各国ともスマート・コックピット分野で戦略強化、台湾のICT産業のビジネスチャンスは無限

　5Gの普及、車車間･路車間（V2X）通信時代の到来、並びにインテリジェント化やパーソナライズ化の需要拡大にともない、次世代自動車産業ではすでに「スマート・コックピット」という概念が生まれている。台湾企業がスマート・コックピットの関する技術発展の動向を掌握できるように、経済部知的財産局は、先日「車載用スマート・コックピット・システムのキーテクノロジー特許に関する動向分析（原文：車輛智慧座艙系統關鍵技術專利趨勢分析）」レポートを発表した。スマート・コックピット・システムのキーテクノロジーと特許出願の動向を整理して、関連産業による研究開発及び市場マーケティングに関する戦略策定のための参考に供することで、ICT技術の開発において豊富な経験を有する台湾企業のために無限のビジネスチャンスを創出できることを期待している。
　知的財産局が発表した前記動向分析レポートは使用者の視点から、スマート・コックピット・システム関連技術を「視覚」、「聴覚」、「エンターテイメント・エクスペリエンス」及び「インテリジェント・インタラクション」に分類して分析されている。以下に要点をそれぞれ示す。
　一、「視覚」関連技術：
　主にヘッドアップディスプレイ（HUD）関連技術について分析を行っている。この分類の技術について特許を出願する国/地域は主に日本、米国及び中国であり、また特許の出願件数は2020年にやや減少したのを除けば、2013年以降いずれも安定して増加傾向にある。2005～2022年の累計特許出願件数について出願人トップ10をみると、伝統的なブランド自動車メーカーや自動車部品サプライヤが多数を占めている。
　二、「聴覚」関連技術：
　主に音声インタラクション、音響入力/出力（訳注：例えば能動型騒音制御装置）及び音響環境関連技術について分析を行っている。この分類の技術について特許を出願する国/地域は主に中国、米国及び日本であり、また特許の出願件数は2011年から増加傾向にあるが、2019年以降徐々に減少している。「聴覚」関連技術は全体的に減少傾向にあるが、各分類技術について見てみると、「音響入力/出力」はなお増加傾向にある。「聴覚」関連技術について2004～2022年の累計特許出願件数を出願人別にみると、トップ3は韓国ヒュンダイ（Hyundai Motor Co.）、日本の三菱電機（Mitsubishi Electric Corp）、米国のフォード（Ford Motor Co.）であった。
　三、「エンターテイメント・エクスペリエンス」関連技術：
　主に従来型のエンターテイメント・エクスペリエンス、並びに仮想環境と現実環境を組み合わせた乗客のための没入型エンターテイメント・エクスペリエンスの関連技術について分析を行っている。この分類の技術について特許を出願する国/地域は主に米国、中国及びWIPOであり、また特許の出願件数は2013年から増加傾向となり、2020年以降は増加傾向が減速している。ただし仮想環境と現実環境を組み合わせた乗客のための没入型エンターテイメント・エクスペリエンス技術については2018年以降大幅に成長し始めている。分析によると、「エンターテイメント・エクスペリエンス」技術の出願人トップ10には、伝統的なブランド自動車メーカー自動車部品サプライヤ以外に、V2X通信関連の企業もランキングされている。
　四、「インテリジェント・インタラクション」関連技術：
　主に運転支援システム、居眠り運転検知、同乗者モニタリングシステム、走行距離不安症に関連する技術について分析を行っている。この分類の技術について特許を出願する国/地域は主に中国、米国及び日本であり、また特許の出願件数は2020年にやや減少したのを除けば、2013年以降いずれも安定して増加傾向にある。出願人トップ10をみると、走行距離不安症関連技術以外はいずれも伝統的なブランド自動車メーカーや自動車部品サプライヤが多数を占めている。
知的財産局によると、スマート・コックピット関連技術の特許は全体的に成長傾向にあり、かつそれらの技術は現在まだ統一の規格標準がないため、パーソナライズ化、インテリジェント化及び没入型エクスペリエンスを提供できる発明であれば、いずれもスマート・コックピットに応用でき、一部の特定技術に関する特許出願については、伝統的なブランド自動車メーカーや自動車部品サプライヤのみならず、ICTメーカーも特許戦略を展開しているという。知的財産局は、今後数年は台湾のICTメーカーが車載用スマート・コックピット市場を開拓するのに最適なタイミングであり、産学研の各界が提携して、自動車産業の繁栄をともに創出することが期待されると強調している。（2024年1月）