美容医療商標訴訟でDR.WUがDR.HUに勝訴 両商標は外観と呼称で混同し易く、DR.HUに敗訴判決

2016-02-25 2015年
■ 判決分類:商標権

I 美容医療商標訴訟でDR.WUがDR.HUに勝訴
   両商標は外観と呼称で混同し易く、DR.HUに敗訴判決

■ ハイライト
「DR.HU」と「DR.WU」との美容医療商標訴訟において、裁判所は中国語の「胡」と「吳」を識別するのは難しくないが、アルファベットにすると「H」と「W」の一字しか違いがなく、類似の商標となり、一般消費者は混同しやすいため、類似の程度が低くはなく、先に登録し、かつ知名度がより高い「DR.WU」が商標権を得るべきだと認定した。
林之林科技股份有限公司(SHINE & HUGO INTERNATIONAL CO., LTD.、以下「林之林公司」)は「胡博士DR.HU」商標の登録を知的財産局に出願し、該局の審査を経て登録を許可された。
しかし達爾膚生醫科技股份有限公司(DR.WU SKINCARE CO.LTD、前身は天昱生物科技股份有限公司、以下「達爾膚公司」)は両商標が極めて類似しており、商標法規定に基づき後から登録を出願した商標は登録を許可されるべきではないとして、林之林公司の「DR.HU」商標(の登録)に対して異議を申し立てた。
知的財産局は、一方が胡博士、もう一方が呉博士なので、消費者は誤認することはないとして、達爾膚公司からの異議申立に対して「異議申立不成立」の処分を下した。
達爾膚公司はこれを不服として行政訴願を提起したところ、経済部訴願委員会は「原処分を取り消し、知的財産局が改めて適法な処分を行う」との決定を下した。林之林公司はこの決定を受けて(知的財産裁判所に)行政訴訟を提起した。
最高行政裁判所は判決書で以下のように指摘している。達爾膚公司の代表者である呉○叡の父親は著名な皮膚科の医師であり、美容医療に30年余り従事し、「DR.WU」ブランドの美容医療用製品を開発してきた。
達爾膚公司は2003年に設立された後、次々と3種類の「DR.WU」商標の登録を許可された他、「DR.WU」シリーズ商標の美容医療用製品を販促、販売してきた。さらに国内外の著名な新聞、雑誌、テレビのメディアで広く報道されメイクアップやスキンケアの専門家からテレビ番組で常々推薦されてきたため、「DR.WU」諸商標はすでに名声が高い著名商標となっている。
商標の外観をみると、「DR.WU」商標のアルファベットはやや大きて太く、一見したときに印象的であるため、消費者が商品の出所を識別する要部であるといえる。
「DR.HU」商標と「DR.WU」商標の要部はそれぞれ「DR.HU」と「DR.WU」であり、「H」と「W」の一字違いで、その全体の外観と称呼はほぼ似ている。一般消費者が時間と場所を異にして隔離的に観察する時、又は実際の取引において一連に呼称する時、明らかに区別が容易ではなく、関連の消費者に誤認混同を生じさせるおそれがある。(2015年3月17日 工商時報 A16面)

II 判決内容の要約

最高行政裁判所判決
【裁判番号】104年度判字第98号
【裁判期日】2015年2月26日
【裁判事由】商標異議

上訴人 林之林科技股份有限公司(SHINE & HUGO INTERNATIONAL CO., LTD)
被上訴人 経済部
参加人 達爾膚生医科技股份有限公司(DR.WU SKINCARE CO.LTD、前身は天昱生物科技股份有限公司)

上記当事者間における商標異議事件について、上訴人は2014年10月30日知的財産裁判所103年度行商訴字第86号行政判決を不服として上訴を提起した。本裁判所は次のとおり判決する。

主文
上訴を棄却する。
上訴審訴訟費用は上訴人の負担とする。

一 事実要約
上訴人は2011年5月4日に経済部知的財産局(以下「知財局」)に対して当時の商標法施行細則第13条に定める商品及び役務区分表第3類のフェイシャルマスク、化粧品等商品での使用を指定し「胡博士DR.HU&DEVICE」商標(以下「係争商標」)の登録を出願し、登録第1531004号商標として登録を許可された。その後参加人は2012年9月19日にそれが所有する第1176996、1276721及び1276722号商標(以下「引用商標」)を以って、係争商標の登録が商標法第30条第1項第10乃至12号の規定に違反しているとして異議を申し立てたが、知財局は審理した結果「異議申立不成立」の処分を下した。参加人はこれを不服として行政訴願を提起したところ、被上訴人は「原処分を取り消し、原処分機関が改めて適法な処分を行う」との決定を下した。上訴人は該訴願決定を不服とし、(知的財産裁判所に)行政訴訟を提起したが請求を棄却されたため、その後本件上訴を提起した。

