契約成立には当事者の合意が必要であり、使用者が専利出願権を従業者に譲渡する意思表示がなければ不成立

2015-08-04 2014年
■ 判決分類:特許権

I 契約成立には当事者の合意が必要であり、使用者が専利出願権を従業者に譲渡する意思表示がなければ不成立

II 判決内容の要約

知的財産裁判所民事判決
【裁判番号】102年度民專上字第41号
【裁判期日】2014年2月14日
【裁判事由】専利権出願権(専利出願権)帰属

上訴人 鍾○青
被上訴人 源古科技股份有限公司

上記当事者間における専利権出願権(専利出願権)帰属事件について、上訴人は本裁判所2013年5月28日101年度民專訴字第144号第一審判決に対して上訴を提起し、本裁判所は2014年1月22日に口頭弁論を終え、次のとおり判決する。

主文
上訴を棄却する。
第二審訴訟費は上訴人の負担とする。

一 事実要約
被上訴人は電子商取引、プロジェクト管理等の企業向けアプリソフトを提供する企業である。○○○は被上訴人に雇用され、被上訴人の企業で電子商取引システムソフトの開発とプログラミングの業務を担当し、被上訴人の研究開発チームを率いて「作業手順管理システム(原文:作業流程管理系統)」を完成し、2012年3月23日係争実用新案と係争発明特許(以下「係争の二専利」)を出願するとともに、○○○、上訴人を共同出願人及び発明者(創作者)にとして記載した。被上訴人は、上訴人が2011年3月、国立清華大学の「クラウドコンピューティング-雲端運算—データ木構造のMap Reduce(原文:雲端運算—樹狀資料結構之Map Reduce)」研究プロジェクトにおいて被上訴人と産学提携を行い、研究プロジェクトリーダーを務めていたが、この時点ですでに係争の二専利の技術はすでに開発が完成しており、上訴人は明らかに係争の二専利に係る技術の研究開発に参加したことがなく、係争の二専利の発明者(創作者)ではなく、係争専利の出願権を有さず、専利権者でもないと主張し、専利法(訳注:日本の特許法、実用新案法、意匠法に相当)の第7条第1、2項、第8条及び第10条の規定に基づき、係争の二専利の出願権はいずれも被上訴人が所有することを確認するよう請求した。○○○は原審において被上訴人の本件訴訟対象に関する主張を直接認諾したが、上訴人は確かに係争の二専利に係る技術の開発に参与していた等と抗弁した。

二 両方当事者の請求内容
(一)上訴人:
1.原判決の上訴人に不利な部分を取り消す。
2.前取消部分について被上訴人の第一審における請求を棄却する。
3.訴訟費用は被上訴人の負担とする。

(二)被上訴人:
上訴人の上訴を棄却する。
訴訟費用は上訴人の負担とする。

三 本件の争点
本件の争点は、係争実用新案と係争発明特許は被上訴人の従業者が職務上完成した発明(実用新案)であるか否かであり、それぞれ2010年8月25日改正公布の専利法第7条第1項前段、2013年6月11日改正公布の第7号第1項前段の規定に基づき、その専利出願権は被上訴人に帰属するのか、或いは被上訴人と上訴人、○○○との間で係争の二専利の出願権を上訴人と○○○に譲渡するよう合意していたか否か、である。

