外国企業・Rohm & Haas、ローム・アンド・ハース 研磨パッド特許権を維持

2015-08-04 2014年
■ 判決分類:特許権

I 外国企業・Rohm & Haas、ローム・アンド・ハース 研磨パッド特許権を維持

■ ハイライト
外国企業・ローム・アンド・ハース電子材料CMPホールティングの所有している「集積回路ウェハー用の研磨パッド」特許権が、専利法の規定に違反するとして無効審判請求された。経済部知的財産局は審理したうえ、確実であると認定し、「無効審判請求成立、特許権を取り消すべきである」との処分を下した。ローム社はこれを不服として台湾で訴訟を提起したが、知的財産裁判所はこの程、知的財産局敗訴の判決を下した。

ローム社は2000年頃、ロデ-ル社より番号第85110408号特許権を取得した。この研磨パッド特許権は集積回路ウェハーの相当重要なポイント位置にあり、ウェハー製品の製造過程における重要な部分である。

しかし、ローム社によるこの特許権は、その後、請求人劉勝芳により当該特許権特許請求の範囲第1、3、4項が擬制新規性喪失を主張され、当時の専利法により無効審判請求された。

2012年11月頃、知的財産局は審理を終え、ローム社による研磨パッド特許権が特許を付与してはならない事由に該当すると認定し、「無効審判請求成立、特許権を取り消すべきである」との処分を下した。ローム社はこれを不服として、順序に従って特許訴訟を提起した。

ローム社による研磨パッド特許権の特許請求範囲第1、3、4項において、その技術内容は第1項を例にすれば、次のようなものである。該研磨パッドはスラリー粒子を吸収又は伝送する固有能力を有しない固体均一重合体材料から組成する。該重合体片材は波長が190から3500nm範囲間の光を通過させることができる。

一方、劉勝芳による無効審判請求の技術内容は、基材の層を研磨する期間に原地でその均一性を測定する方法を開示され、この方法は光ビームを、研磨期間に該層にガイドし、基材から反射された光ビームによる干渉信号をモニターし、干渉信号から均一性の寸法を計算するものである。

知的財産裁判所第一法廷審判長蔡惠如、裁判官彭洪英及び蔡如琪等3名裁判官からなる合議法廷において、ローム社が所有している特許範囲と、劉勝芳が無効審判請求した証拠の技術との比較を行い、無効審判請求の証拠ではローム社が有している特許範囲第1、3、4項の擬制新規性喪失を証明するに足りないと認定した。

裁判所は、知的財産局による「無効審判請求成立、特許権を取り消すべきである」と下された処分が妥当性を欠くものであると認定したので、知財局による原処分及び経済部による訴願決定を共に取消すとの判決を下した。本件は、なお上訴できる。(2014-09-04 工商時報 A22版)

II 判決内容の要約

知的財産裁判所行政判決
【裁判番号】2013年度行専訴字第114号
【裁判期日】2014年7月31日
【裁判事由】特許無効審判請求

原告 ローム・アンド・ハース電子材料CMPホールティング
被告 経済部知的財産局

上記当事者間の特許無効審判請求事件につき、原告は経済部による2013年9月12日経訴字第10206106170号訴願決定を不服として、行政訴訟を提起した。本裁判所は、参加人に対して本件の訴訟に独立参加することを命じ、以下のように判決を下すものである。

主文
原処分及び訴願決定を共に取消す。
訴訟費用は被告の負担とする。

一 事実要約
訴外人であるロデ-ル社は、1996年8月27日に「研磨パッド」をもって経済部中央標準局(1999年1月26日に知的財産局に組織変更)に特許登録出願を行い、特許査定を受けた。その後、ロデ-ル社は2000年8月9日に係争特許を原告に移転し、且つ登記したが、参加人が係争特許の特許請求の範囲第1、3、4項が査定時の専利法第20条第1項第2号に違反するのを理由に、無効審判請求した。これに対して、原告は、2000年2月4日に別件(無効審判請求NO2)で特許請求の範囲の訂正版を提出した。被告が審理した結果、係争特許の前記訂正版が審査時の専利法第64条第1項第1号及第2項に該当し、訂正を許可すべきであるが、訂正後に、係争特許がなおも審理時の専利法第20条第1項第2号の規定に違反すると認定したため、「無効審判請求成立、特許権を取り消すべきである」との処分を下した。原告がこれを不服として、訴願を提起したところ、経済部は2013年9月12日に経訴字第10206106170号訴願決定をもって棄却した。原告は、なおもこれを不服として本裁判所に行政訴訟を提起した。

二 両方当事者の請求内容
原告は原処分及び訴願決定を共に取消す判決を下すよう請求する。
被告は原告の訴えを棄却する判決を下すよう請求する。

三 本件の争点
双方当事者の争点は、証拠2をもって、係争特許の特許請求の範囲第1、3、4項が査定時の専利法第20条第1項第2号に違反すると十分に証明できるかどうかである。

