請求項の解釈はまず内部証拠を採用すべきで、内部証拠で請求項の用語または技術特徴の意味を十分に明確にできる場合、外部証拠を別途採用する必要はない

2019-09-24 2019年
■ 判決分類:特許権

I 請求項の解釈はまず内部証拠を採用すべきで、内部証拠で請求項の用語または技術特徴の意味を十分に明確にできる場合、外部証拠を別途採用する必要はない

知的財産裁判所行政判決
【裁判番号】106,行専訴,62
【裁判期日】20190131
【裁判事由】特許無効審判
                   
原告 群聯電子股份有限公司
被告 経済部知的財産局
参加人 慧栄科技股份有限公司

 上記当事者等による特許無効審判事件について、原告が経済部2017年6月30日経訴字第10606303330号訴願決定に不服のため、行政訴訟を提起した。当裁判所より独立当事者として被告に命じて係る訴訟に参加させ、以下のとおり判決する。

主文
原告の訴えを棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。

II 判決内容の要約

一 事実要約
 原告は2008年7月9日に「データアクセス方法、この方法を使用した保存システム及びそのコントローラー」を被告に特許出願し、被告の審査の後第97125974号として査定され、第I370969号特許証書を付与された。参加人は当該特許が査定時の専利法第22条第1項第1号、第4項及び第26条第2項の規定に違反し、特許要件に該当しないとして、これに対して無効審判を請求した。被告は審査の上、「請求項1から3、9から13、19から20、22から24、30から31の無効審判成立、特許権を取消すべきである」及び「請求項8、18、29の無効審判不成立」の処分とした。原告は上記審決書の無効審判成立の処分を不服とし、訴願を提起したが、経済部に棄却されたので、当裁判所に行政訴訟を提起した。

二 両方当事者の請求内容
(一)原告の請求
1.訴願決定及び原処分の「請求項1から3、9から13、19から20、22から24、30から31の無効審判成立、特許権取消し処分」の部分を共に取消す。2.訴訟費用は被告の負担とする。
(二)被告の請求
1.原告の訴えを棄却する。2.訴訟費用は原告の負担とする。

三 本件の争点
 係争特許請求項の「新しいブロック」の解釈は何なのか?(その他争点省略)
(一)原告主張の理由:省略。判決理由の説明を参照。
(二)被告答弁の理由:省略。判決理由の説明を参照。

四 判決理由の要約
(一)係争特許はデータのアクセス方法の一つであり、データスクランブルモジュールを有しているフラッシュストレージシステムに適用し、その内のフラッシュリストレージシステムのフラッシュメモリーに複数の実体ブロックを有し、且つそれらの実体ブロックが少なくともデータエリアと、スペアエリアに分けられている。アクセスの方法はホストから指令を受信し、その指令に基づき、読み取り対象のロジックエリアと読み取り対象ページアドレスを獲得し、データブロックが読み取り対象ロジックエリアに対応する実体ブロックが新しいブロックであるかを判断した上、読み取り対象ブロックエリアの実体ブロックが新しいブロックであると判断した場合は、デフォルトデータをホストに伝送する。さらに、対応の読み取り対象ブロックの実体ブロックが新しいブロックでない場合は、データスクランブルモジュールによって、読み取り対象ブロックロジックエリアの実体ブロックからデータを読み込み、復号化したデータをホストに伝送する(付属図面一参照)。

