進歩性の判断は特許出願に係る発明全体を対象とすべきであり、引用発明の効果の優劣で論断するものではない。
2017/07/24 | 2016年 前のぺージに戻る    
■ 判決分類:特許権

I 進歩性の判断は特許出願に係る発明全体を対象とすべきであり、引用発明の効果の優劣で論断するものではない。

原告は「遠心型ファン(原文:離心式風扇)」を以て被告(知的財産局)に特許を出願したが、被告が審査した結果、特許は付与されなかった。原告はこれを不服として行政訴願を提起したが、経済部に棄却されたため、知的財産裁判所に行政訴訟を提起した。 

知的財産裁判所は判決において次のように指摘した。
進歩性審査の判断対象は係争発明全体であり、引用発明の効果の優劣で論断するものではない。係争発明の属する技術分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」)が引用文献1に開示される技術内容に基づいて出願時における通常の知識を参酌したとき、係争発明は先行技術を調整して容易になし得るものであると認定できる。引用文献1は障害が形成されて空気吸入量が低下するため効果が劣ると原告は主張しているが、これは係争発明の進歩性を論断する依拠とはならない。引用文献1と引用文献2の組合せは係争発明請求項1の進歩性欠如を証明するに足る。被告が本件の特許出願案件に対してなした「特許を付与すべきでない」(拒絶査定)という処分は違法ではない。

II 判決内容の要約

知的財産裁判所行政判決
【裁判番号】105年度行專訴字第36号
【裁判期日】2016年9月29日
【裁判事由】特許出願

原告 台達電子工業股份有限公司(DELTA ELECTRONICS, INC.)
被告 経済部知的財産局

上記当事者間における特許出願事件について、原告は経済部2016年3月23日経訴字第10506302820号訴願決定を不服として行政訴訟を提起した。当裁判所は次のように判決する。

主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。

一 事実要約
原告は2011年11月9日に「遠心型ファン(原文:離心式風扇)」を以て被告に特許を出願した(以下「係争発明」)。その特許請求の範囲における請求項は計9項ある。また2014年3月11日に補正が提出された。被告が審査した結果、特許は付与されなかった(拒絶査定がなされた)。原告はこれを不服として、2014年9月2日に再審査を請求して、補正を提出した。被告は2014年9月2日の補正内容に基づいて審査した結果、特許を付与できない状況(拒絶理由)があると認め、原告に補正又は応答するよう通知した。原告は再び2015年8月12日に補正を提出した。被告は補正を許可し、2015年8月12日の補正内容に基づいて審査した結果、本願は専利法(訳注:特許法、実用新案法、意匠法に相当)第22条第2項規定に違反すると認め、2015年9月30日に(104)智專三(三)05126字第10421328440号再審査拒絶査定書を以て「本願は特許を付与すべきでない」という処分(以下「原処分」)をなした。原告はこれを不服として行政訴願を提起し、経済部2016年3月23日経訴字第10506302820号訴願決定を以て棄却された後、当裁判所に行政訴訟を提起した。

二 両方当事者の請求内容
(一)原告の請求:訴願決定及び原処分を取り消し、被告は第100140875号「遠心型ファン」特許出願案件に特許を付与する(許可査定)処分をなすべきである。
(二)被告の請求:原告の請求を棄却する。

三 本件の争点
引用文献1と引用文献2の組合せは、係争発明請求項1乃至9の進歩性欠如を証明できるか。
(一)原告の主張:省略。判決理由の説明を参照。
(二)被告の答弁:省略。判決理由の説明を参照。

四 判決理由の要約
(一)係争発明は一つのインペラと一つのハウジングを有する遠心型ファンを提供するもので、インペラは一つの軸心と一つのブレードを有し、ハウジングは一つの上ハウジング、一つの下ハウジング、少なくとも一つの凸部及び一つの第一空気吸入口を有し、その中で凸部は上ハウジングと下ハウジングのうち少なくとも一つに設置され、且つブレードの周囲に設置される。第一空気吸入口は上ハウジングに設置され、第一空気吸入口は一つの第一エリアと一つの第二エリアを有し、第一エリアの半径は第二エリアの半径よりも大きい。気流漏れによる圧力低下現象の発生を減らし、さらに空気吸入口のサイズを調整して空気吸入量を増やすことで、最も優れた放熱効果を達成できる。つまり、有効に気流を導入して、気流漏れによる圧力低下現象の発生を減らすという目的を達成するために係争発明が採用する技術的手段とは、上ハウジングと下ハウジングのうち少なくとも一つに凸部を設置し、凸部はブレードの近く、又はブレードと前記上ハウジング又は前記下ハウジングとの間の間隙に設置することである。空気吸入量を有効に増やして、最も優れた放熱効果を達成するという目的を達成するために係争発明が採用する技術的手段とは、第一空気吸入口に一つの第一エリアと一つの第二エリアを設置し、第一エリアの半径を第二エリアの半径よりも大きくすることである。

