無効審判手続きは公衆審査のため、特許出願手続きとは異なり、異なる認定結果であっても矛盾ではない
2016/03/29 | 2015年 前のぺージに戻る    
■ 判決分類:特許権

I 無効審判手続きは公衆審査のため、特許出願手続きとは異なり、異なる認定結果であっても矛盾ではない

■ ハイライト
当事者は特許取消案件において、一部の無効審判証拠は係争特許出願時にすでに斟酌されていた先行発明の一部であり、無効審判手続きでは異なる審決がなされたことには前後に矛盾があると強く主張した。しかしながら無効審判の手続きは公衆審査手続きであり、特許出願手続きとは異なる。よって異なる認定結果が矛盾に該当するとは認められない。況してや上訴人が出願手続きにおいて斟酌された先行発明と無効審判手続きにおいて斟酌された先行発明は完全に同じものではなく、無効審判手続きにおいてその他の証拠の組合せを加えてもよく、一概に論じることはできない。

II 判決内容の要約

最高行政裁判所判決
【裁判番号】104年度判字第59号
【裁判期日】2015年1月29日
【裁判事由】特許無効審判

上訴人 田○蓉
被上訴人 経済部知的財産局
参加人 丞漢実業股份有限公司

上記当事者間における特許無効審判事件について、上訴人は2014年6月19日知的財産裁判所103年度行専訴字第20号行政判決に対して上訴を提起し、本裁判所は次のとおり判決する。

主文
上訴を棄却する。
上訴審の訴訟費用は上訴人の負担とする。

一 事実要約
訴外人の田林○梅が2008年4月30日発明特許「安全ティーポット(原文:安全沖泡壼)」(請求特許の範囲計6項)の登録を出願し、被上訴人が第97115844号として審査した。その後、田林○梅が係争特許権を上訴人に譲渡し、2010年3月12日被上訴人に対して移転登録申請を行った。係争特許出願案はその後被上訴人によって特許登録が許可され、発明第I342759号特許証(以下「係争特許」)が発給された。さらに参加人は係争特許が登録許可時の専利法(訳注:日本の特許法、実用新案法、意匠法に相当する)第22条第4項及び第23条に違反しているとして無効審判を請求した。本件を被上訴人が審理した結果、係争特許には登録許可時の専利法第22條第4項規定違反があると認め、2013年9月18日(102)智専三(一)02060字第10221270420号無効審判審決書を以って「請求項1乃至6は無効成立により(登録を)取り消すべきである」との処分を下した。上訴人はこれを不服として、順番に行政訴願と行政訴訟を提起したが、いずれも棄却され、その後本件上訴を提起した。

二 両方当事者の請求内容
(一)上訴人:原処分と訴願決定をいずれも取り消すことを請求する。
(二)被上訴人:上訴の棄却を請求する。

三 本件の争点
諸証拠の組合せで係争特許が進歩性を有しないことを証明できるか否か。
(一)上訴人の主張理由:省略。判決理由の説明を参照。
(二)被上訴人の答弁理由:省略。判決理由の説明を参照。

