精英による一事件の二提訴 知的財産局に敗訴の判決

2014-05-14 2011年

■ 判決分類:特許

I 精英による一事件の二提訴 知的財産局に敗訴の判決 
CPUソケット特許の無効審判請求 知的財産局が成立しないと維持 二回に及ぶ提訴で 知的財産裁判所が判決

■ ハイライト
大同グループ傘下の精英電脳公司は、「位置を安定して固定できるCPUソケット構造」実用新案特許に対する無効審判を請求した。裁判所では5年にわたる審理が行われた結果、最高行政裁判所では2007年に精英に対する勝訴の判決を下した。しかしながら、経済部知的財産局は、改めて審査した結果、なおも「無効審判不成立」の処分を下した。これに対して、精英は行政訴訟の提起を余儀なくされた。このほど、知的財産裁判所では経済部に敗訴の判決を言い渡し、また「事実、証拠がすでに明確である」として、直接、経済部に新規性を有しない当該特許を取消し、「無効審判成立」と審決しなければならないと命令した。 
この行政訴訟から見れば、行政機関は確定した裁判所の判決結果を「尊重しない」ことが明らかで、国民及び企業にマンパワー、物力、及び金銭を投入させ、裁判所への往復が徒労に終わる同時に、司法の資源浪費にもなった。これは完全に行政機関の関連官僚の傲慢な態度によるもので、司法判決が確定しても、法律の効力を生じることができず、更に経済部知的財産局の本位主義が強すぎたのも原因である。 
知的財産裁判所による行政判決で指摘された通り、真準電子公司は1994年頃、「位置を安定して固定できるCPUソケット構造」実用新案を出願したところ、知的財産局により特許されたほか、真準が特許権の二分の一を実盈公司に譲渡することも許可された。しかし、その後、精英は前記の事実を知り、当該特許が「実用新案の要件を満たさない」として、無効審判の請求を行った。知的財産局は2004年に「無効審判不成立」の審決を下し、訴願決定も審決の結果を維持した。 
精英は、知的財産局を対象に提訴したところ、台北高等行政裁判所で、知的財産局に敗訴の判決を言い渡した。これに対して、知的財産局が上訴を提起したが、新証拠又は原判決における法の適用に妥当性を欠く具体的な理由を提出できず、最高行政裁判所は、2007年に手続き上の不備として知的財産局による上訴を却下し、確定した。不思議なことに、知的財産局が精英の無効審判請求を新たに審決した時、裁判所の見解を参酌することもなく、依然としてこの無効審判請求事件を「不成立」と審決した。精英はやむを得ず、行政訴訟を改めて提起した。 
知的財産裁判所は、2008年7月に設立されたため、精英が改めて知的財産裁判所に無効審判請求を行ったところ、半年以上もの審理を経た結果、訴訟事件となった本件の実用新案が既に「新規性も進歩性も有しない」ことが証明できる旨の判決が言い渡され、法により特許を受けないことになった。 
知的財産裁判所では、知的財産局による原処分及び経済部訴願の決定を取消すとの判決を下したことから、知的財産局が訴訟となった本件の実用新案を「無効審判成立」として、その特許権を取消す旨を審決しなければならないことになる。訴訟費用は、知的財産局の負担とする。本件はなお上訴を提起することができる。【2010-06-26 工商時報 A14/記者張国仁】

II 判決内容の要約

基礎データ

知的財産裁判所行政判決
【裁判番号】99,行専訴,3 
【裁判期日】20100527 
【裁判事由】実用新案の無効審判請求 
原   告 精英電脳股份有限公司
被   告 経済部知的財産局
参 加 人 実盈股份有限公司
参 加 人 真準電子股份有限公司
上記当事者間における実用新案の無効審判請求事件につき、原告は経済部2009年11月10日経訴字第09806121180 号訴願決定を不服として、行政訴訟を提起した。また、本裁判所では参加人に本件の訴訟に独立参加することを命じ、次のとおり判決する。

主文
訴願決定及び原処分を共に取消す。
被告は、証書第113569号「位置を安定して固定できるCPUソケット構造」実用新案の無効審判請求事件(請求番号が00000000NO4である )につき、無効審判が成立し、特許権を取消する旨の審決をしなければならない。
訴訟費用は被告の負担とする。

