営業秘密罪の「主観的な犯罪意思」の認定

2022-09-29 2021年
■ 判決分類:営業秘密

I 営業秘密罪の「主観的な犯罪意思」の認定

■ ハイライト
被告人は2003年から華亞科公司に勤め、2016年9月26日に退職を願い出ており、2016年10月15日が最後の出勤日となっている。退職直前の職位は公用処空調部の専案経理(プロジェクトマネージャー)で、空調システムの管理、維持・稼働等の業務を担当した。被告人は10月19日には告訴人公司と競合関係にある中国大陸地区の合肥智聚公司を訪れて現場の環境を理解し、11月1日には出社して任職し、空調システム図面の審査担当となった。
華亞科公司は、被告人が第三者の不正な利益を図る目的、並びに中国大陸地区で使用する目的で、2016年8月29日、30日、つまり華亞科公司に任職していた期間に、華亞科公司の保有する付表一に示される営業秘密を当時すでに合肥智聚公司に勤務していた元同僚に漏洩し(行為一)、また華亞科公司での最後の出勤日後に、付表二に示される職務上知悉した華亞科公司の営業秘密を、許諾された範囲を越えて複製し(行為二)、付表三に示される電磁的記録を無断で複製し、自ら所有するノートパソコン及び外付けハードディスクに保存し(行為三)、さらに被告人が華亞科公司の任職期間に付表四に示される職務上取得した営業秘密を自宅に持ち帰り、退職後に返還しなかった(行為四)。
本件は華亞科公司が告訴を提起し、桃園地方検察署は被告人の上述の四項目の行為について、それぞれ被告人が営業秘密法第13条の2第1項の中国大陸地区で使用する目的で、「営業秘密を知悉し、許諾を得ずに営業秘密を漏洩した罪」、「営業秘密を知悉して、許諾範囲を超過して営業秘密を複製した罪」、「営業秘密を無断で複製した罪」及び「営業秘密を所持し、隠匿した罪」を犯したとして起訴した。桃園地方裁判所は被告人が前三項目の罪を犯したと認めたが、「営業秘密を所持し、隠匿した罪」については無罪と判決した。見解は次の通りである。

一、被告人が為した行為一:
(一)被告人は華亞科公司での任職期間に、空調システムの管理を担当し、付表一に示されている華亞科公司のクリーンルームの排気設備の数量、容量、配置及び設備の運転データは、被告人が業務上知悉した情報である。
(二)被告人は華亞科公司の情報安全管理規定に違反して、管理職者の同意を得ずに、電子メールを用いて付表一の営業秘密情報を合肥智聚公司で働く元同僚に転送し、営業秘密法第13条之2第1項の中国大陸地区で使用する目的で「営業秘密を知悉し、許諾を得ずに営業秘密を漏洩した罪」を犯した。

二、被告人が為した行為二:
(一)付表二の情報は訴外人である美光公司(マイクロン社)から許諾された技術であり、新工場建築に関する営業秘密であり、華亞科公司工務処に属する新工場全体の企画設計文書である。被告人は華亞科公司において工務処の工場建設に関する公用処の窓口であるが、被告人は業務上の必要がある場合に限って、付表二に示された営業秘密情報を閲覧する権限が与えられているに過ぎない。
(二)被告人は2016年9月12日に関連の営業秘密文書を印刷した時、華亞科公司は現有の工場において再び新工場を建設する必要性はなく、且つ被告人は華亞科公司の林口工場に勤務しており、美光公司台中工場の建設構造図を参考とする必要は全くなかった。また被告人は2016年9月26日に退職を願い出ており、その二日後に中国大陸で面接を受けており、被告人は中国大陸地区で働く目的で許諾範囲を超過して付表二の資料を複製したものであり、営業秘密法第13条之2第1項の中国大陸地区で使用する目的で「営業秘密を知悉して、許諾範囲を超過して営業秘密を複製した罪」を犯したと認めることができる。