四 判決理由の要約
(一)上訴人は、係争特許の請求項1の主な技術的特徴は、(a1)本体部(10)があり、該本体部の底部に貫通孔(11)が設けられ、かつ貫通孔(11)にはスリーブ部(12)が設けられていること、(a2)カバー(15)が本体部に枢接され、かつガイド板(152)を有すること、(a3)係合盤(40)が可動構造によって本体部の下方に設けられていること、(a4)突縁(13)が本体部下方の周囲に伸びて設けられており、その直径は係合盤よりも大きく、若干の板状脚部(133)が設けられていることであり、さらに係争特許の請求項2乃至6(従属項)の主な技術的特徴は、(b1)請求項2の「フィルター上部に気孔が設けられたエアパイプを有する」という技術的特徴、(b2)請求項3の「スリーブ部に開けられた孔の外周(の定められた位置)に溝部が設けられて円形壁を形成している」という技術的特徴、(b3)請求項4の「カバーに換気のための孔が設けられている」という技術的特徴、(b4)請求項5の「取っ手に支持部が設けられ、枢軸を貫通させて設置することによりカバーに枢接できる」という技術的特徴、(b5)請求項6の「フィルターの下方に固定部が設けられ、かつその中に止水部品を配置することができる」という技術的特徴であると主張している。上訴人も引例1(即ち2001年8月21日公告第451676号「水圧と重力を利用した吐水/止水の自動制御構造(追加四)(原文:運用水壓及垂體重力原理之自動出水、止水控制構造(追加四)」特許案)にはすで(係争特許)請求項1の(a1)、(a3)技術的特徴、及び(a2)、(a4)の一部の技術的特徴が開示されており、引例2(即ち証拠3である2002年3月11日公告第479500号「ティーポットの自動吐水構造の改良(原文:沖泡器之自動出水構造改良)」特許案)にはすでに係争特許の(a1)、(a2)及び(a3)技術的特徴が開示されており、証拠4(即ち2008年3月16日公開第200812531号「流量制御機能を有する構造(原文:具流量控制功能之結構)」特許案)には係争特許(b1)、(b5)の技術的特徴が開示されており、証拠5(即ち2004年6月21日公告第595404号「気体対流を利用した旋回式ティーポット構造(原文:運用氣體對流之翻轉式沖泡器構造」」特許案)には(b3)の技術的特徴が開示されていることを認めている。ただし、上訴人は引例1には(a2)、(a4)における中「カバーがガイド板を有すること」と「突縁が若干の板状脚部を有すること」等の技術的特徴が開示されておらず、引例2には係争特許(a4)のいかなる技術的特徴も開示されておらず、証拠4には(a1)乃至(a4)という係争特許すべての技術的特徴が開示されておらず、証拠5には(a1)乃至(a4)のすべての技術的特徴が開示されておらず、よって証拠4に証拠2(即ち2000年9月11日公告第405392号「水圧と重力を利用した吐水/止水の自動制御構造(追加三)(原文:運用水壓及垂體重力原理之自動出水、止水控制構造(追加三))」特許案)、証拠3を組み合わせて係争特許(a1)乃至(a4)の技術的特徴を開示することはできず、証拠5を証拠2、3と組み合わせても係争特許(a1)乃至(a4)の技術的特徴を開示することはできないと考える云々と主張している。

