台塑汽車の商標訴訟、ひとまず勝訴

2015-06-03 2014年
■ 判決分類:商標権

I 台塑汽車の商標訴訟、ひとまず勝訴

■ ハイライト
中国企業が台湾で商標権登録を争うケースが最近増えている。中国の北汽福田汽車股份有限公司(Beiqi Foton Motor Co., Ltd.、以下「北汽福田汽車」)が経済部知的財産局に対して台朔汽車股份有限公司(Formosa Automobile Corporation、以下「台朔汽車公司」)の商標登録に対する取消審判を請求したところ取消審決が出されてしまったため、台朔汽車公司は商標を守るために裁判所に訴訟を提起せざるを得なくなった。知的財産裁判所は先日、台朔汽車公司に勝訴の判決を下したため、ひとまずは商標を保持することができた。
2001年3月、台朔汽車公司は知的財産局に対し、乗用車、車両トランスミッション、触媒コンバーター等商品20品目での使用を指定して、「台朔汽車公司マーク」商標の登録を出願し、許可査定を受けた。 
2003年11月北汽福田汽車は、台朔汽車公司が商標権を取得したものの、商標権取得後に正当な事由なくして未使用又は継続的な使用中止が3年経過しているため、知的財産局は商標法規定により職権又は取消審判請求に基づいてその登録を取り消すべきであると主張した。
北汽福田汽車が知的財産局に対して台朔汽車公司が取得した商標権の取消審判を請求したため、知的財産局は審理した結果、台朔汽車公司の商標登録取消を公告した。台朔汽車公司はこれを不服として知的財産局を相手取り訴訟を提起し、裁判所は北汽福田汽車に訴訟へ参加するよう命じた。台朔汽車公司は裁判所に対して挙証し、2006年から現在まで台宇汽車股份有限公司 (FORMOSA AUTOMOBILE SALES CORPORATION、以下「台宇公司」)に対して台朔商標を車両及びその部品・ユニットの製造、販売、修理及び保守の業務に使用することを許諾したと主張した。
これに対して知的財産局は、商品ラベルに表示されている台朔の図案は、その下に位置する外国語の「FORMOSA」と密接に関連しており、その全体が消費者に与える印象は外国語と図案とを結合した組合せ商標に該当し、それは単純な図案である台朔商標とは異なり、同一の商標であるとみなすことはできない、と答弁した。
しかしながら裁判所は、台朔汽車公司が台朔商標のすべての図案と外国語の「FORMOSA 」を組み合わせたことについて、消費者は台朔商標の先に登録された図案と結び付け、正確に商品の製造元を識別できるため、知的財産局の答弁には誤りがあると認めた。本件商標訴訟はさらに最高行政裁判所に上訴できる。(2014年6月18日、工商時報 A12面)

II 判決内容の要約

知的財産裁判所行政判決
【裁判番号】102年度行商訴字第124号
【裁判期日】2014年5月22日
【裁判事由】商標登録取消

原告 台朔汽車股份有限公司(Formosa Automobile Corporation)
被告 経済部知的財産局

上記当事者間における商標登録取消事件について、原告は経済部の2013年8月30日経訴字第10206105860号訴願決定を不服とし行政訴訟を提起し、本裁判所は参加人に対し被告の訴訟に独立して参加するよう命じた。本裁判所は次のとおり判決する。

主文
訴願決定及び原処分が登録第1033546号「台朔汽車公司マーク」商標の指定商品「乗用車、トラック、ジープ、レクリエーショナル・ビークル(RV)、車体、ホイール、自動車用ハンドル、ドライブシャフト、車両用モーター、フロントガラス、車両用エンジン、電気自動車、電気スクーター、車両用トランスミッション、触媒コンバーター、車両用サスペンション、車両用ABS」に対して行った「取消審判請求成立」の部分を取り消す。
原告の余の請求を棄却する。
訴訟費用は二分の一を被告の負担とし、余を原告の負担とする。