三、被告人が為した行為三:
(一)附表三に示されている電磁的記録には、生産機器について華亞科公司の環境流体に合わせて行った設計の内容、及び華亞科公司のデータ、材質及び安全規定以外に、華亞科公司が建設する工場建物設計の関連データ(載重、微震、構造、階層等を含む)も含まれている。
(二)前述情報は被告人の業務とは全く無関係であり、被告人は華亞科公司の最後の勤務日後に、華亞科公司の規定に違反して、所属部門の管理職者の同意を得ずに文書を取得し、直接個人の外付けハードディスクに複製し、付表三の電磁的記録を複製した二日後に中国大陸地区の合肥智聚公司を訪れており、被告人は中国大陸地区で働く目的で、無断で付表三の資料を複製したものであり、営業秘密法第13条之2第1項の中国大陸地区で使用する目的で「営業秘密を無断で複製した罪」を犯したと認めることができる。

四、被告人が為した行為四:
(一)付表四で示された文書には、華亞科公司6Sプロジェクト進捗状況週報、タンクエリアのエリア平面図、空調部の冷却水設備の温度制御最適化に係る評価報告及び空調部の製造工程の冷却水システムの教育訓練技術資料が含まれる。
(二)関連する証人の証言によると、被告人は公用処空調部の専案経理(プロジェクトマネージャー)であり、当時は6Sプロジェクトの責任者でもあったため、被告人は業務上の必要から付表四に示される文書を取得した。また付表四に示される資料にはそれぞれ「内部(社外秘)文書資料」及「機密(秘)資料」と標示されていたが、華亞科公司の当時の情報安全関連規定によると「内部文書資料」及び「機密資料」は社外への持出しが認められていた。現在のハイテク産業の発展、ハイテク企業のエンジニアの時間外労働が一般大衆の知る普遍的現象となっていることに照らして、被告人が家で仕事できるよう持ち帰ったことは根拠がないものではない。
(三)以上のことから、付表四に示される文書は確かに被告人の自宅で押収されたが、被告人が退職前に(不正に)取得したものではなく、自宅で残業する必要があり、被告人が公司に返還し忘れた可能性を排除できないため、被告人の自宅で係争文書が発見されただけで、被告人が「営業秘密を所持し、隠匿した罪」の主観的な犯罪意思があったと論断できない。

II 判決内容の要約

台湾桃園地方裁判所刑事判決
【裁判番号】107年度智訴字第2号
【裁判期日】2021年8月27日
【裁判事由】営業秘密法違反等

公訴人 台湾桃園地方検察署検察官
被告人 范振航
上列被告人は営業秘密法違反等事件により、検察官からの公訴(106年度偵字第5109、13005号)が提起されるとともに、移送して訴因の追加となった(108年度偵字第1539号)。本裁判所は次の通りに判決する:

主文
范振航は、付表一に示された資料について、営業秘密法第13条の2第1項に定める中国大陸地区で使用する目的、並びに第三者の不正な利益を図る目的で、営業秘密を知悉して漏洩する罪を犯したため、懲役1年2月に処する。付表二に示された資料について、営業秘密法第13条の2第1項に定める中国大陸地区で使用する目的、並びに第三者の不正な利益を図る目的で、営業秘密を知悉して、許諾範囲を超過して営業秘密を複製した罪を犯したため、懲役1年10月に処し、押収品である付表二項目番号⑵⑶⑸に示される紙媒体文書を没収する。付表三に示される資料について、営業秘密法第13条の2第1項に定める中国大陸地区で使用する目的、並びに第三者の不正な利益を図る目的で、営業秘密を無断で複製した罪を犯したため、懲役2年に処し、押収品であるノートパソコン1台と外付けハードディスク1個を没収する。懲役刑3年4月を執行すべきである。
付表四項目番号⑴⑵⑶について、営業秘密を隠匿し、背信した部分及び付表四項目番号⑷について、営業秘密を無断で複製した部分は、いずれも無罪とする。

