商標法第30条第1項第12号「意図的に摸倣し登録出願したもの」に係る判断と認定

2020-07-24 2019年
■ 判決分類:商標権

I 商標法第30条第1項第12号「意図的に摸倣し登録出願したもの」に係る判断と認定

■ ハイライト
原告は「JIU TANG」商標を以って第37類「各種建築物の建設…左官工事」役務での使用を指定し、被告に登録を出願し、登録第1789433号商標(以下「係争商標」)として登録を許可された。その後参加人である久樘開発股份有限公司等3社が商標登録異議を申し立てて、係争商標は参加人3社が先使用する「久樘」商標(以下「引用商標」)を模倣したもので、商標法第30条第1項第12号規定に違反すると主張した。被告は審理した結果、係争商標の登録を取り消す処分を下した。原告はこれを不服として行政訴願を提起し、棄却され、原告はなお不服として、その後裁判所に行政訴訟を提起した。
原告と参加人3社には密接な地縁関係があり、また互いに競合する同業同士という関係にある。原告は建築物の販売、建設及び企画設計等の役務における市場情報に対して、一般人よりも熟知し注目しており、参加人3社の推進する開発プロジェクトは大手各紙に広告が掲載されていたことから、原告は引用商標が建築物の販売、建設及び企画設計等の役務に先使用されていた事実を知らなかったと言い逃れすることは難しい。まして原告はかつて2015年1月20日に「久樘営造JIU TANG CONSTRUCT及び図」の商標登録を出願しており、被告は当該商標が本件引用商標を意図的に模倣したものと認定して登録を拒絶しており、原告が少なくとも2015年10月27日からは引用商標の存在を知っていたと認めるに足る。原告は拒絶された商標の図案から「久樘営造」の漢字と図を削除し、「JIU TANG」のアルファベットのみ残したが、全体を観察すると、係争商標はなお引用商標と高度な類似を構成する商標であり、しかも引用商標と高度に類似する役務での使用を指定しており、原告は意図的に模倣して係争商標の登録を出願したと認めるに足る。

II 判決内容の要約

知的財産裁判所行政判決
【裁判番号】107年度行商訴字第64号
【裁判期日】2019年1月24日
【裁判事由】商標登録異議

原告 久樘営造股份有限公司
被告 経済部知的財産局
参加人 久樘開発股份有限公司
参加人 〇〇建設股份有限公司
参加人 久億営造有限公司

上記当事者間の商標登録異議事件について、原告は経済部2018年5月24日経訴字第10706305120号訴願決定を不服として行政訴訟を提起しており、当裁判所は参加人に対して被告の訴訟に独立して参加するよう命じ、次のとおり判決する。

主文
原告の訴えを棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。

一 事実要約
原告は2015年12月1日に「JIU TANG」商標を以って当時の商標法施行細則第19条で定める商品及び役務区分表第37類「各種建築物の建設;各種建築物の建設の請負;工場の建設;倉庫の建設及び修理;建築物の施工監督;建築物の取壊し;建設に関する情報の提供;建設工事に関する情報;建築物修理情報の提供;建設工事に関する助言;内装仕上工事;広告工事;壁紙貼り;展示会ブース及び店舗の工事;ドア及び窓の取付け修理;ドア及び窓の取付け、ガラス製ドア及び窓の修理;大工工事;土木工事の建設;土木工事の修理;土木工事の建設及び修理;造園工事の施工;足場組立て;れんがの工事;石の工事;パイプラインの敷設工事及び保守;パイプラインの土木工事;屋根工事;建設工事の管理;不動産の管理;造園施工;防水工事;熱絶縁工事;建物シーリング工事;水道電気工事;塗装工事;左官工事」役務での使用を指定して被告に登録を出願し、被告から登録第1789433号商標(商標の図案は添付図一に示す通り、以下「係争商標」)として登録を許可された。その後参加人である久樘開発股份有限公司(以下「久樘開発公司」)、○○建設股份有限公司(以下「○○建設公司」)及び久億営造有限公司(以下「久億営造公司」)は2016 年11月30日に商標登録異議を申し立て、係争商標は参加人3社が先使用している「久樘」商標(以下「引用商標」、添付図二に示す通り)(当該「久樘」商標はその後参加人久樘開発公司によって2015 年6 月8 日に登録出願がなされ、被告から登録第01778462号商標として登録が許可され、2016 年7 月1 日に登録が公告されており、ファイルに記録されている)を模倣しており、商標法第30条第1 項第10号及び第12号規定に違反していると主張した。被告が審理した結果、係争商標の登録は商標法第30条第1 項第12号規定に違反していると認め、2018 年1 月30日中台異字第G01050723 号商標登録異議決定書を以って係争商標の登録を取り消す処分を下した(係争商標の登録が同条項第10号の規定に違反しているかは、すでに審理の必要がない)。原告はこれを不服として行政訴願を提起したが、経済部により2018年5月24日に経訴字第10706305120号訴願決定を以って棄却され、その後当裁判所に行政訴訟を提起した。当裁判所は本件判決の結果によって、訴願決定と原処分の取消しが必要であると認められた場合、参加人の権利又は法律上の利益を損なう恐れがあると認め、職権に基づいて参加人に対して本件被告の訴訟に独立して参加するよう命じた。

