特許無効審判請求の証拠が外国語文書で、文書全部を全般的に考慮する必要がある場合、全文の翻訳を要求し、誤解を避けるべきである。

2016-02-25 2015年
■ 判決分類:特許権

I 特許無効審判請求の証拠が外国語文書で、文書全部を全般的に考慮する必要がある場合、全文の翻訳を要求し、誤解を避けるべきである。

■ ハイライト
特許無効審判の証拠が外国語文書である場合、専利法施行細則第3条第2項、行政訴訟法第121条第1項第2号の規定に従い、無効審判請求人に対し、中国語翻訳文を提出するよう命ずるが、その争点の所在となる部分の翻訳文の翻訳を特に正確に行うことを要求しなければならず、また、その正確性に疑義があるかをさらに詳細に解明すべく、案件の書類全体を全般的に考慮する必要がある場合、偏見に基づいた間違った前提が用いられて誤った結論が導き出されることによる誤解を避けるため、全文の翻訳文を提出するよう要求しなければならない。次に、進歩性の審理について、無効審判の各証拠を組み合わせて判断することが可能だが、ただし、解決しようとする課題、技術分野が同一または関連しているか否かだけでなく、組合せに関する教示、示唆または動機付けの有無などをも考慮すべきであり、そうして、その組合せが当該発明の属する技術分野において通常の知識を有する者にとって容易に想到し得るか否かを総合判断することが可能となる。

II 判決内容の要約

最高行政裁判所判決
【裁判番号】104年度判字第78号
【裁判期日】2015年02年12日
【裁判事由】特許無効審判請求

上告人 台達電子工業股份有限公司
被上告人 経済部知的財産局
参加人 元山科技工業股份有限公司

上記当事者間の特許無効審判の件について、上告人が2014年1月8日知的財産裁判所102年度行専訴字第84号行政判決に不服のため、上告を提起した。当裁判所は以下の通り判決を下す。

主文
原判決を破棄し、知的財産裁判所に差し戻す。

一 事実要約
上告人は2005年12月2日に「ファン及びステータ構造の製造方法」(以下係争特許という)をもって被上告人に特許出願し、被上告人の審査の後第94142387号として査定され、第I265666号特許証書を付与された。参加人元山科技工業股份有限公司(以下元山公司という)は当該特許が査定時の専利法第22条第1項第1号及び第4項の規定に違反したとして、これに対して無効審判を請求した。上告人が2009年8月20日に係争特許請求の範囲訂正本を提出したが、審査の上、被上告人は訂正不許可とし、元の公告に基づいて審理し、係争特許が査定時の専利法第22条第1項第1号及び第4項の規定に違反したので、2010年4月12日(99)智専三(二)04099字第09920233130号特許無効審判審決書をもって「無効審判成立、特許権を取り消さなければならない」旨の処分とした。上告人が不服のため、訴願を提起したが、経済部は2010年10月28日経訴字第09906063490号訴願決定書で「原処分取り消し、原処分機関が改めて適法の処分をする」旨の決定を下した。その後被上告人の再審理の期間において、上告人が2010年12月10日に係争特許請求の範囲の訂正本を提出したところ、知的財産局は訂正を許可して別途に公告し、被上告人が係争特許2010年12月10日付特許請求の範囲の訂正本に基づいて審理した結果、2012年12月10日(101)智専三(二)04099字第10121397980号特許無効審判審決書でやはり「無効審判成立、特許権を取消すべきである」(以下原処分という)として特許権を取消した。上告人はこれを不服とし、訴願を提起したが、経済部の審理のうえ、2013年1月23日に経訴字第10206101610号決定で棄却されたので、行政訴訟を提起した。原審は職権により元山公司に被上告人の訴えに参加するよう命じてから、上告人の訴えを棄却したが、上告人は不服のため、本件上告を提起した。

二 両方当事者の請求内容
(一)上告人の主張:原判決を破棄し、原訴願決定及び原処分を取消すよう請求する。
(二)被上告人の主張:上告を棄却するよう請求する。

三 本件の争点
係争特許出願の範囲1-23項には新規性及び/又は進歩性があるか否か。

(一)上告人主張の理由:省略。判決理由の説明を参照。
(二)被上告人主張の理由:省略。判決理由の説明を参照。

四 判決理由の要約
無効審判請求の証拠が外国語文書である場合、専利法施行細則第3条第2項、行政訴訟法第121条第1項第2号の規定に従い、無効審判請求人に対し、中国語翻訳文を提出するよう命ずるが、その争点の所在となる部分の翻訳文の翻訳を特に正確に行うよう要求しなければならず、また、その正確性に疑義があるかをさらに詳細に解明すべく、案件の書類全体を全般的に考慮する必要がある場合、偏見に基づいた間違った前提が用いられて誤った結論が導き出されることによる誤解を避けるため、全文の翻訳文を提出するよう要求しなければならない。