事実要約

一、華亞科技股份有限公司(Inotera Memories, Inc.)は2003年に設立され、会社の主な業務はいずれもDRAM(ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ)ウエハ受託製造サービスであり、2016年12月6日に台湾美光半導体股份有限公司(Micron Semiconductor Taiwan Co. Ltd)に買収され、2017年3月1日に台湾美光晶圓科技股份有限公司(Micron Technology Taiwan、以下「華亞科公司」、「美光公司」)と改名した。中国大陸地区の当局は近年経済産業政策において半導体技術の発展を強化している。これを受けて中国大陸地区の紫光集団傘下にある長江存儲科技有限責任公司(Yangtze Memory Technologies Corp、以下「長江存儲公司」)と合肥市政府が主導する合肥智聚集成電路有限責任公司(以下、「合肥智聚公司」)はいずれも産業政策推進のために積極的に工場建設に投資し、2018年からの12インチウエハの量産を予定し、その後2015年から台湾ファウンドリの人材を中国大陸で働くよう積極的に招き寄せた。

二、被告人は2003年から華亞科公司に勤め、2016年9月26日に退職を願い出ており、2016年10月11日には従業員退職面談記録に署名し、同年10月15日が最後の出勤日となっている。退職直前の職位は公用處(共用設備管理部門)空調部(空調管理部門)の専案経理(プロジェクトマネージャー)で、空調システムの管理、維持・稼働等の業務を担当し、同年10月19日には告訴人公司と競合関係にある中国大陸地区の合肥智聚公司を訪れて現場の環境を理解し、11月1日には出社して任職し、空調システム図面の審査担当となった。被告人は華亞科公司での任職期間に、付表一、二、三に示される各種営業資料がいずれもウエハ工場建設、生産に関連するものであり、華亞科公司が保有する生産情報であり、通常業界で知られているものではなく、しかも実質的な経済価値を有し、華亞科公司にとって保護を受けるべき情報であることを明らかに知悉していた。また華亞科公司の情報安全管理手続き及び各部門の情報分級管理表の規定により、保護を受けるべき情報は「社外秘(For Internal Use Only)」、「秘(Confidential)」、「極秘(Strictly Confidential)」の3ランクに分けられ、開示したいときは、⑴業務上知る必要があることに適合、⑵最小の開示、⑶政府法令に適合等の3原則を遵守しなければならず、かつ処理準則において「社外秘」ランクの情報は複製してもよいが、会社から持ち出す必要がある場合、従業員は申請し、管理職者に事前の同意を得ておかなければならない;「秘」ランクの情報は複製できず、管理部門の同意を得て始めて複製することができ、且つ持出しするには申請手続きをして申請部門と管理部門の協理(本部長)/副総経理(副社長)クラスの管理職者に事前の許可を得なければならない;そして「極秘」ランクの情報は事前に華亞科公司の総経理(社長)の許可を得て始めて複製でき、事前に総経理の許可を得て始めて持ち出すことができることも知悉していた。各部門も自ら情報安全ランク管理を設定しており、その使用方法も前述の情報安全管理手続きより情報ランクを規定する必要があり、さらに入社時に署名した従業員雇用承諾書、華亞科公司就業規則及び退職時に署名した退職面談記録内容によって、被告人に秘密保持義務があり、許可を得ずに故なく複製、漏洩してはならず、且つ雇用関係が終了した時に、所持する書類及びファイルを華亞科公司に返還しなければならないことが告知されている。ところが被告人は第三者の不正な利益を図る目的、並びに中国大陸地区で使用する目的で、2016年8月29日、30日に続けて告訴人公司の保有する付表一に示される営業秘密を当時すでに合肥智聚公司に勤務していた元同僚に漏洩した。また第三者の不正な利益を図る目的、並びに中国大陸地区で使用する目的で、続けて付表二に示される時間に付表二に示されるものについて、被告人は職務上知り得た華亞科公司(一部は華亞公司が言語の著作権を所有)の営業秘密を、許諾された範囲を越えて複製し、同時に任務に違背し、華亞科公司の営業秘密及び言語の著作権を侵害し、華亞科公司に損害をもたらすに十分である。また第三者の不正な利益を図る目的、並びに中国大陸地区で使用する目的で、付表三に示される時間に続けて無断で付表三に示される電磁的記録を複製し、自ら所有するノートパソコン及び外付けハードディスクに保存した。

