証拠の技術内容から論理分析、推定して容易になし得ると認定でき、当業者の知識水準で審理されたものと認められる
2018/01/24 | 2017年 前のぺージに戻る    
■ 判決分類:専利権

Ⅰ 証拠の技術内容から論理分析、推定して容易になし得ると認定でき、当業者の知識水準で審理されたものと認められる

■ ハイライト
原告(係争特許権者)は2005年12月6日に特許を出願し、被告(知的財産局)は審査を経て特許査定を行った(係争特許)。その後参加人(無効審判請求人)は専利法(訳註:日本の特許法、実用新案法、意匠法に相当)第26条第2、3項規定及び同法第22条第1、4項に違反し、特許要件を満たさないとして、これに対する無効審判を請求した。被告が審理した結果、係争特許は前記専利法に違反していると認め、請求成立による取消処分を行った。原告はこれを不服として行政訴願を提起したが、経済部に棄却されたため、さらに不服として、知的財産裁判所に行政訴訟を提起した。知的財産裁判所は審理したが、依然として原告の訴えを棄却した。
 
原告は、原処分と訴願決定が単一の証拠のみに基づいて決定されており、係争特許の出願時における「その技術分野に属する通常の知識を有する者」とその「知識の水準」が説明されていないため、明らかに理由の不備という違法がみられると指摘していた。
 
上記の問題について、知的財産局は判決にて以下のように指摘している。
一.2014年版の専利法施行細則第14条第1項規定によると、いわゆる「その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者(当業者)」とは、その発明の属する技術分野における一般知識及び定常的な作業、実験を行う通常の技能を有して、出願前の先行技術を理解し、利用して、課題を解決するための技術手段を探すことができる者をいう。課題を解決しようとすることで、当業者がその他の技術分野において課題を解決するための技術手段を見つけ出すことができたならば、それはその他の技術分野における一般知識及び定常的な作業、実験を行う通常の技能も有しているといえる。

二.調べたところ係争特許の明細書に記載される「発明が属する技術分野」及び「発明の内容」から、それが熱導管とヒートシンクフィンとのカシメ接合加工による成型に関する技術分野に属することが分かるため、当業者はプレス加工関連技術分野における一般知識と通常の技能を有する者であり、かつ該プレス加工に属する技術分野の当業者は先行技術を基礎として係争特許の発明を理解することができ、即ち本件でいうところの当業者の技術水準を満たすことができる。
 
三.したがって本件は係争特許出願前の証拠1を係争特許の進歩性判断の依拠とすることができ、証拠1の技術内容はすでに該技術分野の当業者の技術水準を確立することができ、当業者が先行技術に開示された内容と定常的作業の能力により、証拠1の技術内容から論理分析と推理を行い、証拠1を簡単に変更することで係争特許の発明を容易になし得ると認定でき、無効審判は当業者の技術水準で審理されたと認めることができる。以上をまとめると、訴願決定による(原処分の)維持に誤りはない。原告の訴えには理由がなく、棄却すべきである。(資料出所:知的財産局(TIPO)/智慧財産権電子報)

Ⅱ 判決内容の要約

知的財産裁判所行政判決
【裁判番号】105年度行專訴字第27号
【裁判期日】2017年1月18日
【裁判事由】特許無効審判

原告 陳世明 
被告 経済部知的財産局
参加人 雙鴻科技股份有限公司(AURAS TECHNOLOGY CO., LTD.)
責任者 林育申(董事長)

上記当事者間における特許無効審判事件について、原告は経済部2016年2月16日経訴字第10506301390号號訴願決定を不服として行政訴訟を提起した。当裁判所は参加人に対し本件被告の訴訟に独立して参加するよう命じる決定を行った。当裁判所は次のとおり判決する。

主文
原告の訴えを棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。

一 事実要約
原告は2005年12月6日に「熱導管とヒートシンクフィンとのカシメ接合加工による成型方法」を以って特許を被告に出願し、被告が第94142916号出願案件として審査し、特許査定を行い、第I270339号特許証書(以下「係争特許」)を発給した。その後参加人は係争特許が専利法第26条第2、3項規定及び同法第22条第1、4項に違反し、特許要件を満たさないとして、これに対する無効審判を請求した。被告が審理した結果、係争特許の請求項1乃至15は前記専利法第22条第1項第1号又は第4項の規定に違反していると認め、2015年9月30日(104)智専三(一)02060字第1042139750号無効審判審決書を以って「請求項1乃至15を無効審判請求成立により取り消す」処分を行った。原告は原処分の「請求項1乃至6を無効審判請求成立により取り消す」部分を不服として行政訴願を提起したが、経済部は2016年2月16日経訴字第10506301390号訴願決定で「訴願棄却」を決定したため、原告はさらに不服として、知的財産裁判所に行政訴訟を提起した。

二 両方当事者の請求内容
(一)原告の請求:原処分の「請求項1乃至6を無効審判請求成立により取り消す」部分と訴願決定をいずれも取り消す。
(二)被告の請求:原告の訴えを棄却する。

