特許権侵害で訴えられたAvanStrateが勝訴

2022-11-21 2021年
■ 判決分類:專利権

I 特許権侵害で訴えられたAvanStrateが勝訴

■ ハイライト
 ガラス大手の米コーニング社は2019年に台湾の知的財産裁判所(現:知的財産及び商事裁判所)に対して、LCDガラス基板メーカーの安瀚視特股份有限公司(AvanStrate Taiwan Inc.)を相手取り特許権侵害訴訟を提起し、コーニング社の台湾における公告番号第570901号特許(以下「係争特許1」)を侵害し、当該特許によって保護されている製造工程でガラス基板を生産したと主張したほか、その後さらに証書番号第I246989号特許(以下「係争特許2」)を侵害したと訴えを追加した。
 本件は知的財産及び商事裁判所にて2年余にわたって審理され、2021年11月26日に、原告の訴えを棄却し、執行宣言申立てを却下する判決が下された。
米コーニング社は、同社が初めて開発したフュージョン製造プロセスは厳密にコントロールされた専有の製法であり、この製造プロセスで生産されたガラス基板は欠陥がほぼなく、同時に薄くて可撓性と熱安定性、寸法安定性に優れる等の特性を有し、AvanStrateにコーニングのガラス板製造に関する特許権を侵害する製造プロセスでガラスを生産することを排除するよう主張した。
 AvanStrate社は本社を日本に置き、台湾と韓国に生産拠点を設置している。台湾の生産拠点は台南科技工業区(Tainan Technology Industrial Park)に位置し、5つの溶炉と、7本の加工ラインを有する。コーニングはAvanStrateの台湾におけるガラス基板製造プロセスが特許権を侵害していると主張した他、韓国ソウル中央地方裁判所に対しても特許権侵害訴訟を提起し、コーニングが韓国で保有している特許KR101230754B1、KR101296484B1及びKR100762054B1をAvanStrate Korea Inc.が侵害していると主張した。
 AvanStrateの前身は日本板硝子(NSG)とHOYAが50%ずつ出資して設立した合弁会社NHテクノグラス(NHT)であり、1991年に日本で設立されている。2000年に台湾に台湾板保科技玻璃股份有限公司(Taiwan NH Techno Glass Corporation)を、シンガポールに現地法人をそれぞれ設立し、2002年には韓国に現地法人を設立し、2008年に社名をAvanStrateに変更している。2010年に同社の持ち株率はカーライルグループ(訳注:2008年に資本参加)が53%、HOYAが47%となった。
 AvanStrateは次のように述べている。同社はガラス基板の技術分野において豊富な経験を積み重ねており、また強力な研究開発力を備えているため、コーニングが提起した本件訴訟に対して最初から勝訴することを確信していた。またクライアントがこの期間に継続的に信頼を寄せてくれたことに感謝している。今後は精進し続け。核心技術の研究開発に力を入れて、台湾を含む世界の液晶基板メーカーが必要とするガラス基板を提供するとともに、台湾液晶産業に貢献し、日本本社による台湾投資の約束を実現することを目指していく。【2021年12月23日/経済日報/A12面】

II 判決内容の要約

知的財産及び商事裁判所民事判決
【裁判番号】108年度民專訴字第97号
【裁判期日】2021年11月26日
【裁判事由】専利権侵害排除(差止)請求

原告 米コーニング社(Corning Inc.)
被告 安瀚視特股份有限公司(AvanStrate Taiwan Inc.)

上記当事者間の専利権侵害排除(差止)請求事件について、本裁判所は2021年10月19日に口頭弁論を終結し、次の通り判決する。

主文
一、原告の訴えを棄却し、仮執行宣言申立てを却下する。
二、訴訟費用は原告の負担とする。

一 事実要約
原告は以下のように主張している。原告は係争特許(訳注:係争特許1と係争特許2を指す)の特許権者であり、訴外人の日本企業AvanStrate Inc.(以下「ASI公司」)と「第三次修正の基板実施許諾契約」(以下「係争契約」)を結び、原告は係争契約で定めるところに同意し、その中には係争特許の「コーニング特許」についてASI公司及び係争契約で定義する子会社に実施を許諾することが含まれる。ただし、ASI公司が原告の退職社員を雇用して、係争特許第10D条規定に違反したため、原告は2019年5月6日にASI公司とその子会社に対する許諾及び係争契約におけるその他の権利を停止しており、ASI公司及びその子会社には係争特許を実施する権利はない。被告はASI公司が株式を100%保有する子会社であり、それがガラス基板を製造する装置と方法(以下「係争装置」、「係争方法」という)は係争特許を使用し、権利侵害の事実がある。

