特許請求の範囲の解釈について、もし明確ではない用語があれば、技術分野において通常知識を持つ者が意味を理解及び認定するために、発明説明または図面を参考とすることができる。

2016-04-27 2015年
■ 判決分類:特許権

I 特許請求の範囲の解釈について、もし明確ではない用語があれば、技術分野において通常知識を持つ者が意味を理解及び認定するために、発明説明または図面を参考とすることができる。

■ ハイライト
発明に属する技術分野において通常知識を持つ者が、出願前の先行技術により容易に完成できるときは、法により出願して発明特許を取得してはならない。このほか、発明特許権範囲は、特許請求の範囲を規準とし、且つ明細書及び図面を参考とすることができる。特許請求の範囲の解釈については、その請求項の文字を特許権を定める根拠とすべきで、もし不明瞭または明確ではない用語があれば、技術分野において通常知識を持つ者が意味を理解及び認定するために、発明説明または図面を参考とすることができる。

II 判決内容の要約

最高行政裁判所判決
【裁判番号】104年度判字第92号
【裁判期日】2015年2月26日
【裁判事由】発明特許出願

上訴人 宋健民
被上訴人 経済部知的財産局

前記当事者間の特許出願事件につき、上訴人が2014年2月26日付知的財産裁判所102年度行專訴字第97号行政判決を不服として上訴を提起した。本裁判所は以下のように判決を下す。:

主文
上訴を棄却する。
訴訟費用は上訴人の負担とする。

一 事実要約
2008年3月14日に上訴人は「研磨方向転換規則を有する方法及び製品」を以って被上訴人に特許を出願し(以下係争出願案件という、主な図面は原判決の付図一の通り)、被上訴人は第97109052号として審査した後、特許を許可しなかった。上訴人が処分を不服として、2011年10月21日に再審査を請求したが、2012年12月10日に被上訴人は(101)專三(三)05073字第10121394980号審査意見通知書を以って、本件の特許を許可しない理由を上訴人に通知し、その後上訴人が2013年2月8日に特許請求の範囲修正本及び理由を答弁した。そして、被上訴人は前記修正に従い審査した後、更に102年4月10日(102)智專(三)05126字第10220430510号特許再審査拒絶審決書を以って「本件の特許を許可しない」との処分を下した。上訴人は原処分を不服として、法により訴願及び行政訴訟を提起したが、棄却されたので、本件の上訴を提起した。

