特許権取消に関する行政訴訟で、当事者が口頭弁論の終結以前に同一の取消理由について新たな証拠を提出した場合、裁判所は斟酌しなければならない。

2014-05-14 2011年

■ 判決分類:特許

I 特許権取消に関する行政訴訟で、当事者が口頭弁論の終結以前に同一の取消理由について新たな証拠を提出した場合、裁判所は斟酌しなければならない。

II 判決内容の要約

■ 基礎データ

知的財産裁判所行政判決
【裁判番号】98年度行専訴第125号
【裁判期日】2010年4月8日
【裁判事由】特許無効審判

原告  東盟開発実業股份有限公司
被告  経済部知的財産局
参加人 燁聯鋼鉄股份有限公司

上記当事者間の特許無効審判事件につき、原告は2009年9月15日経訴字第09806117930 号訴願決定を不服として行政訴訟を提起した。本裁判所は職権をもって参加人に対して被告の訴訟に独立参加することを命じ、以下のように判決を下すものである。

主文
原告の訴えを棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。

一 事実の要約
原告は係争特許が特許法第22条第1項と第4項の規定に違反し、特許の要件に合わないとして無効審判を請求した。被告は審理を行った結果、2009年3月20日に(98)智專三(五)01058字第09820159810号特許無効審判決定書を以って「無効審判不成立」の処分を下した。原告はこれを不服として訴願を提起し、経済部は2009年9月15日に経訴字第09806117930号訴願棄却決定を行った。原告はさらに不服として、本裁判所に行政訴訟を提起した。本裁判所は本件の判決結果により参加人の権利又は法律上の利益に損害を与えると判断し、職権による決定を以って本件被告の訴訟に参加人が独立参加することを命じた。

二 両方当事者の請求内容
原告は訴願決定及び原処分を取り消し、被告が第91124567号特許無効審判案件の請求について無効審判成立の決定を行うことを請求する。
被告は原告の訴えを棄却することを請求する。
参加人は原告の訴えを棄却することを請求する。

三 本件の争点
争点1:無効審判請求の証拠三は係争特許請求の範囲第1項に新規性がないと証明できるかどうか?
争点2:無効審判請求の証拠八(つまり無効審判請求の添付文書四)は係争特許請求の範囲第1項に新規性がないと証明できるかどうか?
争点3:無効審判請求の証拠九、十、十一は係争特許請求の範囲第1項に新規性がないと証明できるかどうか?
争点4:訴状の証拠四は係争特許請求の範囲第1項に新規性がないと証明できるかどうか?
争点5:訴状の証拠六は係争特許請求の範囲第1項に新規性と進歩性がないと証明できるかどうか?

四 判決理由の要約
争点1:無効審判の証拠三は係争特許請求の範囲第1項に新規性がないと証明できない。
調べたところ無効審判の証拠三の出版日が係争特許の出願日よりも遅いことがわかり、ゆえに無効審判請求の証拠三は係争特許に新規性又は進歩性があるかどうかを判断する適格証拠とすることはできないため、係争特許が出願する特許請求の範囲第1項に新規性がないと証明できない。
争点2:無効審判請求の証拠八(つまり無効審判請求の添付文書四)は係争特許が出願する特許範囲第1項に新規性がないと証明できない。無効審判請求の証拠八は公開日が開示されていないため係争特許の出願日以前に公開されたと認定することができず、ゆえに無効審判請求の証拠八は係争特許に新規性又は進歩性があるかどうかを判断する適格証拠とすることはできないため、係争特許が出願する特許範囲第1項に新規性がないと証明できない。
争点3:無効審判請求の証拠九、十、十一は係争特許請求の範囲第1項に新規性がないと証明できない。
1.無効審判請求の証拠九、十、十一は認証を受けていない私文書のコピーであり、且つ正本を提出して審理に供することができず、且つ特定のメーカーが低ニッケル含有ステンレス製品を香港に輸出する際に特定の買い手に提供する品質証明書であり、不特定多数が入手可能で公に見聞きできるというものではなく公開の証拠とはいえないため、本裁判所は無効審判請求の証拠九、十、十一には証明力がなく、係争特許に新規性又は進歩性があるかどうかを判断する適格証拠とすることができず、係争特許請求の範囲第1項に新規性がないと証明することもできないと判断した。
2.又、無効審判請求の証拠十と十一は係争特許請求の範囲第1項の技術内容を開示しておらず、係争特許請求の範囲第1項に新規性がないと証明することもできない。
争点4:訴状の証拠四は係争特許請求の範囲第1項に新規性がないと証明できない。
争点5:訴状の証拠六は係争特許請求の範囲第1項に新規性と進歩性がないと証明できない。
原告は本行政訴訟において争点6の新たな取消理由を提出してはならない。
1.無効審判の請求人による理由と証拠の追加は、無効審判の請求がなされた日から1ヵ月以内に行わなければならない(特許法第67条第3 項の規定を參照)。又、知的財産案件審理法第33条第1項には「商標登録の取消、廃止又は特許権の取消に関する行政訴訟において、当事者が口頭弁論の終結以前に同一の取消理由について新たな証拠を提出した場合、裁判所は斟酌しなければならない」と規定され、「同一の取消理由についての新たな証拠」に限定されている。
2.原告は以前、係争特許が特許法第22条第1項第1号(新規性)と同法第22条第4項(進歩性)の規定に違反しているとして無効審判を請求しており、被告は判断に基づき原処分を下した。原告は本行政訴訟を提起してから係争特許が特許法第26条規定に違反している等の主張を始めた。しかしながらこれは係争特許取消の新たな別の理由となるため、原告は本行政訴訟において同取消理由を提出してはならず、本裁判所は斟酌すべきではない。
以上をまとめると、原告が提出している無効審判請求の証拠はいずれも係争特許請求の範囲第1項に新規性及び進歩性がないと証明するには足りず、原処分つまり「無効審判不成立」の処分は法規に符合しないところがなく、訴願決定が維持されたことにも誤りはない。原告が以前からの主張に徒に固執し、原処分及び訴願決定の取消を請求し、また、被告に無効審判成立による係争特許権の取消処分を請求することには理由がないため、これを棄却する。

五 関連条文抜粋
特許法 第 22、26、44、67 条(2003年2月6日)
知的財産案件審理法 第 1、33 条(2007年3月28日)
行政訴訟法 第 98、176 条(2007年7月4日)
民事訴訟法 第 357 条(2007年12月26日)
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