二 両方当事者の請求内容
 原告の声明:専利法第96条第1乃至3項、第97条の規定により、侵害の排除(差止)及び防止、並びに声明に示す損害賠償を請求する。
 被告の答弁声明:原告の訴えを棄却し、仮執行宣言申立てを却下する。不利な判決をうけたときは、被告は担保金を供託するので仮執行免脱宣言を申し立てる。

三 本件の争点 
 一、特許請求の範囲における用語の解釈:
 (一)係争特許1請求項1の「W」、「L」、「Vsheet」、「前記ガラス板(シート片)を移動中のシートから分離するとき」、「前記ガラス板係合装置(保持装置)を前記トランスポータに対して相対的に移動させる」はいかに解釈すべきか。
(二)係争特許1請求項11の「W」、「L」、「Vsheet」、「分離した前記ガラス板を前記移動中のシートに対して相対的に移動させる」をいかに解釈すべきか。
(三)係争特許2請求項1の「該中立軸線又は『表面』より下方に前記部分を位置決めする」をいかに解釈すべきか。

 二、特許権侵害の部分:
 (一)被告が使用する係争装置は、係争特許1請求項1乃至5、10の文言又は均等の範囲に含まれるのか。
 (二)被告が使用する係争方法は、係争特許1請求項11乃至19の文言又は均等の範囲に含まれるのか。
 (三)係争方法は係争特許2請求項1、3、5、6の文言又は均等の範囲に含まれるのか。

 三、特許有効性の部分:
 (一)係争特許1の有効性に関する争点を付表一に示すように整理した。
 (二)係争特許2の有効性に関する争点を付表二に示すように整理した。

 四、原告が専利法第96条第1項、第3項規定に基づいて被告に侵害の排除(差止)を請求することには、理由があるのか。

 五、原告が専利法第96条第2項、第97条規定に基づいて、被告に損害賠償を請求することには、理由があるのか。理由があるのなら、金額はいくらが妥当か。

四 判決理由の要約

 一、係争特許1
係争特許1は請求項が計19項あり、そのうち請求項1、11、15は独立項,請求項2乃至10、11乃至14、16乃至19はいずれも従属項である。原告は係争装置、係争方法が係争特許1請求項1乃至5及び10乃至19を侵害していると主張している。

 二、係争特許2
係争特許2は請求項が計9項あり、そのうち請求項1は独立項、請求項2乃至9はいずれも従属項である。原告は係争方法が係争特許2請求項1、3、5、6を侵害していると主張している。

 三、係争装置と係争方法の技術は付表三に示されるように描述されている。

 四、有効性の証拠
AAPAは係争特許1の明細書に記載されている従来の技術であり、被告証拠1乃至4、6、7、13、19の公告日は係争特許1の優先日(2000年8月31日)より早く、係争特許1の先行技術となる。被告証拠8、9の公告日は係争特許2の優先日(2002年4月12日)より早く、係争特許2の先行技術となる。

 五、技術上の争点の分析
 (一)特許請求の範囲の解釈
  1.係争特許1請求項1の「W」、「L」、「Vsheet」、「前記ガラス板(シート片)を移動中のシートから分離するとき」、「前記ガラス板係合装置(保持装置)を前記トランスポータに対して相対的に移動し」の解釈
(1)用語「W」は「前記ガラス板及びシートの幅」と解釈すべきである、
(2)用語「L」は「分離時の前記ガラス板の長さ」と解釈すべきである。
(3)用語「Vsheet」は「シートの移動のベクトル」と解釈すべきである。
(4)用語「ガラス板を移動中のシートから分離するとき」は「ガラス板を移動中のシートから分離し、ガラス板とシートが接触しなくなる前の時間」と解釈すべきである。
(5)用語「前記ガラス板係合装置を前記トランスポータに対して相対的に移動させる」の文言は明確であり、解釈の必要はない。
  2.係争特許1請求項11の「W」、「L」、「Vsheet」、「分離した前記ガラス板を前記移動中のシートに対して相対的に移動させる」の解釈
(1)係争特許1請求項11の用語「W」、「L」、「Vsheet」について、各文言の解釈は、係争特許1請求項1の用語「W」、「L」、「Vsheet」の解釈の通りである。
(2)用語「分離した前記ガラス板を前記移動中のシートに対して相対的に移動させる」の文言は明確であり、解釈の必要はない。
  3.係争特許2請求項1の用語「該中立軸線又は『平面』より下方に前記部分を位置決めする」は「該中立軸線又は『中立平面』より下方に前記部分を位置決めする」と解釈すべきである。

