登録出願された意匠範囲を解釈する時は、先ず創作説明において記載された文字内容を基にし、出願意匠と出願前の先行意匠とを比較したうえで始めて、客観的に革新内容の新規特徴があると認定することができる。

2015-12-29 2015年
■ 判決分類:意匠権

I 登録出願された意匠範囲を解釈する時は、先ず創作説明において記載された文字内容を基にし、出願意匠と出願前の先行意匠とを比較したうえで始めて、客観的に革新内容の新規特徴があると認定することができる。

■ ハイライト
「新規特徴とは、意匠登録出願したデザインが出願前の先行意匠と比較して、客観的に新規性、創作性等意匠要件を持たせる革新的内容であるが、それは視覚をとおして訴求する視覚性デザインであって、機能性デザインであってはならない。」、「出願された意匠範囲を解釈する時は、先ず創作説明において記載された文字内容を基にし、出願意匠と出願前の先行意匠と比較したうえで始めて、客観的に革新的内容の新規特徴があると認定することができる。」これに準じ、係争意匠が意匠出願階段である場合、専利(意匠)公報上の参考文献は、上記説明により、自ずと『意匠出願したデザインと出願前の先行意匠』の比較の根拠とすることができる。また、たとえある被疑侵害品の当該意匠(設計専利)明細書の中に文字による全ての特徴の描写があっても、もし当該デザインの新規特徴がないなら、やはり当該意匠権の侵害と認められることはない。

II 判決内容の要約

知的財産裁判所民事判決
【裁判番号】103年度民専訴字第73号
【裁判期日】2015年01月09日
【裁判事由】意匠権侵害に関する財産権争議等

原告 蔡佳真
被告 巴第費琳股份有限公司

主文
原告による訴え及び仮執行の申立てをともに棄却する。 
訴訟費用は原告の負担とする。

一 事実要約
被告巴第費琳公司は原告による許諾を受けないまま、係争意匠を侵害する疑いのある多種の女性用下着を製造し、○○○○○股份有限公司(以下○○公司と称する)が経営する「○○○○○○○ショッピングサイト」及び「○○ショッピングチャンネル」等のチャンネルにおいて販売していた。原告が2014年4月18日に内容証明郵便により被告に係争製品が係争意匠を侵害していると通知するとともに、係争意匠の侵害行為を停止するよう要求し、被告巴第費琳公司が係争製品の販売を継続しているのは、故意に不法に係争意匠を侵害するものだとした。そして、専利法第142条準用同法96条第2項、第97条規定に基づき、本件訴訟を提起した。

二 両方当事者の請求内容
(一)原告:
1.被告は連帯で原告に150万元及び、訴状副本送達の翌日から償還日まで、週ごとに年利5%で計算した利息を支払わなければならない。
2.原告は担保を供託するので、仮執行許可の宣告を請求する。
(二)被告:提訴の棄却を請求する。