三 本件の争点
(一)係争特許請求項4、6は許可時の専利法第26条第2、3項に違反しているのか。係争特許請求項1乃至6は許可時の専利法第22条第1項(新規性)、第4項(進歩性)に違反しているのか。
(二)訴願決定と原処分は「その技術分野に属する通常の知識を有する者」の知識水準(つまり係争特許のプレス棒がない又は直接環状凸部をプレスできるという技術的特徵は発明当時の放熱技術分野において容易に想到できるものであったのか)に論及せず、理由の不備という違法に該当するのか。
(三)原処分が係争特許について「予期せぬ効果をもたらさない」と認めたことに、理由不備の違法又は論理偏向のおそれがあるのか。
(四)係争特許請求項4、6の許可時の専利法第26条第2、3項違反は訴願機関の決定を経ずに行政訴訟を提起できるのか。

(一)原告主張の理由:省略。判決理由の説明を参照。
(二)被告答弁の理由:省略。判決理由の説明を参照。


四 判決理由の要約
(一)係争特許請求項4、6及び明細書は許可時の専利法第26条第2、3項に違反していない。
係争特許の許可時の専利法第26条第2、3項には「発明の説明は、その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者がその内容を理解し、それに基づいて再現することができるように明確かつ十分に開示されなければならない」、「特許請求の範囲は特許出願に係る発明を明確に記載し、請求項ごとに簡潔な方式で記載し、かつ明細書及び図面によって裏付けられるものでなければならない」とそれぞれ規定されている。
係争特許に係る発明の説明、特許請求の範囲及び図面の基礎において、係争特許の出願時における通常の知識を有する者はその内容を理解し、再現することができる。また係争特許の明細書及び図面には「鏡映成型」に関する記載又は説明がないが、その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者(当業者)であれば、係争特許の特許請求の範囲における記載から、出願時の通常の知識を参酌して明確にその意味を理解することができ、係争特許の請求項4、6の内容に対して疑義が生じるに至らない。係争特許の請求項4、6は係争特許許可時の専利法第26条第2、3項の規定に違反していない。

(二)係争特許の請求項1乃至6は進歩性を有さない。

(三)訴願決定と原処分が「その技術分野に属する通常の知識を有する者(当業者)」の知識水準に論及せず、理由の不備という違法があったということはない。
係争特許の明細書に記載されている「発明が属する技術分野」及び「発明の内容」から、それが熱導管とヒートシンクフィンとのカシメ接合加工による成型に関する技術分野に属することが分かるため、当業者はプレス加工関連技術分野における一般知識と通常の技能を有する者であり、かつ該プレス加工に属する技術分野の当業者は先行技術を基礎として係争特許の発明を理解することができ、即ち本件でいうところの当業者の技術水準を満たすことができる。係争特許の進歩性の有無については、上記の関連技術を有する者が出願前の先行技術により当業者の知識水準を模擬することで、係争特許の進歩性判断を行う。したがって、本件は係争特許出願前の証拠1を係争特許の進歩性判断の依拠とすることができ、証拠1の技術内容はすでに該技術分野の当業者の技術水準を確立することができ、当業者が先行技術に開示された内容と定常的作業の能力により、証拠1の技術内容から論理分析と推理を行い、証拠1の簡単な変更で係争特許の発明を容易になし得ると認定でき、無効審判は当業者の技術水準で審理されたと認めることができる。

(四)原処分が係争特許について「予期せぬ効果をもたらさない」と認めたことに、理由不備の違法又は論理偏向のおそれはない。

(五)行政訴訟法第4条第1項には「人民は中央又は地方機関の違法な行政処分によってその権利又は法益を毀損されたと認め、訴願法に基づく訴願を提起してその決定を不服とするとき、又は訴願提起から3ヵ月以上決定が為されないとき、又は訴願決定延長期間から2ヵ月以上決定が為されないときに、行政裁判所に対して取消訴訟を提起できる。」と規定されているため、取消訴訟の訴訟対象は行政処分の違法性が原告の権利又は法益を毀損されたと主張するものとなる。参加人はすでに係争特許の請求項4、6が許可時専利法第26条第2、3項に違反していることを理由の一つとして無効審判を請求し、被告が審理した結果、違反はないと認めたことについては、被告の無効審判審決書の添付ファイルを参照できる(本裁判所ファイル第19頁)。前記条文規定を参照すると、被告の行政処分が行政訴訟の対象であり、当裁判所はこれを斟酌し、訴願決定が上記無効審判請求理由について審理したか否かによって本裁判所の審理に影響が生じることはない。訴願機関は係争特許1乃至6が専利法第22条第4項規定に違反していることにより、被告による係争特許「請求項1乃至6を無効審判請求成立により取り消す」部分の処分には誤りがないと認めた(本裁判所ファイル第34頁)。係争特許請求項4、6が許可時の専利法第26条第2、3項規定に違反しているかは審理されていないが、それは結論に影響せず、違法とみなすことはできないことをここに併せて述べておく。

以上をまとめると、係争特許請求項1乃至6はその許可時の専利法第22条第4項規定に違反しており、進歩性を有しない。被告がこれに基づき「請求項1乃至6を無効審判請求成立により取り消す」と処分したことは、初頭に掲げた法規及び説明を参照した結果、法に合わないところはなく、訴願決定による(原処分の)維持に誤りはない。原告が以前からの主張にこだわり、原処分の「請求項1乃至6を無効審判請求成立により取り消す」部分と訴願決定を取り消すよう請求することには理由がなく、棄却すべきである。

2017年1月18日
知的財産裁判所第三法廷
裁判長 林欣蓉
裁判官 張銘晃
裁判官 魏玉英