(二)しかしながら調べたところ、証拠2にはカバーがガイド板を有することが開示されていないと上訴人が主張する部分については、すでに証拠3図2においてカバー(12)の枢接部に近いところに開示され、証拠2特許明細書第5頁第7行最後にある記載には係争特許請求項1の本体部下方の周囲に伸びて設けられている突縁が開示され、該突縁の直径は係合盤よりも大きく、若干の板状脚部が設けられており、カバーを係合盤から隔離できるという特徴が開示され、同時に係争特許が主張する安定してティーポットを支える効果も開示されている。係争特許の突縁と板状脚部は証拠2の突縁に孔を空けているか否かという外見上の簡単な変更にすぎず、この変更は技術上想到し難い大きな進歩ではない。また証拠2のリングは係争特許の係合盤に相当し、このことから係争特許請求項1の技術的特徴はすでに証拠2又は証拠3に開示されており、証拠2、3と係争特許はいずれもティーポットの分野に属するため、同分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」)が係争特許でいうところの先行技術の問題点を改良しようとするならば、証拠2、3を参考とした後、組合せの可能性と動機付けを有する。係争特許の請求項2は請求項1に従属する従属項で、その従属する技術的特徴はフィルターが気孔の設けられたエアパイプを有することである。これは証拠2又は3には見られないが、証拠4図2には柱体(121)と孔(122)の設計がみられ、証拠4もすでに係争特許請求項2の技術的特徴を開示していることが十分に分かる。また係争特許請求項3も請求項1に従属する従属項で、その従属する技術的特徴はスリーブ部に開けられた孔の外周の定められた位置に溝部が設けられて円形壁を形成していることである。これも証拠2の図4、図5における止水体(36)上の環形槽(362)と環形薄片(363)に見られている。また係争特許請求項4は請求項1に従属する従属項で、その従属する技術的特徴はカバーに(換気のために)孔が設けられていることである。これは証拠2又は証拠3には見られないが、証拠5図1では上蓋(20)に気孔(24)を有する特徴が見られ、すでに係争特許請求項4の技術的特徴が開示されていることが分かる。さらに係争特許請求項5も請求項1に従属する従属項で、その従属する技術的特徴は本体部の一方に取っ手があり、取っ手に支持部が設けられ、枢軸を貫通させて設置することによりカバーに枢接できることである。この部分は証拠2図1に開示されている取っ手(31)、枢接柱(32)に枢軸を貫通させて該カバー等の構造部品を枢接することができることが分かる。係争特許請求項6も請求項1の従属項であり、その従属する技術的特徴はフィルターの下方に固定部が設けられ、かつ止水部品をフィルターの固定部内に配置できることである。この部分も証拠4図10の延長部(131b)に対応する位置に見られている。本件係争特許の各請求項に開示されている技術的特徴はすでに無効審判証拠にそれぞれ開示されており、無効審判証拠と係争特許はいずれもティーポットの分野に属し、その製造と設計はほとんど同じである。係争特許と上記無効審判証拠等の先行技術との間における技術の差異は大きくなく、当業者であれば、係争特許が解決すべき先行技術の課題を解決する手段を考える時、無効審判証拠が開示する技術的特徴を参照した後、係争特許が開示する技術的特徴(解決方法)を容易に想到できる。上訴人が主張するところの一部の無効審判証拠の発明者が上訴人の前の特許権者であることについては、該部分の無効審判証拠が証拠として適格であるかどうかとは関わりない。又、上訴人は、一部の無効審判証拠が係争特許出願時においてすでに斟酌されていた先行発明の一部であり、無効審判手続きが異なる審決を行うことは前後の矛盾がある云々と主張している。しかしながら調べたところ、無効審判の手続きは公衆審査手続きであり、特許出願手続きとは異なる。よって異なる認定結果が矛盾に該当するとは認められない。況してや上訴人が出願手続きにおいて斟酌された先行発明と無効審判手続きおいて斟酌された先行発明は完全に同じものではなく、無効審判手続きにおいてその他の証拠の組合せを行ってもよく、一概に論じることはできない。また上訴人が上訴を提起した時、原審は係争特許がさらに保温機能と美観効果を有することを無視したと主張したが、調べたところ、この部分は上訴人が係争特許を出願したとき保護を請求した効果又は改良したい先行発明の課題ではなく、斟酌する必要はない。上訴人の主張には理由はない。

(三)したがって原審が係争特許の請求項1乃至6はいずれも当業者であれば先行技術を運用して容易になし得るもので、進歩性を有せず、且つ本件は単一の無効審判案件であり、一事不再理原則を適用する余地はなく、被上訴人が本件特許の無効審判案件について「無効成立により取り消すべきである」との審決を行ったことに誤りはなく、訴願決定を維持したことも法に合わないところはない。これにより上訴人の原審における請求を棄却することは、上記説明により法に合うものである。上訴人の上訴趣旨は原審がすでに審理した事項を再び主張しているにすぎず、原判決が法令に違背しているとして、(原判決を)取り消して判決を翻すよう請求したことには理由がなく、棄却すべきである。

2015年1月29日
最高行政裁判所第二法廷
裁判長 劉鑫楨
裁判官 呉慧娟
裁判官 蕭忠仁
裁判官 劉穎怡
裁判官 汪漢卿