三、本件は告訴人である華亞科公司が告訴を提起した後、台湾桃園地方検察署検察官が法務部調査局桃園市調査処を指揮して2017年2月2日に本裁判所の捜査令状を以って被告人の家宅捜索を行い、付表二に示された紙媒体の資料及び付表三に示されたノートパソコン及びハードディスクを押収した。

判決理由の要約

甲、有罪部分:
一、取調記録及び証人と物証によると、被告人は付表に示される営業資料の内容に対しては争わず、またそれらの資料を所持していること、又は複製したこと、又は返還しなかったこと、又は削除しなかったこと、又は携帯電話で撮影して写真を転送したこと等の行為についても争わないが、犯行を全面的に否定し、付表に示される営業資料はいずれも告訴人公司の営業秘密ではない云々と主張した。調べたところ、以下の通りである。

(一)告訴人公司の保護を受けるべき営業秘密:
告訴人公司の定めた情報安全管理手続き第5.2条によると、告訴人公司が生み出した又は取得した経済価値を有する営業資料は「極秘」、「秘」、「社外秘」の3ランクに分類され、且つ情報安全管理手続きにおいてはこれら3ランクの資料の定義と種類を明確に次のように記載されている:1.「極秘」:情報安全管理手続き第5.2.1条規定によると、極秘の資料とは「この保護を受けるべき情報は、不当に漏洩されたならば、告訴人公司に重大な損失をもたらしたり、厳しい法律上の責任を負うこととなったり、告訴人公司の株価の変動に影響したり、告訴人公司の信用と名誉を著しく毀損したりするものであり、告訴人公司の研究開発設計、専利(訳注:特許、実用新案、意匠を含む)の構想の提案及び関連情報、提携戦略、未公開の最初の製品又は研究開発計画、当社の株価に影響を与えるいかなる情報、当社の合併、売却、重要なビジネス決定、計画、ビジネスパートナーからの重要機密に関わる資料等が含まれるが、それに限定されないもの」をいう。2.「秘」:情報安全管理手続き第5.2.2条規定によると、秘の資料とは「この保護を受けるべき情報は、不当に漏洩されたならば、告訴人公司に相当な資産の損失をもたらしたり、相当な法律上の責任を負うこととなったり、告訴人公司の信用と名誉を毀損したりするものであり、告訴人公司が契約義務又は法律の規定により秘密保持責任を負うべき資料、新製品及び製造技術の資料、施設、特殊な配合、重要決定、投資、予算、既存製品の規格、製造技術及び施設/配合、就業規則規範準則、設計図、他者との技術提携の内容、人的資源、給与、財務又は関連の企画/分析、顧客及びサプライヤの関連情報、特殊訓練教材、営業資料、未公開の専利の文書又はそれに関連する情報、契約草案が含まれるが、それに限定されないもの」をいう。3.「社外秘」:情報安全管理手続き第5.2.3条規定によると、社外秘の資料とは「この保護を受けるべき情報は、不当に漏洩されたならば告訴人公司が損失を被るもの、又は内部での参考として使用するものであり、プロジェクトの報告、計画/発表、通常の改善又は修繕・建設計画、青写真、内部の指導方針及び公告、内線電話番号リスト、内部の注文及び価格表、内部のコミュニケーション/連絡/電子メール/会議記録/会議概要、内部規則及び作業指示書、内部報告、計画/発表等が含まれるが、それに限定されないもの」をいう。