(二)係争特許請求項の「新しいブロック」の解釈は何か?
(1) 特許権の範囲は、特許請求の範囲を基準とし、特許請求の範囲の解釈をするときは、明細書及び図面を参酌することができる(専利法第58条第4項)。請求項の解釈に用いる証拠は内部証拠及び外部証拠を含む。内部証拠には特許案の明細書、特許請求範囲、図面及び包袋を含む。外部証拠は内部証拠以外のその他証拠を指し、専門辞典、辞典、工具書、教科書、百科事典及び専門家の証言等を含む。請求項の解釈に用いる証拠は、内部証拠を先に採用するべきである。内部証拠が請求項の用語または技術特徵の意味をはっきりさせるに十分である場合、別途外部証拠証拠を採用する必要はない。
(2) 係争特許明細書第6ページに、「通常、フラッシュストレージシステムを工場から出荷する前には、フラッシュストレージシステム内部のフラッシュメモリーの初期化プロセスを実施しなければならない。このプロセスは、フラッシュメモリーのすべての新しいブロックに対して初期化を実行する(すなわち、各ブロックそれぞれのページアドレスのデータを0xFFデータに書き換える。)。しかし、この種の各ブロックに対する初期化の実行は指令の書き込みではないため、前述したデータスクランブルモジュールによって、コーディングされない。一方、ユーザー側のシステムより、この新しいフラッシュストレージシステムの新しいブロックに読み取り指令が送られると、保存していた0xFFデータが前述データスクランブルモジュールによって、リバーサルコーディングが行われる。このように、ユーザー側システムがスクランブルコードを受信することによって、識別不可となる。」とある。よって、新しいブロックが初期化の実行によって、「データスクランブルモジュールによって、コーディングされていない0xFFデータの実体ブロックに書き換える」ことがわかる。
(3) 続いて、係争特許明細書第18ページに、「一般論として、フラッシュストレージシステム100は工場出荷前に初期化プロセスが行われる、この初期化プロセスを実行するとき、フラッシュメモリー130すべての実体ブロック130-0~130-Nを初期化し、すべてのデータが0xFFデータに書き換えられる」とある。よって、前述初期化プロセスは工場出荷前の初期化プロセスであることが分かる。さらに、係争特許明細書第19ページに、「よって、データエリアの実体ブロックとスペアエリアの実体ブロックとを交代した後、初期化したばかり(すなわち、0xFFデータに書き換えた)の実体ブロック(すなわち、工場出荷したばかしの新しいブロック)に対する読み取りではスクランブルコードを受信する問題が発生しない」。この点により、係争特許が解決しようとする課題は、すなわち、初期化プロセスにおけるデータスクランブルモジュールによって、0xFFデータにコーディングされていない新しいブロックを読み取った場合、ユーザー側システムが文字化けを受信することである。一方、初期化プロセス後のデータをいったん書き込んだ後に削除された実体ブロックは、係争特許の争う範囲ではない。
(4) さらに、係争特許明細書に記載した発明の目的、発明の内容及び実施する方法を参酌したところ、係争特許の請求項に記載された「新しいブロック」は「初期化プロセスにおいて、データスクランブルモジュールによってコーディングされていない0xFFデータに属し、かつ、ブロック内のデータエリアが初期化プロセスの後に書き込まれていない実体ブロック」。…と解釈すべきである。参加人がこれをもって、新しいブロックにはいったんデータを書き込んだ後に削除したブロックも含まれると主張したことは、なお不十分である。
参加人はさらに、原告が他の案件の民事訴訟の第一審手続きに提出した原証17号の鑑定報告は、すでに他の民事訴訟手続きにおいて、「初期化プロセス期間」は「新しいブロック」を解釈する要件ではないと自称したと、主張している。しかし、調べによると、それらの内容は原告の侵害比較のための実験ステップであって、係争特許の明細書、特許請求の範囲、図面及び包袋等に記載のものではなく、内部証拠に該当せず、係争特許明細書の内容と混同したり、または特許請求の範囲の解釈根拠とすべきでない。

 以上をまとめると、被告が下した「請求項1から3、9から13、19から20、22から24、30から31の無効審判成立、特許権取消し処分」に違反や間違いはない。訴願決定が維持されたことも不適切なところはない。原告が訴願決定及び原処分「請求項1から3、9から13、19から20、22から24、30から31の無効審判成立、特許権取消し処分」の取消しを求めたことには理由がなく、棄却すべきである。

 以上を総じて論結すると、本件原告の訴えには理由がないことから、知的財産案件審理法第1条、行政訴訟法第98条第1項前段により、主文のとおり判決を下す。

2019年1月31日
知的財産裁判所第2法廷
審判長裁判官 汪漢卿
裁判官 曾啓謀
裁判官 彭洪英

106行專訴62
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