痩身商品広告の中に「CHANEL」、「N °5 」等著名商標の文言を大量に使用し、裁判所から公正取引法第24条に規定される「取引秩序に影響するに足りる欺罔又は著しく公正さを欠く行為」と認定された事例。

2014-05-15 2011年

■ 判決分類:不正競争

I 痩身商品広告の中に「CHANEL」、「N °5 」等著名商標の文言を大量に使用し、裁判所から公正取引法第24条に規定される「取引秩序に影響するに足りる欺罔又は著しく公正さを欠く行為」と認定された事例。

■ ハイライト
(事実要約と同じため、省略)

II 判決内容の要約

■ 基礎データ

台北高等行政裁判所判決
【裁判番号】99,訴,1938 
【裁判期日】2010年12月29日 
【裁判事由】公正取引法

原 告 真愛無瑕有限公司
被 告 行政院公平交易委員会

以上当事者間での公正取引法事件をめぐり、原告は行政院2010年6月25日院台訴字第0990097832号訴願決定を不服として行政訴訟を提起していた。当裁判所は以下のように判決を下すものである。

主 文
原告の訴えを棄却する。
訴訟費用は原告が負担するものとする。

一 事実要約
原告は2009年3 月12日から2009年3 月30日までの期間、「壹週刊」、「VOGUE 雜誌」、「FASHION MAP」 及び「蘋果日報」等の紙面メディアに痩身用ツバキエキス「Jumellea+ 纖奈兒山茶花精粹」の広告(以下、「係争広告」)を掲載し、広告の中に仏Chanel社とその台湾法人である英屬開曼群島商香奈兒精品股份有限公司台湾分公司(以下、両社を併せて「告発人」)等事業体の名声表徴「CHANEL」、「N °5 」に係わる文言を大量に使用した。被告は上記広告を審査し、(原告が)自らの商品を広めるために、他事業体の名声に便乗して、他事業体による努力の成果を利用しており、これは取引秩序に影響するに足りる著しく公正さを欠く行為に属し、公正取引法第24条規定に違反していると認定した。被告は同法第41条前半の規定に基づき、2010年3 月11日公処字第099030号処分通知書(以下、「原処分」)を以て、原告に対し処分通知書の送達翌日から前項の違法行為を停止するよう命じるとともに、原告を20万新台湾ドルの過料に処した。原告はこれを不服として行政訴願を提起したが棄却されたため、本件の行政訴訟を提起した。

二 両方当事者の請求内容
(一) 原告の主張:原処分及び経済部の訴願決定をいずれも取り消す。
(二) 被告の主張:原告の訴えを棄却する。

三 本件の争点
原告が係争広告に告発人の「CHANEL」、「N °5 」等文言を表徴したことは、自らの製品を広めるために、告発人の名声を利用し、告発人の努力の成果を詐取して、取引秩序に影響するに足りる著しく公正さを欠く行為にあたり、公正取引法第24条規定に違反しているか否か?