一 事実要約
原告は2001年3月14日に被告に対して当時の商標法施行細則第49条に定められる商品及び役務区分表第12類の乗用車、トラック、ジープ、レクリエーショナル・ビークル(RV)、車体、ホイール、自動車用ハンドル、ドライブシャフト、車両用モーター、フロントガラス、車両用エンジン、電気自動車、電気スクーター、車両用トランスミッション、触媒コンバーター、車両用サスペンション、車両用ABS、自転車、船舶、飛行機等の商品での使用を指定し、「台朔汽車公司マーク」商標の登録を出願し、被告の審査を経て、第1033546号登録商標(以下「係争商標」)として登録を許可された。参加人はその後該商標が2003年11月28日改正施行の商標法(以下、「改正前商標法」)第57条第1項第2号の規定に基づき、2012年1月10日にその商標取消審判を請求した。被告の審理期間において、現行商標法が2011年7月1日に改正施行され、現行商標法第107条第1項規定に基づき、未処分であった商標取消審判案件については、本法改正施行後の規定を適用し処理するが、改正施行前に既に法に基づき進行していた手続については、その効力は影響を受けない。本件の原取消審判請求は改正前商標法第57條第1項第2号規定に基づき行われ、これはすでに現行商標法第63条第1項第2号規定に改正されている。被告は審理した結果、係争商標が現行商標法第63条第1項第2号(正当な理由なくして未使用又は継続的な使用中止が3年経過したもの)に該当していると認定した。その後2013年4月1日に中台廃字第1010019号商標取消処分書を以って係争商標の登録を取り消すべきであるとの行政処分(以下「原処分」)を行った。原告は原処分を不服として行政訴願を提起し、経済部は2013年8月30日経訴字第10206105860号決定で棄却した。原告はこれを不服として、その後本裁判所に行政訴訟を提起した。本裁判所は、本件訴訟の結果により訴願決定及び原処分が取り消されたならば、参加人の権利及び法律上の利益に損害をもたらすと認め、職権に基づきそれ(参加人)に対し独立して被告の訴訟に参加するよう命じることを決定した。

二 両方当事者の請求内容
原告:原処分及び訴願決定の取消を請求する。
被告:原告請求の棄却を請求する。

三 本件の争点
本件当事者の主な争点は確かに以下にある。係争商標は正当な事由がなくして未使用又は継続的な使用中止が3年経過しているか否か。
原告が提出した事実証拠は係争商標の使用を証明できるか否か。指定商品の範囲はいかなるものか(本裁判所ファイル第94頁を参照)。

四 判決理由の要約
一.係争商標は一部の指定商品についてのみ取消事由がある:
(一)商標権維持のための使用の要件:
1.商標権維持のための商標使用:
商標登録後に正当な事由がなくして未使用又は継続的な使用中止が3年経過しているとき、商標主務機関は職権により、又は(取消審判)請求によりその登録を取り消すべきであると、商標法第63条第1項第2号に規定されている。よって、登録商標は使用の事実があって、始めてその商標権を保有することができる。これによりその商標権を維持できるため、「商標権維持のための使用」と呼ばれている。商標法第63条第1項第2号は商標権者がその権利を維持するために使用する典型であり、使用主義を支えるもので、登録主義を補充する制度であるため、商標権者が自ら実際に使用して始めて本号の規定に違反しないものとなる。

2. 商標権維持のための使用の斟酌要素:
商標権維持のための使用により、関連する消費者にマーク及び商品又は役務を識別させて商標権者の出所と信用を表彰するに足る必要がある。
本裁判所は係争商標が使用されているか否か、商標権維持のための使用の要件を満たしているかを調べるため、(1)原告の主観的意思は、販売を目的としていること、(2)原告は客観的に、商標を商品、役務又はそれと関連する物品に用いるか、又は平面画像、デジタル動画、電子メディア又はその他のメディアを利用するかして、関連する消費者にそれが商標であると認識されること、(3)原告は係争商標全体を使用すべきであり、任意に分割してはならないこと、(4)他人の商標だと誤認されるおそれがあるものを禁止し、原告は随意に変換、又は付記を加えて使用してはならないこと、(5)係争商標は登録時の指定商品又は指定役務に使用されるべきであること、(6)係争商標登録後未使用の期間が3年を超えるとき、係争商標には取消事由が存在すること、という要素を総合的に考慮すべきである。

(二)係争商標は車両及びその部品・ユニット等の商品に使用されている:
知的財産局は商標の未使用期間が3年を超えていると認定した。商標権者は商標使用の事実を提出し、かつその使用は商業上の取引習慣に適合して商標権者には商標未使用の消極的事実がないことを証明すべきである。よって商標の使用事実の有無については、商標権者が挙証する責任を負うべきであり、即ち商標が取消審判請求より前の3年間に商標を指定商品又は指定役務に使用した事実を証明する関連証拠を提出しなければならない。その使用は商業上の取引習慣に適合し、関連する消費者にマーク及び商品又は役務を識別させることにより商標権者の出所と信用を表彰するに足りて、始めて商標権者が自らの登録商標を真に使用したことになる。