 (二)係争方法は係争特許2請求項1、3、5、6の特許権の範囲に入らない:
  1.被告は係争方法が「前記両端領域の部分に、互いに反対方向の軸方向の力を印加する」ものであることを自ら認めており、原告は係争方法が「前記両端領域の部分に、大きさが同一でかつ互いに反対方向の軸方向の力を印加する」ことを有するといういかなる試験データの証拠も提出しておらず、「大きさが同一でかつ互いに反対方向の軸方向の力を印加する被告の成形設備における両端領域の部分」を有すると空言しているにすぎないため、原告の説明から係争方法がいかに両端領域の部分に「大きさが同一で」かつ互いに反対方向の軸方向の力を印加するかの具体的な実施方法を知り得ない。原告は係争方法と係争特許2請求項1の要件1Cの技術的特徴が同じであるかについて、挙証による証明をしていない。
  2.成形設備の垂れ下がり度合を軽減する方法には多くの種類があり得る。原告は「成形設備の中間領域の垂れ下がりを軽減する目的とシミュレーションの結果に基づき、被告は成形設備の力を印加する場所に印加する力は、重力による垂れ下がりに抗する方向の曲げモーメントを発生させて、垂れ下がりを軽減する。…融合パイプの高さ方向のたわみ量を低減する目的で、被告は中立軸線又は中立平面を識別する必要がある」とだけ説明し、原告の説明から、係争方法がいかに融合パイプの中立平面又は中立軸線を識別するかの具体的な実施方法を知り得ない。原告は係争方法と係争特許2請求項1の要件1Dの技術的特徴が同じであるかについて、挙証による証明をしていない。
  3.係争方法と係争特許2請求項1要件1A乃至1Bとの対比結果が同一であるが、係争方法と係争特許2請求項1要件1C乃至1Dとの対比結果が異なり、権利一体の原則に基づき、係争方法は係争特許2請求項1の文言の範囲に入っていない。
  4.係争方法と係争特許2請求項1の要件1C、1Dとの均等分析:
(1)技術手段についてみると、係争方法は「異なる設計パラメーターを調整し続けることで、両端領域の部分に、互いに反対方向の軸方向の力を印加する」ものであり、係争特許2請求項1要件1C、1Dは「前記融合パイプに関する中立軸線または中立平面を特定し、かつ印加位置を該中立軸線または中立平面より下方に位置決めし、該両端領域の部分に、大きさが同一でかつ互いに反対方向の軸方向の力を印加する」ものであり、両者は実質上異なる。
(2)機能についてみると、係争方法は「OOをシミュレーションして、さらにOOを選択する」ものであり、係争特許2請求項1要件1C、1Dは「軸方向の力を融合パイプの中間領域に曲げモーメントを発生させて、同領域の重力による垂れ下がりを打ち消す」ものであり、両者は実質上異なる。
(3)結果についてみると、係争方法は「融合パイプの垂れ下がり度合を軽減する」ことであり、係争特許2請求項1要件1C、1Dは「融合パイプの垂れ下がり度合を軽減する」ことであり、両者は実質上同一である。
(4)以上のことから、係争方法と係争特許2請求項1要件1C、1Dとの技術手段及び機能は実質上異なり、係争方法と係争特許2請求項1要件1C、1Dの結果が実質上同一であるため、係争方法は係争特許2請求項1の均等の範囲に入らず、よって係争方法は係争特許2請求項1の特許権の範囲に入らない。
  5.係争特許2請求項3、5、6は請求項1の従属項であることから、請求項1のすべての技術的特徴を含むはずであり、係争方法は請求項1の特許権の範囲に入らないことは前述した通りであるため、係争方法は係争特許2請求項3、5、6の特許権の範囲にも入らない。

