そのほかの製品が方法特許権を侵害したことを証明するには、まず当該方法によって製造された製品が国内外において見られることがなく、且つそのほかの製品と特許権者の製品とが同一であることを証明することができて、始めて推定効力が生じるものである

2014-05-14 2011年

■ 判決分類:特許

I そのほかの製品が方法特許権を侵害したことを証明するには、まず当該方法によって製造された製品が国内外において見られることがなく、且つそのほかの製品と特許権者の製品とが同一であることを証明することができて、始めて推定効力が生じるものである

■ ハイライト
方法特許の挙証が困難なので、専利法第87条第1項、第2項などの規定によると、製造方法特許に係る特許により製造された物品が、その製造方法の特許出願前に国内外において見られなかったものであるときは、他人が製造した同一物品はその方法特許によって製造されたものと推定されるが、被告が当該同一物品の製造に使用された方法が製造方法特許と異なることを立証すれば、当該推定を翻すことができることになっている。よって、本件の原告がもし被告が販売した製品がその出願した特許権の侵害を構成したことを証明したいのであれば、当該特許により製造された物品がその製造方法の特許出願前に国内外において見られなかったものであり、且つ被告が製造した製品が原告の製品と一致していることを証明しなければならない。原告は主管機関に対して特許権を出願し、並びに新規性があると認められて許可されたが、被告が同一方法によって製品を製造した部分について、二つの製品が共に同一材質を使用したものであるを証明できなかったので、専利法第87条第1項の規定による推定効力は主張し難い。

II 判決内容の要約

■ 基礎データ

知的財産裁判所民事判決
【裁判番号】98,民専訴,104
【裁判期日】20100727
【裁判事由】特許権侵害行為の排除

原   告 宏基淋膜紙業有限公司
被   告 統奕包裝股份有限公司

上記當事者間の特許権侵害行為排除事件につき、本裁判所は2010年7月6日に口頭弁論を終結し、以下の如く判決する。

主文
原告の訴えを棄却する。
訴訟費用は原告が負担する。

一 事実要約
原告宏基淋膜紙業有限公司(以下宏基公司と称する)は発明第I306482号「生分解紙コップ」(以下係争特許と称する)の特許権者である。原告ははやくから2006年9月28日に経済部知的財産局に対して発明特許を出願し、並びに国内優先権で最もはやい優先権日が2006年1月20日であることを主張し、請求番号第00000000号として受理され、2009年2月21日に公告され、第I306482号発明特許証書を受領し、特許期間は2009年2月21日より2016年9月27日までとなっている。被告統奕包裝股份有限公司(以下統奕公司と称する)は原告の許諾、同意を得ないで、「生分解紙コップ」製品(以下係争製品と称する)を製造して販売したほか、PLA 淋膜を紙製品表層に利用する技術及びこの方法で製造した物品をも利用したが、係争特許の出願日前に国内外において見られなかったし、被告等には係争製品を製造した事実があったので、専利法第87条第1項に基づいて、被告等が係争特許方法によって製造し、原告係争特許出願範囲第1項の事情を侵害したことを推定することができる。よって、原告は専利法第56条第2項及び第84条第1項に規定により、本件侵害排除請求の訴訟を提起した。但し、裁判所の認定では、原告は被告が製造し販售した「生分解紙コップ」は原告の係争特許によって製造された物品と同一であるか否かについて、終始関係鑑定報告又は証拠を提出し、それが事実であることを証明することができなかったので、原告は専利法第87条第1項の規定による被告が原告所有の係争特許を侵害したことを推定し難く、言い換えれば原告は専利法第87条第1項の規定による推定の効力を主張することができなかったことになっているので、原告の敗訴を判決した。

二 両方当事者の請求内容
(一)原告の声明:被告は原告の同意を得ずに「生分解紙コップ」製品及びそのほか原告が所有している「淋膜紙製品表層生物分解を促進する環境保護の製法及びその設備」発明特許(証書番号:第I306482号)の製品を製造したり、販売の申出をしたり、使用したり、又は上記の目的のため輸入したりしてはならない。
(二)被告の声明:原告の訴えを棄却する。

三 本件の争点
1.係争製品は原告の係争特許出願範囲第1項に属するか否か?
2.被告が販賣した係争製品がもし係争特許出願範囲第1項に属するものであれば、原告の侵害排除の請求には理由があるか否か?
3.被告の係争特許出願範囲第1 項に無効の事由がある旨の抗弁は採用できるか否か。
(一)原告が主張した理由:略する。判決理由の説明を参照。
(二)被告が答辯した理由:略する。判決理由の説明を参照。