四 判決理由の要約
1994年専利審査基準第1-2-6頁において「発明に新規性があるか否かを判断するにあたり、発明の技術を比較した内容が同じであるか否か(当該技術を熟知する者が直接推論できることを含む)に準じなければならない」。「直接推論」とは単一の先行技術において、一つの出願にあるすべての制限要件が完全には開示されていないけれども、当該未開示の部分が当該先行技術に本質的に固有である、または必然的に当該先行技術に存在するので、この技術分野を熟知する者の観点からすると、当該先行技術の未開示部分が、必然的に当該先行技術に含まれているものであると認定できる場合をいう。つまり新規性でいう「直接推論を含む」部分とは、先行技術の文字記載方法または直接一義的に知りえる技術特徴が当然含まれているほか、先行技術に記載されていないが、その本質に固有であり、直接置換えた技術特徴又は先行技術が下位概念である技術内容をいう(最高裁判所2007年度判字第1743、1744、1875号、2009年度判字第1003号、1032号等判決参照)。調べた結果、証拠2は硬いポリウレタンプラグ42を開示するだけにとどまり、当該技術分野を熟知する者は、出願当時の従来技術をもって、直ちにその本質上必ずあると直接認定できたり、一義的に証拠2のポリウレタンが「スラリー粒子を吸収又は伝送する固有能力を有しない」ことを知ることができない。つまり、係争特許の当該技術特徴は証拠2より直接推論できないので(詳細は後述)、証拠2をもって係争特許の特許請求の範囲第1項が擬制新規性喪失に該当すると証明するに足りるとは言い難い。証拠2において適切に参考にできる出願当時の従来技術がないので、被告が言うように「添加物を含まない硬いポリウレタン」より係争特許の特許請求の範囲第1項に記載されている「スラリー粒子を吸収又は伝送する固有能力を有しない」ことを導き出すことができるとは言い難い。

参加人は証拠2の出願時の外国語明細書を証拠2の開示内容の一部分と見なすべきであり、これをもって証拠2の不明確の記載を解釈でき、証拠2に開示された「硬いポリウレタンプラグ」が「固体均一なポリウレタン片材」等であることの証明になる(本裁判所ファイル第190頁から192頁まで)云々と主張した。しかし、調べた結果、次のように言える。
(1)査定時の専利法第20条第1項第2号でいう「先に出願し、且つ特許査定を受けたとき」とは、台湾における専利法が属地主義を取っている趣旨から、解釈上、出願が先になされ、公告がこの出願より後になったものをいうので、擬制新規性喪失引例は自国の出願に限るべきであることを先ず説明する。さらに、証拠2は出願時に外国語版で提出され、査定時の中央標準局の専利ファイル閲覧要点(閲卷作業要点)に基づき、証拠2の中国語版も公告時に公開状態にあったが、証拠2が、査定時の専利法第23条により中国語版を補正し、且つ特許査定を受けたので、査定対象は中国語明細書及び図面であり、外国語明細書及び書面ではない。それ故、証拠2の内容は、公告の中国語明細書及び図面に記載された内容を主とし、外国語明細書を参酌する余地はない。ましてや、証拠2の中国語明細書第17頁第16行目から第17行目及びその前後の内容を検討した結果、不明確又は理屈に合わない箇所がないことが分かった。よって、参加人が、証拠2の外国語明細書を証拠2に開示された内容の一部と見なし、証拠2の不明確な箇所を強化すべきである云々と認定したことは、事実無根である。
(2)また、「誤訳」とは、外国語の語彙又は語句を中国語の語彙又は語句に翻訳する過程において誤りが生じることをいい、つまり外国語書面には対応する語彙又は語句があるが、中国語書面で正確、完全に翻訳されていないことである。よって、外国語書面のある段落の関連内容が中国語対応書面にない場合は、外国語の語彙又は語句を中国語の語彙又は語句に翻訳する過程において誤りが生じたものに該当しないので、誤訳訂正が適用されない。証拠2の中国語明細書第17頁第20行目から21行目(無効審判ファイル第115頁)と、証拠2の外国語明細書第18頁第10行目から17行目まで(本裁判所ファイル第253頁の裏面)の内容を比較したところ、中国語明細書に外国語明細書第18頁第10行目から16行目までの中国語訳がないが、前述中国語明細書前後段落内容に不明確又は理屈に合わない箇所がないことが分かった。それ故、証拠2の中国語明細書と外国語明細書との前記差異については、証拠2の出願人が、出願時に故意に抜かしたものであり、誤訳ではないので、誤訳訂正も適用されない。これに準じて、参加人が証拠2の外国語明細書における翻訳漏れの前記内容を結合して、証拠2においてポリウレタンプラグ42は孔が欠けており(即ち開口構造)、並びに添加物は均一な固体であることが開示されている云々と主張したことには理由がない。

証拠2をもって、係争特許の特許請求の範囲第1、3、4項が擬制新規性喪失であると証明することはできない。よって、係争特許は査定時の専利法第20条第1項第2号に違反していないので、原処分で係争特許が前記規定に違反すると認定し、「無効審判請求成立、特許権を取消すべきである」とした処分は妥当性を欠くものである。また、訴願決定の維持も適切ではない。それ故、原告が訴願決定及び原処分の取消しを請求したことには理由があり、許可されるべきである。

2014年7月31日
知的財産裁判所第一法廷
審判長裁判官 蔡恵如
裁判官 彭洪英
裁判官 蔡如琪
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