音楽著作物商用配信の使用料率変更訴訟、知的財産局が敗訴

2015-11-19 2014年
■ 判決分類:著作権

I 音楽著作物商用配信の使用料率変更訴訟、知的財産局が敗訴

■ ハイライト
 わが国の中華音楽著作権協会(以下「MUST」)は一曲の歌曲の商用配信に係る使用料率を0.5新台湾ドルと定めたが、経済部知的財産局の審議の結果、0.3新台湾ドルに変更されため物議を醸した。知的財産裁判所は先日、知的財産局に敗訴の判決を下した。
 知的財産局はMUSTの使用料率に対する(利用人からの)審議申立受理を同局サイトで公告し、中華音楽著作権協会とネット及び有線放送業者37社を集めて意見交流会を開いた後、さらに著作権審議及び調停委員会(以下、「著審会」)に対して幾度にもわたりこの使用料率審議事項に関する諮問を行った。
知的財産局は著審会の審議結果を参考し、関連する要因を斟酌した後、MUSTが元来知的財産局に届け出た改正使用料率を変更した。MUSTはこれを不服とし、順番に行政訴訟を提起した。
 裁判所によると、著審会の委員である楊○村は広播商業同業公会の前任理事長、現任常務理事であり、また著審会の委員である鍾○昌は衛星広播電視事業商業同業公会(衛星テレビ放送事業協会、STBA)の秘書長(事務長)であり、この使用料率に対する諮問、審議又は決議に対して利益の衝突や立場の主観的な判断があり、その決定には偏見があるおそれがあり、知的財産局の行政処分決定に影響しなかったとはいえないという。
 MUSTが定めた使用料率はダウンロードの方式で公開配信する使用料率に対して「商用配信は…関連する売上高から広告収入を差し引いた金額の2.7%又は1曲0.50新台湾ドルのうち、高いものとする」と元来定めていた。
 ところが知的財産局の原行政処分では、「商業配信は…関連する売上高から広告収入を差し引いた金額の2%又は1曲0.3新台湾ドルとする」と変更された。
知的財産裁判所第二法廷の曾啟謀裁判長、陳容正裁判官、熊誦梅裁判官等3人が組織する合議法定は10月9日に判決を下し、裁判所は10月23日判決書を公布した。本件はさらに上訴できる。(2014年10月24日 工商時報 A2面)

II 判決内容の要約

知的財産裁判所行政判決
【裁判番号】102年度行著訴字第7号
【裁判期日】2014年10月9日
【裁判事由】著作権集中管理団体条例

原告 社団法人中華音楽著作権協会(Music Copyright Society of Chinese Taipei、略称MUST)
代表者 陳○融
被 告 経済部知的財産局
代表者 王○花
参加人 台湾酷楽時代股份有限公司
代表者 鄭○卿
参加人 隨身遊戲股份有限公司
代表者 黄○玲
参加人 奧爾資訊多媒体股份有限公司
代表者 杜○璋
参加人 滾石移動股份有限公司
代表者 邱○君
参加人 願境網訊股份有限公司
代表者 簡○一
参加人 環球国際唱片股份有限公司
代表者 張○輝
参加人 雙子星有線電視股份有限公司
代表者 呉○德
参加人 吉隆有線電視股份有限公司
代表者 許○魁
参加人 長德有線電視股份有限公司
代表者 湯○娟
参加人 麗冠有線電視股份有限公司
代表者 湯○娟
参加人 萬象有線電視股份有限公司
代表者 湯○娟
参加人 新視波有線電視股份有限公司
代表者 陳○鵬
参加人 家和有線電視股份有限公司
代表者 陳○鵬
参加人 北健有線電視股份有限公司
代表者 陳○鵬
参加人 三冠王有線電視股份有限公司
代表者 許○魁
参加人 慶聯有線電視股份有限公司
代表者 黃○全
参加人 港都有線電視股份有限公司
代表者 黄○全
参加人 中華民國廣播商業同業公會
代表者 馬○生
参加人 中華民國民營廣播電台聯合會
代表者 馬○生
参加人 陽明山有線電視股份有限公司
代表者 盧○輝
参加人 新台北有線電視股份有限公司
代表者 林○偉
参加人 大安文山有線電視股份有限公司
代表者 盧○輝
参加人 金頻道有線電視股份有限公司
代表者 龔○泰
参加人 全聯有線電視股份有限公司
代表者 廖○凱
参加人 新唐城有線電視股份有限公司
代表者 龔○泰
参加人 北桃園有線電視股份有限公司
代表者 呉○芳
参加人 新竹振道有線電視股份有限公司
代表者 盧○輝
参加人 豐盟有線電視股份有限公司
代表者 盧○輝
参加人 新頻道有線電視股份有限公司
代表者 陳○銘
参加人 南天有線電視股份有限公司
代表者 李○池
参加人 觀昇有線電視股份有限公司
代表者 盧○輝
参加人 凱擘股份有限公司
代表者 呉○章
参加人 中国広播股份有限公司
代表者 趙○康
参加人 博客來数位科技股份有限公司
代表者 林○容
参加人 九太科技股份有限公司
代表者 沈○承
参加人 臺北市数位行銷経営協会
代表者 楊○燊
参加人 台湾網際網路協会
代表者 頼○五