二 両方当事者の請求内容
(一)原告の請求:
1.原処分及び訴願決定をいずれも取り消す。2.訴訟費用は被告の負担とする。
(二)被告の請求:
原告の訴えを棄却し、訴訟費用は原告の負担とする。
(三)参加人の主張:
原告の訴えを棄却し、訴訟費用は原告の負担とする。

三 本件の争点
係争商標の登録には商標法第30条第1項第12号規定の違反があるのか。

四 判決理由の要約
(一)参加人は、久樘開発公司、久億営造公司及び○○建設公司はいずれも久億機構グループに所属し、2005年から新規プロジェクトの開発、建設、営造、建築物及び建材の販売、建設及び企画設計等の一連の不動産関連サービス及び活動を共同で行い、長年にわたり、マーケティングの目的で「久樘」の商標及びトレードドレスをそれら3社が共同で推進する建築物及び開発プロジェクトに関連する広告に使用してきたと主張して、「久樘太陽城」等プロジェクト22件の使用ライセンス(使用ライセンスを取得した時期は2006~2018年)、及び「久樘崇德巴黎」、「久樘法國莊園」、「久樘好雅」、「久樘天鵝堡2期」、「久樘拾富」、「久樘好禮」、「久樘雅悅」、「久樘童年好好」プロジェクトの広告文面並びに「久樘天鵝堡」、「久樘天鵝堡2期」、「久樘法國莊園」、「久樘太陽城」、「久樘崇德巴黎」プロジェクトの新聞広告(掲載時期は2006年1月~2013年3月)を証拠として提出している。参考人証拠18の使用ライセンスの記載によると、各開発プロジェクトの建設業者はいずれも久億営造公司であり、建築主は久樘開発公司又は○○建設公司である。さらに参考人証拠19-1~19-8の広告宣伝には、「久樘」の二文字を含む開発プロジェクト名が多数記載され、「久億機構久樘開発○○建設」、「第一品牌(訳注:トップブランド)/久億機構」、「全案規畫(訳注:プロジェクト企画)/久樘開発」、「投資興建(訳注:投資建設)/○○建設」、「甲級営造(訳注:A級総合建設業者)/久億営造」等の文言が明記されている。広告宣伝には記載日がないが、すでに参考人証拠18の開発プロジェクトのマーケティングに使用されており、その時期は使用ライセンスの取得日より早いはずであり(通常、開発プロジェクトでは建設段階にすでに対外的に広告マーケティングや販売を開始し、竣工した後に使用ライセンスを申請、取得する)、新聞に掲載された開発プロジェクトの広告にはいずれも掲載日が明記され、各開発プロジェクトの使用ライセンスの期日と互いに照らし合わせることができる。当裁判所は総合的にみて、参考人が提出した上記証拠は参加人3社が少なくとも2006年から引用商標「久樘」を建築物の販売、建設及び企画設計等の関連する役務に共同で使用してきたことを証明するに足ると認める。
(二)引用商標は少なくとも2006年から参加人3社により共同使用されており、その後2015年に参加人久樘開発公司が商標登録を出願し、登録第1778462号商標権を取得している。また、参加人3社は商標法第30條第1項第12号規定により本件を請求しているため、参加人3社はいずれも適格な当事者であり、しかも係争商標と引用商標の図案が同一であるか又は類似しているか、商品又は役務の区分が同一であるか又は類似しているかについては、先使用商標の図案と実際に使用している区分を基準とすべきである。
(三)係争商標は設計が施されていない横書きのアルファベット「JIU TANG」で構成され、引用商標「久樘」と比べると、一つはアルファベット、もう一つは漢字であるものの、「教育部中文譯音轉換系統(教育部中国語音訳変換システム)」によると、「久」及び「樘」と同音の「堂」を検索すると、その漢字のピンインはそれぞれ「JIU」と「TANG」であるため、両商標の称呼と観念はいずれもほぼ同じであり、関連の消費者が時間と場所を異にして隔離的に観察するか、又は実際の取引において一連に称呼するかした場合、両商標の表彰する商品又は役務が同一の出所からのものである、又は同一ではないが関連の出所からのものであると誤認する可能性があり、類似を構成する商標に該当し、しかも類似度は極めて高い。
