職務上完成した発明の判断

2013-12-30 2012年

■ 判決分類:実用新案権

I 職務上完成した発明の判断

■ ハイライト
 上訴人は以下の通り主張した。自分は会社の副総経理であり、研究開発に従事する専門的な係員ではなく、自分の創作は、就業契約上の義務を履行するものではなく、いわゆる職務上の発明ではない。たとえ上訴人が副総経理として被上訴人の会社に勤め、職務上、会社の各開発の研究製品の内容及び効能をよく知っていたとしても、せいぜい「職務に関する発明」であるのみで、特許法第7条でいう職務上の発明ではなく、その実用新案権も当然雇用者が所有するものではない。且つ係争2項の実用新案は上訴人の職務上の発明ではないほか、被上訴人会社の営業範囲にあるものでもなく、たとえ係争実用新案が上訴人の職務上の発明であると認定されたとしても、被上訴人は実用新案を移転すると同時に、適当な報酬を上訴人に支払うべきである。
 被上訴人は以下の通り主張した。上訴人を招聘した目的は、営業管理と市場販売業務のほか、双方で締結した投資協議書により、研究・開発作業を担当するよう上訴人に要求したものである。上訴人は職務において、会社で研究開発した製品の内容及び効能をよく知っていたので、係争2実用新案はその作業契約上の義務を履行したものであり、当然特許法第7条でいう職務上の発明に該当するので、その実用新案権も当然雇用者が所有する。且つ上訴人は係争2実用新案の研究・開発チームの責任者であり、直接電池集電体の研究・開発及び製造プログラムに参加しており、当該情報は被上訴人会社の営業秘密である。電池集電体を長期的に外から仕入れていたので、品質が不良である問題を改善するために、上訴人はその任期中に、被上訴人の非公開の営業技術資料に関する秘密を利用したので、その取得した発明は職務発明であり、権利も被上訴人に帰属すべきだと認められるべきである。且つ係争2実用新案は他人から購入したものであり、係争2実用新案は上訴人による発明または創作ではないと主張したが、その一方で上訴人が氏名表示権及び実用新案出願権、実用新案権等の権利を享有していることは、合理的ではない。且つ特許法第7条第1項の規定は、雇用者が被用者より職務上完成した発明を取得したら、契約により反対に支払をすべきであるものではなく、当然係争2実用新案の移転義務及び被上訴人が支払うべき適切な報酬について同時履行の抗弁を主張することはできない。
 本案裁判所で審理した後、以下の通り認定した。特許法第7条第2項規定により、職務上の発明、実用新案、又は意匠とは、被用者が雇用関係中の職務の遂行において完成した発明、実用新案、又は意匠をいう。所謂職務上完成した発明とは、必ず雇用された業務と関係がある。その立法要旨は雇用者と被用者との間の権利義務関係を均衡させることであり、その重点は被用者が研究・開発した実用新案が、雇用者が提供した資源環境を使用したか否かであり、実際の職名とは関係がなく、更に契約で約定した業務内容とも関係がなく、実際に会社において参加した業務、及びその研究・開発した特許が雇用者が提供した資源環境を使用したか否かを判断の根拠とする。被上訴人は投資協議書または特許法第7条第1項の規定により、被上訴人の所に勤めていた期間に出願された係争2実用新案権を被上訴人に移転するよう上訴人に請求したことには、理由がなく、その主張に理由がないので、上訴人の同時履行の抗弁も、斟酌する必要がない。【資料元:知的財産局整理】

II 判決内容の要約

知的財産裁判所民事判決
【裁判番号】100年度民專上字第51号
【裁判期日】2012年4月12日
【裁判事由】実用新案権の移転登記

上訴人 許佑正
被上訴人 強德電能股份有限公司

上記当事者間の実用新案権に関する移転登記事件につき、上訴人は2011年9月30日付本裁判所の100年度民專訴字第89号第一審判決に対し上訴を提起した。2012年3月22日に口頭弁論を終結し、本裁判所より以下のように判決を下す。

