実用新案の請求項に記載される非構造的特徴が構造的特徴に変更又は影響をもたらさないならば、周知の技術の運用と見なすべき
2018/01/24 | 2017年 前のぺージに戻る    
■ 判決分類:専利権

Ⅰ 実用新案の請求項に記載される非構造的特徴が構造的特徴に変更又は影響をもたらさないならば、周知の技術の運用と見なすべき

■ ハイライト
原告(係争実用新案権者)は2008年8月15日に実用新案登録を出願し、被告(知的財産局)から実用新案(以下、係争実用新案)登録を許可された。その後参加人(無効審判請求者)が専利法(訳註:日本の特許法、実用新案法、意匠法に相当)第94条第1項第1号及び第4項の規定に違反しており、実用新案登録要件に適合しないとして、これに対する無効審判を請求した。原告は訂正を提出し、被告は訂正を許可し、該訂正本(訂正版)に対して審理を行い、係争実用新案の請求項1乃至3が前記専利法規定に違反していると認め、無効審判請求成立により取り消す処分を下した。原告はこれを不服として行政訴願を提起したが経済部に棄却され、さらに不服として知的財産裁判所に行政訴訟を提起した。知的財産裁判所は審理した結果、原告の訴えを棄却した。

上述の問題について、知的財産裁判所は以下のように判決で指摘している。
一.実用新案の進歩性の審査については、請求項に記載される非構造的特徴(例えば材質、方法)が構造的特徴に変更又は影響をもたらすか否かによって決めるべきである。非構造的特徴が構造的特徴に変化又は影響をもたらさないならば、該非構造的特徴は周知の技術の運用と見なされるべきであり、先行技術にすべての構造的特徴が開示されているならば、進歩性を有しないと認定できる。
 
二.証拠4はすでに係争実用新案請求項1のすべての技術的特徴を開示しており、係争実用新案の請求項1で限定されている「各接合ユニットの材質はプラスチックである」ことは構造的特徴ではなく、係争実用新案請求項1の構造的特徴に変更又は影響をもたらさず、周知の材質の簡単な運用にすぎない。
 
三.さらに係争実用新案の請求項2乃至3は請求項1(独立項)に直接的に従属する従属項であり、その技術的特徵も証拠4の簡単な変更と運用であり、かつそれが属する技術分野における通常の知識を有する者(当業者)が全体の技術的特徴を容易になし得て、さらに予期せぬ効果ももたらさない。係争実用新案請求項1乃至3が改正前の2003年専利法第94条第4項の規定に違反しているとして、被告が「請求項1乃至3を無効審判請求成立により取り消す処分」を下したことは、法に合わないところはない。以上をまとめると、訴願決定による(原処分の)維持に誤りはない。原告が訴えには理由がなく、棄却すべきである。(資料出所:知的財産局(TIPO)/智慧財産権電子報)

Ⅱ 判決内容の要約

知的財産裁判所行政判決
【裁判番号】105年度行專訴字第56号
【裁判期日】2017年1月18日
【裁判事由】実用新案無効審判

原告 鄭○韋
被告 経済部知的財産局
参加人 張○峰

上記当事者間における実用新案無効審判事件について、原告は経済部2016年6月1日経訴字第10506306210号訴願決定を不服として行政訴訟を提起した。当裁判所は職権により参加人に対して被告の訴訟への独立参加を命じる決定を下した。当裁判所は次のとおり判決する。

主文
原告の訴えを棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。

一 事実要約
原告は2008年8月15日に「メガネの結構の改良」を以って被告に実用新案登録を出願した。実用新案登録請求の範囲は合計3項目であった。被告は第97214659号出願として方式審査を行い、許可査定を下した後、実用新案第M347579号専利証書(以下、係争実用新案)を発給した。その権利期間は2008年12月21日から2018年8月14日までであった。その後参加人は2015年3月13日に係争実用新案の請求項1乃至3が許可時、即ち2003年2月6日改正公布、2004年7月1日施行の専利法(以下、改正前2003年専利法)第94条第1項第1号及び第4項の規定に違反しており、実用新案登録要件に適合しないとして、これに対する無効審判を請求した。被告の審理を経て、被告は専利法の関連規定により訂正を許可し、本件無効審判案件は該訂正本(訂正版)に基づいて審理を行い、係争実用新案の請求項1乃至3が改正前2003年専利法第94条第4項規定に違反していると認め、請求項1乃至3について無効審判請求成立により取り消す処分を下した。原告はこれを不服として行政訴願を提起したが、経済部に2016年6月1日経訴字第10506306210号決定を以って棄却されため、その後当裁判所に行政訴訟を提起した。