上記当事者間における著作権集中管理団体条例事件について、原告は経済部2013年6月18日経訴字第10206103350号訴願決定を不服として行政訴訟を提起した。当裁判所は参加人に対して被告の訴訟に独立して参加することを命じた。当裁判所は次のとおり判決する。

主文
訴願決定及び原処分はいずれも取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。

一 事実要約
 原告の社団法人中華音楽著作権協会(以下「MUST」という)は著作権集中管理団体であり、著作権集中管理団体条例(以下「集中管理条例」という)第24条第5項規定に基づき、「包括的利用許諾による公開配信(商用配信)の使用料率」(以下「係争使用料率」)を公告し、被告の知的財産局に書面で届け出た。その後参加人等は、その権益が係争使用料率から甚大な影響を受けるとして、それぞれ被告に係争使用料率の審議申立を行った。被告は集中管理条例第25条第2項規定に基づき、係争使用料率に対する審議申立受理を被告サイトで公告し、原告と参加人等を集めて意見交流会を開いた後、さらに集中管理条例第25条第4項に基づき、著作権審議及び調停委員会(以下「著審会」という)に対して幾度にもわたり係争使用料率審議事項に関する諮問を行った。被告は前記著審会の審議結果を参考とし、関連の要因を斟酌した後、集中管理条例第25条第4項に基づき原告が知的財産局に届け出ていた改定の係争使用料率を変更し、審決結果を原告と参加人等に通知した。原告はこれを不服として行政訴願を提起していたが、経済部に棄却されたため、原告はなお不服とし、その後当裁判所に行政訴訟を提起して、訴願決定及び原処分をいずれも取り消すよう請求した。当裁判所が本件訴訟において訴願決定及び原処分は取り消されるべきであると認定した場合、参加人の権利と法律上の利益に損害がもたらされるため、行政訴訟法第42条第1項規定に基づき、職権による決定を以って参加人に対して本件被告の訴訟に独立して参加することを命じた。