1.係争商標の指定商品の範囲:
原告は1998年に設立され、その営業の範囲は「自動車及びその部品製造業、機械設備製造業、自動車修理業」等の項目であり、自動車部品の製造及び自動車修理サービスの提供等を業としていることは事実である。原告は2001年3月14日に被告に対して当時の商標法施行細則第49条に定められる商品及び役務区分表第12類の乗用車、トラック、ジープ、レクリエーショナル・ビークル(RV)、車体、ホイール、自動車用ハンドル、ドライブシャフト、車両用モーター、フロントガラス、車両用エンジン、電気自動車、電気スクーター、車両用トランスミッション、触媒コンバーター、車両用サスペンション、車両用ABS、自転車、船舶、航空機等の商品での使用を指定し、「台朔汽車公司マーク」商標の登録を出願した。被告の審査を経て、第1033546号登録商標として登録を許可され、商標専用期限は2023年1月31日までとなっている。

2.原告は2006年台宇公司に係争商標の使用を許諾している:
原告は2006年自動車の生産を中止している。しかし自動車製造業者であればいずれも車両の販売以外に、顧客に販売後の保守及び修理サービスを提供するとともに、修理に必要な関連する部品・ユニットを製造し続ける。よって原告は2006年7月16日にそれが投資する子会社の台宇汽車股份有限公司 (Formosa Automobile Sales Corporation、以下「台宇公司」)と総代理店の契約を結び、該契約書第7条には、原告が台宇公司に係争商標を継続して使用することを許諾し、台宇公司とその代理店は自動車関連部品・ユニットの製造、販売を継続し、修理・保守サービスを提供する等の事実が規定されている。ネット上の報道、「今周刊」(訳注:ビジネス誌名)及び総代理店契約等の添付書類から証明できる(取消審判ファイル第18乃至27、105乃至110頁を参照)。まさに原告は2006年から現時点まで、台宇公司に係争商標を車両及びその部品・ユニットの製造、販売、修理及び保守の業務に使用することを許諾していた。

3.台宇公司は係争商標を一部の指定商品に使用している:
(1)被告は、台宇公司が販売する車両部品に関連する統一発票(領収書)、統一発票リスト又は商品発送伝票には係争商標がなく、商品の写真とラベルには期日がなく、ショックアブソーバーの台朔の図形、外国語の「FORMOSA」及び部品番号「YAKZ000000000A」等のラベルはテープで貼付したものであり、随時貼付できるものなので、係争商標の使用があったとは証明できない云々と抗弁している。しかしながら、調べたところショックアブソーバーとドライブシャフトは金属鋳造物であり、その材質が硬く商品本体に文字を印刷することは難しいため、ショックアブソーバーとドライブシャフトの関連する型番号は、ラベルを商品に貼付する方法で商標表示するのが、実施可能な方法である。
原告が提出したショックアブソーバーの実物写真によって、台宇公司が2010年8月7日に販売したショックアブソーバーに係争商標が表示されていることが証明されている。
台宇公司の2009年度、2010年度の財務諸表並びに会計士監査報告書及び営業収益資料には、原告と台宇公司との間に継続的な取引と運営の事実が記載され、台宇公司が2010年から2012年までの間に車両関連商品を販売しており、関連する消費者は台宇公司の販売する商品の包装と本体から、係争商標がこれらの商品に使用されているのを知悉できると認めるに足る。

(2)原告が提出した台宇公司のサービス工場作業請負明細書を見ると、台宇公司が台湾地区に34カ所の特約工場を有し、台湾地区各地に分布していることが分かる。その中の特約サービス工場である道成公司の作業請負書、工場の外に掲げられている看板、顧客の修理伝票、2011年2月16日に顧客に発行された統一発票及び修理部品の写真等をみると、すべて係争商標が表示されている。

(3)台宇公司が2011年2月11日晟楓公司に発行した統一發票、商品発送伝票を係争商標の図案が表示されるホイールキャップの実物写真と互いに照合すると、晟楓公司が係争商標を表示した商品を販売していたことが分かる。台宇公司が2011年2月11日に係争商標が表示されたホイールキャップを晟楓公司に販売したと認めるに足る。

