進歩性判断の基準となる先行技術は無効審判請求人が証拠として提出した引用文献だけではなく、特許出願前の当業者が有する通常の知識も該当
2017/02/22 | 2016年 前のぺージに戻る    
■ 判決分類:専利権(特許権)

I 進歩性判断の基準となる先行技術は無効審判請求人が証拠として提出した引用文献だけではなく、特許出願前の当業者が有する通常の知識も該当

II 判決内容の要約

最高行政裁判所判決
【裁判番号】105年度判字第41号
【裁判期日】2016年1月28日
【裁判事由】発明特許の無効審判請求

上訴人 旭泰玻璃纖維股份有限公司(Hsu Tai Glass Fiber Co., Ltd.)
被上訴人 経済部知的財産局
参加人 千瑜耐火材料科技有限公司(Chian Yu Technologies Company Ltd.)

主文
上訴を棄却する。
上訴審の訴訟費用は上訴人の負担とする。

一 事実要約
上訴人は2007年10月26日「矽耐板(SiNice fireproof board)の製造方法及びその製品」を以って被上訴人に発明専利(訳注:以下「特許」)の出願を行った。その請求は計8項目であった。被上訴人は第96140165号審査と番号をつけて審査を行い、上訴人は2011年8月19日に明細書の「補正本(補正資料)」を提出して、さらに発明名称を「矽耐板の製造方法」に補正し、補正後の請求項を計6項目とした。被上訴人は該補正資料に基づいて審査を行った結果、2012年2月23日に許可査定を行い、発明第I361798号専利証書(以下「係争特許」)を発給した。その後参加人は係争特許には許可時の専利法(訳注:専利法は日本の特許法、実用新案法、意匠法に相当)第23条、第31条第1項前段及び第22條第4項規定に違反しているとして、これに対して無効審判を請求した。被上訴人が審理した結果、係争特許が同法第22条第4項規定に違反していると認め、2014年2月26日に(103)智專三(五)01021字第10320266830号専利無効審判審決書を以って「請求項1乃至6の無効審判請求成立による取消し」の処分を言い渡した。上訴人はこれを不服として、手続きを踏んで行政訴訟を提起し、訴願決定及び原処分の取消しを請求した。原審は職権により参加人に被上訴人の訴訟に参加するよう命じ、上訴人の原審における請求を棄却する判決を行った。上訴人はなお不服として、本件の上訴を提起し、原判決の取消しを請求した。

二 両方当事者の請求内容
上訴人の起訴主張:
被上訴人は係争特許の請求項1の工程を分解し、一つずつ証拠3乃至証拠5に対応させており、それらの工程間における順序に係る関連性の有無を考慮しておらず、また係争特許と対応する証拠との相違点が先行技術のどこにあるのかについては指摘せず、直接係争特許の請求項1はその発明の属する技術分野における通常の知識を有する者(当業者)にとって容易になし得るものであり、進歩性を有さないと認定しているが、これは審査基準第二篇第三章3.3の進歩性の認定原則に違反しており、係争特許の明細書の内容が順序を踏んで、簡単なものから複雑なものへと移行することにより生じる後知恵でもある。よって係争特許請求項1は先行技術に対して容易になし得るものではなく、進歩性を有する。係争特許請求項4は請求項1をさらに5%~10%のノボラック樹脂を含む接着剤で限定するもので、これも進歩性を有する。係争特許請求項1に従属する請求項2、請求項3並びに請求項4に従属する請求項5、請求項6もまた進歩性を有する等々。

