コンピュータソフトウェア関連発明の明細書の内容にはソフトウェアの機能に対応する構造又は動作を記載すべきで、商業上のステップ又は機能だけを記載すべきではない
2016/01/27 | 2015年 前のぺージに戻る    
■ 判決分類:特許権

I コンピュータソフトウェア関連発明の明細書の内容にはソフトウェアの機能に対応する構造又は動作を記載すべきで、商業上のステップ又は機能だけを記載すべきではない

■ ハイライト
専利法(訳注:日本の特許法、実用新案法、意匠法に相当)第26条第2項規定から、特許請求の範囲は各請求項について明確、簡潔な方法で記載され、かつ明細書に裏付けされなければならないことが分かる。(本件の)コンピュータソフトウェア関連発明の明細書は請求項の内容を複製している以外に、出願している技術的特徴の商業上の効果又は使用方法を説明しているだけにすぎず、さらに該機能を達成するために対応する構造(ハードウェア部材)又は動作(ソフトウェア・アルゴリズム)を詳細に記述しておらず、かつ出願人はミーンズ(ステップ)・プラス・ファンクション形式の使用を主張しており、明細書において対応する構造又は動作を明記すべきである。コンピュータソフトウェア関連発明においては対応するハードウェア部材又はソフトウェア・アルゴリズムについて、商業上のステップ(手順)又はファンクション(機能)のみを記載すべきではなく、さもなければ請求項のミーンズ(ステップ)は対応しようがない。次に、明細書にすでにアルゴリズムが開示されているとき、当業者にとって十分な開示がされているか否かとは、当業者がいかにプログラミングを行うかを明確に知悉し、コンピュータで明細書に開示されたアルゴリズムの必要なステップを実行できるか否かを意味し、また当業者が該アルゴリズムを明細書に基づいて実施し(請求項で)請求されている機能を達成できるか否かでもある。ただし出願人がミーンズ(ステップ)・プラス・ファンクション形式を使用するときは、明確且つ十分に開示する義務を果たすべきであるため、全体のアルゴリズムがいずれも当業者の容易に完成できるものだからといっても詳細に開示しないことがあってはならない。

II 判決内容の要約

知的財産裁判所行政判決
【裁判番号】103年度行專訴字第70号
【裁判期日】2015年1月15日
【裁判事由】発明特許出願

原告 旅盟資訊股份有限公司(Lemon Information Technology CO.LTD.)
被告 経済部知的財産局

上記当事者間における発明特許出願事件について、原告は経済部2014年6月10日経訴字第10306105300号訴願決定を不服として行政訴訟を提起し、本裁判所は次のとおり判決する。

主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。

一 事実要約
原告は2007年5月24日「マップ方式旅行情報管理方法(原文:地圖式旅遊資訊管理方法)」(以下「係争特許」)について発明特許出願を行った。被告は第96118548号特許出願案件として審査したが、拒絶査定を下した。原告は不服として再審査を請求した。被告は原告が提出した2013年11月6日付補正本に基づいて審査をしたが、本件は専利法第26条第2項規定に違反しているとして、2013年12月27日に(102)智專三(二)04206字第10221798840号専利審査拒絶査定書を以って「本件は特許を付与すべきではない」との処分を下した。原告はこれを不服として行政訴願を提起したが棄却されたため、その後本裁判所に対して行政訴訟を提起した。

二 両方当事者の請求内容
(一)原告:原処分及び訴願決定のいずれも取り消すとともに、被告に係争特許に特許付与の処分を下すよう命じることを請求する。
(二)被告:原告の請求を棄却することを請求する。