(三)係争特許1の有効性に係る争点分析:
  1.「被告証拠13+被告証拠19+被告証拠1」の組合せ、「被告証拠13+被告証拠19+被告証拠1+AAPA」の組合せは係争特許1請求項1が進歩性を有しないことを証明できる:
(1)係争特許1請求項1と被告証拠13との技術的特徴の対比
被告証拠13には、係争特許1請求項1の「(b)前記ガラス板係合装置(保持装置)を移動中の前記シートと係合させ且つ前記ガラス板係合装置を前記分離線と実質的に一致する軸線を中心にして回転させ、この回転により前記ガラス板(シート片)をシートから分離させるトランスポータと、(c)前記ガラス板係合装置と前記トランスポータを連結し、前記ガラス板を移動中のシートから分離するとき前記ガラス板係合装置を前記トランスポータに対し相対的に移動させるコネクター装置」という技術的特徴だけが開示されていない。
(2)係争特許1請求項1の(b)と被告証拠19との技術的特徴の対比
被告証拠19には、係争特許1請求項1「(b)……装置を前記分離線と実質的に一致する軸線を中心にして回転させる」という技術的特徴が開示されている。
(3)係争特許1請求項1の(c)と被告証拠1の技術的特徴との対比
①被告証拠1のシリンダー15、吸盤11、モーター13及びスタンド6、ガラス板、ガラスリボンの構造は、係争特許1のコネクター装置、ガラス板係合装置、トランスポータ、ガラス板、シートに相当する。かつ被告証拠1のシリンダー15が吸盤11、モーター13及びスタンド6に接続され、断裂したガラス板をガラスリボンから分離するときに、すぐに吸盤11をモーター13及びスタンド6に対して相対的に移動させて、分離後にガラス板とガラスリボンが互いに接触しないようにしており、係争特許1請求項1「(c)前記ガラス板係合置と前記トランスポータを連結し、前記ガラス板を移動中のシートから分離するとき前記ガラス板係合装置を前記トランスポータに対し相対的に移動させて前記ガラス板の分離後に前記ガラス板と前記シートが互いに接触することを妨げるコネクター装置」という技術的特徴に相当する。
②係争特許1の明細書に記載された効果は「ガラス板11とシート13は一旦分離されると互いに接触しない。分離されたガラス板に発生する表面傷と端縁損傷を減少させる」ことであり、被告証拠19の明細書第3欄25乃至30行目には「スムーズに切断できるよう確保し、ガラス板の望ましくない破裂のリスクを取り除く」と記載されており、係争特許1と同じ効果を達成できるため、係争特許1は予期せぬ効果をもたらさない。
(4)被告証拠1、13、19はいずれもガラス製作という技術分野の関連性を有し、いずれもガラス板を分離することができ、機能と作用の共通性を有しており、且つ被告証拠1、13、19の教示によって、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者は被告証拠1、13、19に開示されている技術内容と使用上の必要性から簡単に修飾、変更して、容易に係争特許1請求項1をなし得て、しかも予期せぬ効果をもたらしていないため、「被告証拠13+被告証拠19+被告証拠1」の組合せ、「被告証拠13+被告証拠19+被告証拠1+AAPA」の組合せは係争特許1請求項1が進歩性を有しないことを証明できる。

  2.「被告証拠13+被告証拠19+被告証拠1」の組合せ、「被告証拠13+被告証拠19+被告証拠1+AAPA」の組合せは係争特許1請求項2が進歩性を有しないことを証明できる:
(1)係争特許1請求項2は請求項1に従属し、「前記ガラス板係合置が複数個の真空吸引カップを有する」という技術的特徴で特定されているとともに、請求項1の全ての技術的特徴を含む。また「被告証拠13+被告証拠19+被告証拠1」の組合せ、「被告証拠13+被告証拠19+被告証拠1+AAPA」の組合せは係争特許1請求項1が進歩性を有しないことを証明できることは、前述した通りである。
(2)被告証拠1の吸盤11は真空状態とすることができ、係争特許1請求項2の「前記ガラス板係合置が複数個の真空吸引カップを有する」という技術的特徴に相当するため、「被告証拠13+被告証拠19+被告証拠1」の組合せ、「被告証拠13+被告証拠19+被告証拠1+AAPA」の組合せは係争特許1請求項2が進歩性を有しないことを証明できる。

  3.「被告証拠13+被告証拠19+被告証拠1」の組合せ、「被告証拠13+被告証拠19+被告証拠1+AAPA」の組合せは係争特許1請求項3が進歩性を有しないことを証明できる: 
(1)係争特許1請求項3は請求項1に従属し、「前記トランスポータが工業ロボットを含む」という技術的特徴で特定されているとともに、請求項1の全ての技術的特徴を含む。また「被告証拠13+被告証拠19+被告証拠1」の組合せ、「被告証拠13+被告証拠19+被告証拠1+AAPA」の組合せは係争特許1請求項1が進歩性を有しないことを証明できることは、前述した通りである。
(2)被告証拠1のスタンド6、スクリュー軸12及びモーター13の部材で構成される工業用ロボットであり、係争特許1請求項3の「前記トランスポータが工業ロボットを含む」という技術的特徴に相当するため、「被告証拠13+被告証拠19+被告証拠1」の組合せ、「被告証拠13+被告証拠19+被告証拠1+AAPA」の組合せは係争特許1請求項3が進歩性を有しないことを証明できる。

