中国で下された民事刑事判決の認可及び執行について 2010-05

2013-09-17 その他


中国で下された民事刑事判決の認可及び執行について

20101118 revised 

中国で下された民事、刑事判決の台湾での効力に関するお問合せについて、台湾では、「台湾と中国の人民関係条例」(台湾地区與大陸地区人民関係条例)(以下「本条例」という)の第74条及び第75条に規定が設けられていますので、それぞれ次の通りご説明させて頂きます。

一、中国で下された刑事判決の台湾での効力について:その判決効力を承認しないこと

本条例第75条によると、「中国又は中国の艦船、航空機内で犯した罪について、中国で罰を受けたとしても、なお法により処断することができる。但し、その刑の全部又は一部の執行を免除することができる。」と明文が規定されていることから、台湾では、中国で下された刑事判決がただ一種の「事実状態」にとどまるもので、その判決の効力を有すると認めていないが、台湾の裁判所では行為者が中国で刑の全部又は一部が執行されたか否かを酌量したうえ、判決でその刑の全部又は一部の執行を免除するか否かを決定することができることになっています。

二、中国で下された民事判決の台湾での効力について:台湾の裁判所では認可を裁定(決定)した後、その判決の効力を有することを承認するが、当事者は台湾で同一事実について改めて民事訴訟を提起して台湾の裁判所により改めて判断されることを禁止していないこと

本条例第74条に基づくと:「中国で下された民事確定裁判、民事仲裁判断は、台湾の公の秩序又は善良の風俗に反することがなければ、裁判所へ認可の申請をすることができる。前項の裁判所により認可された裁判又は判断は、給付を内容としたときは、執行名義とすることができる。前二項の規定について、台湾で下された民事確定裁判、民事仲裁判断は、中国の裁判所に認可の裁定を申請したり執行名義としたりすることができるとき、始めて適用する。」と規定されています。前記の規定を踏まえて、中国の民事判決が台湾の公の秩序又は善良の風俗に反しないことを前提として、当事者は、台湾の裁判所へ認可の裁定を申請することができます。認可を受けた後、中国の民事判決が台湾で判決の効力を有すると承認されることになります。例えば判決が「被告は原告に○○元を給付しなければならない」とした場合、原告は、当該判決を以って、台湾の裁判所へ被告の財産に対する強制執行を申し立てることができることになります。
 

その他、中国の民事判決は、台湾の裁判所による裁定で認可された後、その判決の効力が承認されているが、台湾では当事者が台湾で同一事実について改めて民事訴訟を提起することを禁止していないので、台湾の裁判所では、改めて同一事実について結果が異なる判決を下すことがあり得ることになります。実務では、かつて債権者が、中国で勝訴の判決が下されたが、台湾で債務者の財産に対する強制執行を申立てるにあたり、債務者が、台湾で「債権不存在の確認」とした債務者の異議訴訟を提起し、台湾の裁判所が勝訴の判決を下したことにより、債権者が強制執行を行うことができなかった前例が参考になります。
 

中国の民事判決に対する認可申請手続きの要件を次の通りご説明させて頂きます。

(1)認可の申請手続きは非訟事件法の裁定手続きによること
A、管轄:申請時に、相手方の居住所の地方裁判所を第一審管轄裁判
所とするが、居住所が不明なときは、居所又は最後の住所により管轄裁判所を決めます。もし、最後の住所がなければ、財産の所在地又は司法院所在地の台北地方裁判所を管轄裁判所とすることもできます。(非訟事件法第2条)。
B、費用:財産権のために申請したとき、裁判所は、請求金額又は価額に基づき、新台湾ドル500元~5000元の費用を徴収します。財産権のためではない申請には、新台湾ドル1000元を徴収します(非訟事件法第14条、第15条)。
C、裁定及び抗告:独任裁判官の裁定によります。もし裁定に不服があるとき、申請者又は裁定により損害を受けた者は裁定書送達後10日以内に抗告をすることができ、地方裁判所で三名裁判官からなる合議法廷で裁定を下します。もし合議法廷で抗告が不合法であると認定され、棄却された場合、改めて抗告することができないが、異議申立てをすることができます。異議の決定に不服の申立てをすることができません。また、合議法廷での抗告に理由の有無に関する裁定は、当事者は、法に著しく誤りがあることの適用に限り、高等裁判所に再抗告をすることができることになっています(非訟事件法第36条、第41条、第42条、第44条、第45条)。
 
(2)申請の実体要件
A、台湾の「海基会」による認証を経た、中国の民事判決書を提出する必要があります。訴訟における和解調書、給付命令、調停書などは認可を申請することができません。
B、当該民事判決の内容は台湾の公の秩序又は善良の風俗に反してはなりません。また、一部分の実務見解によれば、民事訴訟法第402条の要件を同時に満たす必要があるとし、即ち敗訴した被告が訴訟に応じなかったとき、台湾の裁判所では認可することができないことになっています。しかし、訴訟開始の通知又は命令は、相当な時間が経って、中国で合法に送達されたり、中華民国の法律に基づき送達されたりしたときは、この限りでないとしています。
C、申請者は、中国が公布した「人民裁判所が台湾の裁判所による民事判決の認可に関する規定」(関於人民法院認可台湾地区有関法院民事判決的規定)を引用して、中国の裁判所が裁定で台湾の民事裁判を認可したことがある、との事実を立証しなければなりません。
D、申請を受けた裁判所では、当事者間の実体法律関係を改めて判断することができません。したがって、たとえ中国の民事判決の内容が法に反したり、妥当を欠いたりしたとしても、公の秩序又は善良の風俗に反しない限り、裁判所では認可の申請を拒絶することができないことになっています。
 
三、調べた結果、現時点では、IP事件に関する中国の民事判決が、台湾の裁判所に認可及び執行を申請した前例はないことが判明しました。

 

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