改正前専利法第85条第1項にいうコストとは、直ちに原価対象のコストであると認識できるか、直ちに帰属させることができるものであり、即ち直接経費に該当するはずである。

2014-12-27 2013年

■ 判決分類:特許権

I 改正前専利法第85条第1項にいうコストとは、直ちに原価対象のコストであると認識できるか、直ちに帰属させることができるものであり、即ち直接経費に該当するはずである。

II 判決内容の要約

知的財産裁判所民事判決
【裁判番号】101年度民専訴字第148号
【裁判期日】2013年7月10日
【裁判事由】特許権侵害の排除等

原告 大衛龍企業有限公司
被告 北昕企業有限公司
兼法定代理人 余旭雄

主文
被告は連帯して原告に台湾ドル20万1,660元、及び2012年11月15日より返済日まで、年率5%で計算した利息を支払わなければならない。
被告である北昕企業有限公司は中華民国第I301409号「組立式自動食器洗い機」特許侵害に関わる物品の製造、販売、販売の申立て、使用若しくは前記の目的による輸入を自ら行ったり、または他人に委託、許諾してはならない。
原告によるその他の訴えを棄却する。
訴訟費用は、被告が10分の9を負担し、残りの部分は、原告の負担とする。
本判決主文第一項について、仮執行をすることができる。被告は、仮執行手続きの実施前に、台湾ドル20万1660元の担保金を原告のために予め供託した場合、仮執行の免除を受けることができる。

一 両方当事者の請求内容
原告の請求を次の通り要約する。
請求の趣旨:1.被告等は連帯して台湾ドル33万元、及び本訴状の謄本が到達した日の翌日より返済日まで年率5%で計算した利息を支払わなければならない。2.被告北昕企業有限公司(以下北昕公司という)は中華民国第I301409号「組立式自動食器洗い機」特許侵害に関わる物品の製造、販売、販売の申立、使用、若しくは前記の目的による輸入を自ら行ったり、または他人に委託、許諾してはならない。3.被告北昕公司は中華民国第I301409号「組立式自動食器洗い機」特許侵害に関わる物品、及び侵害行為に従事するための原料並びに器具を廃棄するか、又はその他の必要な処置を取らなければならない。4.原告は担保金を供託するので、仮執行許可の宣告を要請する。
被告の答弁は、原告による訴えの棄却である。

二 本件の争点
双方当事者が争っている事項は次の通りである。
(一)係争特許に取消の事由があるか?
(二)係争製品が係争特許の特許請求の範囲に含まれているか?
(三)被告に係争特許侵害の故意、過失があるか?
(四)原告が被告に連帯して賠償を請求した部分に理由があるか?
(五)原告が被告公司に係争特許侵害に関わる物品の製造、販売、使用、販売の申出、または前記の目的による輸入の禁止を請求した行為に理由があるか?

三 判決理由の要約
(一)係争特許に取消すべき事由がある部分について
本裁判所は、まず係争特許及び引例の技術内容を分析し、係争特許に新規性または進歩性がないと証明できるか否かを比較して、引き続いて特許侵害を成立するか否かを判断する。

(二)係争特許請求項1が係争特許の発明の要旨及び図面に支持されていることについて
被告は、係争特許図面第一図の洗浄室が機体外の上側ではなく、機体内の上側に設置されていて、また水槽が機体内の下側に設置され、機体外の下側に設置されているのではないので、係争特許における「洗浄室」が機体外の上側に、水槽が機体外の下側に設置されているとの記載と異なっていることから、係争特許の特許請求の範囲が図面により支持されていない云々と主張した。
特許請求の範囲は、発明の要旨及び図面により支持されなければならない。それは、特許請求の範囲における各請求項ごとに記載されている出願対象は、当該発明の属する技術分野において通常の知識を有する者が発明の要旨により開示された内容から直接または総合的に得た技術手段でなければならないと要求しており、つまり特許の請求範囲は発明の要旨により開示された内容を超えてはならない。また、請求項は総括的に一個又は一個以上の実施方法又は実施例からなるものであるので、請求項の総括的な内容も適切で、その請求範囲が発明の要旨により開示された内容に相当していなければならない。そして、特許請求の範囲が発明の要旨及び図面により支持されているか否かを判断するにあたっては、出願時の通常の知識を参照して、関連先行技術をはじめ、請求項の総括的な範囲が適切であるか否か、そして特許の請求範囲が発明の要旨により開示された内容を超えることなく、且つ出願人が獲得すべき権利も減損させないかを判断しなければならない。
係争特許の請求項1においては「機体の上側に洗浄室、機体の下側に水槽を設置する」と記載されている一方、係争特許の明細書においては「本発明のもう一つの目的は、実際のニーズに応じて組立を行い、つまり置き場又は洗浄しようとする食器の容量、機体を組み立てる数量などを酌量して、スピーディ且つ便利な組立を提供する一種の組立式自動食器洗い機である。」、「両機体側面の接合フレームの間にパッドを挟持し、..適量の機体を組み合わせて、一つの大型の自動食器洗い機を組み立てる」(本裁判所ファイル第20、22頁)と記載されていることから、係争特許の自動食器洗い機は両機体の組立方法を利用して始めて一つの大型の自動食器洗い機を組み立てることができると証明するに足りるものである。
係争特許請求項1においても「伝送装置は、機体の洗浄室に設けられている」と記載されているので、その属する技術分野における通常の知識を有する者は洗浄室等構造が機体の一部に属すると知りえることができる。又、請求項1において、洗浄室及び水槽を機体「外」に設置すると記載されていないことから、噴出洗浄装置及び減速装置を機体内に設けるとした記載をもって、洗浄室及び水槽が機体外に設置されているとは認定できない。それ故、その属する技術分野における通常の知識をもって、係争特許の発明の要旨及び図面により開示された内容に基づいても、係争特許の特許請求の範囲における記載が係争特許の発明の要旨及び図面により支持されていないとは言い難い。