  4.「被告証拠13+被告証拠19+被告証拠1」の組合せ、「被告証拠13+被告証拠19+被告証拠1+AAPA」の組合せは係争特許1請求項4が進歩性を有しないことを証明できる: 
(1)係争特許1請求項4は請求項1に従属し、「ガラス片が分離することで、前記ガラス板係合装置が重力により前記トランスポータに対し相対的に移動する」という技術的特徴で特定されているとともに、請求項1の全ての技術的特徴を含む。また「被告証拠13+被告証拠19+被告証拠1」の組合せ、「被告証拠13+被告証拠19+被告証拠1+AAPA」の組合せは係争特許1請求項1が進歩性を有しないことを証明できることは、前述した通りである。
(2)被告証拠13には「切断した板の重量を利用して、それを移動して切断点から引き離し、バネ制御ストッパーに落とす」ことが開示されており、係争特許1請求項4の「ガラス片が分離することで、前記ガラス板係合装置が重力により前記トランスポータに対し相対的に移動する」という技術的特徴に相当するため、「被告証拠13+被告証拠19+被告証拠1」の組合せ、「被告証拠13+被告証拠19+被告証拠1+AAPA」の組合せは係争特許1請求項4が進歩性を有しないことを証明できる

  5.「被告証拠13+被告証拠19+被告証拠1」の組合せ、「被告証拠13+被告証拠19+被告証拠1+AAPA」の組合せは係争特許1請求項5が進歩性を有しないことを証明できる: 
(1)係争特許1請求項5は請求項1、4に従属し、「Vsheetが垂直である」という技術的特徴で特定されているとともに、請求項1、4の全ての技術的特徴を含む。また「被告証拠13+被告証拠19+被告証拠1」の組合せ、「被告証拠13+被告証拠19+被告証拠1+AAPA」の組合せは係争特許1請求項1、4が進歩性を有しないことを証明できることは、前述した通りである。
(2)被告証拠1には「取出装置であって、…それは上昇し続けるガラスリボンの側面に設置され」と開示されており、係争特許1請求項5「Vsheetが垂直である」という技術的特徴に相当する。
(3)被告証拠13には「ガラス板を…平板ガラスストリップから分離するのに用いる装置」が開示されており、その中の下向きに引っ張られる平板ガラスストリップが、係争特許1請求項5の「Vsheetが垂直である」という技術的特徴に相当するため、「被告証拠13+被告証拠19+被告証拠1」の組合せ、「被告証拠13+被告証拠19+被告証拠1+AAPA」の組合せは係争特許1請求項5が進歩性を有しないことを証明できる。

  6.「被告証拠13+被告証拠19+被告証拠1」の組合せ、「被告証拠13+被告証拠19+被告証拠1+AAPA」の組合せは係争特許1請求項10が進歩性を有しないことを証明できる: 
(1)係争特許1請求項10は請求項1に従属し、「前記脆性材料がガラスである」という技術的特徴で特定されているとともに、請求項1の全ての技術的特徴を含む。また「被告証拠13+被告証拠19+被告証拠1」の組合せ、「被告証拠13+被告証拠19+被告証拠1+AAPA」の組合せは係争特許1請求項1が進歩性を有しないことを証明できることは、前述した通りである。
(2)被告証拠1には「取出装置であって、…それは上昇し続けるガラスリボンの側面に設置され」と開示されており、係争特許1請求項10の「前記脆性材料がガラスである」という技術的特徴に相当する。
(3)被告証拠13には「ガラス板を…平板ガラスストリップから分離するのに用いる装置」と開示されており,その中の平板ガラスストリップは、係争特許1請求項10の「前記脆性材料がガラスである」という技術的特徴に相当するため、「被告証拠13+被告証拠19+被告証拠1」の組合せ、「被告証拠13+被告証拠19+被告証拠1+AAPA」の組合せは係争特許1請求項10が進歩性を有しないことを証明できる。