(二)営業秘密の保護措置:
1.紙媒体の複製及び持出し
紙媒体形式による告訴人公司の営業秘密の複製(印刷とコピーを含む)及びその副本の持出しを行うならば、文書の機密ランクに応じて異なる秘密保持措置を遵守しなければならない。①「社内秘」:告訴人公司の情報安全管理手順の規則により、従業員は、業務上知る必要がある原則に適合、最小の開示原則に適合、政府の法令に適合という3つの前提の下、業務上の必要に基づいて社外秘ランクの告訴人の営業秘密を印刷することができる。ただしこれらの社外秘の紙媒体の営業秘密を持ち出す必要がある場合、情報安全管理手続きの規定により、告訴人公司はこれらの文書の持出しを奨励しないが、業務上の必要があれば、管理職者に事前の同意を取っておき、且つ持出し時には許諾されていない文書のいかなる接触も防止しなければならない。②「秘」:従業員は、業務上知る必要がある原則に適合、最小の開示原則に適合、政府の法令に適合という3つの前提の下、管理部門の同意を得て始めて複製することができる。業務上これらの文書を持ち出す必要がある場合は、申請を手続きするほかに、申請部門と管理部門の協理(本部長)/副総経理(副社長)クラスの管理職者に事前の許可を得なければならない。③「極秘」:従業員は、業務上知る必要がある原則に適合、最小の開示原則に適合、政府の法令に適合という3つの前提の下、事前に総経理(社長)の許可を得て始めて「極秘」文書を複製できる。業務上これらの文書を持ち出す必要がある場合は、申請を手続きするほかに、事前に総経理の許可を得て始めて持ち出すことができる。④告訴人公司は2014年7月19日に第一版の情報安全管理手続きを定めているほか、従業員が規定に違反して告訴人公司の営業秘密を印刷して持ち出すことを回避するために、告訴人公司は不定期に会社入口にて検査を行い、従業員の規定違反による持出しを回避している。これについては、「(問い:あなたの知る範囲で、従業員が許諾を受けて社外秘文書、秘文書、極秘文書の紙媒体を印刷したとき、あなた方はこの紙媒体をどのように管理しますか?)紙媒体の資料を持ち出そうとするならば、我々はこれを管理することはできない。さらに我々は不定期に会社正門の前後出入口で情報安全の抜取り検査を行っており、具体的な抜取り検査とはカメラ機能を搭載する携帯電話、ノートパソコンがある場合、申請許可書の提示を求めるというものである。」という証人の証言がある。⑤従業員が告訴人公司の規定に違反して大量の印刷を行う状況を避けるため、告訴人公司はすべての従業員の印刷記録を保存し、不定期に検査を行っている。本件被告人は退職願いを出した後、大量かつ異常に印刷を行っており、印刷リストを調べることができる。これによって告訴人公司は、被告人が違法に被告人公司の営業秘密を窃取した状況を掌握できた。

2.電子ファイルのアクセス
前述の情報安全管理手続きによると、電子ファイル形式で告訴人公司の営業秘密を社内ネットに置く場合、そのファイルの機密ランクにより異なる保護措置を遵守しなければならない。①「社外秘」:基本的に、告訴人公司の内部に置いて従業員のアクセスに供する。②「秘」:従業員が業務上知る必要がある原則に適合、最小の開示原則に適合、政府の法令に適合という3つの前提の下、社内ネットにおいて従業員のアクセスに供するが、前提はアクセス権を制限するというものである。③「極秘」:申請部門及び管理部門の副総経理(副社長)クラス管理職者の許可を得てアクセス権を制限することで始めて可能となる以外は、原則的に禁止とする。