二 両方当事者の請求内容
(一)原告の請求:訴願決定及び原処分の「請求項1乃至3に対する無効審判請求成立による取消」に関する部分をいずれも取り消す。
(二)被告の答弁:原告の訴えを棄却する。

三 本件の争点
証拠4は係争実用新案の請求項1乃至3が進歩性を有しないことを証明できるのか。
(一)原告の主張理由:省略。判決理由の説明を参照。
(二)被告の答弁理由:省略。判決理由の説明を参照。

四 判決理由の要約
(一)自然法則を利用した技術的思想の創作のうち、物品の形状、構造又は装置に関するものであり、産業上利用することのできるものは、改正前2003年専利法第93条、第94条第1項により出願して、実用新案登録を受けることができる。また、実用新案はその実用新案の属する技術分野における通常の知識を有する者(当業者)が出願前の先行技術に基づいて容易になし得るときは、(本法により)出願して実用新案登録を受けることができないと同法第94条第4項に定められている。実用新案が同法第94条第4項規定に違反するとき、何人も証拠を提出して、専利主務官庁に対して無効審判を請求できる。

(二)係争実用新案の技術内容
係争実用新案の訂正後の実用新案登録請求の範囲は合計3項あり、そのうち請求項1が独立項、請求項2、3はその従属項である。
請求項1:一つのフロント、少なくとも二つの接合部材、及び少なくとも二つのテンプルを含み、該フロントの両側にはそれぞれ長孔が設けられ、各長孔の位置の近くには一つの嵌合孔がそれぞれ設けられており、該接合部材はそれぞれフロントの両側に設置され、各接合部材の一端には嵌合孔と接合する嵌挿部を有し、もう一端には枢接孔を有し、さらに各接合部材の材質はプラスチックであり、該テンプルはそれぞれフロント及び接合部材と可動的に接合され、各テンプルの一端には長孔を貫通し、直接枢接孔に対応して接合する軸部を有することを特徴とするメガネの構造改良。
請求項2:該フロントの材質が金属又は非金属であってもよい請求項1のメガネの構造改良。
請求項3:各テンプルの材質が金属又は非金属であってもよく、各テンプルのもう一つの端に一つのモダンをそれぞれ有する請求項1のメガネの構造改良。

(三)参加人が係争実用新案の請求項1乃至3が進歩性を有しないと主張し、その無効審判請求理由において引用した無効審判証拠である証拠4について、次のように分析した:
1.証拠4は2005年7月6日に公開された欧州特許第1550896号「Brille」であり、その公開日は係争実用新案の出願日(2008年8月15日)よりも早く、係争実用新案の請求項1乃至3にとって先行技術であるといえる。
2.証拠4は新型メガネであり、レンズ30をブリッジで支えるフロント1~6、クリングス及びヒンジで接続されるテンプル13で構成され、該メガネ構造は構造がシンプルで、製造コストも安い。