二 両方当事者の請求内容
(一)上訴人:原判決の棄却、訴願決定及び原処分の取消を請求する。
(二)被上訴人:上訴の棄却を請求する。

三 本件の争点
係争出願案特許請求の範囲第1から19項には進歩性がないか。

(一)上訴人主張の理由:略。判決理由説明を参照。
(二)被上訴人主張の理由:略。判決理由説明を参照。

四 判決理由の要約
特許権の範囲は、特許請求の範囲を基準とし、特許請求の範囲の解釈をするときは、明細書及び図面を参酌することができると特許法第58条第4項に明文で定められている。特許請求の範囲の解釈について、まず請求項の文字を特許権を定める根拠とし、(read into)明細書または要約の内容を読んではならないほか、いかなる部分の内容も削除してはならない。もし不明瞭または明確ではない用語があれば、技術分野において通常知識を持つ者が意味を理解及び認定するために、発明説明または図面を参考とすることができる。調べたところ、原判決では:「引証1特許請求の範囲第2項では『一種の研磨粒子、……焼結したシート状マトリックスを含み、凹部を含む上面を有し、その中、実質的に、各凹部が、研磨粒子の成形された底端をその中に収容かつ結合し、一方、前記研磨粒子の反対側の研磨端が、露出し、最適な配向で整列される。……』、その凹部に穴の構造があることを限定しない。」と開示されている。且つ引証1第12頁第5行以下には「図3は、エンボスロール21の接触面の部分を示し、これらの突起を断面図で示している。各突起は、ロール表面上の底端と、ロール表面から先端へ上方に延びる末端とを有する非常に小さい90゜四角錐である。先端は、シートに穴をあけるために、より小さい、さらに直立した突起を含んでもよい。四角錐形特徴構造は、好ましくは、幅が1mm、高さが0.5mmであるが、より小さい、またはより大きい研磨粒子に対して、対応して、より小さい、またはより大きい寸法が用いられる。」と記載されている。よって、引証1の凹部の穴はただ定位効果を向上する手段であり、凹部の特徴は当該定型研磨粒子の定型先端の形状を収納することができ、たとえ凹部に穴があいていなくても、固定後、その機能を遂行することができる。引証1特許請求の範囲第2、第4項及びその従属項(第14項及び第16項)の記載では、その凹部にはすべて穴が必要ではないとなっている。よって、上訴人は引証1の凹部に必ず穴があって始めて当該発明を実施することができると主張していることには、根拠がなく、信用できない。また上訴人は引証1が高温高圧環境において加工し、また係争出願案件は常温常圧において製造していると主張している根拠は、原判決に基づき係争出願案件の特許請求の範囲第1項、第10項が常温常圧の製造環境に限定していないことなので、これを以って係争出願案に進歩性があると主張してはならない。係争出願案件は常温加工を重要な技術特徴とし、その特許請求の範囲に記載しなければならないが、係争出願案件には製造環境の事実がないことは、上訴人も否認しておらず、係争出願案件を熟知している技術者は、係争出願案件及び引証1にそれぞれ開示されている技術内容に基づき、当然係争出願案請求項1、10の製造環境を知ることができる云々としているが、その特許請求の範囲の解釈は請求項の文字を特許権を定める根拠としておらず、特許法第58条第4項の規定に違反したと述べたことは、信用できない。これに基づくと、上訴要旨が係争出願案件は引証1より進歩性があると主張し、且つ原判決には理由不備または理由矛盾の違法状況があると指摘したことは、すべて信用できない。前記の引証1はその凹部に穴の構造があることを限定しておらず、たとえ引証1がもし図6に示す通りの凹部のように穴があっても、引証1明細書第12頁第6行以下記載によると、「各突起は、ロール表面上の底端と、ロール表面から先端へ上方に延びる末端とを有する非常に小さい90゜四角錐である。先端は、シートに穴をあけるために、より小さい、さらに直立した突起を含んでもよい……」となっている。よって、たとえ直立した突起の基材を含んでいても、その開口部が小さく、その穴の上方には研磨粒子の支持点を形成し、且つ凹部は研磨粒子と接触する接触面は研磨方向の反向力を受けるので、研磨粒子には凹部と接触する接触面があり、支え及び固定を得ることができる。またその後の研磨粒子は焼結したシート状マトリックスの手順により凹部に固定し、いくつかの接触面において、研磨粒子の先端は凹部と接触し、研磨方向の反向力を受ける。一方係争出願案件はその特許請求の範囲第1項、第10項の記載に基づいており、その特徴の一つは:「研磨の他の一つの先端は当該凹槽に底面端にある。」となっているので、研磨凹槽の接触は点の接触に過ぎず、研磨は研磨過程において、接触点はこれによって反作用力を受けるためのものであり、明らかに支持が不足している。従って、原判決が原処分を維持し、係争出願案件は引証1を比較して、より強い力を有する支持構造があると言い難いと認定したことは妥当である。原判決の理由はやや完備していないが、判決の結果に影響はないので、行政訴訟法第258条の規定により、維持すべきである。上訴人の他の主張は、原審で信用されなかった主張を再び述べ、法律上の異なる見解を以って、原審での証拠選択、事実認定の職権行使について、不当であると指摘したものである。原審が全弁論要旨及び証拠調査の結果により、行った判断は論理法則または経験法則に違背しない。また証拠取捨が当事者の希望と異なり、事実の認定も当該当事者の主張と異なっても、原判決に法令に違背する状況があると言うことはできない。以上をまとめると、上訴要旨が原判決の錯誤を指摘したことには、棄却を請求し、理由があると認定することが難しいので、棄却すべきである。以上に基づき、本件上訴には理由がない。知的財産案件審理法第1条、行政訴訟法第255条第1項、第98条第1項前段により、主文の通り判決する。

2015年2月26日
最高行政裁判所第六廷
審判長裁判官 林茂権
裁判官 楊惠欽
裁判官 呉東都
裁判官 姜素娥
裁判官 許金釵
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