一 事実要約
参加人である真準電子股份有限公司はかつて1994年8月19日に「位置を安定して固定できるCPUソケット構造」をもって前身である中央標準局(1999年1月26に経済部知的財産局即ち被告に組織変更した)に実用新案の出願を行った。被告は、第83212044号と番号付け、審査した結果、特許査定をし、公告期間満了後、実用新案第113569号特許証書を発行し、特許権の二分の一を参加人である実盈股份有限公司に譲渡することも許可した。その後、原告は当該特許が査定時に専利法第98条第1項第1号及び第2項に違反するので、実用新案の要件に該当しないと、無効審判の請求を行った。被告は請求事件を審査した結果、2004年3月11日(93)智専三(二)02048字第09320233620号特許無効審判の審決書をもって「無効審判不成立」とした処分を下した。原告は、これを不服として、訴願を提起したところ、経済部が2004年9月22日に経訴字第09306226190号訴願決定をもって却下した後に台北高等行政裁判所に行政訴訟を提起し、同裁判所で2005年10月13日に2004年度訴字第3756号判決をもって前記の処分及び経済部訴願決定を取消した。その後、前記の判決は最高行政裁判所で2007年11月8 日に2007年度判字第1956号判決により、参加人による上訴が却下され、確定した。原処分機関が、改めて審査した結果、2009年2月13日に(98)智専三(二)04099字第09820078080号特許無効審判請求の審決書でもって、改めて本件を「無効審判不成立」とする処分を下した。原告が不服として、訴願を提起したのに対して、被告がファイルを閲覧し、答弁を盛り込んだ書状を経済部に提出した。経済部で審査したところ、訴願法第28条第2 項に基づき、参加人らに訴願に参加し、意見を示すよう通知した後、更に同法第65条に基づき、原告、参加人及び被告の代表者に経済部で行われる口頭弁論に出頭するよう通知した。その後、経済部による2009年11月10日経訴字第09806121180号訴願の決定で訴願が却下された。原告はなおも不服とし、本裁判所に行政訴訟を提起した。本裁判所では、本件判決の結果について、参加人の権利又は法律の利益に影響を及ぼすものと認定し、職権で、参加人に本件被告の訴訟に独立参加するよう命じた。

*知的財産裁判所の見解:本件訴訟で争う実用新案は、すでに「新規性も進歩性も有しない」と証明され、法により特許を受けることができないので、被告(知的財産局)による原処分及び経済部訴願の決定をともに取消すとの判決を言い渡した。知的財産局が本件で争っている実用新案を「無効審判成立」とし、即ちその特許権を取消すとの審決をしなければならない。

二 両方当事者の請求内容
(一) 原告の声明:訴願決定及び原処分の取消を要請するので、被告は無効審判が成立するとし、係争特許権を取消す旨の審決を下すよう要請する。
(二) 被告の声明:原告の訴えを却下する旨の判決を下すよう要請する。

三 本件の争点
(一) 証拠3(即ちEISA+VESA486DX-33/50MHz マザーボード実物)は、係争特許の特許請求範囲第1~4項が新規性又は進歩性を有しないと証明できるか否か。
(二) 証拠4(即ち1994年3月に製造した品番SA486Pマザーボード実物)は係争特許の特許請求範囲第1~4項が新規性又は進歩性を有しないと証明できるか否か。
(三) 係争特許明細書に記載された従来の技術は、係争特許の特許請求範囲第1~4項が新規性及び進歩性を有しないと証明できるか否か。本項の証拠は新証拠であるか否か。
(四) 係争特許の特許請求範囲第1項は特許査定時の専利法第104条第3号、第22条第3、4、5項に基づく記載不明確の規定に違反するか否か。本項の事由は新しい理由であるか否か。

双方当事者の主張:省略。判決理由の説明をご参照下さい。

四 判決理由の要約

(一) 係争実用新案は、1994年8月19日に出願が行われ、特許された後、1995年1月21日に公告したことは、特許公報等がファイルにあり、裏付けとして証明できる。このため、係争特許は、査定時に1994年1月21日に改正公布し、効力を生じた専利法第98条に基づき、実用新案を受ける実体要件で判断されるべきである。次に産業上利用することができる実用新案であって、次に掲げる事項のいずれかに該当しないものは、本法により出願し、実用新案登録を受けることができる。一、出願前に既に刊行物に記載され、又は公然実施をされたもの。但し、研究、実験のために発表又は使用したり、発表又は使用した日より六ヶ月以内に実用新案を出願したりしたものは、この限りでない。二、同一の発明又は実用新案が先に出願され、特許査定がされたもの。三、出願前に既に展覧会に陳列されたもの。但し、政府が主催又は認可した展覧会に陳列されたものは、陳列した日より、六ヶ月以内に出願したとき、この限りでない。実用新案は出願前の既存技術又は知識を運用し、当該技術を熟知した者が容易に完成することができ、且つ効能を増やすことができないとき、前項に掲げる事由に該当しなくても、なお本法により実用新案を出願することができない。1994年1 月21日に改正公布した専利法第98条第1 、2 項にそれぞれ明文で規定されている。