(二)係争発明の請求項1の技術的特徴は、以下のように分けることができる。つまり、1.遠心型ファンは一つの軸心と一つのブレードを有する一つのインペラと、一つの上ハウジング、一つの下ハウジング、少なくとも一つの凸部及び一つの第一空気吸入口を有し、前記インペラを包み込む一つのハウジングとを有すること、2.その中で前記凸部は上ハウジングと下ハウジングのうち少なくとも一つに設置され、且つブレードの外側に設置されること、3.前記第一空気吸入口は前記上ハウジングに設置され、前記第一空気吸入口は一つの第一エリアと一つの第二エリアを有し、前記第一エリアの半径は前記第二エリアの半径よりも大きいこと、4.その中で前記ブレードと前記上ハウジング又は前記下ハウジングとの間に一つの間隙があり、前記凸部には高さがあり、かつ前記凸部の高さが前記間隙の四分の一よりも大きく、前記ハウジングに複数の凸部があるときは、それら凸部がいずれも前記上ハウジング又は前記下ハウジングに設置されていること、である。

(三)引用文献1の要約には、遠心ファン(原文:離心風扇)であって、前記遠心ファンにはフレームとフレーム内に収納されるスターター及びローターとが含まれ、前記フレームには上板部、底板部及び上板部と底板部を連結する側面部があり、前記上板部と底板部のうち少なくとも一つに空気吸入口があり、前記空気吸入口の周縁にはフレームの内部環に向かって一つの風防壁を設置しているという技術的特徴が開示されている。また引用文献1の図1にはローター40に一つのハブ41と一つのブレード42があると開示されている。その中のローター、ハブ、ブレード、フレーム、上板部、底板部、風防壁及び空気吸入口は、係争発明請求項1のインペラ、軸心、ブレード、ハウジング、上ハウジング、下ハウジング、凸部及び第一空気吸入口を対応しており、係争発明請求項1の「遠心型ファンは一つの軸心と一つのブレードを有する一つのインペラと、一つの上ハウジング、一つの下ハウジング、少なくとも一つの凸部及び一つの第一空気吸入口を有し、前記インペラを包み込む一つのハウジングとを有する」という技術的特徴がすでに開示されている。

(四)引用文献1の図1には、前記風防壁26が前記底板部22に設置されるという技術的特徴が開示されており、係争発明請求項1の「前記凸部は上ハウジングと下ハウジングのうち少なくとも一つに設置される」という技術的特徴がすでに開示されている。ただし引用文献1図3に、風防壁26は第一ブレード部422の下端と第二ブレード部424の下端の連結部位に相対していることが開示されている。係争発明請求項1の凸部が前記ブレードの外側に設置されているのとは異なる。

(五)引用文献2の図1には、第一ハウジング102の空気吸入口には一つの主空気吸入口104と一つの副空気吸入口106を有し、前記副空気吸入口エリアの半径は前記主空気吸入口エリアの半径が大きいという技術的特徴が開示されている。その中の第一ハウジング、副空気吸入口及び主空気吸入口は、係争発明請求項1の上ハウジング、第一エリア及び第二エリアに対応しており、係争発明請求項1の「前記第一空気吸入口は前記上ハウジングに設置され、前記第一空気吸入口は一つの第一エリアと一つの第二エリアを有し、前記第一エリアの半径は前記第二エリアの半径よりも大きい」という技術的特徴がすでに開示されている。

