先行技術の意匠を変更したとき、意匠全体に特異な視覚的効果がもたらされなければ創作性を有せず

2014-11-28 2013年

■ 判決分類:意匠権

I 先行技術の意匠を変更したとき、意匠全体に特異な視覚的効果がもたらされなければ創作性を有せず

■ ハイライト
意匠登録出願に係る意匠の全体又は主な特徴が先行技術における意匠の比率、位置又は数量を変更したものである場合、意匠全体に特異な視覚的効果がもたらされていないならば、意匠は容易に想到し得るもので、創作性(創作非容易性)を有しないと認定すべきである。次に意匠の構造が機能性の造形であるときは、主な外観的特徴の審査対象とはならない。意匠全体に特異な視覚的効果をもたらされず、その構造の数量、比率についてのみ変更であり、この変更が同業者にとって容易に想到できるとき、係争意匠は創作性を有しないものである。

II 判決内容の要約

知的財産裁判所民事判決
【裁判番号】102年度民專訴字第47号
【裁判期日】2013年9月10日
【裁判事由】意匠権侵害の排除等 

原告 蘇育志
被告 林○光即ち仲台実業行
         駱○仕即ち鎧翔実業社

上記当事者間における意匠権侵害排除事件について、本裁判所は2013年8月20日に口頭弁論を終結して、以下のように判決を下すものである。

主文
原告の請求及び仮執行宣言申立をいずれも棄却する。
訴訟費用は原告が負担する。

一 両方当事者の請求内容
一.原告の主張:(1)被告が添付資料1に図示されるタイプの「引き戸用の装飾フレーム」を製造、販売、販売の申し出、使用、またはこれらを目的として輸入することを禁止する。(2)被告の林○光即ち仲台実業行は原告に109,632新台湾ドルを支払い、被告の駱○仕即ち鎧翔実業社は原告に109,632新台湾ドルに支払う。並びにいずれも起訴状送達翌日から支払い済みまでの年5%の割合による利息を支払う。(3)訴訟費用は被告等の負担とする。(4)勝訴の判決を受けた場合、原告は担保を立てるので、仮執行宣言申立の許可を請求する。
二.被告の主張:(1)原告の主張を棄却する。(2)訴訟費用は原告の負担とする。

(一)原告主張の理由:略。判決理由説明を参照。
(二)被告主張の理由:略。判決理由説明を参照。

二 本件の争点
証拠3、被告証拠4、被告証拠7は係争意匠が新規性、創作性を有しないことを証明できるか否か。
被告証拠7、8、9の組合せは係争意匠が創作性を有しないことを証明できるか否か。
被告等は係争意匠権侵害が故意であったのか、それとも過失であったのか。本件の損害賠償金額はいかに算出すべきか。

三 判決理由の要約
被告証拠7は係争意匠が創作性を有しないことを証明できる:
調べたところ、係争意匠と被告証拠7のユニット装飾フレームは通気孔の数量が異なり、フレームの長さも異なり、被告証拠7の先行技術がもたらす視覚的印象は、消費者が商品を購入する際に係争意匠を被告証拠7と誤認させ、混同させる視覚的印象をもたらすことはなく、係争意匠と被告証拠7とは同一又は近似していないと認定すべきであり、ゆえに被告証拠7は係争意匠が新規性を有さないとは証明できない。
ただし、意匠登録出願に係る意匠の全体又は主な特徴が先行技術における意匠の比率、位置又は数量を変更したものである場合、意匠全体に特異な視覚的効果がもたらされていないならば、意匠は容易に想到し得るもので、創作性を有しないと認定すべきである。調べたところ、係争意匠全体の主な外観の特徴は、正面図の長方形装飾フレームに通気孔を組み合わせた形状であること、背面図では機能の結合に対応して設置した構造体で、機能性の造形であり、主な外観的特徴の審査対象とはならない。前述した通り、係争意匠と被告証拠7との相違点は主な意匠の特徴において通気孔の数量と装飾フレームの長さの比率が異なることのみで、その意匠全体に特異な視覚的効果がもたらされていない。上記説明から、数量又は比率の相違が当業者にとって容易に想到し得るものであり、被告証拠7は係争意匠が創作性を有さないことを証明できる。

被告証拠7、8、9の組合せは係争意匠が創作性を有さないことを証明できる:
被告証拠7は前述の通り係争意匠が創作性を有さないことを証明できないことは前述の通りであり、被告証拠7、8、9の組合せも係争意匠が創作性を有さないことを証明できる。

以上をまとめると、被告等は係争意匠の意匠登録請求の範囲に入ることを否定していないが、被告が提出した被告証拠7又は被告証拠7、8、9の組合せは(係争意匠が)創作性を有しないことを証明することができ、取消の原因は存在し、知的財産案件審理法第16条第2項の規定により、原告が本件民事訴訟で被告に対して権利を主張してはならない。

本件の事実証拠はすでに明確であり、双方のその他の攻防の手法、提出された証拠及びその他の争点(即ち被告等は係争意匠権侵害が故意か、過失か。本件の損害賠償金額はいかに算出すべきか)は本裁判所が斟酌した結果、判決結果に影響をもたらさないと認定し、逐一詳細に論駁する必要はないことを、ここに併せて述べるものである。

前記論結に基づき、本件原告の請求には理由がなく、知的財産案件審理法第1条、民事訴訟法第78条により、主文の通り判決を下す。

2013年9月10日
知的財産裁判所第一法廷
裁判官 蔡如琪
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