(四)証拠4は係争実用新案の請求項1乃至3が進歩性を有しないことを証明できる:
1.係争実用新案請求項1を証拠4の技術的特徴と対比すると、証拠4はすでに係争実用新案請求項1のすべての技術的特徴を開示しており、係争実用新案請求項1と証拠4の相違点は、証拠4に係争実用新案請求項1の「各接合部材の材質はプラスチックである」という材質に関する技術的特徴が開示されていない点のみである。
2.実用新案の進歩性の審査については、請求項に記載される非構造的特徴(例えば材質、方法)が構造的特徴に変更又は影響をもたらすか否かによって決めるべきである。非構造的特徴が構造的特徴に変更又は影響をもたらさないならば、該非構造的特徴は周知の技術の運用と見なされるべきであり、先行技術にすべての構造的特徴が開示されているならば、進歩性を有しないと認定できる。係争実用新案は、汎用のメガネで採用されているネジでフロントとテンペルを接合する方法からフロントと各接合部材を組み合わせる方法に改良したものであり、請求項1に記載される「かつ各接合部材の材質はプラスチックである」ことは単に周知のプラスチックの材質を選んで用いることにすぎず、接合部材の構造的特徴に変更又は影響をもたらすことはない。証拠4はすでに係争実用新案請求項1のすべての技術的特徴を開示しており、係争実用新案の請求項1で限定されている「各接合ユニットの材質はプラスチックである」ことは構造的特徴ではなく、係争請求項1の構造的特徴に変更又は影響をもたらさず、周知の材質の簡単な運用にすぎない。さらに証拠4の作用、機能が係争実用新案の請求項1と同じで、解決しようとする課題も同じであり、両者は「各接合ユニットの材質はプラスチックである」という違いがあるのみで、その作用及び効果に影響せず、当業者が容易に想到し得るものであり、かつ予期せぬ効果をもたらさない。したがって、係争実用新案請求項1は当業者が証拠4の先行技術に基づいて容易になし得るものであり、係争実用新案のフロントと各接合部材の組合せにより、各テンペルを簡単に組み立て、しっかりと接合するという効果を達成できるため、証拠4は係争実用新案の請求項1が進歩性を有しないことを証明できる。
3.係争実用新案の請求項2乃至3は請求項1(独立項)に直接的に従属する従属項であり、その付加的な技術的特徴は請求項1をさらに限定する「フロントの材質は金属又は非金属であってもよい」、「各テンプルの材質は金属又は非金属の材質であってもよく」という材質に関する技術的特徴である。前記係争実用新案の明細書5~6頁の記載から、該金属又は非金属の材質はメガネの技術分野で汎用される材質を直接選んで用いたにすぎないことがわかり、該フロント又はテンプルの構造的特徴に変更又は影響をもたらすことはない。また、係争実用新案の請求項3の「各テンプルのもう一つの端に一つのモダンをそれぞれ有する」ことはメガネでよく見かけられる運用方法にすぎない。よって証拠4はすでに係争実用新案の請求項2乃至3の上記の付加的な技術的特徴に相当するものを開示しており、予期せぬ効果ももたらさない。よって係争実用新案の請求項2乃至3の技術的特徴は証拠4の簡単な変更及び運用であり、且つ当業者であれば係争実用新案の請求項2乃至3の全体の技術的特徴を容易になし得て、また予期せぬ効果ももたらさない。ゆえに証拠4は係争実用新案の請求項2乃至3が進歩性を有しないことを証明できる。
4.当裁判所101年度行專訴字第121号判決及び最高裁判所100年台上字第480号判決の趣旨によると、進步性の判断については採用する判断基準を明確に開示すべきであり、実際の(法適用の)包摂過程を明確に論述する必要があり、原処分及び行政訴願決定は十分に説明されていない云々と原告は主張している。
裁判所は特許(実用新案も同じ)の進歩性有無の判断において、わが国の司法実務における既存の審理手順により、まずは係争請求項の特許請求の範囲を確定し、次に先行技術(即ち引用証拠)に開示される範囲と内容に基づいて係争請求項の特許請求の範囲と先行技術との相違点を確定し、さらにその発明の属する技術分野において通常の知識を有する者(当業者)の技術水準(いわゆる「その発明の属する技術分野」は、個別の技術分野において益々専業化かつ細分化されつつある状況において、その発明の構成、目的、効果等を参考として判断を行うべきであり、いわゆる「通常の知識を有する者」とは仮想の単独の個人の技術者ではなく、関連する複数の技術分野の専門家グループの技術者を指す。)に基づいて、先行技術が開示する内容の教示、示唆、動機付け、及び特許出願時の通常の知識を参酌して、係争請求項の特許発明がそれの属する技術分野における通常の知識を有する者にとって先行技術に基づき「容易に想到」してなし得るものなのかを判断する。調べたところ、証拠4は係争実用新案請求項1のすべての技術的特徴を開示している。証拠4は係争実用新案請求項1の「各接合部材の材質はプラスチックである」という材質の特徴を開示していないが、「プラスチックの材質」は周知の応用材質であり、該プラスチックの材質は係争実用新案の接合部材の全体的な構造的特徴に影響をもたらさず、況してや係争実用新案請求項1で特定される「各接合部材の材質はプラスチックである」という材質の技術的特徴は、証拠4の先行技術に比べて、新しい技術的特徴が付与されたり、明らかに進歩している技術的貢献を有したりしていないため、進歩性を有し、実用新案権を付与して保護すべきものとは認め難い。さらに係争実用新案請求項2乃至3の技術的特徴も証拠4の簡単な変更と運用であり、かつ当業者が係争実用新案請求項2乃至3の全体の技術的特徴を容易になし得る。また予期せぬ効果がもたらされておらず、被告はすでに係争実用新案請求項1乃至3と先行技術である証拠4との実質的対比を行い、処分書には係争実用新案請求項1乃至3が進歩性を有さない理由が具体的に記載されており、何ら誤りの箇所もない。

(五)原告が以前の主張を繰り返し、訴願決定及び原処分における「請求項1乃至3を無効審判請求成立により取り消す処分」部分の取消しを請求したことには理由がなく、棄却されるべきである。
 
以上の次第で、本件原告の訴えに理由がなく、知的財産案件審理法第1条、行政訴訟法第98条第1項前段により、主文のとおり判決する。

2017年1月18日
知的財産裁判所第三法廷
裁判長 林欣蓉
裁判官 魏玉英
裁判官 張銘晃