3.電子メールでの電子ファイルの転送
電子メールで告訴人公司の営業秘密を転送する場合は、前述の情報安全管理手続きによると、機密ランクにより異なる保護措置を遵守しなければならない。①「社外秘」:原則的に社外秘のファイルを転送してはならない。ただし業務上の必要があり、且つ以下の二原則に適合するならば、例外的に転送してもよい。二原則とは⑴㏄で経理(部長)クラスの管理職者にも送る、⑵社外へのメールは警告を注記する。②「秘」:従業員は事前に許可を取得し、文書は暗号化されたルート(PortalやFTPなど)を通じて転送しなければならず、且つ電子メールに警告を注記しなければならず、それらによって始めて「秘」ランクの文書を電子メールで転送できる。③「極秘」:従業員は事前に許可を取得し、文書は暗号化されたルート(PortalやFTPなど)を通じて転送しなければならず、且つ電子メールに警告を注記しなければならず、それらによって始めて「極秘」ランクの文書を電子メールで転送できる。

4.USBへの電子ファイル保存を禁止
告訴人公司が定めた「コンピュータ設備管理作業指示書」第5.1.4.4条には「光ディスクドライブ、ソフトドライブディスク、及びその他記憶設備のインターフェース、DisableUSBstorage...等を取り外す」と規定され、USBや光ディスクドライブなどのいかなる記憶デイバスも取り外さなければならない。従業員が使用するすべての告訴人公司のコンピュータは「コンピュータリソース使用管理弁法」第5.1.3条により、必要な許可を取らずに、告訴人公司のコンピュータ又はネットワークに記憶媒体、ディスクドライブなどの周辺設備を外付けしてはならない。

5.携帯電話の使用を禁止
告訴人公司はスマートフォンの社内持込みを全面的に制限している。業務上のスマートフォンを使用する必要があれば、告訴人に対して事前に申請しなければならず、許可を得た後始めてスマートフォンを持ち込むことができ、且つスマートフォンを社内に持ち込んだとしてもカメラ機能の使用を禁止している。これは告訴人公司内部の公告で調べることができる。

6.告訴人公司の下請け企業はいずれも秘密保持協議書に署名しなければならず、それによって告訴人公司は各種の必要な営業秘密を告知できる。それらの情報はたとえ下請け企業に告知されても、なお当社専属の営業秘密である。

7.告訴人公司は従業員による前述情報安全関連規定の遵守を確保するため、従業員を雇用する際に、従業員に雇用承諾書への署名を要求しており、該承諾書第4条には「被用者は当社の任職期間において、当社の営業秘密、情報及び資料(以下「機密資料」という)を知る又は知り得る又はその他の方法で知る又は取得する機会があり、当社の機密資料を保護するために、被用者は以下に同意するものとする:1.本承諾書でいうところの“機密資料”とは、被用者が当社に任職する期間に創作、開発、取得、使用、知悉等をした、当社及び当社と関連する業務往来のある任意の第三者が保有し、秘密性(非公知性)と経済利益(有用性)等を保持し続けようとする一切の資料をいい、⑴当社が自ら開発した、又は第三者に開発を委託した、又は第三者から移転された情報;及び⑵書面又は口頭等の形式の情報を含むが、それに限定されない。被用者が知悉する以下の項目はすべて当社の機密資料である:⑴当社の生産、製造及び研究開発等と関連がある各種資料であり、技術、方法、プロセス、配合、発明、創作、專利(特許、実用新案、意匠)、商標、著作物、コンピュータソフトウェア、集積回路レイアウト、図面、写真、サンプル、及び関連の模型、製品規格、工程及び/又は設計図、研究報告及び分析等を含む、⑵当社の販売、業務、経営管理等と関連する資料であり、生産販売計画、顧客資料、運営方針、会社業績、プロモーション戦略、市場分析、財務、人事、製品コスト等を含む、⑶その他の任意の、当社が“極秘”、“秘”、“閲覧制限”又はその他類似する同義語の文字が標示された文書、及び当社が機密と見なす資料等、及び⑷当社が契約又は法令により第三者に秘密保持責任を負う第三者の機密資料。2.被用者が当社に任職する期間又は退職した後、秘密保持業務を厳守すべきであり、自ら又はいかなる方法でもいかなる機密資料も直接的又は間接的に第三者に不正に知悉、所持、複製、公開又は利用させてはならない。但しいかなる機密資料もすでに公開されている又はその機密性が解除されているならば、被用者は当該部分の秘密保持義務を免除できる。被用者が過失により漏洩した又は他人の漏洩を知悉したときは、直ちに当社に告知しなければならない。3.(省略)4.被用者が当社との雇用関係を終了したとき、又は当社が返還を要求したときは、所持する当社のいかなる資料も当社に返還しなければならず、それには本承諾書第4条に開示されている機密資料及び当社又は被用者が執行する業務と関連する各種文書、資料、図表、又はその他の形式の情報等が含まれ、それは原本、写し、コピー、磁気テープ、磁気ディスク又は製品の複製等を問わない。被用者はコピー、複製又はその他のいかなる方法を以っても保留してはならない。」と規定されている

