訂正前の特許請求の範囲に記載された技術特徴の下位概念の技術特徴ではなく、また更に規定されたのではない技術特徴の導入は、既に公告時の特許請求の範囲を実質的に変更しているので、訂正許可してはならない。

2016-01-13 2015年
■ 判決分類:特許権

I 訂正前の特許請求の範囲に記載された技術特徴の下位概念の技術特徴ではなく、また更に規定されたのではない技術特徴の導入は、既に公告時の特許請求の範囲を実質的に変更しているので、訂正許可してはならない。

II 判決内容の要約

知的財産裁判所行政判決
【裁判番号】103年度行専訴字第40号
【裁判期日】2015年01月15日
【裁判事由】特許無効審判請求

原告 便利達康股份有限公司
被告 経済部知的財産局
参加人 統一超商股份有限公司

 上記当事者間における特許無効審判請求事件について、原告が経済部2014年4月9日経訴字第10306103050号訴願決定を不服として行政訴訟を提起したが、本裁判所より参加人に被告の訴訟に独立参加するように命じたうえで、以下のように判決する。

主文
訴願決定及び原処分を取消す。
被告は番号第089117366N02号「複数の地域別支店とオンラインショップとを結合するシステム」特許無効審判請求事件について、本判決の法律見解に基づき別途処分を下さなければならない。
訴訟費用は被告の負担とする。

一 事実要約
 参加人が「複数の地域別支店とオンラインショップとを結合するシステム」として被告に特許出願を行い、その特許請求の範囲は計18項であったが、被告はこれを審査した後に特許査定し、発明第I231439号特許証書(以下、係争特許という)を発給した。その後原告がこれに対し無効審判を請求したところ、参加人から係争特許の訂正本の提出があったので、被告は審査を経て訂正を許可し、当該訂正本に基づき審査したうえで「2009年12月3日の訂正事項について、訂正を許可する。請求項1から17の無効審判請求は不成立」との処分を下した。原告はこれを不服とし、訴願提起したが、経済部決定により棄却されたため、これを承服できず、本裁判所に行政訴訟を提起して、原処分及び訴願決定の取消しを請求するとともに、被告は係争特許無効審判請求事件について、訂正不許可又は無効審判請求成立として特許権を取消すよう審決するか、又は別途適法により処分すべきであると求めた。

二 両方当事者の請求内容
(一)原告:
1.訴願決定及び原処分をともに取消す。
2.被告は番号第089117366N02号「複数の地域別支店とオンラインショップとを結合するシステム」特許無効審判請求事件について、本判決の法律見解に基づき別途処分を下さなければならない。
(二)被告:訴えの棄却を請求する。

三 本件の争点
係争特許特許請求の範囲第1項の訂正は許可されるべきか、訂正後の係争特許特許請求の範囲第1項に新規性及び進歩性があるかどうかである。
(一)原告による請求の理由:省略。判決理由の説明をご覧頂きたい。
(二)被告による答弁の理由:省略。判決理由の説明をご覧頂きたい。

四 判決理由の要約
(一)調べたところ、訂正後の係争特許特許請求の範囲第1項の「取引」の技術特徴に「当該第二通信ネットワークを通じて当該中央情報システムから当該複数の地域別支店の情報を取得する」と追加記載した内容は次の通りである。
1、特許請求の範囲第1項は、訂正後に限定条件(当該第二通信ネットワークを通じて当該中央情報システムから当該複数の地域別支店の情報を取得する)を追加したので、特許請求の範囲の縮減に該当する。しかし調べた結果、訂正後の係争特許請求項1において「当該取引は当該第二通信ネットワークを通じて当該中央情報システムから当該複数の地域別支店の情報を取得することを含み、且つ前記複数の地域別支店から指定支店又はいずれかの支店を選択し付属取引を行う」と記載されており、つまり訂正後の係争特許請求項1において、当該複数の地域別支店から「指定支店」又は「いずれかの支店」等を選択する二つの選択肢はともに当該第二通信ネットワークを通じて当該中央情報システムから当該複数の地域別支店の情報を取得することが分かった。しかし、係争特許明細書第7頁第1行から第10行において「(2)地域別支店の指定:消費者1が購入しようとする商品を選定した後、引き続き支払い及び商品受領の地域別支店、例えば、消費者から最寄の地域別支店を選択できる。このオンラインショップ2の購入システム21と本部4の中央情報システム41が第二通信ネットワーク212を通じてつながっている。これにより、購入システム21は中央情報呼出システム41を通じて地域別支店の選択機能を提供できるか、又は購入システム21が中央情報システム41にこの複数の地域別支店の情報、例えば住所と店舗番号など情報を提供し、且つ自身の購入システムに統合するよう要求する。」、及び明細書第9頁第12行から第10頁第2行までに「(1)商品の選定購入:………。このとき、ある地域別支店5を特定する必要がないので、消費者1が第一方法で地域別支店5に識別させるに足りる取引資料を持っている・・・。消費者が第一の取引関連資料を持って、地域別支店で支払い、且つ消費者1がこの書類をもって、いずれかの地域別支店5でこの取引の付属取引を行い、この場合は、支払いの動作をする(動作621)。」等と記載されている内容から分かるように、係争特許明細書は、消費者が「地域別支店の指定選択」の情況で、第二通信ネットワークを通じて中央情報システムから複数の地域別支店の情報を取得する必要があると開示しているだけである。また、消費者が「いずれかの支店を選択する」状況下で(即ち消費者がいずれかの地域別支店へ赴き)、第二通信ネットワークを通じて中央情報システムから複数の地域別支店の情報を取得する必要がないので、訂正後の係争特許特許請求の範囲第1項に含まれている「第二通信ネットワークを通じて中央情報システムから複数の地域別支店の情報を取得し、且つ複数の地域別支店のいずれかを選択し付属取引を行う」という実施態様は、明らかに係争特許出願時の明細書に開示された範囲を超えているので、現行専利法第67条第2項に合致しない。