三 本件の争点
本件の争点は、係争特許が専利法第26条第2項規定に違反しているか否かである。

(一)原告の主張理由:省略。判決理由の説明を参照。
(二)被告の答弁理由:省略。判決理由の説明を参照。

四 判決理由の要約
1.特許請求の範囲は特許出願に係る発明を特定すべきであり、一項以上の請求項を含むことができ、請求項ごとに明確、簡潔な方法で記載し、かつ明細書によって裏付けられたものでなければならない、と専利法第26条第2項に規定されている。請求項がミーンズ(ステップ)・プラス・ファンクション形式で記載される時、その請求項の解釈には、明細書のなかに述べられたその機能(ファンクション)に対応する構造、材料又は動作及びその均等の範囲を含めなければならない。またミーンズ・プラス・ファンクション形式は請求項の表現が繁雑すぎることを回避するために出願人に提供される簡単で便利な請求項の記載方法であるが、出願人がミーンズ(ステップ)・プラス・ファンクション形式を使用する時、明細書はできるかぎり明確で十分に開示する義務がある。かつミーンズ(ステップ)・プラス・ファンクション・クレームの解釈にあたって、明細書の内容を含む必要があるため、明細書が実施可能要件を満たさないならば、請求項は不明確であり、明細書によって裏付けできないものである。

2.原告は以下のように主張している。「複数の観光スポットを選んで、一つの地図上に表示し、旅行の経路を形成する」、「観光スポットごとにリンクを確立する」及び「観光スポットごとにリンクをクリックして、観光スポットごとの関連情報を入力する」はミーンズ・プラス・ファンクション形式で書かれたもので、被告によって受け入れられた。かつ引用文献1、引用文献2には係争特許出願案件の請求項1に係る周知の技術が開示されており、原告証拠2乃至6からも該技術が通常の知識であることを証明できる。専利審査基準(第二篇)における「機能を以って特定された請求項については、明細書にある幾らかの技術的特徴の実施例しか記載されていなくとも、当業者が明細書に開示される内容に基づきさらに出願時における通常の知識を参酌することで、該機能がカバーする範囲を理解できるときは、請求項は明細書によって裏付けられていると認定すべきである」こと及び「当業者が、その機能、性質、製造方法又は用途について出願時における通常の知識を参酌して、具体的な物を想像できるのであれば、請求項に記載されている新規性、進歩性等の特許要件を判断するための技術的特徴及び発明の属する技術の範囲を特定する技術的特徴を理解することができるので、請求項は明確であると認定すべきである」ことに基づいて、係争特許はすでに明確であり、明細書による裏付けされているという要件を満たしている。また、コンピュータソフトウェア関連発明の審査基準(原文:電腦軟體審査基準)においては「アルゴリズムは、理解可能な任意の方法、例えばフローチャート、文言記載、数式、又はその他十分に構造を提供できる方法で表すことができる。ただし、アルゴリズムのプログラムコードや極めて詳細なディテールまで羅列する必要がない」と規範されている。係争特許がすでにアルゴリズムのフローを特許請求の範囲において完全に記述しており、さらに「明細書において、フローステップ又は機能について大まかに若しくは上位概念的にしか記述されていないとき、又はその機能や結果しか記述されていないとき、当業者であっても依然としてハードウェアの各構成素子またはソフトウェアの各モジュールの構成を理解できないならば、実現可能要件に違反するものである」を反面から解釈した「明細書において、フローステップ又は機能について大まかに若しくは上位概念的にしか記述されていないとき、又はその機能や結果しか記述されていないときであっても、当業者がハードウェアの各部材またはソフトウェアの各モジュールの構成を理解できるならば、実現可能要件に違反するものではない」ことに基づき、被告が初審査で引用した米国特許案件はすでにフローにおける個別の動作を開示しており、規定に適合している、云々。