(三)係争製品が、係争特許の特許請求の範囲に含まれているか否かの部分について
係争特許請求項1における技術特徴は、完全に係争製品に対応して表現されているほか、被告も係争特許の技術特徴が完全に係争製品に表現され、機体内外の設置のみ差異があると自認した。しかし、前述の通り、機体内外について、係争特許の機体とは洗浄室、水槽、噴出洗浄装置等構造を含む自動食器洗い機の大型機体を指すはずなので、係争製品は係争特許の特許請求の範囲請求項1の文言侵害に該当する。

(四)被告に係争特許侵害の故意や過失があるか否かの部分について
被告はステンレス製品の製造に従事していると認めているので、ステンレス製品に対して他人の特許権範囲に関わる事項への注意義務を負うべきであることは当然である。ましてや、被告はメーカーであり、損害発生を予測又は予防する能力及び注意義務があるはずであるが、なおも注意せずに本件の侵害行為を発生させたことについて、注意義務を果たさない過失があると認定されるべきである。

(五)原告が被告に連帯して33万元を賠償するよう請求した部分について
被告北昕公司による係争製品は係争特許請求項第1項の文言侵害に該当し、係争特許を侵害したことは前述の通りであるので、改正前専利法第84条第1項前段の規定により、原告に対する損害賠償の責任を負うべきことは当然である。
被告は係争製品のコスト及び貨物税、計台湾ドル240,709元がコスト及び必要経費に該当するので、差し引くべきである云々と抗弁したほか、その作成したコスト分析表を証拠として提出し、被告によるコスト及び必要経費計128,340元を差し引くことができると証明した。よって、被告公司が係争製品を販売して得た収入330,000元から、コスト128,340元を差し引くと、原告に損害を賠償すべき金額は201,660元と算出される(計算式:330,000-128,340=201,660元)。

(六)原告が被告公司に係争特許の侵害に関わる物品の製造、販売、使用、販売の申出、又は前記の目的による輸入行為を中止するよう請求した部分について
被告は確かに係争製品を空軍士官学校に引渡し、かつ同学校による検収が行われたが、本裁判所では、被告公司がかつて係争特許権侵害に関わる係争製品を製造、販売し、かつ被告北昕公司が今もって営業中であり、その事業項目に金物小売、食器製造、調理道具取り付け等業務(本裁判所ファイル第91頁における被告公司の基本資料参照)が含まれているので、被告公司になおも係争特許を侵害するおそれがあると認定した。よって、原告が被告北昕公司に係争特許侵害に関わる物品の製造、販売の申出、販売、使用、又は前記の目的により輸入する行為の中止を命じるよう請求したことは正当であり、許可すべきである。

(七)原告による廃棄請求の部分について
原告は、別途改正前専利法第84条第3項における、特許権の侵害に係る物品又は侵害行為に係る原料若しくは器具の廃棄を請求することができるとする規定により、係争製品の廃棄等の判決を下すよう請求した。しかし、特許権は排他性が高い権利であり、特許権者が廃棄の請求権を行使することにより、善意の第三者が損失を蒙り、取引の安全に影響が出るので、特許権者による廃棄請求権の行使は、合理性、正当性且つ必要性を有していなければならず、公共利益を害してはならない。調べた結果、係争製品は、被告が入札契約により完成後、空軍士官学校に引渡され、且つ同学校による検収が行われたことは、両方当事者にも争いがない。よって、係争製品は、すでに空軍士官学校の教員・学生に使用されており、原告も係争製品が係争特許侵害に関わっていることを空軍士官学校の人員が知っていることを立証しなかったので、それらは善意の第三者に該当するはずである。もし、係争製品の廃棄を許可した場合、空軍士官学校が原告に賠償を請求し、社会資源の浪費につながるほか、原告も被告により侵害された係争特許の部分はすでに救済されたので、善意の空軍士官学校に係争製品の廃棄を請求する必要はない。それ故、原告が前記物品の廃棄を被告公司に命じるよう請求したことには理由がない。
TIPLO ECARD Fireshot Video TIPLO Brochure_Japanese TIPLO News Channel TIPLO TOUR 7th FIoor TIPLO TOUR 15th FIoor