2、特許請求の範囲第1項の訂正後の「取引」の技術特徴に「当該第二通信ネットワークを通じて当該中央情報システムから当該複数の地域別支店の情報を取得する」と追加記載した内容について、「取引」と「当該第二通信ネットワークを通じて当該中央情報システムから当該複数の地域別支店の情報を取得する」等技術特徴との比較を行ったところ、二者はお互いに上位、下位概念の技術特徴に該当しないばかりでなく、且つ訂正後の請求項に、下位概念の技術特徴を導入しているのであれば、請求項の訂正前に対応する下位概念の技術特徴を下位概念の技術特徴に「置換える」のが通常であり、記載内容を追加する形式ではない。よって、訂正後の係争特許特許請求の範囲第1項に導入した「当該第二通信ネットワークを通じて当該中央情報システムから当該複数の地域別支店の情報を取得する」の技術特徴は、実は訂正前の特許請求の範囲に記載された「取引」技術特徴の下位概念の技術特徴に該当しない。また、係争特許明細書第7頁第1行から10行の記載及び明細書第9頁第12行から第10頁第2行までの記載等(ともに前述の通り)から分かるように、係争特許の発明の要旨において、消費者が「指定の地域別支店を選択する」にあたり、一歩進んで、第二通信ネットワークを通じて中央情報システムから複数の地域別支店の情報を取得する必要があり、消費者が「いずれかの支店を選択する」状況下で(即ち消費者がいずれかの地域別支店へ)、第二通信ネットワークを通じて中央情報システムから複数の地域別支店の情報を取得する必要がないと開示されている。これは係争特許の発明の要旨に開示された「当該第二通信ネットワークを通じて当該中央情報システムから当該複数の地域別支店の情報を取得する」の技術特徴であり、つまり「地域別支店の選択指定」を一歩進んで規定する技術特徴であることから、「取引」(即ち商品の選定購入。係争特許訂正前の特許請求の範囲第2項に記載された内容を参照)について一歩進んで規定する技術特徴ではないことは、訂正前の係争特許特許請求の範囲第3項において「その中から一つの支店を選択、指定し、当該付属取引を行うにあたり、当該消費者にこの複数の地域別支店から当該支店を指定させるために、当該購入システムが当該第二通信ネットワークを通じて当該中央情報システムから当該複数の地域別支店の情報を取得する」とした記載との比較を行えば裏付けできる。これに基づき、訂正後の係争特許特許請求の範囲第1項に導入した「当該第二通信ネットワークを通じて当該中央情報システムから当該複数の地域別支店の情報を取得する」の技術特徴は、実は訂正前の特許請求の範囲に記載された「取引」技術特徴が一歩進んで規定する技術特徴に該当しない。前記を総じると、訂正後の係争特許特許請求の範囲第1項に導入した「当該第二通信ネットワークを通じて当該中央情報システムから当該複数の地域別支店の情報を取得する」の技術特徴は、訂正前の特許請求の範囲に記載された「取引」技術特徴の下位概念の技術特徴ではないばかりか、訂正前の特許請求の範囲に記載された「取引」の技術特徴が一歩進んで規定する技術特徴にも該当しない。よって、訂正後の係争特許の特許請求の範囲第1項は既に公告時の特許請求の範囲を実質的に変更しているので、現行専利法第67条第4項の規定に合致しない。

3、係争特許の1999年12月3日付特許請求の範囲訂正本にある特許請求の範囲第1項が、現行専利法第67条第2項及び第4項の規定に合致しないので、原処分で訂正許可後の内容をもとに、本件無効審判請求が成立するかの審決を下したことには誤りがある。また、訂正後の係争特許の特許請求の範囲第2項から第17項がすべて訂正許可後の特許請求の範囲第1項の従属項に該当するので、原処分が特許請求の範囲第1項について、訂正後の内容をもとに、審査したことには誤りがあり、すなわち特許請求の範囲第1項に従属する特許請求の範囲第2項から第17項についても誤りがある。よって、本件の処分を下す基盤が揺らいでいて、案件の証拠が明確化していないほか、本裁判所の審理時に本件の訂正が合法でなければ、それを破棄し、原処分の機関に差戻し、改めて審理するべきであると原告及び参加人がともに主張したので、本件は原処分機関に差し戻され、適法な処分が下されるべきである。

2015年1月15日
知的財産裁判所第二法廷
審判長裁判官 曾啓謀
裁判官 陳容正
裁判官 熊誦梅
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