  7.「被告証拠13+被告証拠19」の組合せ、「被告証拠13+被告証拠19+被告証拠1」の組合せ、「被告証拠13+被告証拠19+AAPA」の組合せは係争特許1請求項11が進歩性を有しないことを証明できる:
(1)係争特許1請求項11と係争特許1請求項1とは実質的な内容がほぼ同じであり、その違いは「(c)重力を動力として使用し、分離した前記ガラス板を前記移動中のシートに相対的に移動させ、分離後に前記ガラス板と前記シートを互いに接触させないようにする」という技術的特徴にある。係争特許1請求項11と係争特許1請求項1の同じ箇所について係争特許1請求項1と被告証拠13、19との対比理由は前述した通りであり、異なる特徴の対比理由を以下に詳述する。
(2)係争特許1請求項11の(c)と被告証拠13との技術的特徴の対比:
被告証拠13のガラスストリップ3、ガラス板25の構造は係争特許1のシート、ガラス板の構造に相当する。かつ被告証拠13の重力を動力として使用し、分離したガラス板を移動中のガラスストリップ3に対して相対的に移動させ、分離後に前記ガラス板25と前記ガラスストリップ3を互いに接触させないようにすることは、係争特許1請求項11の「(c)重力を動力として使用し、分離した前記ガラス板を前記移動中のシートに相対的に移動させ、分離後に前記ガラス板と前記シートを互いに接触させないようにする」という技術的特徴に相当する。
(3)被告証拠13、19はいずれもガラス製作という技術分野の関連性を有し、いずれもガラス板を分離するという機能と作用の共通性を有しており、且つ被告証拠13、19の教示によって、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者は被告証拠13、19に開示されている技術内容と使用上の必要性から簡単に修飾、変更して、容易に係争特許1請求項11をなし得て、しかも予期せぬ効果をもたらしていないため、「被告証拠13+被告証拠19」の組合せは係争特許1請求項11が進歩性を有しないことを証明できる。よって「被告証拠13+被告証拠19+被告証拠1」の組合せ、「被告証拠13+被告証拠19+AAPA」の組合せはいずれも係争特許1請求項11が進歩性を有しないことを証明できる。

  8.「被告証拠13+被告証拠19」の組合せ、「被告証拠13+被告証拠19+被告証拠1」の組合せ、「被告証拠13+被告証拠19+AAPA」の組合せは係争特許1請求項12が進歩性を有しないことを証明できる: 
(1)係争特許1請求項12は請求項11に従属し、「Vsheetが垂直である」という技術的特徴で特定されているとともに、請求項11の全ての技術的特徴を含む。また「被告証拠13+被告証拠19」の組合せ、「被告証拠13+被告証拠19+被告証拠1」の組合せ、「被告証拠13+被告証拠19+AAPA」の組合せは係争特許1請求項11が進歩性を有しないことを証明できることは、前述した通りである。
(2)被告証拠1には「取出装置であって、…それは上昇し続けるガラスリボンの側面に設置され」と開示されており、その中の上昇し続けるガラスリボンは係争特許1請求項12の「Vsheetが垂直である」という技術的特徴に相当する。
(3)被告証拠13には「ガラス板を…平板ガラスストリップから分離するのに用いる装置」が開示されており、その中の下向きに引っ張られる平板ガラスストリップが、係争特許1請求項12の「Vsheetが垂直である」という技術的特徴に相当するため、被告証拠13+被告証拠19」の組合せ、被告証拠13+被告証拠19+被告証拠1」の組合せ、「被告証拠13+被告証拠19+ AAPA」の組合せは係争特許1請求項12が進歩性を有しないことを証明できる。

  9.「被告証拠13+被告証拠19」の組合せ、「被告証拠13+被告証拠19+被告証拠1」の組合せ、「被告証拠13+被告証拠19+AAPA」の組合せは係争特許1請求項13が進歩性を有しないことを証明できる: 
(1)係争特許1請求項13は請求項11に従属し、「脱着自在の係合が真空係合である」という技術的特徴で特定されているとともに、請求項11の全ての技術的特徴を含む。また「被告証拠13+被告証拠19」の組合せ、「被告証拠13+被告証拠19+被告証拠1」の組合せ、「被告証拠13+被告証拠19+AAPA」の組合せは係争特許1請求項11が進歩性を有しないことを証明できることは、前述した通りである
(2)被告証拠1の吸盤11は解放自在の係合が真空係合であり、係争特許1請求項13の「脱着自在の係合が真空係合である」という技術的特徴に相当するため、「被告証拠13+被告証拠19」の組合せ、「被告証拠13+被告証拠19+被告証拠1」の組合せ、「被告証拠13+被告証拠19+ AAPA」の組合せは係争特許1請求項13が進歩性を有しないことを証明できる。

