雇用者には競業禁止特約によって保護される利益が存在しなければならず、それは企業経営又は製造技術漏洩の有無、又は固定客或いは供給業者に影響を与えるおそれの有無によって判断すべきである。

2013-12-31 2012年

■ 判決分類:営業秘密・競業禁止

I 雇用者には競業禁止特約によって保護される利益が存在しなければならず、それは企業経営又は製造技術漏洩の有無、又は固定客或いは供給業者に影響を与えるおそれの有無によって判断すべきである。

■ ハイライト
雇用者に競業禁止特約によって保護される利益が存在しなければならないことは、企業経営又は製造技術漏洩の有無、又は固定客或いは供給業者に影響を与えるおそれの有無によって判断すべきであり、単純に競争を避け、将来の顧客を被用者に連れ去られたり、又は単なる被用者の退職を減らすためなどでは、雇用者に保護すべき正当な利益が有るとは言えない。さらに、競業禁止補償金給付の目的は、被用者が競業禁止条約に制限される期間中に提供し、その補償金を相当な生活保障にあてることだが、もし競業禁止条約の補償金が、被用者にまず先に競業禁止条約の制限を受けさせ、やはり本人が保証金を取得できないリスクを負わなければならないのであれば、補償金の金額でも競業禁止補償の目的を達成できないので、被用者は自ずと競業禁止条約の拘束を受けないものである(この内容は法源の情報からのまとめ)。

II 判決内容の要約

台湾高等裁判所民事判決
【裁判番号】100年度労上易字第51号
【裁判期日】2012年9月4日
【裁判事由】違約金の給付

上訴人  広穎電通股份有限公司
被上訴人 劉立祺

前記当事者間の違約金給付事件について、上訴人が2011年1月11日付台湾士林地方裁判所99年度労訴字第70号第一審判決に対して上訴を提起し、本裁判所で2012年8月21日に口頭弁論が終了したので、以下のとおり判決を下す。

主文
上訴を棄却する。
第二審の訴訟費用は上訴人の負担とする。

一 事実要約
被上訴人は2009年5月18日から2010年2月12日まで、上訴人の業務二部のプロジェクトマネージャーとして雇用された際に、係争契約を締結したが、その契約のうち、第15条は競業禁止の約定であり、その約定に違反した場合、無条件で18ヶ月分の月給を懲罰性違約金として支払わなければならなず、被用者も損害賠償を請求することができるというものであった。双方が2010年2月12日に係争契約を終了した後、被上訴人は2010年3月1日に勝麗公司に就職し同年6月4日に退職した。上訴人は被上訴人が係争契約の競業禁止の約定に違反したと主張して、被上訴人が賠償責任を負うべきであり、被上訴人に81万新台湾ドルを支払い及び起訴状の写し送達の翌日から法定遅延利息を加えて計算することを命ずるよう本裁判所に申立てた。だが、被上訴人は否認した。

二 両方当事者の請求内容
(一)上訴人の声明:
1.原判決を破棄する。
2.被上訴人は上訴人に81万新台湾ドル及び起訴状の写し送達の翌日から弁済日まで、年利息5%を加算して支払う。
(二)被上訴人の答弁声明:上訴を棄却する。

三 本件の争点
1.上訴人には競業禁止特約により保護される利益が存在するか。
2.被上訴人の職務及び地位は、前掲の正当な利益を知るものであるか。
3.係争競業禁止条約による、被上訴人の就業対象、期間、区域、職業活動の制限範囲などが合理的であるか。
4.上訴人には、被上訴人の競業禁止による損失を補償する措置があるか及びその措置が競業禁止補償の目的を達成するか。
(一)原告主張の理由:省略。判決理由の説明を参照。
(二)被告答弁の理由:省略。判決理由の説明を参照。

四 判決理由の要約
退職後の競業禁止条約の合理性は、当事者間の利害関係及び社会との利害関係による総合的な利益から判断すべきであり、一般的に認められる競業禁止の有効な要件は少なくとも次の点が挙げられる。1.雇用者に競業禁止特約によって保護される利益が存在しなければならない。2.被用者の職務及び地位が前掲の正当な利益を知るものである。3.被用者の就業対象、期間、区域、職業活動の範囲に対する制限が合理的な範囲を超えてはならない。さらに、被用者の競業禁止による損失を補償する措置の有無、退職後の被用者の競業行為における背信性又は信義誠実の原則違反の事実の有無、などを含む(行政院労働者委員会1990年8月21日台(89)労資二字第0036255号書簡を参照)。営業秘密法第2条の規定によると、「この法律における営業秘密とは、方法、技術、製造工程、プログラム、設計又はその他製造、販売若しくは経営の情報に使われるものであって、且つ下記の要件に該当するものをいう。一、この種の情報に関わる一般の人に知られているものではない。二、その秘密性により、実際的又は潜在的な経済価値を有するもの。三、保有者により秘密保持のための合理的な措置が取られているもの」。いわゆる雇用者に競業禁止特約によって保護される利益が存在しなければならないことについては、企業経営又は製造技術漏洩の有無、又は固定客或いは供給業者に影響を与えるおそれの有無によって判断すべきである。

上訴人は前掲当該種の情報について関わる一般の人に知られているものではないこと、且つその秘密性により、実際的又は潜在的な経済価値を有するものであること、或いは長期取引関係のある特定顧客があることについて、それが事実であることについて挙証していないので、上訴人には係争競業禁止約定による保護される営業秘密またはその他利益の存在があるとは認め難い。また、被上訴人が上訴人会社に就職していた期間に担当した職務及び地位では、競業禁止約定により保護される営業秘密または正当利益を知る筈もない。

さらに、係争契約は、従業員に対して制限する就職対象、区域、職業活動の範囲が一切明確ではなく、抽象的でしかも基準もなく、従業員の労働権を制限しているので、合理的範囲とは言い難い。上訴人はKINGMAX公司との間に、係争競業禁止約定に保護される営業秘密またはその他利益が存在することを証明できず、且つ被上訴人が上訴人の会社に就職していた期間に担当した職務と地位では、競業禁止補償金の給付の目的が、被用者が競業禁止条項に制限される期間において、その補償金を相当な生活保障に充てるものであることを知り得た。係争競業禁止条約の補償金は、被用者にまずさきに競業禁止条約の制限を受けさせ、やはり本人が保証金を取得できないリスクを負わなければならないので、補償金の金額も競業禁止補償の目的を達成できないものである。

以上を総合すると、係争契約で定めている競業禁止約定は合理性を欠いており、無効であるため、被上訴人は係争競業禁止約定の拘束を受けないものである。従って、上訴人が係争契約第17条の約定により、被上訴人は上訴人に対して81万新台湾ドルを支払い及び起訴状の写し送達の翌日から弁済日まで、年利息5%を加算して支払うようにとの請求には根拠がなく、棄却すべきであり、仮執行の申立も根拠がなく、併せて棄却すべきである。原審の上訴人敗訴の判決及びその仮執行の申立の棄却には不合理なこところがない。上訴趣旨が指摘した原判決が不当であり、破棄して改めて判決するべきとの請求には理由がなく、棄却すべきである。

本件の法律関係はすでに明確でありり、双方のその他の主張及び挙証も、本裁判所の判断を妨げるものではないため、ここでは論述をしないことをここに説明しておく。

以上を論結し、本件の上訴に理由がないため、民事訴訟法第449条第1項、第78条に基づき、主文の如く判決を下す。

2012年9月4日
労働法廷
審判長裁判官 湯美玉
裁判官    丁蓓蓓
裁判官    李慈恵
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