8.告訴人は従業員による告訴人公司のすべての情報安全管制措置、機密分級方法等の知悉を確保するため、内部では不定期に情報安全訓練課程を行っており、これは2016年華亞科技ビジネス行動規範及び情報安全年度訓練一部で調べることができる。

以上をまとめると、告訴人公司は経済価値(有用性)を有する保護を受けるべき資料に対して、形式と実質の両面において営業秘密と見なして合理的に保護措置を採用して保護している。

以上に述べたとおり、前述の付表一、付表二、付表三にある各項の告訴人公司が保有する営業秘密はいずれも告訴人公司が専有する技術であり、独創性を有しており、上記の文言がいずれも著作権法の保護する著作物ではないとする被告人の主張は採用するに足りない。被告人の営業秘密法、著作権法の違反、背任等の犯行は、事実証拠が明確であり、認定できる。

二、論罪科刑

(一)付表一に示される営業資料について、被告人が2回にわたり携帯電話で第三者に転送したことは、営業秘密法第13条の2第1項第2号に定める中国大陸地区で使用する目的で、営業秘密を知悉して漏洩するという加重の営業秘密侵害罪及び刑法第342条第1項の背信罪(公訴人は漏らして論じていない)を犯すもので、観念的競合の規定により、最も重い刑である加重の営業秘密侵害罪で処断すべきである。

(二)付表二に示される営業資料について、被告人は営業秘密法第13条の2第1項第2号に定める中国大陸地区で使用する目的で営業秘密を知悉して許諾を得ずに複製するという加重の営業秘密侵害罪、著作権法第91条第1項に定める複製することにより他人の著作権を侵害するという罪及び刑法第刑法第342条第1項の背信罪を犯すもので、観念的競合の規定により、最も重い刑である加重の営業秘密侵害罪で処断すべきである。
但し付表二の項目番号⑵⑶⑸については、被告人宅で押収した紙媒体の営業資料であり、告訴人公司が削除、廃棄すべきであると告知したにもかかわらず自宅に隠匿していたが、三部の紙媒体資料は付表二のその他の被告人が印刷した営業資料と同一の時期のもので、即ち被告人が退職前に不正に続けて印刷したものであり、事後に削除、廃棄せずに隠匿していた。当然の結果、これらの営業資料について被告人は告訴人公司の法益に新たな侵害はなく、違法複製という不可罰的事後行為であり、別途諭罪せず、公訴人が独立した罪として成立するので処罰すべきとしたことには誤りがある。

(三)付表三に示される電子ファイルは、被告人が営業秘密法第13条の2第1項第1号に定める中国大陸地区で使用する目的で、無断複製により営業秘密を取得する罪及び刑法第359条の故なく他人の電磁的記録を取得するという罪を犯すもので、観念的競合の規定により、最も重い刑である加重の営業秘密侵害罪で処断すべきである。