(四)係争商標の指定役務は「各種建築物の建設;各種建築物の建設の請負;工場の建設;倉庫の建設及び修理;建築物の施工監督;建築物の取壊し;建設に関する情報の提供;建設工事に関する情報;建築物修理情報の提供;建設工事に関する助言;内装仕上工事;広告工事;壁紙貼り;展示会ブース及び店舗の工事;ドア及び窓の取付け修理;ドア及び窓の取付け、ガラス製ドア及び窓の修理;大工工事;土木工事の建設;土木工事の修理;土木工事の建設及び修理;造園工事の施工;足場組立て;れんがの工事;石の工事;パイプラインの敷設工事及び保守;パイプラインの土木工事;屋根工事;建設工事の管理;不動産の管理;造園施工;防水工事;熱絶縁工事;建物シーリング工事;水道電気工事;塗装工事;左官工事」であり、引用商標が先使用する建築物の販売、建設及び企画設計等の関連役務と比べると、両者が提供する役務の性質と内容は極めて類似しており、しかも原告証拠4に示されている「建設公司は必ずしも営造資格があるとは限らず(ある会社は営造公司と建設公司の資格を有し、ある会社は単なる建設会社である)、もし営造資格がない企業ならば、その建築物の建設を営造業者に委託しなければならず、自ら作業員を派遣して建設してはならない」との記載からわかるように、両者の役務は通常、同一業者が提供するもの、又は消費者の同じニーズを満足するものであり、消費者、役務提供者及び営業場所等の要素についても共通する又は関連するところがあり、一般的社会通念及び市場取引の状況から判断して、同一又は類似の役務であり、類似度は極めて高い。
(五)参加人3社はいずれも所在地が台中市神岡区であり、原告公司の所在地は台中市北屯区であり、しかも参加人3社は台中市北屯区で「久樘崇德巴黎」、「久樘經貿巴黎」という開発プロジェクトを推進したことがあり、原告と参加人3社には密接な地縁関係がある。また原告と参加人3社とは営造建設等の関連する役務に従事する業者であり、互いに競合する同業同士という関係にある。原告は建築物の販売、建設及び企画設計等の役務における市場情報に対して、一般人よりもより熟知し注目しており、参加人3社の推進する開発プロジェクトは大手各紙に広告が掲載されていたことから、原告は引用商標が建築物の販売、建設及び企画設計等の役務に先使用されていた事実を知らなかったと言い逃れすることは難しい。まして原告は2015年1月20日に「久樘営造JIU TANG CONSTRUCT及び図」の商標登録を出願し、被告は当該商標が本件引用商標を意図的に模倣したもので、商標法第30条第1項第12号規定に違反していると認め、2015年10月27日商標拒絶第366267号査定書を以って拒絶しており、原告が少なくとも2015年10月27日からは引用商標の存在を知っていたと認めるに足る。原告は拒絶された商標の図案から「久樘営造」の漢字と図を削除し、「JIU TANG」のアルファベットのみ残したが、全体を観察すると、係争商標はなお引用商標と高度な類似を構成する商標であり、しかも引用商標と高度に類似する役務での使用を指定しており、原告は意図的に模倣して係争商標の登録を出願したと認めるに足る。
(六)原告は、2007年に「久樘生物科技有限公司」を設立して、経営に成功し、2014年に営造業に経営を拡大して「久樘営造股份有限公司」を設立したことから、原告が関連企業の社名から「久樘」をとって社名の主要部分として使用したことから、善意の使用であることがわかる云々、と主張している。しかし調べたところ、参加人が提出した「臺灣開放政府資料搜尋OPEN GOVTW」サイトにおける「久樘生物科技有限公司」の検索情報からわかるように、「久樘生物科技有限公司」は2017年5月31日に「私房貨櫃有限公司」から社名を変更しており、係争商標の出願日(2015年12月1日)の後である。よってその関連企業が2007年から「久樘」を社名の主要部分としており、「JIU TANG」で商標登録を出願したことに模倣の意図はないという原告の主張は、明らかに採用できない。
(七)以上をまとめると、係争商標と引用商標は高度に類似し、係争商標の指定役務と引用商標が先使用した役務区分とは同一又は類似のものであり、係争商標の登録は商標法第30条第1 項第12号規定に違反し、登録できない事由があり、原処分で行った係争商標の登録取消し処分には違法なところがなく、それを維持する訴願決定にも法に合わないところはない。

以上の次第で、本件原告の請求には理由がなく、智慧財産案件審理法(知的財産事件審理法)第1条,行政訴訟法第98条第1項前段に基づいて、主文のとおり判決する。

2019年1月24日
知的財産裁判所第二法廷
裁判長 汪漢卿
裁判官 曾啟謀
裁判官 彭洪英
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