主文
原判決を取消す。
被上訴人の第一審での訴えを棄却する。
第一、二審訴訟費用は被上訴人の負担とする。

一 事実要約
上訴人は2009年7月1日から2010年11月22日まで被上訴人会社に勤め、総経理及び董事の職務を担当しており、上訴人は被上訴人公司に務めていた2010年5月31日、同年8月4日に「充電電池の全接触式の正極端子構造」、「リチウム電池及びクリップ式リチウム電池正極端子の収納装置」を以って知的財産局に実用新案を出願し、知的財産局はそれぞれ2010年10月21日、2011年1月1日に実用新案第M391193号、第M395917号として係争2実用新案の出願を公告し、且つ双方は改めて役務契約書、投資協議書を締結し、及び上訴人とGlobal-Tech株式会社との間で試作契約が締結され、且つ上訴人はかつて7,050,000円を送金した。しかし被上訴人は、上訴人が任期中に出願した係争2実用新案は被上訴人の所に勤めていた期間の職務上の発明であり、且つ投資協議書の約定により、係争2実用新案は被上訴人が所有するものであるべきだと主張した。しかし上訴人は否認し、且つ係争2実用新案は職務上の発明ではなく、上訴人が試作契約に基づきGlobal-Tech株式会社から取得した技術であり、更にこれを以て知的財産局に係争2実用新案を出願したので、被上訴人が所有するものではなく、且つたとえ被上訴人が所有するものであっても、特許法第7条の規定により、上訴人は同時履行の抗弁(上訴人が上訴時に備位声明で同時履行の抗弁を提出した後、本裁判所での審理時に備位声明を撤回した。本裁判所ファイル第195頁を参照)を主張でき、実用新案権を移転すると同時に適切な報酬、即ち6,240,000円即ち2,306,304元を支払うよう被上訴人に請求した。原審では係争2実用新案を被上訴人に移転、登記するよう上訴人に命じたが、上訴人はこれを不服として上訴を提起した。

二 両方当事者の請求内容
(一)上訴人の上訴声明:1.原判決を取消す。2.被上訴人の第一審での訴え及び仮執行の申立てをすべて棄却する。3.もし不利な判決を受けた場合、担保を供託して、仮執行の免除宣告を請求する。
(二)被上訴人の答弁声明:上訴を棄却する。

三 本件の争点
本件爭点:1.係争2実用新案は上訴人の職務上の発明であるか、及び被上訴人は係争2実用新案の移転を上訴人に請求すると同時に、適切な報酬を上訴人に支払うべきか、即ち上訴人は同時履行の抗弁を主張することができるか。

四 判決理由の要約
(一)被用者が職務上完成した特許、実用新案または意匠について、その出願権及び権利は雇用者に属し、雇用者は被用者に適切な報酬を支払わなければならない。但し契約に約定がある場合、その約定に従う。次に民法第98条の規定では、意思表示の解釈について、当事者の真意を探求しなければならず、用いた辞句に拘泥してはならないことになっている。また所謂当事者の真意の探求とは、もし双方にその真意について論争がある時、当該意思表示に基づいた原因事実、経済的目的、一般的な社会の理性的で客観的な認知、経験法則及び当事者が当該意思表示に発生させたい法的效果を探求し、これにより解釈の結果が公平正義に一致するかを調べることである。調べたところ、双方で締結した役務契約書には、上訴人の任期中に生じた実用新案権の帰属について特別な約定がなく、また協議書の要旨及びその他各条の規定でも、上訴人が任期中に取得した実用新案権の帰属について特別な約定がないので、被上訴人が投資協議書により上訴人が任期中に出願した係争2 実用新案の権利は被上訴人に帰属すると主張したことは、信用できない。