二 両方当事者の請求内容
上訴人は訴願決定の取消判決を請求する。
被上訴人は上訴人請求の棄却を請求する。

三 本件の争点
「DR.HU」商標は「DR.WU」商標に類似し、関連の消費者に誤認混同を生じさせるおそれがあるか否か。

DR.WU   

四 判決理由の要約
いわゆる「関連の消費者に誤認混同を生じさせるおそれが有る」とは、両商標が同一又は類似を構成しているため、関連する消費者が同一商標であると誤認する、又は同一商標であるとは誤認するには至らないものの、両商標の商品/役務が同一の出所からのシリーズ商品/役務であると誤認する、又は両商標の使用者の間に関連企業、使用許諾関係、加盟関係又はその他これらに類する関係が存在すると誤認する可能性が極めて高いことをいう。
 
調べたところ、上訴人の係争商標は黒い印刷用フォントのアルファベット「DR.HU」と中国語「胡博士」から構成され、中国語部分は黒いベタ塗り枠の中に白い字で配置され、アルファベット部分はその枠の上部に配置され、その中のアルファベット「R」の半円状で中空の部分は白十字の図形で置き換えられ、周知の「医薬」の意味を示すのに使われている。引用商標はそれぞれ登録第1176996号「DR.WU & DRデザイン図」商標、第1276721号「DR.WU及び図」商標及び第1276722号「DR.WU」商標であり、いずれも「DR.WU」の文字が含まれている。その中の登録第1176996号「DR.WU & DRデザイン図」商標は「DR.WU」の文字の左側に黒い円形があり、その内側には90度左に回転した「U」の中に図案化された「W」のデザイン図が配置されている。また登録1276721号「DR.WU及び図」商標は「DR.WU」の文字の上方に黒い四角が置かれ、その内側にはアルファベット「W」があり、さらに該「W」の中央上方には丸い枠で囲まれた「+」の図形が配置されている。ただし前述のとおり引用商標はいずれも顕著な「DR.WU」の文字を有する。よって一般消費者が引用商標を見たならば、「DR.WU」が識別の対象となる。ここで係争商標と引用商標を比較すると、両商標の要部はそれぞれ「DR.HU」と「DR.WU」であり、その中の「DR.」部分が「DOCTOR」の略称であることは国民に周知されており、識別力を有さないため、比較すべき両商標の要部は「HU」と「WU」となる。文字を比較すると、両商標は「H」と「W」というわずか違いにとどまっている。称呼については、両商標ともに「ㄨ(訳注:日本語の「う」に相当する発音記号)」の音を有するため違いは大きくない。よって係争商標と引用商標は全体観察、要部観察、又は呼称部分の比較を問わず、類似を構成しており、類似の程度は低くない。係争商標には黒地に白字の中国語「胡博士」があるが、この部分は文字が外国語部分よりも小さいだけではなく、文字の意味から観察すると、この部分の文字は外国語の直訳であるという印象を与え、外国語部分を一見した時の印象から逸脱していない。よって関連の消費者が係争商標を観察するとき、中国語部分を省略するにはいたっていないものの、外国語を直訳した後に同じ意味をもつ表現であることを理解しているため、係争商標の外国語部分はなお商標の要部である。これにより、本件の係争商標と引用商標の両者は外観、観念又は称呼においていずれも類似しており、関連する消費者に誤認混同を生じさせるおそれがある。
 
係争商標は商品及び役務区分表第3類のフェイシャルマスク、化粧品等商品での使用を指定し、引用商標も商品及び役務区分表第3類の商品であるフェイシャルマスク、化粧品等商品での使用を指定しており、両者が使用を指定している商品及び役務の区分は同一又は高度に類似している。さらに言えば、両者が使用を指定する商品又は役務の対象が同じであり、陳列展示販売の場所(例えばドラッグストア)も同じである。
本件係争商標と引用商標の全体外観と要部は高度に類似しており、使用を指定した商品と役務も高度に類似しているため、関連する消費者に両商標の商品/役務が同一の出所からのシリーズ商品/役務であると誤認させる、又は両商標の使用者の間に関連企業、使用許諾関係、加盟関係又はその他これらに類する関係が存在すると誤認させる可能性がある。
以上の次第で、本件上訴には理由がなく、智慧財產案件審理法(知的財産案件審理法)第1条及び行政訴訟法第255条第1項、第98条第1項前段に基づき、主文のとおり判決する。

2015年2月26日
最高行政裁判所第二法廷
裁判長 劉鑫楨
裁判官 呉慧娟
裁判官 蕭忠仁
裁判官 劉穎怡
裁判官 汪漢卿
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