  10.「被告証拠13+被告証拠19」の組合せ、「被告証拠13+被告証拠19+被告証拠1」の組合せ、「被告証拠13+被告証拠19+AAPA」の組合せは係争特許1請求項14が進歩性を有しないことを証明できる: 
(1)係争特許1請求項14は請求項11に従属し、「前記脆性材料がガラスである」という技術的特徴で特定されているとともに、請求項11の全ての技術的特徴を含む。また「被告証拠13+被告証拠19」の組合せ、「被告証拠13+被告証拠19+被告証拠1」の組合せ、「被告証拠13+被告証拠19+AAPA」の組合せは係争特許1請求項11が進歩性を有しないことを証明できることは、前述した通りである。
(2)被告証拠1には「取出装置であって、…それは上昇し続けるガラスリボンの側面に設置され」と開示されており、係争特許1請求項14の「前記脆性材料がガラスである」という技術的特徴に相当する。
(3)被告証拠13には「ガラス板を…平板ガラスストリップから分離するのに用いる装置」と開示されており,その中の平板ガラスストリップは、係争特許1請求項14の「前記脆性材料がガラスである」という技術的特徴に相当するため、被告証拠13+被告証拠19」の組合せ、「被告証拠13+被告証拠19+被告証拠1」の組合せ、「被告証拠13+被告証拠19+ AAPA」の組合せは係争特許1請求項14が進歩性を有しないことを証明できる。

  11.「被告証拠13+被告証拠19」の組合せ、「被告証拠13+被告証拠19+被告証拠1」の組合せ、「被告証拠13+被告証拠19+AAPA」の組合せは係争特許1請求項15が進歩性を有しないことを証明できる: 
(1)係争特許1請求項15と係争特許1請求項11とは実質的な内容がほぼ同じであり、その違いは「(c)分離後に前記ガラス板と前記シートが接触しないようにするため、分離した前記ガラス板を前記移動中のシートに対し該シートから離れるように相対的に移動させ、前記移動に水圧力、機械的スプリング力、空気圧力、真空圧の中の少なくとも一つを動力として使用する」という技術的特徴にある。係争特許1請求項15と係争特許1請求項11の同じ箇所について係争特許1請求項11と被告証拠13、19との対比理由は前述した通りであり、異なる特徴の対比理由を以下に詳述する。
(2)係争特許1請求項15の(c)と被告証拠13との技術的特徴の対比:
 被告証拠13のガラスストリップ3、ガラス板25の構造は係争特許1のシート、ガラス板の構造に相当する。かつ被告証拠13のガラスストリップ3の重力を動力として使用し、分離したガラス板を移動中のガラスストリップ3に対して相対的に移動させ、分離後にガラス板25とガラスストリップ3を互いに接触させないようにすることは、係争特許1請求項15の「(c)分離後に前記ガラス板と前記シートが接触しないようにするため、分離した前記ガラス板を前記移動中のシートに対し前記シートから離れるようにに相対的に移動させ、該移動に水圧力、機械的スプリング力、空気圧力、真空圧の中の少なくとも一つを動力として使用する」という技術的特徴に相当する。
(3)被告証拠13と19とは組み合わせる動機付けがあることは前述した通りであり、しかも被告証拠13、19の教示によって、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者は被告証拠13、19に開示されている技術内容と使用上の必要性から簡単に修飾、変更して、容易に係争特許1請求項15をなし得て、しかも予期せぬ効果をもたらしていないため、「被告証拠13+被告証拠19」の組合せは係争特許1請求項15が進歩性を有しないことを証明できる。よって「被告証拠13+被告証拠19+被告証拠1」の組合せ、「被告証拠13+被告証拠19+AAPA」の組合せはいずれも係争特許1請求項15が進歩性を有しないことを証明できる。

  12.「被告証拠13+被告証拠19」の組合せ、「被告証拠13+被告証拠19+被告証拠1」の組合せ、「被告証拠13+被告証拠19+AAPA」の組合せは係争特許1請求項16が進歩性を有しないことを証明できる: 
(1)係争特許1請求項16は請求項15に従属し、「動力の一部分が重力による」という技術的特徴で特定されているとともに、請求項15の全ての技術的特徴を含む。また「被告証拠13+被告証拠19」の組合せ、「被告証拠13+被告証拠19+被告証拠1」の組合せ、「被告証拠13+被告証拠19+AAPA」の組合せは係争特許1請求項15進歩性を有しないことを証明できることは、前述した通りである。
(2)被告証拠13の「前記ガラス板25はそれ自身の重みで前記ガラスストリップ3から離れるように移動する」と開示されており、係争特許1請求項16の「動力の一部分が重力による」という技術的特徴に相当するため、「被告証拠13+被告証拠19」の組合せ、「被告証拠13+被告証拠19+被告証拠1」の組合せ、「被告証拠13+被告証拠19+ AAPA」の組合せは係争特許1請求項16が進歩性を有しないことを証明できる。