(六)引用文献1の図3には、前記ブレード42と前記底板部22との間に間隙があり、前記風防壁26には高さがあることが開示されており、さらに引用文献1の明細書8ページには「風防壁26の高さは約1.5mmであり…ブレード42の第一ブレード部422の下端と第二ブレード部424の下端の連結部位が風防壁26の上方に相対しており、風防壁26の上面とは約0.5mmの距離があり、ファンの運転時にブレード42と風防壁26との間に摩擦が生じることを回避するものである」と記載されており、引用文献1には係争発明請求項1の「前記ブレードと前記上ハウジング又は前記下ハウジングとの間に一つの間隙があり、前記凸部には高さがあり、かつ前記凸部の高さが前記間隙の四分の一よりも大きい」という技術的特徴が開示されていることがわかる。ただし、引用文献1では底板部に設置されている風防壁は一つだけであり、係争発明請求項1にある「複数の凸部がいずれも前記上ハウジング又は前記下ハウジングに設置されている」ことは開示されていない。

(七)以上のことから、係争発明請求項1と引用文献1、2との相違点は、引用文献1、2に係争発明請求項1の「凸部がブレードの外側に設置される」、「前記ハウジングに複数の凸部があるときは、それら凸部がいずれも前記上ハウジング又は前記下ハウジングに設置されている」という技術的特徴が開示されていないということである。ただし、有効に気流を導入して、気流漏れによる圧力低下現象の発生を減らすという目的を達成するために係争発明が採用する技術的手段としては、上ハウジングと下ハウジングのうち少なくとも一つに凸部を設置し、凸部はブレードの近く、又はブレードと前記上ハウジング又は前記下ハウジングとの間の間隙に設置するだけでよく、一方、引用文献1の底板部の空気吸入口近くの周縁環に一つの風防壁が設置され、前記風防壁が前記ファン内の高圧気流が空気吸入口から漏れ出ないよう隔てて、空気吸入口から入る気流とファン内の高圧気流が互いに干渉し合うのを軽減し、空気吸入口から空気を吸入しやすいようにしており、両者の技術手段と達成しようとする効果がいずれも同じである。係争発明の前記凸部をブレードの外側に設置することは、引用文献1の風防壁を空気吸入口の周縁(即ちブレードと前記底板部との間隙)に設置して空気の漏れによる圧力低下を軽減するのと同じ効果を有するもので、かつ係争発明の明細書全体に凸部の設置位置のその他の効果が記載されていないため、凸部をブレードの外側に設置するという技術的特徴は、引用文献1の風防壁の設置位置を簡単に調整、変更したにすぎず、当業者であれば容易になし得るものである。さらに複数の凸部の部分については、凸部の数を簡単に変更したもので、構造上の簡単な設計事項に該当し、当業者であれば、引用文献1に開示される単一の凸部の技術的特徴を参酌し、客観的に単一の凸部を複数の凸部に変更することができる。以上をまとめると、引用文献1と引用文献2の組合せは係争発明請求項1の一部の技術的特徴を開示しており、両者の相違点も発明全体で判断すると、自明なものに該当する。

(八)係争発明請求項1と引用文献1、引用文献2とは同じく気流漏れによる圧力低下現象を減らして空気吸入量を増やすという作用を有するため、解決しようとする課題の性質及び効果は実質的に同じである。また引用文献1と引用文献2はいずれも同じく遠心ファンという同じ技術分野に属する発明であり、いずれも作用の関連性を有するもので、当業者であれば引用文献1と引用文献2を組み合わせる合理的な動機付けがあり、係争発明請求項1の技術的特徴を容易になし得るほか、予期せぬ効果ももたらされていない。よって、引用文献1と引用文献2の組合せは係争発明請求項1の進歩性欠如を証明するに足る。