(二)また特許法第7条第2項規定によれば、前項でいう職務上の特許、実用新案または意匠は、被用者が雇用関係中の職務遂行により完成した特許、実用新案、又は意匠をいう。従って、所謂職務上完成した発明とは、必ず雇用された業務と関係があり、即ち被用者と雇用者との間の契約約定により、雇用者の製品開発、製造、研究・開発等に関する業務に従事、参加したり、または執行し、被用者が雇用者の設備、費用、資源環境等を使用した後、完成した特許、実用新案または意匠は、雇用者が支払った給料及びその設施の利用、またはグループの協力と、対価の関係があるので、特許法の規定では、被用者の職務上の特許、実用新案または意匠の出願権及び権利は雇用者に属することになる。その立法要旨は雇用者と被用者との間の権利義務関係を均衡させることであり、その重点は被用者が研究・開発した実用新案は、雇用者より提供した資源環境を使用したか否かであり、実際の職名とは関係がない。更に契約で約定した業務内容とも関係がなく、実際に会社において参加した業務、及びその研究・開発した実用新案が雇用者より提供された資源環境を使用したか否かを判断の根拠とする。且つ当事者が自己に有利な事実を主張するときは、その事実について挙証の責任を負うと民事訴訟法第277条前段に明文で定められている。もし立証責任を負うべき者が先に、自ら主張した事実の真実について立証できないなら、たとえ他方がその抗弁事実について立証できないか、または立証した証拠に瑕疵があっても、裁判所は立証責任を負う者に有利な認定を与えてはならない。

調べたところ、被上訴人は投資協議書の要旨、係争2実用新案が被上訴人の規定で定められた営業項目と関係があること、及び上訴人の業務内容が会社の研究・開発作業等に従事していたことのみを以って、係争2実用新案は上訴人がその職務上の業務で完成したものであると主張した。しかし調べたところ、投資協議書の要旨は上訴人の業務内容が被上訴人が研究・開発業務担当であったことを証明できるのみで、係争2実用新案がその職務上の業務で完成したものであるとは証明できず、またたとえ係争2実用新案が被上訴人の規定で定められた営業項目と関係があり、上訴人の被上訴人の会社での業務内容が即ち研究・開発担当であっても、係争2実用新案が被上訴人会社より提供された資源で完成したものであることは証明できない。更にもとの瑞德公司の従業員が本裁判所での審理時に、被上訴人会社に勤めていた期間、上訴人は総経理を担当していて、すべての部門業務を管理し、研究・開発部分についても管理を担当していたのみであったと証言した。またかつて被上訴人会社に勤めていた従業員も本裁判所での審理時、被上訴人の会社にいた時、技術部のエンジニアを担当していて、上訴人は被上訴人会社の総経理を担当していたが、各部分の業務を管理し、実際の研究・開発管理者は楊建明であったと証言した。更に証人は、被上訴人は電池集電体を製造しておらず、関連技術もないと証言し、確かに被上訴人はかつて小量の電池集電体の製造計画があったと主張したが、被上訴人に上訴人が使用でき、且つ係争2実用新案を出願できる関連の技術資源及び設備等があったことを証明できず、上訴人が被上訴人の資源設備等を使用して、係争2 実用新案を出願したことを証明できない。よって、被上訴人が、係争実用新案は上訴人が被上訴人の所に勤めていた期間に出願したものであることのみを以って、係争2実用新案を被上訴人に移転すべきであると主張したことは、採用できない。

(三)以上をまとめると、被上訴人が投資協議書または特許法第7条第1項の規定に基づき、被上訴人の所に勤めていた期間に出願した係争2実用新案権を被上訴人に移転するようにと上訴人に請求したことには、理由がなく、その主張にも理由がないので、上訴人の同時履行の抗弁は、斟酌する必要がない。従って、被上訴人が訴えにより係争2実用新案権の移転を請求したことには、理由がないので、許可しない。

前記を総合すると、本件の上訴には理由があり、知的財産案件審理法第1条、民事訴訟法第450条、第78条に基づき、主文の通り判決する。

2012年4月12日
知的財産裁判所第二廷
審判長裁判官 陳忠行
裁判官 林洲富
裁判官 熊誦梅
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