新規性の部分について、証拠2日本「ブラシレスファンモーター及び製造方法」の明細書の記載によると、その特許請求の範囲に請求項の合計数は4項であり、請求項4は請求項1~請求項3に係るモーターの製造方法である。原判決において、第1カバーは第1模型に相当するものであると認められたが、しかし、その日本語訳が「第1モールド型」である場合に、その中の「モールド型」のより正確な翻訳用語は「金型」であるか否か?当該用語の日本語の語義が器具部品を製造するための型であるか否かだけでなく、成形完了後、原則として取り外し可能な型であるか否か?もし肯定するなら、上告人が原審において主張した証拠2の「第1モールド型」、「第2モールド型」をシリコンの固定成型後に取り外す必要があるので、採用不可と言えるか否か?上告人と参加人とが争論している以上、原審においてこの部分の日本語の用法についても調査・探究して正確に認定する必要がある。またこの他に、参加人が証拠2を無効審判の証拠としたため、当該特許明細書も全体観察してそれが使用する「モールド型」の語義を究明するが、原審においては参加人が提出した当該明細書の段落【0006】、【0018】【0024】、【0025】、【0027】など、及びその特許請求の範囲の請求項4に係る方法の発明の一部の内容についての翻訳だけを以って、証拠2に関連する特許請求の範囲及びその他の説明内容についての翻訳文の提出要求をしていないので、当該引用文献にモーターの防水性能についての問題を解決するためにある技術的特徴を全体的に考慮することができていない。原判決においては、証拠2の発明は模型を取り外さなくても、それに相応の技術的特徴があるか?についての考えが不十分であり、例えば、その模型の形状、材質及びそれに部品の配置を場合に応じて調整する必要があるか否かを判定し、モーターの固定子と回転子との間に適宜隙間が存在すれば、正常に稼働させることができると共に、係争特許の第1カバーが具備している作用効果などを発揮させることができ、また、証拠2の模型を取り外すかどうかはあくまでも自由に選択できる事項にすぎないと認定し、証拠2がすでに係争特許の全ての技術的特徴を開示していることを以って、係争特許は新規性を欠くと判断したことは、経験法則及び論理法則に反していないと言い難く、原判決に法令違反があると指摘した上告理由は、根拠がないものではない。

進歩性の部分について、証拠4は、日本特開0000-000000号特許明細書であり、参加人は、「発明の詳細な説明」の欄の次の段落【0020】、【0021】についての中国語翻訳文しか提出せずに、その明細書に記載の発明の名称、目的、その解決手段及び関連の特許請求の範囲についての翻訳文を提出していないので、誤解が生じやすく、かつこの提出した翻訳文自体も誤謬があり、原判決の事実認定に影響を及ぼしたことは明らかである。原判決は、証拠4の模型樹脂22が前記模型固定子15の内部に注入されて絶縁構造を形成すると認定したが、実際にこれは証拠4の記載と一致しない点があり、即ち、認定事実と証拠との間に不一致があるので、法令に違反すると見なした。

本件は、無効審判の審理段階から、被上告人から無効審判請求人(即ち、参加人)に対して正確な中国語翻訳文の提出要求をしていないので、無効審判の成立の審決、訴願決定及び原判決のいずれも誤った引証事実に基づいてなされたもので、かつその判断基準を動揺させるのに十分であり、その結論を自分の期待通りに正確に導き出すことができないと考えられる。またこの他に、進歩性の審理について、無効審判の各証拠を組み合わせて判断することが可能だが、ただし、解決しようとする課題、技術分野が同一または関連しているか否かだけでなく、組合せに関する教示、示唆または動機付けの有無などをも考慮すべきであり、そうして、その組合せが当該発明の属する技術分野において通常の知識を有する者にとって容易に想到し得るか否かを総合判断することが可能となり、イノベーションの奨励と知的財産権の保護が図られることを、ここで併せて明示すべきであろう。

以上をまとめると、原判決では以上述べたとおりの適用法規が不当であるという法令違背があるほか、判決結果にも影響があったので、上告人がそれに基づいて原判決が違法であると指摘し、取消すよう請求したことは理由がないとはいえない。但し、本件事実はまだ明確になっていないので、当裁判所も判決できないため、原判決を取消し、知的財産裁判所に差戻し、適法の判決を別途に下すべきである。

以上を総じて論結すると、本件上告には理由がある。知的財産案件審理法第1条及び行政訴訟法第256条第1項、第260条第1項により、主文のとおり判決を下す。

2015年2月12日
最高行政裁判所第六法廷
審判長裁判官 林茂権
裁判官 林樹埔
裁判官 楊惠欽
裁判官 姜素娥
裁判官 許金釵
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