被上訴人は、上訴人の請求を棄却するよう請求する。

三 判決理由の要約
本裁判所は、本件被上訴人が2012年2月23日に係争特許を許可査定したため、係争特許の特許権を取り消すべき状況の有無については、許可査定時に適用された2010年8月25日改正公布、2010年9月12日施行の専利法(以下「許可時の専利法」)規定に基づいて判断すべきである。自然法則を利用した技術思想の創作であり、かつ産業上利用することができる発明は許可時の専利法第21条、第22条の規定に基づき特許の取得を出願できる。また発明において第22条第1項に掲げられる特許を受けることができない状況がなくても、当業者が出願前の先行技術に基づいて容易になし得るときは、特許を受けることはできないと、同法第22条第4条に規定されている。さらに上記規定に違反があるときは、何人も証拠を提出して無効審判を請求することができ、特許主務機関はその特許権を取り消すよう審決できると、同法第67条第1項第1号、第2項後段に規定されている。ゆえに特許は無効審判請求人が無効審判を請求してそれが進歩性を有しないことを証明したならば、特許主務機関は請求成立を決定し、その特許権を取り消す審決を行わなければならない。
係争特許の「積棉輸送(集積・搬送)」は後続の「軋針(ニードルパンチ)」を行うために不織布繊維を所望の厚みになるまで繰り返して積み重ねる工程である。添付資料1、添付資料2は繊維を梳綿してシートとし、所望の厚みになるまで繰り返して積み重ねており、それらの工程はいずれも繊維を平均的に散布するもので、係争特許の技術手段はそれらに類似しているか、または簡単な変更があるかに過ぎない。原判決は添付資料1、添付資料2にはすでに、「開棉(オープニング)」、「梳棉(カーディング)」、「疊棉(クロスラッピング)」、「軋針(ニードルパンチ)」等の流れ作業が明確に説明されており、通常の不織布製作に関する技術手段を証明するのに十分であるため、当業者であれば、繊維を断熱材料又は防火材料に応用する技術的課題に直面したときに、無効審判証拠の技術内容に基づいて証拠3、証拠4、証拠5を組み合せて係争特許出願時の通常の知識を参酌する動機付けがあり、係争特許の発明を容易になし得るため、審理した結果、論理法則、経験則に反するところはないと認めた。
また許可時の専利法第67条規定によると、同法第22条規定に違反した場合、特許主務機関は無効審判又は職権に基づいてその特許権を取り消すことができるため、特許無効審判事件において行政裁判所は本来処分権主義に基づき係争特許を取り消すべきか否かを判断するときに無効審判請求人が主張する請求理由とそれが提出する証拠のみで審理すべきである。しかしながらこれは裁判所の審理において、無効審判の証拠以外に、同一の基礎となる事実に関連する補助証拠についてさらに調査してはならないということではない。いわゆる特許行政訴訟には産業の発展を促進するという公益の目的が含まれており、特許権を取り消すべきか否かは私利に係わる考慮に限定すべきではない。補助証拠は元来ある無効審判証拠の証拠能力又は証明力を補足するのに用いられる。もし無効審判証拠の信頼性がなお足りず、裁判所が明確な心証を得られないならば、公益に係わる考慮に基づき、裁判所は真実を発見するために無効審判証拠と関連性がある補助証拠を職権に基づいて調査してはならないということはない。さらに進歩性の判断は前述の許可時の専利法第22条第4条規定により、当業者が引用文献に開示される先行技術に基づき、出願時の通常の知識を参酌して、該先行技術の転用、置換、変更又は組合せなどの方法を用いて係争特許を容易になし得るか否かで判断する。よっていわゆる先行技術は請求人が証拠として提出した引用文献のみに限らず、係争特許出願前に当業者が有する通常の知識も含まれる。
審理したところ原審は繊維技術分野の専門知識の角度から、同一の無効審判証拠(証拠3、証拠4及び証拠5)の範囲において、職権により調査した証拠に基づき、事前に心証を公開して当事者に弁論させた。前述の規定及び説明からみて、法に合わないところはなく、上訴人が主張する現行専利法第57条第1項及び行政訴訟法第125条第1項、第133条の規定違反はないといえる。添付資料1、添付資料2が職権により調べて知りえた新たな証拠であるため原判決は法令に違背していると上訴趣旨では指摘されているが、いずれも採用するに足りない。

以上の次第で、本件上訴に理由はない。智慧財產案件審理法(知的財産案件審理法)第1条及び及行政訴訟法第255条第1項、第98条第1項前段に基づき、主文のとおり判決する。

2016年1月28日
最高行政裁判所第三法廷
裁判長 藍獻林
裁判官 林文舟
裁判官 姜素娥
裁判官 胡國棟
裁判官 許金釵