(一)上訴人の主張理由:省略。判決理由の説明を参照。
(二)被上訴人の答弁理由:省略。判決理由の説明を参照。

四 判決理由の要約
(一)関連する専利法規定:
1.2010年8月25日改正公布された専利法(以下「改正前専利法」)第5条には「(第1項)専利出願権とは、本法により専利(訳注:特許、実用新案登録、意匠登録)を出願できる権利をいう。(第2項)専利出願権者とは、本法に別段の規定がある場合、又は契約で別段の約定がある場合を除き、発明者、創作者又はその譲受人又は相続人をいう」、第6条第1項には「専利出願権及び専利権は、いずれも譲渡又は相続することができる」、第7条第1項、第2項には「(第1項)従業者が職務上完成した発明、実用新案又は意匠について、その専利出願権及び専利権は使用者に帰属し、使用者は従業者に相当の報酬を支払わなければならない。ただし契約で別段の約定がある場合、その約定に従う。(第2項)前項でいう職務上の発明、実用新案又は意匠(原文は「新式様」)とは、従業者が雇用関係における業務で完成した発明、実用新案又は意匠をいう」とそれぞれ規定されている。
2.2013年6月11日改正公布の専利法(以下「現行専利法」)第5条には「(第1項)専利出願権とは、本法により専利を出願できる権利をいう。(第2項)専利出願権者とは、本法に別段の規定がある場合、又は契約で別段の約定がある場合を除き、発明者、実用新案考案者、意匠創作者又はその譲受人又は相続人をいう」、第6条第1項には「専利出願権及び専利権は、いずれも譲渡又は相続することができる」、第7条第1項、第2項には「(第1項)従業者が職務上完成した発明、実用新案又は意匠について、その専利出願権及び専利権は使用者に帰属し、使用者は従業者に相当の報酬を支払わなければならない。ただし契約で別段の約定がある場合、その約定に従う。(第2項)前項でいう職務上の発明、実用新案又は意匠(原文は「設計」)とは、従業者が雇用関係における業務で完成した発明、実用新案又は意匠をいう」とそれぞれ規定されている。
3.よって、現行専利法の前記規定は(意匠の中国語が)「新式樣」から「設計」へと変更されたものであり、その基本原則は改正されていない。

(二)係争の二専利は被上訴人の従業者が業務上完成した発明(実用新案)であり、その専利出願権は被上訴人に帰属する:
上訴人は本裁判所での審理において、上訴人は係争の二専利の「明細書」における貢献に参与したもので、係争の二専利の発明者(創作者)が被上訴人であることを否定しない等(本裁判所ファイル第38頁裏側の上訴理由書第二項第1乃至2行)を認めている。上訴人は自分が係争の二専利の創作者、発明者であることを主張していない。原審は係争の二専利の技術的特徴と原告証拠25の技術内容とを対比し、その実用新案及び発明の技術的特徴は被上訴人の研究開発技術の内容に類似しており、被上訴人はすでに係争の二専利が被上訴人の従業者が職務上完成した発明(実用新案)であることを証明しており、これについて双方は本裁判所の審理において争っていない。

(三)被上訴人は係争の二専利の専利出願権を上訴人、○○○に譲渡していない:
上訴人によると、双方は提携プロジェクトについて協議した後、上訴人と学生は係争の二専利の明細書作成に参加したという。しかしながら○○○は本裁判所の審理において、○○○は多数回にわたって上訴人と交渉し、被上訴人との提携を希望し、さらに契約書見本を3部作成したことがあり、上訴人が被上訴人のCTOに就任している状況において、上訴人のチーム全体が今後の新たに開発する技術又は製品等については、その貢献度に応じて報酬を分配し、権利者の部分については、上訴人を発明者(創作者)として記載するよう協議したが、権利者は被上訴人であり、係争の二専利は被上訴人が以前完成したもので、上記の協議範囲には含まれていない、と証言している。ここから関連する契約内容は双方の更なる検討が待たれており、当時は提携の合意が達成されていないことが分かり、どうして双方が貢献度に応じて知的財産権の比率と帰属の協議があったといえるだろうか。

以上をまとめると、係争の二専利は被上訴人の従業者が業務上に完成した発明(実用新案)であり、その専利出願権は被上訴人に帰属する。また上訴人は被上訴人が係争の二専利の出願権を上訴人、○○○に譲渡する意思表示があったと証明できておらず、かつ○○○は原審においてすでに本件訴訟の対象の認諾を行っており、係争の二専利の専利出願権がいずれも被上訴人に有ることを確認するよう被上訴人が請求することには根拠がある。原審が上訴人に敗訴の判決を下したことに法に合わないところはない。上訴人の上訴には理由がないため、棄却すべきである。

以上の次第で、本件の上訴には理由がなく、民事訴訟法第449条第1項、第78条に基づき主文のとおり判決する。

2014年2月14日
知的財産裁判所第三法廷
裁判長 汪漢卿
裁判官 陳容正
裁判官 蔡惠如
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