特許権の許可は行政機関が公権力に基づき下した行政処分であり、出願人がこれによって取得した特許権は、特許主務機関の取消確定を経なければ、特許権存続期間まで、当然有効に存在する。債権者が債務者の財産について仮差押を申立て、特許権がその後無効審判成立となり確定しても、なお債務者の権利を侵害する故意または過失があると認定することは難しい。
2016/08/01 | 2015年 前のぺージに戻る    
■ 判決分類:特許権

I 特許権の許可は行政機関が公権力に基づき下した行政処分であり、出願人がこれによって取得した特許権は、特許主務機関の取消確定を経なければ、特許権存続期間まで、当然有効に存在する。債権者が債務者の財産について仮差押を申立て、特許権がその後無効審判成立となり確定しても、なお債務者の権利を侵害する故意または過失があると認定することは難しい。

■ ハイライト
特許権の許可は行政機関が公権力に基づき下した行政処分であり、出願人がこれによって取得した特許権は、特許主務機関の取消確定を経なければ、特許権存続期間まで、当然有効に存在する。また債務者が仮差押により損害を受け、債権者に賠償を請求することは、民法侵害行為の法則による請求であり、債権者の仮差押申立てに故意または過失があって始めて行うことができる。もし債権者に債務者に対し確かに権利の存在を信じるに足りる正当な理由がある場合、その債務者の財産の仮差押行為に、債務者の権利を侵害する故意または過失があると認定することが難しい。

II 判決内容の要約

最高裁判所民事判決
【裁判番号】104年度台上字第820号
【裁判期日】2015年5月7日
【裁判事由】公平交易(取引)法違反等

上訴人 力竑科技股份有限公司
被上訴人 圓剛科技股份有限公司

前記当事者間の公平交易法等違反事件につき、上訴人は2014年1月22日付知的財産裁判所第二審判決(101年度民公上字第5号)を不服として上訴を提起した。本裁判所は以下のように判決を下す。:

主文
上訴を棄却する。
第三審の訴訟費用は上訴人の負担とする。

一 事実要約
2005年11月17日に被上訴人圓剛科技股份有限公司(以下圓剛公司という)は上訴人力竑科技股份有限公司(以下力竑公司という)が製造した「デジタルマジックカードフラッグシップ」製品(以下係争製品という)がその第I240169号発明特許(以下係争特許という)を侵害したことを理由とし、台湾台北地方裁判所(以下台北地院という)に決定により仮差押を許可するよう申立てた。その後2006年2月頃に本件訴訟を提起し、元金と利息1億5千万台湾ドルの賠償を請求したが、台北地方裁判所から圓剛公司の敗訴判決が下されたので、1千万台湾ドルの元金と利息部分のみについて、上訴を提起した。圓剛公司は、係争特許に取消原因があることを明らかに知りながら、または知ることができるのに、周知技術組合せを使用した力竑公司に対し係争特許を侵害したと宣言し、更に不当な仮差押を申立てたので、力竑公司が引続き係争製品を販売できずに甚大な損害を受けたので、当然侵害行為の賠償責任を負わなければならないとし、民法第184条第1項前段、公平交易法第22条、第24条、第31条及び会社法第23条第2項の規定により、原審の拡張声明と併せて訴えの追加を提起し、3億5千万台湾ドル及びその内の1億台湾ドルは起訴状副本送達後翌日から、その内の2億5千万台湾ドルは民事声明拡張書送達翌日から、すべての法定遲延利息を計算して連帶して支払うよう被上訴人に命じる判決を求めた。

二 両方当事者の請求内容
(一)上訴人:3億5千万台湾ドル及びその中の1億台湾ドルは起訴状写し送達後翌日から、その中の2億5千万台湾ドルは民事声明拡張書送達翌日から、すべて法定遲延利息を計算して連帶して支払うよう被上訴人に命じる。
(二)被上訴人:上訴の棄却を請求する。

三 本件の争点
債権者が債務者の財産について仮差押を申立て、特許権がその後無効審判成立となり、確定した場合、債務者の権利を侵害する故意または過失があると認定することができるか?

