出願した。再審原告知的財産局は第89103454号審査を経て特許査定し、公告期間満了後に、特許第I52810号特許証書(以下、係争特許と称する)を発給した。係争特許の特許請求の範囲は計9項あり、第1項は独立項で、他は付属項である。その後、再審被告が無効審判を請求したが、その証拠1は1999年12月14日公告の米国第6002178号特許、証拠2は1993年8月24日公告の米国第5239198号特許、証拠3は1999年2月21日公告の第86111471号「半導体の封裝パッケージとその製法」特許、証拠4は1992年8月11日公告の米国第5137940号特許、証拠5は1998年出版の「Electronic Packaging Design,Materials,Process,and Reliability」第340頁部分のコピー、証拠6は1999年3月2日公告の米国第5877975号特許であり、これらを以って係争特許は特許許可時の特許法第20条第2項の規定に違反していて特許要件に合致していないとして、無効審判を請求した。案件は再審原告知的財産局による審査を経て、2007年9月12日に(96)智専三(二)04060字第09620519070号特許無効審判審決書により「無効審判不成立」の処分が下された。
再審被告がこれを不服として訴願を提起した為、経済部は原処分を取消した。その後、再審原告知的財産局が改めて審査を行ったが、2009年3月12日(98)智専三(二)04060字第09820146220号特許無効審判審決書を以って「無効審判不成立」の処分を下した。再審被告はこれを不服として訴願を提起したが決定により棄却された為、行政訴訟を提起した。これについて知的財産裁判所は98年度行専訴字第128号判決により訴願決定及び原処分を取消し、同時に再審原告知的財産局に対し、再審被告による2005年1月18日付の第I52810号「コンピューターカードの製作方法」特許に対する無効審判請求事件(第089103454N01号)について、無効審判請求成立とし、特許権を取消す審決を下すように命じた。
再審原告勝開公司はこれを不服として上訴を提起したが、本裁判所は100年度判字第1356号判決(以下、原確定判決と称する)により上訴を棄却した。再審原告勝開公司はこれを不服とし、原確定判決には行政訴訟法第273条第1項第1号の事由があるとして、本件再審の訴えを提起した。

二 両方当事者の請求内容
(一)再審原告:原確定判決には適用法規に明らかな錯誤があるという誤りがある等と述べ、原確定判決破棄を請求。
(二)再審被告:再審の訴えは非合法なので、本件再審を棄却しなければならない。

三 判決理由の要約
(一)原審判決は証拠1及び2、別途再審被告が挙げた他の証拠の組合せに基づき、項ごとに審査して各証拠の組合せが係争特許の特許請求の範囲は進歩性を有さない事実を証明していると認めており、原処分が係争特許請求の範囲第1項について同一モールド層内に二つのICチップがあると解釈したことと異なっている。また、特許請求の範囲第1項中の「…一つの第一切割線があり、且つそれぞれ且一つの第一ゴールドフィンガー及び第二ゴールドフィンガーがあり…」を「第一切割線が基板上の隣り合う二つのゴールドフィンガーの中間を区切っている」と解読したことについては、特許説明に記載されているが、特許請求の範囲中の制限条件には記載されておらず、これを特許請求の範囲の中に導入して特許請求の範囲に未記載之の制限条件を増加させたことは、特許請求の範囲第1項に対する不適切な解読及び縮減等であり、これらの事項についてはいずれも詳しく論述しているので、原審判決が適用した法規と当該案件で適用しなければならない現行法規には相反がなく、また、判例の解釈にも抵触していないので、原審判決に法令違背の事情はないと言える。

(二)原審判決は次のように認定した。:引例1は係争特許「ゴールドフィンガー」と同一の構造特徴を開示していないが、「ゴールドフィンガー」はモジュールカードでは極めて普通の構造であり、当該技術を熟知している者には周知のものであることは、再審原告勝開公司も争議しないことである。なお且つ当該ゴールドフィンガー構造は係争特許において、予期不可能な効果を有するものではない。よって、当該技術を熟知した者であれば、やはり証拠1の開示により容易に係争特許の特許請求の範囲第1項が求める製作方法の技術特徴を完成させることができる。その為、進歩性等の事項を有しているとは言い難く、ファイル内にある事実証拠と不一致なところもない。また、論理法則や経験法則に反したところもなく、判決に不適用な法規や不適切な適用、或いは理由不備等の法令違背の事情もない。

(三)進歩性判断の補助要素は、進歩性判断基準の不一致により主観や判断不明に流れることを避ける為に判断の参考にする副次的参考要素であり、もし特許要件の進歩性の判断ステップに基づき、出願前の先行技術に開示、教示されている内容に関してその技術分野で通常の知識を有する者により、確かに出願特許が容易に完成できるので進歩性を有さないと十分に判断できる場合、単なる空言により補助要素又は提出した理由が当該進歩性判断を覆すには足りないと主張するものに対し、再度逐一論究する必要がない。従って原審判決が逐一論究していないことも、判決の理由不備とは言い難く、原審判決に法令違背の事情があったとも言い難い。

(四)本件原審では、専門的な法律問題について当該学術研究に従事する者に問い合わせたり、鑑定を依頼したりはしていないが、当該学術研究に従事する者に問い合わせたり、鑑定を依頼したりするかどうかは、裁判所の職権行使に属するものであり、原審の証拠採用に経験又は論理法則違反等がある場合を除き、やはりこれを以って原審に証拠採用法則違反があったと認定することはできない。

(五)原確定判決及び原審判決には行政訴訟法第273条第1項第1号適用法規に関する明らかな錯誤がなく、再審原告勝開公司による再審趣旨が、前述のように原確定判決には再審事由があると指摘したことには、理由があるとは認定できないので、棄却しなければならない。

上記論結に基づけば、本件再審の訴えには理由がないので、行政訴訟法第278条第2項、第98条第1項前段、第104条、民事訴訟法第85条第3項に基づき、主文のように判決する。

2012年9月14日
最高行政裁判所第一法廷
審判長裁判官 鍾耀光
裁判官 沈應南
裁判官 鄭小康
裁判官 林樹埔
裁判官 黃淑玲
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