被雇用者が職務範囲外において、雇用者の指示によるものでない自発的な発明は、たとえ雇用者の資源又は経験を利用したとしても、職務上の発明に属しないと認めるべきである。

2014-05-14 2011年

■ 判決分類:特許

I 被雇用者が職務範囲外において、雇用者の指示によるものでない自発的な発明は、たとえ雇用者の資源又は経験を利用したとしても、職務上の発明に属しないと認めるべきである。

■ ハイライト
眼科権威の技術紛争 蔡瑞芳の眼科治療特許 長庚が敗訴
眼科権威の蔡瑞芳は10年前に、目の幹細胞を体外で培養した後、角膜に移植する技術で国際的に有名となり、経済部知的財産局に特許を出願し許可されたが、過去就職していた長庚大学がその特許は学校に属するものと認め、行政訴訟を提起したが、知的財産裁判所では長庚大学が挙証できないと認め、学校の敗訴と判決した。
1998年5月当時、長庚病院眼科部主任を担当する蔡瑞芳は記者会見を行い、患者自身の目の輪部組織の幹細胞を取得し、胚胎羊膜で培養した後、改めてそれを患者の眼部に移植することで、角膜損害の患者を治療することができると発表した。これは世界で最初の成功した技術であり、その後、ニューイングランド医学期刊で論文が発表され、国際的に有名となった。
その後、蔡瑞芳は2001年に経済部知的財産局に特許を出願し、翌年に許可され、2003年9月頃、長年勤めてきた長庚病院を退職し、自ら開業し始めたところ、長庚大学が知的財産局及び知的財産裁判所に対し、その特許に訴訟を提起し、特許の取消を請求し、双方の訴訟が始まった。
調査したところ、蔡瑞芳が1989年より長庚大学で教学し始めると共に長庚病院に勤めていたことが分かった。長庚大学は蔡瑞芳が学校に雇用されている時に、その技術を研究発展し、職務上で完成した発明なので、その特許権は長庚大学に属するべきであると主張した。
一方、蔡瑞芳は長期にわたって長庚大学で教学していると同時に長庚病院にも勤めており、自己の研究は全て長庚病院で行われたもので、長庚病院と医師との関係について、病院側が主治医に対する関係税金申告の宣伝によると「雇用関係」ではないこととなっているので、特許権が長庚大学に属するものではないと裁判官に対して主張した。
裁判官は審理の際、長庚大学に対して、学校と蔡瑞芳とは雇用関係であることを挙証して証明するよう要求したが、長庚大学がそれを証明することができなかったので、最後に長庚大学の敗訴と判決した。本案は上訴できることとなっている。

II 判決内容の要約

■ 基礎データ
知的財産裁判所民事判決
【裁判番号】98,民専訴,153
【裁判期日】20100830
【裁判事由】特許権権利帰属

原告 長庚大学
被告 乙○○
上記当事者間の特許権権利帰属事件につき、本裁判所は2010年8月2日に口頭弁論を終結し、以下のように判決した。

主文
原告の訴えを棄却する。
訴訟費用は原告が負担する。

一 事実要約
被告は2001年4月26日に「上皮幹細胞を羊膜上に展開する方法及び所得した移植物への使用」として知的財産局に特許発明を出願し、知的財産局が審査した後、2002年9月20日にその出願を許可し、公告期間が満了した後、特許第166475号特許証書(即ち係争特許)を発行した。その後、原告は被告が係争特許の申請権者でないことを理由として、被告に対して無効審判を提起したが、知的財産局の審査では、2007年8月3日に「無効審判が成立し、特許権を取り消すべきである」旨の処分を下した。被告はその処分に対して不服として、訴願を提起したので、経済部では原処分を破棄すると決定した。そのため、原告は本裁判所に行政訴訟を提起したが、本裁判所では2009年2月26日に原告の訴えを棄却すると判決すると共に判決が確定することになった。

被告は1990年8月1日から2003年9月1日まで原告のところに就職しており、退職当時、医学院医学部眼科の「教授」を担当していた。又、被告は1980年8月1日から2003年8月31日までは、長庚病院に就職しており、退職当時、眼角膜科の「教授級主治医」という職位を担当していた。

二 双方当事者の請求内容
原告は判決を次の通りにすることを声明すると共に請求する:特許出願番号00000000、発明名称「上皮幹細胞を羊膜上に展開する方法及び所得した移植物への使用」、出願期日2001年4月26日、出願者被告乙○○の特許出願の特許出願権及び特許権は原告が単独に所有すると確認すること。被告は判決を次の通りにすることを声明すると共に請求する:原告の訴えを棄却すること。

三 本件の争点
係争特許は被告が雇用関係中の職務上の発明であるか否か。原告は係争特許の特許出願権及び特許権が原告が単独して所有することに理由があるか否かの確認を請求する。

四 判決理由の要約
原告は係争特許は被告が雇用関係中の職務上の発明であることを証明することができなかった。

(一) 被告は原告の大学に就職し、前後にわたり講師副教授、教授などを担当し、双方の間が一体雇用、委任、請負又はそのほかの関係に属するのか、被告は原告の指示を受けて行ったのか、それは契約の実質関係に基づいて断定すべきであるが、原告は挙証して双方が雇用関係であることを証明しなかった。又、大学法第18条によると、大学教師は講義、研究及び指導に従事することとなっているが、被告の具体的な教師職務内容が双方の契約内容によるものであるが、原告はこれについて何らの証明できる証拠も提出しなかった。
(二) たとえ原告と長庚病院とに教育提携関係があったとしても、互いにそれぞれ異なる権利義務の主体に属するもので、原告は具体的に互いの資源を共有したり、利用したりした提携内容(原告の教師及び学生はどう長庚病院の資源を利用して教学、研究に提供するのか)について叙述していず、更に長庚病院を利用した者は原告の資源を利用した者に属する事実を証明する積極的な証拠も一切提出しなかった。
(三) 長庚病院と原告とは法律上においては、それぞれ異なる権利主体なので、原告は長庚病院が原告の教学病院であることを理由とし、その研究成果は被告が原告の病院に就職している期間に行った研究成果である云々との主張は採用できない。
(四) 以上を総合すると、原告は双方の間の雇用関係の成立のこと及び被告が大学に就職した期間にその職務によって係争特許の発明を完成したことを証明することができなかったので、係争特許は被告の職務上の発明ではないことになる。よって原告が係争特許の特許出願権及び特許権が原告が単独して所有することの確認請求には理由がなく、棄却すべきである。

2010年8月30日
知的財産裁判所第二法廷
裁判官 蔡惠如

五 関連条文抜粋
民事訴訟法 第 78 条(2009.07.08)
民法 第 482 条(2000.04.26)
大学法 第 18 条(1994.01.05)
政府科学技術研究発展成果帰属及び運用方法 第 3 条(2000.02.25)
専利法 第 7、8 条(2001.10.24)
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