三 本件の争点
1.係争製品は係争意匠を侵害しているか。
2.係争意匠には取消すべき事由があるか。

(一)原告の主張理由:省略。判決理由の説明を参照。
(二)被告の答弁理由:省略。判決理由の説明を参照。

四 判決理由の要約
(一)係争意匠による侵害の判断
1.係争意匠の新規特徴
(1)新規特徴とは、意匠出願したデザインが出願前の先行意匠と比較して、客観的に新規性、創作性等意匠要件を持たせる革新的内容であるが、それは視覚をとおして訴求する視覚性デザインであって、機能性デザインであってはならない。出願された意匠範囲を解釈する時は、先ず創作説明において記載された文字内容を基にし、出願意匠と出願前の先行意匠と比較したうえで始めて、客観的に革新的内容の新規特徴があると認定することができる。また、これに準じ、係争意匠が意匠出願階段である場合、専利(意匠)公報上の参考文献は、上記説明により、自ずと『意匠出願したデザインと出願前の先行意匠』の比較の根拠とすることができる。
(2)係争意匠を先行意匠と比較すると、その後のサイドボーン、バックベルト、ストラップ及びアンダーベルトが前述のレースネットが生じる波状飾り縁及び両側カップの異なる外側縁が下縁に合わせて一緒に上向きに開口した弧状のノーワイヤーサイドボーンと縫い合わせてある等が、いずれも従来技芸内容に該当するので、革新的内容がある即ち新規特徴は次の部分である。
当該レースネットの地模様が両側カップの相対する縁において花形状の飾り縁を形成し、当該花形状の飾り縁ユニットは複数の同じサイズのクローバーのような花びら造形が両方対照になっている方式を構成し、全体花状飾り縁がカップを囲むように「両方でΩ字形に繋がっている」という視覚イメージがある。
両側カップの外形が一種の両斜め角に向かって收束する「水滴状体」になる造形である。
両側カップの異なる外側縁と下縁緣が一緒に上向きに開口した弧状のノーワイヤーサイドボーンと縫い合わせてあり、そのサイドボーンと左右のストラップが一体に連続しているという視覚イメージがある。
2.係争製品1と係争意匠の比較分析:
(1)物品の同一又は類似の判断
係争意匠は胸部を支えるブラジャーに用いるものであり、係争製品1のブラジャーも同一の用途と機能であることは、双方も争議していない。よって、係争製品1と係争意匠は同一物品である。
(2)全体的視覚性外観の同一又は類似の判断
調べたところ、次のことが判明した。
①意匠権(設計専利)の範囲は、図面を基準とし、明細書を斟酌することができると、専利法第136条第2項に規定されている。意匠は物品外観の視覚性創作を保護するものであり、即ち、物品の全部又は一部の形状、模様、色彩又はその組合せについて視覚的に訴求する創作である。よって、その意匠権の範囲は図面が開示する内容を基準とし、特許、実用新案における権利請求の範囲の文字で記載された内容とは別のものである。この外、出願人が明細書の文字を利用して当該図面が開示する内容を補足説明することができることを考えると、意匠権範囲を解釈するときは、その明細書を参酌してその図面が保護を請求しようとしている範囲を理解することができる。つまり、意匠権範囲は図面が開示する物品の外観を基とし、並びに明細書に記載された物品及び外観に関する説明を斟酌することができ、特にデザイン名称が指定するデザインが施された物品は、全体が意匠権範囲を構成するので、意匠の権利範囲は即ち図面が開示する主張デザインの全体的外観である。よって、係争意匠と係争製品1の同一又は類似の判断も、係争意匠の全体的外観を比較対象とすべきであり、製品の局部特徴を逐一観察して比較するものではない。
②係争製品1の外観形状は、カップの表面に地模様が織込まれたレースネットがあり、当該レースネットの地模様は両カップの相対する縁の所で花状の飾り縁を形成し、両側カップの異なる外側縁に合わせて下縁と一緒に上向きに開口した弧状のノーワイヤーボーンが縫い合わせてあり、両側カップの外形が一種の両斜め角端に收束する「盾」の造形を生じでおり、また、両カップの外側及びボーンの下縁に一体型の土台部分が形成されており、土台部分の底縁は前述レースネットに合わせて波状の縁飾りを生じている。また、土台部分の対応するボーンの中央には蝶結びが一つあり、又両カップの外側土台部分の縁のところバックのベルト部に繋がっていて、両側のサイドベルトとバックベルトの上端は更にストラップに繋がっている。前述のように、係争製品1と係争意匠の全体的視覚性外観を比較した造形構成は確かにほとんど同じであるが、二者が消費者の視覚イメージをを最も強く引き起こすカップ表面の地模様は異なっており、その地模様図案の構成要素及び空間上の配置とその比率関係にはいずれも差異がある。
③係争製品1のカップ表面は左、右、上、下対照な排列でそれぞれ花模様が設けてあり、なお且つその両側カップの外形は一種の両斜めに外側に広がって形成される盾状の造形になっており、係争意匠の両側カップの外形が一種の両斜角端に收束する「水滴状体」の全体造形であるのとは異なっている。
④係争製品1は係争意匠「レースネットの地模様が両側カップの相対する縁において花形状の飾り縁を形成し、当該花形状の飾り縁ユニットは複数の同じサイズでクローバーのような花びら造形が両方対照になっている形式を構成し、全体花状飾り縁がカップを囲むように「両方でΩ字形に繋がっている」という視覚イメージ」の地模様の特徴を開示していない。また、係争製品1のボーンの自由端はそれぞれカップの外側に延伸しているが、左右ストラップの位置とは連続していない。いっぽう、係争意匠の両側カップの異なる外側縁と下縁は合わせて一緒に上向きに開口した弧状のノーワイヤーボーンと縫い合わせてあるが、このボーンが左右ストラップまで延伸しているので一体に繋がった視覚イメージが出現している。
⑤上述のように、係争製品1と係争意匠の全体的視覚性外観を一般の消費者が商品を選ぶ際の観點で総合的に判断すると、二者の外観特徴の差異は明らかであり、全体的に生じている視覚イメージにより一般消費者にこれらの全体的造形を区別させることができるので、デザイン特徴が同一又は類似していて誤認させるまでには至っていない。よって係争製品1は係争意匠権の範囲に入らないと言える。
⑥また、被疑侵害品が係争意匠の新規特徴を含んでいるかどうかの判断は、その構成する視覚性全体が同一又は類似であることを前提とするが、係争製品1の全体視覚性外観と係争意匠は類似を構成していないことは前述のとおりである。よって、本件では更に係争製品1が係争意匠の新規特徴を含んでいるかについて比較判断する必要がないことを、ここに説明しておく。

(二)以上をまとめると、係争製品1は係争意匠の登録請求の範囲に入っておらず、被告巴第費琳公司による係争製品の製造、販売も係争意匠侵害に該当しない。つまり、被告が行った係争意匠無效の抗弁は、これ以上斟酌する必要がない。従って、原告による提訴には理由がなく、棄却しなければならない。

2015年1月9日
知的財産裁判所第三法廷
裁判官 張銘晃
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