四 判決理由の要約
(一) 公正取引法第24条「本法に別途の規定がある場合を除き、事業者はその他取引秩序に影響するに足りる欺罔又は著しく公正さを欠く行為を行ってはならない」の「著しく公正さを欠く」とは、「著しく公正さを欠く方法で競争や取引に従事する」ことを指す。他事業体がすでに大きな努力を投入した結果、市場で得た一定の経済利益を有する名声に便乗したり、その成果に便乗したりすることで、両者が同一の出所、同シリーズの商品又は関係企業に属すると取引相手を誤認させる効果をもたらした場合、他人が努力により得た成果を詐取する行為は、正に商業競争倫理に違反する方法で競争に従事するものであり、即ち「取引秩序に影響するに足りる著しく公正さを欠く行為」に属する。公正取引法第41条前半の規定に基づいて、被告は期限を定めてその行為の停止、改善又はその是正に必要な措置を命じ、並びに5万新台湾ドル以上、2500万新台湾ドル以下の過料に処することができる。
(二) 「CHANEL」及び「N °5 」等の商標はすでに関連の事業体や消費者が普遍的に認知している著名表徴となっており、経済部知的財産局が著名商標として認定している。当該表徴が顕す名声については、告発人が大きな努力を投入し、市場において一定の経済利益を得ていることが分かる。原告は「Jumellea+ 纖奈兒山茶花精粹」の商品広告を掲載したが、すべての広告内容において完全な商品名を提示せず、逆に該広告において告発人の創始者であるCOCO CHANEL(ココ・シャネル)女史、「CHANEL」ブランド名及び「CHANEL NO.5 」商品名に係わる文言を多数箇所で使用し、さらにはツバキをモチーフにした告発人のジュエリーの図を掲載し、見る者に当該商品と「CHANEL」「N °5」及び「COCO CHANEL」とを互いに結びつかせてしまう。原告がこの広告で自らのブランドイメージを確立しようとしたのではなく、その商品を「CHANEL」「N °5 」及び「COCO CHANEL」と結びつけようとした意図は極めて明らかである。
又、COCO CHANEL女史は自然人であり、告発人と同一人格ではないが、告発人の創業者であり、告発人はいまだにそのブランドイメージはCOCO CHANEL女史のテイストやスタイルから生まれたものだと標榜している。投資して大量のメディアを通じCOCO CHANEL女史を宣伝することで、女性消費者によるCOCO CHANEL女史への崇拝を告発人のブランド商品に対する認識へと転換させ、告発人の商品に対する購買欲を刺激してきた。その成果は明らかで、これが告発人の成果であることは周知の事実である。女性の消費市場においてCOCO CHANEL 女史と告発人の「CHANEL」「N °5 」商品は分割することができない。原告はCOCO CHANEL女史の知名度を利用していることを自ら認めており、これは告発人の商品の名声に対する努力の成果に便乗しているのを認めることに変わりはない。確かに消費者に対して原告の商品販売事業と告発人とが、使用許諾、提携又は関連企業等のビジネス上の提携関係にあると誤認させてしまう。痩身商品市場において、他人の名声に便乗するという商業倫理に違反した手法を使わない他の競合者が相対的に不利な情況に追いやられることになり、当然のことながら、「取引秩序に影響するに足りる著しく公正さを欠く行為」となる。
さらに本件の争点は、原告の広告内容が他人の名声を利用する方法による不正競争であるか否かであり、著作権の「盗用」、さらには商標権の「模倣」に関する係争ではない。広告が「創意」から生まれた云々とする原告の主張は、本件とは関係がないものと認める。

五 関連条文抜粋
【公正取引法】
第24条 (その他取引秩序に影響するに足りる欺罔又は著しく公正さを欠く行為の禁止)
本法に別途の規定がある場合を除き、事業者はその他取引秩序に影響するに足りる欺罔又は著しく公正さを欠く行為を行ってはならない。
第41条
公平取引委員会は本法規定に違反した事業者に対して、期限を定めてその行為の停止、改善又はその是正に必要な措置を命じ、並びに5万新台湾ドル以上、2500万新台湾ドル以下の過料に処することができる。期限を超えても、なおその行為を停止、改善せず、又はその是正に必要な措置を講じなかったときは、引き続きその行為の停止、改善又はその是正に必要な措置を命じることができ、またその行為が停止若しくは改善され、又はその是正に必要な措置が講じられるまで、回数に応じて連続して10万新台湾ドル以上、5000万新台湾ドル以下の過料に処することができる。
第45条
著作権法、商標法又は特許法(日本の特許法、実用新案法、意匠法)により権利を行使する正当な行為は、本法の規定を適用しない。
【行政訴訟法】
第98条
 訴訟費用とは、裁判費用及びその他の訴訟進行に係わる必要経費を指し、敗訴した当事者が負担するものとする。但し198条に基づく判決を行った場合は、被告が負担するものとする。
 起訴1件あたり裁判費用4,000新台湾ドルを徴収する。簡易訴訟手続きが適用される案件については、裁判費用2,000新台湾ドルを徴収する。
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