(二) 原告は、前に係争特許が専利法第98条第1、2項に違反するとして、無効審判請求を行った。原告は、本件の行政訴訟を提起したとき、別途係争特許が同法第104 条第3号、第22条第3、4、5項でいう記載不明確の規定に違反すると主張した(本裁判所ファイル第213、214ページ参照)。ところが、請求者は、理由及び証拠の補充について、請求した日より起算して一ヶ月以内に行なわなければならない(専利法第105条において準用する第72条第4 項の規定参照)。また、智慧財産案件審理法第33条第1項に基づくと、「商標登録の取消し、廃止、或いは特許権の取消しに関する行政訴訟において、当事者が口頭弁論終了前に、同一の取消し又は廃止理由について提出した新たな証拠につき、知的財産裁判所はなお斟酌しなければならない。」と規定されていることは、「同一の取消理由について提出した新証拠」に限る。原告は本件の行政訴訟において提出した明細書又は図面での記載が不明確な部分について(即ち前記争点(四))、係争特許を取消す別の理由となり、前記規定が適用されないことは言うまでもない。それ故、原告が明細書又は図面の記載が不明確であることを取消しの理由とし、再度主張することができなくなる。ところが、原告は、新規性及び進歩性の部分について別途新証拠、即ち係争特許の明細書に記載された従来の技術を提出したことが、同一の取消し理由について提出した新証拠に該当するので、本裁判所では、なお参酌しなければならない。また、本裁判所で既に2010年3月16日に行われた準備手続きにおいて前記の新証拠を争点として取り上げ、被告及び参加人に法により答弁するよう提示した(本裁判所ファイル第214、215ページ参照)ことを予め説明する。

(三) 係争特許の明細書に記載された従来の技術は、係争特許の特許請求範囲第1乃至4項に新規性及び進歩性がないと証明できるか否かについて:
1. 係争特許の特許請求範囲は合計して4 項あり、その内の第1 項が独立項であり、残りが当該独立項に従属される従属項である。
2. 係争特許の特許請求範囲第1 項である起動バー水平端と垂直端の相対挟み角度が90度よりやや小さい技術特徴は、係争特許の従来の技術に存在しないので、係争特許の従来技術でもって、もとより特許請求範囲第一項が新規性を有しないとは立証され難いものである。
3. ところが、係争特許の特許請求範囲第1 項と従来技術との差異は、起動バー水平端と垂直端の相対挟み角度が90度よりやや小さい技術特徴にあるだけである。この相対挟み角度が90度よりやや小さい選択肢は、当該技術を熟知した者が、恒例作業に基づく普通の手段でもって知り得ることができ、容易に完成できるもので、且つその効果は容易に完成できる当該技術手段に伴い、発生し得る必然的効果であり(角度が小さくなり、挟む力が大きくなる。)、予期できぬもの又は新効果を生じることではない。それ故、係争特許の特許請求範囲第1 項に新規性があるとは言われ難いものである。
4. 係争特許の特許請求範囲第2 項の付属特徴は角度の特定に該当するが、当該角度の特定について当該技術を熟知した者が、論理分析、推理を運用し、又は有限回数の実験で、先行技術から知ることができるので、係争特許の特許請求範囲第2 項に新規性があるとは言われ難いものである。
5. 係争特許の特許請求範囲第3 項は、その端部が円球状に呈する付属特徴であり、当該技術を熟知した者が、係争特許の明細書第6 図及び第7図に開示された端部円形構造から容易に完成でき、且つその端部が円球状であることが、従来技術より新しい効果を生じることもなく、係争特許の特許請求範囲第3 項に新規性があるとは言われ難いものである。
6. 係争特許の特許請求範囲第4 項の従属特徴について、当該技術を熟知した者が係争特許明細書第6図及び第7 図に開示されたブロック構造の大きさで、容易に完成でき、予期できぬもの又は新効果を生じることではない。それ故、係争特許の特許請求範囲第4 項に新規性があるとは言われ難いものである。

(四) 前記の理由を踏まえて、係争特許明細書の先行技術でもって、既に係争特許の特許請求範囲第1 乃至4 項に進歩性がないことが立証できる。双方当事者及び参加人は証拠3、4 の実物が人為的に破壊されたか否か、証拠として採用できるか否かに対して、よく争った。本裁判所では、原告が提出した係争特許明細書の先行技術に基づき、既に係争特許の特許請求範囲第1 乃至4 項に進歩性がないことが証明できることから、証拠3 及び証拠4について改めて論断しないことを併せて説明する。

前記を総合すると、原告が本裁判所に提訴した時に提出した係争特許明細書の先行技術でもって、既に係争特許の特許請求範囲第1項乃至第4 項に進歩性がないことが証明できるので、専利法第98条第2項に違反するとして、無効審判成立とする審決を下すべきことは当然である。被告は、原告が訴訟段階において提出した新証拠を斟酌することもなく、無効審判不成立との審決を下したことが、妥当を欠くものである。訴願決定で是正を怠ったことも妥当ではない。本件の事実及び証拠が確実であり、各独立項及び従属項がそれぞれ、特許要件に該当しないと判断され、事実・証拠が明確でないと立証すべきもの又は請求項が被告による審査を待っている事由もないことから、原告は、訴願決定及び原処分の取消しを申立て、係争特許に対する無効審判が成立し、係争特許を取消す旨の審決を被告に命じるよう要請したことは、理由があるので、許可されるべきである。

以上を総合すると、本件原告の訴えに理由があり、行政訴訟法第200条第3号、第98条第1項前段に基づき、主文のとおり判決する。

中華民国99年5月27日
知的財産裁判所第一法廷
審判長裁判官  李得灶
裁判官    汪漢卿
裁判官    王俊雄
TIPLO ECARD Fireshot Video TIPLO Brochure_Japanese TIPLO News Channel TIPLO TOUR 7th FIoor TIPLO TOUR 15th FIoor