(4)車両の取引習慣を参酌し、車両取扱業者が車両を代理販売する範囲には、製造元の新車と中古車以外に車両の保守と部品交換(修理)等の項目も含まれている。たとえ原告が新型車両の生産を中止しても、原告がすでに販売した車両に車両の保守・修理サービスを提供し続けているため、関連する自動車部品・ユニットを生産し続け、使用に供しているはずである。よって、台宇汽車はその特約サービス工場と契約し、車両の修理・検査に必要な車両部品・ユニットを提供し続けていた。

(5)車両の構造は複雑で、エンジン部品だけみても発電機、カムシャフト、ピストン、オイルフィルター等の必要部品を含む多種の部品から構成されており、車両と部品・ユニットが包摂する範囲は極めて広い。車両の代理販売と修理作業の標準化のために、台宇汽車の特約サービス工場は係争商標が表示された部品パンフレットに基づいてこれを行っており、これにより車両の代理販売と修理の流れが一致する。原告が作成した計341頁の部品パンフレットを参照すると、車両とその部品・ユニット等の資料が詳細に記載され、係争商標の指定商品である乗用車、トラック、ジープ、レクリエーショナル・ビークル(RV)、車体、ホイール、自動車用ハンドル、ドライブシャフト、車両用モーター、フロントガラス、車両用エンジン、電気自動車、電気スクーター、車両用トランスミッション、触媒コンバーター、車両用サスペンション、車両用ABS等の商品が含まれている(本裁判所の証拠保管庫を参照)。

(6)車両とその部品を自転車、船舶及び航空機等の商品と比べると、前者は陸上用の動力を有する交通機械又は装置であり、後者の自転車は通常人力によって動くもの、船舶と航空機は海上と空中の交通機械又は装置である。よって機能、材料又は生産者等に関する商品の要素は、共通又は関連する点を有さない。原告が提出した事実証拠は係争商標が車両及びその部品等の指定商品に使用していたことを証明できるが、一般的な社会通念と市場取引状況からみて、係争商標が自転車、船舶及び航空機の指定商品に使用されていたことは証明できない。被告が係争商標は自転車、船舶、航空機等の商品部分について商標登録の取消事由があると抗弁していることは、正当である。

二.本判決の結論:

以上をまとめると、原告は2006年から現時点まで台宇公司に対して係争商標を車両及びその部品の製造、販売、修理及び保守の業務に使用することを許諾しており、台宇公司は台湾地区において多数の特約サービス工場を有し、原告が2008年に新型車両の生産を中止した後も、特約サービス工場では中古車の売買並びに車両の保守及び修理(部品交換)等の業務に従事してきた。本件は原告が提出した証拠資料に基づき、原告が参加人による2012年1月10日付取消審判請求より前の3年間に乗用車、トラック、ジープ、レクリエーショナル・ビークル(RV)、車体、ホイール、自動車用ハンドル、ドライブシャフト、車両用モーター、フロントガラス、車両用エンジン、電気自動車、電気スクーター、車両用トランスミッション、触媒コンバーター、車両用サスペンション、車両用ABS等の指定商品で係争商標を使用していたと認めることができる。よって、係争商標はこの部分について、商標法第63条第1項第2号の規定を適用しない。

これにより、被告が係争商標の上記指定商品における未使用を以って、商標法第63条第1項第2号(に規定される取消事由)に該当するとし、該部分の取消審判申立成立の処分を下したことは法に合わず、訴願決定を維持したことも適切ではない。

本件原告が提出した証拠資料により、原告が参加人による2012年1月10日付取消審判請求より前の3年間に係争商標の指定商品である自転車、船舶、航空機の部分に使用したとは証明できず、係争商標は該商品部分については商標法第63条第1項第2号に該当している。被告が係争商標の自転車、船舶、航空機等商品の部分について取消審判申立成立の処分を行ったことに規定に合わないところはなく、訴願決定が該部分について維持したことも不適切なところはない。

以上の次第で、本件原告の請求には一部理由があり、一部理由がなく、智慧財産案件審理法(知的財産案件審理法)第1条、行政訴訟法第104条、民事訴訟法第79条に基づき、主文のとおり判決する。

2014年5月22日
知的財産裁判所第二法廷
裁判長 陳忠行
裁判官 熊誦梅
裁判官 林洲富
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