3.調べたところ、以下の通りである。
(1)係争特許の明細書は、請求項の内容を複製している以外に、上記技術的特徴の商業上の効果又は使用方法を説明しているだけにすぎず、さらに該機能を達成するために対応する構造(ハードウェア部材)又は動作(ソフトウェア・アルゴリズム)を詳細に記述しておらず、かつ原告はミーンズ(ステップ)・プラス・ファンクション形式の使用を主張しており、明細書において対応する構造又は動作を明記すべきであり、コンピュータソフトウェア関連発明においては対応するハードウェア部材又はソフトウェア・アルゴリズムについて、商業上のステップ又はファンクションのみを記載すべきではなく、さもなければ請求項のミーンズ(ステップ)は対応しようがない。次に、原告が引用した専利審査基準が本裁判所の効力を拘束しないことを論じなかったとしても、それが引用する段落が一般な機能による物の特定を規範するもので、ミーンズ(ステップ)・プラス・ファンクション形式ではない部分は一般的な機能(特性、製造方法又は用途)で物を特定するときのみに用いる。ミーンズ(ステップ)・プラス・ファンクション形式の部分については、ミーンズ(ステップ)・プラス・ファンクションで表示される請求項を解釈するとき、明細書に記載されている該機能に対応する構造、材料又は動作及びそれと均等な範囲を含むべきである。ただし、明細書に該機能に対応する構造、材料又は動作が記載されていないとき、又は明細書に記載されている構造、材料又は動作の用語が広すぎるときは、当業者であっても明細書において該機能に対応する構造、材料又は動作を判断することができず、請求項は不明確となる。
(2)さらに、明細書にすでにアルゴリズムが開示されているとき、当業者にとって十分な開示がされているか否かとは、当業者がいかにプログラミングを行うかを明確に知悉し、コンピュータで明細書に開示されたアルゴリズムの必要なステップを実行できるか否かを意味し、また当業者が該アルゴリズムを明細書に基づいて実施し(請求項で)請求されている機能を達成できるか否かでもある。ただし出願人がミーンズ(ステップ)・プラス・ファンクション形式を使用するときは、明確且つ十分に開示する義務を果たすべきであるため、全体のアルゴリズムがいずれも当業者が容易に完成できるといって詳細に開示しないことがあってはならない。本件の係争特許の特許請求の範囲に記述された内容は商業のプロセスに関するもので、ソフトウェアを設計する時に使用するアルゴリズムレベルではなく、たとえアルゴリズムが当業者にとって容易になし得るものであったとしても詳細に開示すべきであり、該プロセスが周知の技術であるからといって明細書に記載しないことがあってはならない。引用文献1と引用文献2が開示している係争特許の請求項1の各ステップが周知の技術で、原告証拠2乃至6が該技術が通常の知識であることを証明できたとしても、原告は明細書に該機能に対応する構造又は動作を開示しなければならず、またいわゆる審査基準の反面解釈でその開示義務を免除できるものではない。況してや原告が引用した部分はミーンズ・プラス・ファンクションを規範するものではない。原告はさらに被告が2013年行った原処分において2014年専利審査基準を以って答弁したと主張している。しかしながら専利審査基準は本来裁判所を拘束する効力はなく、異なる年度のバージョンについてはいうまでも無い。異なる年度の専利審査基準に対して裁判の基準時点の問題はないことをここに併せて説明する

4.これにより、係争特許の明細書は「複数の観光スポットを選んで、一つの地図上に表示し、旅行の経路を形成する」、「観光スポットごとにリンクを確立する」及び「観光スポットごとにリンクをクリックして、観光スポットごとの関連情報を入力する」等の技術的特徴に対して、対応する構造又は動作を説明しておらず、係争特許請求項1は不明確となり、かつ明細書に裏付けられていないため、専利法第26条第2項の規定に違反しており、原告の上記主張も採用できない。係争特許請求項2乃至16はいずれも請求項1に直接的又は間接的に従属しており、請求項1の技術的特徴を含んでいる。係争特許1がすでに不明確で、かつ明細書に裏付けられていないため、すでに前述したとおり、係争特許請求項2乃至16も不明確で、かつ明細書に裏付けられておらず、同様に専利法第26条第2項に違反している。

以上に述べたとおり、係争特許請求項1~16は不明確で、かつ明細書に裏付けられておらず、査定時の専利法第26条第2項規定に違反しており、被告は係争特許出願案件に行った「本案件は特許を付与すべきではない」との処分には誤りはなく、訴願決定の維持にも法に合わないところはない。原告が訴願決定と原処分を取り消し、係争特許の登録を許可する処分を行うよう請求することには理由はなく、棄却すべきである。

2015年1月15日
知的財産裁判所第二法廷
裁判長 曾啟謀
裁判官 蔡如琪
裁判官 陳容正