二 両方当事者の請求内容
原告の請求:原処分及び訴願決定をいずれも取り消す。
被告の答弁:原告の請求を棄却する。

三 判決理由の要約
 本件被告が法に基づき原告が定めた使用料率の算定基礎、比率又は金額を変更することは、被告の行政裁量範囲であると認められ、被告がいかなる基準に基づいて変更したかは、不確定な法律概念であり、且つ高度な専門性の評定であり、被告の判断余地に該当する。前記釈字の主旨から引証して、被告の行政裁量に裁量の逸脱又は濫用、又は判断に恣意的な濫用とその他の違法な状況が見られない限り、裁量の理論又は不確定な法律概念の見解のいずれを問わず、被告の裁量と判断について、裁判所を含むその他の機関はいずれも尊重すべきであり、自己の裁量と判断を以って、被告の裁量又は判断に取って替えてはならない。よって裁判所は不確定な法律概念の判断余地又は裁量について審理することができるが、審理の密度は行政機関が判断又は裁量を行う際に重大な瑕疵、関連する事実証拠に対する不十分な斟酌、又は関連の無い要因の考慮等の権限の逸脱や濫用の状況が有るか否かについて、合法性の判断を行うことができるのみである。
 被告は集中管理条例第25条第1項の規定に基づき、係争使用料率を審議する権限を有し、集中管理団体又は利用者が被告の審決結果に不服である場合は、いずれも訴願法の規定に基づき訴願を提起することができ、著作権使用料率に関する審議は公権力の行使であることは明らかである。且つ集中管理条例第25条第4項の規定に基づき、被告が使用料率を審議する時、著審会に諮問する必要があり、著審会の審議結果は、被告が原告の定めた使用料率を変更するか否かの重要な参考要因であることは明らかである。著作権法第83条に定められる経済部知的財産局著作権審議及び調停委員会の組織規程に回避規定(行政手続法における公務員の回避規定)が準用されていないが、公権力の公正性への影響を避けるため、且つ行政法上の正当な法律手続きの要件を満たすため、審議事項と利害関係を有する者には、行政程序法(行政手続法)の前記回避規定を類推適用すべきである。原処分に示される正本送達人を参照すると、広播商業同業公会(商用ラジオ放送協会、Commercial Radio Broadcasting Association)が今回の審議申立人であり、即ち原処分の当事者であることが分かり、行政程序法第32条第3号の規定が類推適用される。著審会の委員が以前又は現在該公会の代理人であるならば、自ら回避すべきであり、たとえ自ら回避しなかったとしても、行政程序法第33条第5項の規定を類推適用し、それが所属する主務機関も職権に基づきそれに回避を命じるべきである。調べたところ、広播商業同業公会の前任理事長、現任常務理事である楊○村は現在著審会の委員である。楊○村は回避すべきであったが回避せず、係争使用料率の審議に参加し、主務機関である被告も職権により回避を命じず、上記行政程序法の回避規定に違反しているため、原処分の審議は行政法の正当な法的手続きに違反し、取り消すべき状況がみられる。また、著審会の委員である鍾○昌は原処分の審議、決議又は諮問に参加しており、衛星広播電視事業商業同業公会(衛星テレビ放送事業協会、STBA)の秘書長(事務長)でもある。原処分で処分を受けた九太科技股份有限公司はSTBAの会員であり、公会と会員の関係から、STBAが所属会員の権益を守ることは、その業務の重要な任務で、それと会員は利害関係の共同体であり、共同の権利義務関係を有することが分かり、鍾○昌が原処分で係わった使用料率の審議、決議又は諮問も回避事由を有するもので、主務機関である被告も職権により回避を命じず、行政法の正当な法的手続き原則に違反しており、原処分は違法で不当であるため、取り消すべき状況がみられる。
 行政機関が為す処分又はその他の行政行為は、全ての陳述と事実及び証拠の調査結果を斟酌すべきであり、論理法則および経験法則に基づき事実の真偽を判断しなければならず、その審決結果と理由を当事者に告知しなければならないと、行政程序法第43条に定められている。ただし著審会2012年第14次会議記録の内容をみると、「台湾酷楽時代股份有限公司等の機関が社団法人中華音楽著作権協会(MUST)による公開配信(商用配信)の使用料率案について審議を申し立てた」等と記載されており、該著審会の審議内容は原処分で記載された使用料率と全く同じである。審議結果を被告が最終的に審決する使用料率とできなくはないが、原処分では手続き事項、審議結果が適用されない利用形態、審決しない部分及び原処分添付資料2の対照表に記載された抽象的で、大まかな理由しか説明されていない。例えば理由において日本の集中管理団体である音楽著作権協会(JASRAC)の料金基準を参照したとしているが、なぜ該団体の料金基準を参考したのか、どのように参考したのかについては説明されておらず、かつ被告がなぜ著審会の審議結果を原処分で定める使用料率として採用したかの具体的理由も説明されておらず、被告による審決結果の依拠と具体的理由の説明については言うまでもない。よって原処分は行政程序法の理由説明義務を果たしていないため、取り消すべきである。
 以上の次第で、原告の請求には理由があり、智慧財產案件審理法(知的財産案件審理法)第1条、行政訴訟法第98条第1項前段に基づき、主文のとおり判決する。

2014年10月9日
知的財産裁判所第二法廷
裁判長 曾啟謀
裁判官 陳容正
裁判官 熊誦梅
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