(四)被告人が犯した上記の3つの加重の営業秘密侵害罪は、行為が異なり、分けて論じ併せて罰するべきである。被告人の犯行動機、目的、生活状況、知識レベル及び犯行後言葉巧みに否認した態度等の一切の状況を酌量し、主文に示す刑の通り量刑するとともに、懲戒を示すためその刑を執行すべきものと定める。

三、没収

(一)付表二項目番号⑵⑶⑸に示される紙媒体の文書は、被告人が「犯罪行為によって得た物」であり、押収した物は被告人范振航が所有するノートパソコン及び外付けハードディスク各1個で、その中に被告人公司の営業秘密が保存されており、被告人が「犯罪行為の用に供した物」であり、いずれも法に基づいて没収を宣告するものである。

(二)被告人は合肥智聚公司に採用されるために取得した営業秘密を交換したか否かは証明できず、況して被告人本人は告訴人公司で長年任職し、空調部専案経理(プロジェクトマネージャー)まで務めており、本来工場建設に関する知識と経験を相当に蓄積したファンドリー業界の専門家であるため、合肥公司がこの人材を評価して任用したことは、一般的な状況に合致するため、被告人が合肥智聚公司から受け取った給与は「犯罪収益」とは言いがたく、没収しない。

乙、無罪の部分:

公訴趣旨では、付表四に示される資料、即ち被告人が携帯電話で撮影した「一階平面図及び排気図」と被告人住居から押収された「紙媒体の文書」は、いずれも告訴人公司専属の営業秘密であり、合理的な保護措置が採られており、被告人は任職期間にそれぞれ付表に示された方法で告訴人公司が保有する営業秘密を侵害しているため、同じく中国大陸地区で使用する目的の営業秘密侵害罪の嫌疑があると述べられている。しかし営業秘密法第13条の2第1項の加重の営業秘密侵害罪という罪名の成立は、まず同法第13条の1第1項各号の状況が成立することを前提としている。同法第13条の1第1項各号の罪名の成立と刑法第342条第1項背信罪の成立はいずれも行為者が主観的に自己又は第三者の不正な利益を図る目的、又は営業秘密保有者の利益に損害を与える目的があり、客観的に行為の客体が営業秘密であって始めて十分だといえる。ここで調べたところ以下の通りであった。

一、付表四の中の「三部の紙媒体の文書」は、現在のハイテク産業の発展、ハイテク企業のエンジニアたちの時間外労働、自宅における残業という現象がマスコミによって取り上げられ、一般大衆が知る普遍的現象となっていることに照らして、被告人が家で仕事できるよう持ち帰ったことは根拠がないものではない。前述の文書は確かに被告人の自宅で押収されたが、被告人が退職前に(不正に)取得したものではなく、自宅で残業する必要があり、被告人が公司に返還し忘れた可能性を排除できないため、自宅で発見されただけで、被告人に主観的な犯罪意思があったと論断できず、なおその他の積極的な事実証拠で補強しなければならない。しかし公訴人はこれについてその他の事実証拠を提出できておらず、ファイルにおけるその他の補強証拠を調べた結果、「疑わしきは被告人の利益に」の原則に基づき、被告人に対してこの部分の営業秘密侵害及び背任については無罪を告知し、冤罪を避ける。

二、付表四の中の被告人が撮影した「一階平面図及び排気図」は工場の空間の概況のみを示すもので、そこからDRAM生産機器の正確な配置場所を知り得ないため、この写真は経済価値がなく、営業秘密ではない。よって被告人に対してこの部分の営業秘密侵害については無罪を告知する。

以上の次第で、刑事訴訟法第299条第1項前段,第301条第1項により主文の通り判決すべきである。
本件は陳貞卉検察官が公訴を提起し、林鈺瀅検察官が法廷で職務を執行した。

2021年8月27日
刑事第十一法廷
裁判長 潘政宏  
裁判官 許雅婷  
裁判官 陳品潔
書記官 張怡婷
2021年8月30日
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