  13.「被告証拠13+被告証拠19」の組合せ、「被告証拠13+被告証拠19+被告証拠1」の組合せ、「被告証拠13+被告証拠19+AAPA」の組合せは係争特許1請求項17が進歩性を有しないことを証明できる: 
(1)係争特許1請求項17は請求項15に従属し、「Vsheetが垂直である」という技術的特徴で特定されているとともに、請求項15の全ての技術的特徴を含む。また「被告証拠13+被告証拠19」の組合せ、「被告証拠13+被告証拠19+被告証拠1」の組合せ、「被告証拠13+被告証拠19+AAPA」の組合せは係争特許1請求項15が進歩性を有しないことを証明できることは、前述した通りである。
(2)被告証拠1には「取出装置であって、…それは上昇し続けるガラスリボンの側面に設置され」と開示されており、その中の上昇し続けるガラスリボンは係争特許1請求項17の「Vsheetが垂直である」という技術的特徴に相当する。
(3)被告証拠13には「ガラス板を…平板ガラスストリップから分離するのに用いる装置」が開示されており、その中の下向きに引っ張られる平板ガラスストリップが、係争特許1請求項17の「Vsheetが垂直である」という技術的特徴に相当するため、被告証拠13+被告証拠19」の組合せ、「被告証拠13+被告証拠19+被告証拠1」の組合せ、「被告証拠13+被告証拠19+ AAPA」の組合せは係争特許1請求項17が進歩性を有しないことを証明できる。

  14.「被告証拠13+被告証拠19」の組合せ、「被告証拠13+被告証拠19+被告証拠1」の組合せ、「被告証拠13+被告証拠19+AAPA」の組合せは係争特許1請求項18が進歩性を有しないことを証明できる: 
(1)係争特許1請求項18は請求項15に従属し、「脱着自在の係合が真空係合である」という技術的特徴で特定されているとともに、請求項15の全ての技術的特徴を含む。また「被告証拠13+被告証拠19」の組合せ、「被告証拠13+被告証拠19+被告証拠1」の組合せ、「被告証拠13+被告証拠19+AAPA」の組合せは係争特許1請求項15が進歩性を有しないことを証明できることは、前述した通りである
(2)被告証拠1の吸盤11は解放自在の係合が真空係合であり、係争特許1請求項18の「脱着自在の係合が真空係合である」という技術的特徴に相当するため、「被告証拠13+被告証拠19」の組合せ、「被告証拠13+被告証拠19+被告証拠1」の組合せ、「被告証拠13+被告証拠19+ AAPA」の組合せは係争特許1請求項18が進歩性を有しないことを証明できる。

  15.「被告証拠13+被告証拠19」の組合せ、「被告証拠13+被告証拠19+被告証拠1」の組合せ、「被告証拠13+被告証拠19+AAPA」の組合せは係争特許1請求項19が進歩性を有しないことを証明できる: 
(1)係争特許1請求項19は請求項15に従属し、「前記脆性材料がガラスである」という技術的特徴で特定されているとともに、請求項15の全ての技術的特徴を含む。また「被告証拠13+被告証拠19」の組合せ、「被告証拠13+被告証拠19+被告証拠1」の組合せ、「被告証拠13+被告証拠19+AAPA」の組合せは係争特許1請求項15が進歩性を有しないことを証明できることは、前述した通りである。
(2)被告証拠1には「取出装置であって、…それは上昇し続けるガラスリボンの側面に設置され」と開示されており、係争特許1請求項19の「前記脆性材料がガラスである」という技術的特徴に相当する。
(3)被告証拠13には「ガラス板を…平板ガラスストリップから分離するのに用いる装置」と開示されており,その中の平板ガラスストリップは、係争特許1請求項19の「前記脆性材料がガラスである」という技術的特徴に相当するため、被告証拠13+被告証拠19」の組合せ、「被告証拠13+被告証拠19+被告証拠1」の組合せ、「被告証拠13+被告証拠19+ AAPA」の組合せは係争特許1請求項19が進歩性を有しないことを証明できる。

六、以上の次第で、前記技術上の争点の分析㈡に示す通り、係争方法は係争特許2請求項1、3、5、6の特許権の範囲に入らず、被告が係争特許2を侵害している等の原告の主張は採用できない。また係争特許1請求項1乃至5、10乃至19には取り消すべき理由があり、知的財産事件審理法第16条第2項規定により、原告は本件民事訴訟において係争特許1を以って権利を主張してはならない。したがって、原告が訴状の声明で述べているような専利法第96条第1乃至3項、第97条の規定に基づく請求には理由がなく、棄却すべきである。また原告の請求がすでに棄却されたことで、仮執行宣言申立ては依拠を失ったため却下する

2021年11月26日
知的財産裁判所第三法廷
裁判官 陳端宜
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