四 判決理由の要約
(一) 我国の専利法における方法専利挙証責任の分配原則はTRIPs第34条第1項第(a)号に掲げられた基本原則に従い、専利法第87条に:「(第1項)製造方法に係る特許により製造された物品が、その製造方法の特許出願前に国内外において見られなかったものであるときは、他人が製造した同一物品はその方法特許によって製造されたものと推定する。(第2項)前項の推定は、反証を提出してこれを翻すことができる。被告が当該同一物品の製造に使用された方法は製造方法特許と異なることを立証するときは、反証が提出されたものとする。被告が立証をするときに掲示した製造上及び営業上の秘密の合法的権益は、十分に保障されなければならない。」と特別に規定されている。よって、専利法第87条では、方法特許の挙証が困難であることを考量し、挙証責任の分配について、民事訴訟法に特殊な規定があるので、第1項に一定の要件があった場合、権利侵害であることを推定し、挙証責任を被告に転換できるが、但し第87条第1項の推定を適用した後に被告が始めて反証提出の責任があり、若しくは書類又は鑑定品提出の異議があることになる。よって、権利者は被告が係争方法特許侵害を主張した部分について、当該製造方法の特許出願前に国内外において見られなかったものであるときは、始めて推定を適用し、挙証責任倒置の結果が生じるわけで、さもなければ、責任原因成立を主張した責任者は被告がその所有している係争方法特許権を侵害したことについて、挙証責任を負うべきである(最高裁判所98年度台上字第367号民事判決を参照)。
(二) 本件原告の主張:被告が製造、販売した「生分解紙コップ」係争製品が係争特許権を侵害した云々と主張したが、被告がそれを否認したので、原告はもともと自己に有利な事実につき、挙証責任を負うべきで、そのために、本件において専利法第87条第1項の推定の適用を主張した。前掲の説明によると、次の要件に一致しなければ、「被告の生分解紙コップ係争製品係が係争特許方法によって製造された」の法律効果を推定できない。1.係争特許によって製造された物品(即ち被告の係争製品)は係争特許出願(2006年9月28日)前に国内外において見られなかったものである。2.被告が製造した同一の物品、即ち被告の「生分解紙コップ」製品が原告のPLA紙と一致している。
(三) 原告は被告会社公式サイトのウェブページ(本裁判所ファイル第34頁を参照)に「生分解紙コップ」品目の増加を提出し、被告が確かにPLA淋膜紙コップ製品を生産した事実があり(即ち「生分解紙コップ」製品)、専利法第87条第1項を適用する云々と主張した。ところが、原告は被告が製造、販売した「生分解紙コップ」と原告係争特許によって製造された物品と同一であるか否かについて、終始関係の鑑定報告又は証拠を提出することができなかったので、それが確かなことであることは証明できない。そのため、被告会社公式サイトのウェブページに「生分解紙コップ」品目を増加したことで、それが係争特許出願特許範囲第1項の方法で製成した同一の物品であることを認定することはできない。
(四) 又、本裁判所では原告、被告にそれぞれ各自のPLA紙及び「生分解紙コップ」の用紙の提出を命じた。原告は被告が製造、販売した係争製品と原告のPLA紙とが同一であることを証明するため、本裁判所に鑑定事項:「1.原告の用紙(添付一を参照)と被告統奕公司の製品(添付二を参照)とその上に付着している淋膜原料の材質がそれぞれ何なのか?その異同を比較する。2.鑑定対象物の淋膜層成分にPLA及びマルトース(又は類似成分)が含まれているのか? 3.鑑定対象物の用紙は電撃処理されたか否か」についての鑑定を鑑定機構に依頼するよう申立てた。本裁判所の協商及び双方の合意の結果、財団法人食品工業発展研究所の鑑定に鑑定を依頼することになったが、その研究所から当該淋膜の材質及び成分の非破壊性テストに供する関係設備も電撃処理の鑑定に供する関係資料もない旨の返信が送付されて来た。その後、改めて協商して双方の合意に基づき、財団法人工業技術研究院に鑑定を依頼することになったが、その研究院からも鑑定できない旨の返信が送付されて来た。その後、原告は台湾検験科技股份有限公司に上記の鑑定事項を鑑定してもらうよう申立て、被告もそれに同意したので、本裁判所は2010年4月28日に台湾検験科技股份有限公司に鑑定するよう要求したが、当該会社は2010年5月13日付書簡でその鑑定を行う設備及び能力がない旨のと返事があり、それに対して、双方が共に意見がなく、もう鑑定の必要がないと称した。よって、本件原告は被告の係争製品と原告のPLA紙とが同一であるか否か、被告の上記製品が確かに原告の係争特許出願特許範囲に属するか否かについて、何の証明方法も提出していず、その係争特許が既に特許主管機関の知的財産局の実体審査を経た法定の新規性要件に符合していることだけで、PLA淋膜を紙製品表層に使用する方法の第一人であることを主張し、係争特許出願日前に、その方法で製造された物品が確かに国内外において見られなかったので、被告の係争製品が原告係争特許出願特許範囲に属することを主張したにすぎないものであり、列挙した証拠も不十分である。
(五) 以上を総合すると、原告は被告が係争特許権を侵害したことに対する挙証の責任を負うべきで、係争特許が一つの方法特許であり、そのことは原告も承認していることであり、原告は被告が製造、販售した係争製品が係争特許方法によって製造されたものであり、係争特許出願特許範囲第1項に属することを証明しなければならないが、原告は被告が製造、販售した「生分解紙コップ」が係争特許出願特許範囲第1項に属する方法で製造したことを挙証して証明することができなく、本件訴訟は専利法第87条第1項に規定された「被告が同一の物品を製造した」要件に一致しないので、原告は専利法第87条第1項の規定によって、被告が原告所有の係争特許を侵害したことを推定できなくなる。言い換えれば、原告は専利法第87条第1項の規定による推定効力の主張ができないことは明らかである。原告が被告の製造、販售した係争製品がその係争特許権を侵害したことの主張は採用できないものであるが、被告の抗弁は尚信用できる。従って、原告は同法第56条第2項、第84条第1項の規定によって、被告統奕公司、乙○○は原告の同意を得ずに、『生分解紙コップ』という名称の製品及びそのほか原告が所有する『淋膜紙製品表層生物分解を促進する環境保護の製法及びその設備』発明特許の製品を製造したり、販賣の申出をしたり、販賣したり、使用したり、又は上記の目的のために輸入したりすることができない旨の請求には理由がないので、許可されるべきではない。
(六) 以上を論結すると、本件原告の訴えには理由がないので、民事訴訟法第78条の規定に基づいて主文の如く判決する。

 

2010年7月27日
知的財産裁判所第一法廷
裁判官 王俊雄
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