(九)原告は行政訴訟訴状の理由において以下のように主張している。引用文献1の風防壁の位置は気流を垂直に取り入れて前進させるため、すぐに気流ルートに導くことができず、障害が形成され、空気吸入量の減少を招き、さらに進入した気流がブレード全体の仕事を受けておらず、進入した気流の圧力を有効に高めることができずにハウジング内部気圧との気圧差が増大し、気流を戻す駆動力が増大して、気流が戻るのを有効に回避できない。また係争発明はハウジング内部気圧が低い対応する位置に凸部を設けなくてもよく、複数の凸部を配置することで、進入した気流が外部へ戻ることを避けるとともに、気流の進入障害が形成されるのを回避するという優れた効果を上げるのに役立つ云々。ただし調べたところ、次のとおりである。
1.進歩性の判断は特許出願に係る発明の全体を対象とすべきであり、当業者が先行技術に基づき、出願時における通常の知識を参酌して、先行技術を組合せ、調整(簡単な変更)、置換又は転用して特許出願に係る発明をなし得ると認定できるならば、その発明は容易になし得るものであると認定すべきである。よって進歩性審査の判断対象は係争発明全体であり、引用発明の効果の優劣で論断するものではない。係争発明の当業者が引用文献1に開示される技術内容に基づいて出願時における通常の知識を参酌したとき、係争発明は先行技術を調整して容易になし得るものであると認定できることは前述したとおりである。引用文献1は障害が形成されて空気吸入量が低下するため効果が劣るという原告の上記主張は、係争発明の進歩性を論断する依拠とはならず、その主張は採用するに足るものではない。
2.最後に、係争発明請求項1では複数の凸部がいずれも前記上ハウジング又は前記下ハウジングに設定されるという技術的内容のみが特定されており、複数の凸部の形状や排列の状況については特定されていない。その権利の範囲は連続する又は連続しない複数の凸部という状況をカバーできる。断続的に分布する複数の凸部は進入した気流が外部へ戻ることを避けるとともに、気流の進入障害が形成されるのを回避するという優れた効果を有すると原告が主張し、係争発明の効果が引用文献1より優れており進歩性を有する論拠としているが、採用できない。よって係争発明の複数の凸部は、凸部の数量の簡単な変更であると見なすべきであり、構造上の簡単な設計事項に該当し、当業者であれば、引用文献1に開示される単一の凸部の技術的特徴を参酌し、客観的に単一の凸部を複数の凸部に変更することができる。
3.原告はさらに、係争発明に対応する中国特許と米国特許はそれぞれ特許権(CZ000000000B、US0000000B2)が付与されており、わが国は国際特許社会の一員であり、特許の進歩性要件の認定に対して根本的な違いはないはずである云々と主張している。しかし調べたところ、特許要件の判断は各国間で違いがあり、特許制度は本質的に属地主義である。さらに係争発明の外国対応案件が公衆審査制度(例えば異議申立て又は無効審判の制度)でチェックされているか分からず、係争発明の進歩性要件の判断は、わが国の専利法及び関連規定に基づいて判断すべきであり、原告は係争発明の外国対応出願がその他国の審査で特許を取得した事実を以って、係争発明がわが国の特許の進歩性要件を満たすと主張してはならない。

(十)係争発明請求項2は請求項1に直接従属する従属項であり、請求項1の前記ハウジングがさらに一つの空気吹出口を有し、前記上ハウジングと下ハウジングの間に設置されているという従属的な技術的特徴でさらに特定されている。調べたところ、引用文献1の図1にはフレーム20の一方に空気吹出口が設置され、前記空気吹出口は前記上板部21と底板部22の間に設置されている。よって引用文献1はすでに係争発明請求項2の従属的な技術的特徴を開示しており、引用文献1と引用文献2の組合せは係争発明請求2の進歩性欠如を証明するに足る。

(十一)係争発明請求項3は請求項1に直接従属する従属項であり、請求項1の前記軸心が円心であり、前記第一エリアの角度が270度より小さいという従属的な技術的特徴でさらに特定されている。調べたところ、引用文献2の図1から、軸心が円心であり、前記副空気吸入口106の角度が270度より小さいことが明らかに分かる。よって引用文献2はすでに係争発明請求項3の従属的な技術的特徴を開示しており、引用文献1と引用文献2の組合せは係争発明請求3の進歩性欠如を証明するに足る。

(十二)係争発明請求項4は請求項1に直接従属する従属項であり、その請求項1の前記凸部が環状又は円弧状であってもよいという従属的な技術的特徴でさらに特定されている。調べたところ、引用文献1の図1には風防壁26が環状又は円弧状を呈してもよいことが開示されている。よって引用文献1はすでに係争発明請求項4の従属的な技術的特徴を開示しており、引用文献1と引用文献2の組合せは係争発明請求4の進歩性欠如を証明するに足る。

(十三)係争発明請求項5は請求項1に直接従属する従属項であり、請求項1の前記下ハウジングには一つののど部を有するという従属的な技術的特徴でさらに特定されている。調べたところ、引用文献1の図1には前記底板部22にのど部がある。よって引用文献1はすでに係争発明請求項5の従属的な技術的特徴を開示しており、引用文献1と引用文献2の組合せは係争発明請求5の進歩性欠如を証明するに足る。