(一)原告主張の理由:略。判決理由説明を参照。
(二)被告答弁の理由:略。判決理由説明を参照。

四 判決理由の要約
債務者が民法第184条第1項規定により債権者の仮差押行為によって損害を受けたとして、賠償を債権者に請求する場合、債務者は債権者による仮差押の申立てが不法侵害であり、且つ故意または過失があるので、損害を受け、且つ当該損害と仮差押行為との間に相当な因果関係があると立証しなければならず、そうして始めて該当する。

財団法人台湾経済発展研究院經智研究所鑑定報告の記載では、係争製品のテレビビデオカードの構造はSAA7135ウェハー等及びCardBusバスインタフェーシングで構成されているものであり、圓剛公司が、仮差押を申立てた時に当該ウェハー、バスインタフェーシングの組合が係争特許と実質的に同一であり、及び仮差押の本件訴訟に勝訴の可能性がないと明らかに十分知っていたとは言い難い。係争特許は発明特許であり、知財局の実体的な審査を経て特許要件に該当して、始めて特許の許可を受けることができ、その後9件の無効審判案件でも知財局により無効審判不成立の査定が下され、その内の7件は行政訴訟判決により無効審判不成立の審決が維持され確定している。係争特許が現在でも有効であり、取消されていないことについて、双方も論争しておらず、圓剛公司は仮差押を申立てた時に当然係争特許に取消すべき理由があることを知るよしがなかった。

特許権の許可は行政機関が公権力に基づき下した行政処分であり、出願人がこれによって取得した特許権は、特許主務機関の取消確定を経なければ、特許権存続期間まで、当然有効に存在すると特許法第82条の規定で定められている。また債務者が仮差押により損害を受けたので、債権者に賠償を請求するのに、もし民事訴訟法第531条の規定ではなく、民法侵害行為の法則により請求する場合は、債権者の仮差押申立てに故意または過失があって始めて行うことができる。もし債権者に債務者に対し確かに権利存在を信じるに足りる正当な理由があった場合、その債務者の財産の仮差押行為に、債務者の権利を侵害する故意または過失があったと認定することが難しい。調べたところ、係争特許は発明特許であり、現在でも有効であり、知財局に取消されていないことは、原審で確定している。被上訴人は再三下記のように抗弁した。圓剛公司は係争特許の有効性を信賴して、法的手段により仮差押を申立てたが、不当に特許権を行使する故意または過失はなかった。上訴人は別の案件で下記のように述べた。「当該特許出願前にフィリップスシステムウェハーSAA7135が既に存在した」。最高行政裁判所99年度判字第1333号確定判決では:「証拠三(フィリップスSAA7135ウェハーブロック・ダイヤグラム)と証拠五(2000年CardBusバスインタフェーシング規格の関連資料)では、係争特許に進歩性がないと証明することができない」となっている。またファイルにある2005年11月7日付特許侵害鑑定研究報告書の特許と証拠物に関する記載では、「実質的に同一である」と鑑定すべきで、この特許侵害鑑定は、特許訴訟段階まで、特許権の範囲解釈と関係があるので、実体的な争議を判断するのに、当然仮差押の手続きによって審査するのではない。原審が上訴人が圓剛公司による不当な特許権行使を立証することができず、当該会社が故意または過失で上訴人に対し不当に多額の仮差押を実施したと認定することは難しく、且つ前記理由に基づき上訴人敗訴の判決を下したことは、法により間違いがない。上訴の要旨で、原審の証拠採用、事実認定の職権行使及び他の判決結果と影響が生じない理由について、原判決が不当であると指摘し、棄却を請求したことには、理由がない。

以上をまとめると、本件上訴には理由がないので、民事訴訟法第481条、第449条第1項、第78条により、主文の通り判決する。

2015年5月7日
最高裁判所民事第六廷
審判長裁判官 李彥文
裁判官 沈方維
裁判官 蔡烱燉
裁判官 呉惠郁
裁判官 簡清忠
2015年5月14日