(十四)係争発明請求項6は請求項2に直接従属する従属項であり、請求項2の前記凸部が前記上ハウジング又は下ハウジングの前記空気吹出口に近い側に設置されるという従属的な技術的特徴でさらに特定されている。調べたところ、引用文献1の図1には、前記風防壁26が環状を呈し、かつ下空気吸入口24bに位置していることが開示されているものの、係争発明の凸部が前記空気吹出口に近い側に位置するという技術的特徴が開示されていない。ただし、係争発明の説明書全体に凸部が前記空気吹出口に近い位置に設置することによる如何なる効果も開示されておらず、係争発明の空気吹出口に対する前記凸部の設置位置が、引用文献1に対する予期せぬ効果を有さない。よって係争発明の凸部が前記空気吹出口に近い側に設置されるという技術的特徴は、引用文献1の風防壁の設置位置を簡単に調整、変更したものにすぎない。さらに引用文献1の図1に前記環状風防壁の一部である円弧部が前記底板部22の前記空気吹出口に近い側に設置されることが開示されており、係争発明請求項6の従属的な技術的特徴に相当するとみなすことができる。よって引用文献1と引用文献2の組合せは係争発明請求6の進歩性欠如を証明するに足る。

(十五)係争発明請求項7は請求項2に直接従属する従属項であり、請求項2の前記凸部が前記上ハウジング又は下ハウジングの前記空気吹出口から遠い側に設置されるという従属的な技術的特徴でさらに特定されている。調べたところ、引用文献1の図1には、前記風防壁26が環状を呈し、かつ下空気吸入口24bに位置していることが開示されているものの、係争発明の凸部が前記空気吹出口から遠い側に位置するという技術的特徴が開示されていない。ただし、係争発明の明細書全体には前記凸部が前記空気吹出口から遠い位置に設置されることによる如何なる効果も開示されておらず、係争発明の空気吹出口に対する前記凸部の設置位置が引用文献1に対する予期せぬ効果を有さない。よって係争発明の凸部が前記空気吹出口から遠い側に設置されるという技術的特徴は、引用文献1の風防壁の設置位置を簡単に調整、変更したものにすぎない。さらに引用文献1の図1に前記環状風防壁の一部である円弧部が前記底板部22の前記空気吹出口から遠い側に設置されることが開示されており、係争発明請求項7の従属的な技術的特徴に相当するとみなすことができる。よって引用文献1と引用文献2の組合せは係争発明請求7の進歩性欠如を証明するに足る。

(十六)係争発明請求項8は請求項1に直接従属する従属項であり、請求項1の前記ハウジングにはさらに一つの第二空気取入口があり、前記下ハウジングに設置されているという従属的な技術的特徴でさらに特定されている。調べたところ、引用文献1の図1には前記フレーム20にはさらに下空気吸入口24bがあり、前記底板部22に設置されている。よって引用文献1はすでに係争発明請求項8の従属的な技術的特徴を開示しており、引用文献1と引用文献2の組合せは係争発明請求8の進歩性欠如を証明するに足る。

(十七)係争発明請求項9は請求項1に直接従属する従属項であり、請求項1の前記ハウジングには二つの空気吹出口があり、それらの空気吹出口はそれぞれ前記ハウジングの両側に設置されているという従属的な技術的特徴で、さらに特定されている。調べたところ、引用文献1の図1には、フレーム20の一方にのみ一つの空気吹出口があり、係争発明請求項9の二つの空気吹出口があり、それらの空気吹出口はそれぞれ前記ハウジングの両側に設置されている部分が開示されていない。両者の相違点は当業者にとって、ハウジングの両側に二つの空気吹出口を設置することにより二面から風を吹き出すことができるという点のみで、これは本質的な固有の機能に過ぎず、予期せぬ効果をもたらしていない。よってハウジングに二つの空気吹出口を設置するという技術的特徴は空気吹出口の数量を簡単に変更したものにすぎず、当業者であれば容易になし得る。よって引用文献1と引用文献2の組合せは係争発明請求9の進歩性欠如を証明するに足る。

(十八)以上をまとめると、引用文献1と引用文献2の組合せは係争発明請求項1乃至9の進歩性欠如を証明するに足る。被告が本件の特許出願案件に対してなした「特許を付与すべきでない」(拒絶査定)という処分は違法ではなく、(原処分を)維持する訴願決定も法に合わないところはない。

以上の次第で、本件原告の請求には理由がなく、智慧財産案件審理法(知的財産案件審理法)第1条、行政訴訟法第98条第1項前段により、主文のとおり判決する。

2016年9月29日
知的財産裁判所第二法廷
裁判長 李維心
裁判官 蔡如琪
裁判官 彭洪英