予備校が「台大」で課程を販促!台湾大学は「商標権侵害」で提訴し100万新台湾ドルの賠償金を獲得

2021-02-18 2020年
■ 判決分類:商標権

I  予備校が「台大」で課程を販促!台湾大学は「商標権侵害」で提訴し100万新台湾ドルの賠償金を獲得

■ ハイライト
高雄の某予備校が「台大」、「TAIDA」等の文字をその学習プラットフォームや課程に使用していた。国立台湾大学(National Taiwan University)はこれを発見した後、学校の長い歴史を示す商標権が侵害され、これによりこの予備校は消費者を誤認させ、見たときに混同させるおそれがあるとして提訴し、300万新台湾ドルの損害賠償を請求するとともに、同一又は類似の商標を再び使用しないよう請求した。
知的財産裁判所は審理した結果、該予備校がサイトにおいて「台大」、「TAI-DA」等の文字を使用して商標権を侵害したことは事実であり、それが販売するオンライン課程及びテキストはいずれも試験(合格)を目的とするものであり、教育と研究を目的とするものではなく、そこにおける使用は確かに「台大」そのものの品質やイメージを損ない、減損や負の連想をもたらすと認めた。また、その他の機関もこれを名称としているという部分について裁判官は、異なる分野におけるそれらの文字の使用は消費者を混同させることはないと認め、予備校敗訴で結審し、台湾大学に100万新台湾ドルの損害賠償金を支払うのが妥当であるとの判決を下した。

II 判決内容の要約

知的財産裁判所民事判決
【裁判番号】108年度民商訴字第23号
【裁判期日】2020年 5月11日
【裁判事由】商標権侵害行為差止め(排除)等

原告 国立台湾大学(National Taiwan University)
法定代理人 管中閔
被告 許江秀芝即ち高雄市私立立功升学文理電機技能外語短期補習班
   台大数位科技教育股份有限公司
法定代理人 許進福

上記当事者間の商標権侵害行為差止め等事件について、当裁判所は2020年4月20日に口頭弁論を終え、次のとおり判決する。

主文
一、 被告許江秀芝即ち高雄市私立立功升学文理電機技能外語短期補習班、台大数位科技教育股份有限公司はいずれも「台大」、「TAIDA」という文字と同一又は類似の商標を、予備校、オンライン課程のe-ラーニング/オンライン学習プラットフォーム及び通信教育課程等の教育サービスという同一又は類似の商品又は役務において使用してはならず、並びに該商品又は役務に関連する商業文書または広告に使用してはならず、又はデジタル視聴覚メディア、電子メディア、インターネット又はその他の媒体等の方式を以ってこれを行ってはならない。すでに使用したものは除去しなければならない。
二、 被告許江秀芝即ち高雄市私立立功升学文理電機技能外語短期補習班と台大数位科技教育股份有限公司は連帯で原告に100万新台湾ドル及び2019年5月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。被告台大数位科技教育股份有限公司と被告許進福は連帯で原告に100万新台湾ドル及び2019年5月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。以上に命じた支払いについて、いずれか一被告がすでにその支払い義務を履行したならば、その他の被告は支払い範囲において支払い義務を免除する。
三、 原告のその他の訴えを棄却する。
四、 訴訟費用は被告が連帯で三分の一を負担し、原告がその他を負担する。
五、 本判決第二項は原告が被告に33万4000新台湾ドルの担保を立てた後に、仮執行を行うことができる。ただし被告が原告に100万新台湾ドルの担保を立てれば、仮執行を免脱できる。
六、 原告そのその他の仮執行に係る訴えは棄却する。

一 事実要約
 原告は登録第00164099号「台大」商標、第01506222号「TAIDA」商標、第01762827号「TAIDA」商標、第01633424号「TAIDA」商標、第01635783号「TAIDA」商標(添付図1-1乃至1-5のとおり。以下併せて「係争商標」という)の商標権者である。「臺大」及び「台大」は原告国立台湾大学の略称であり、前身は日本統治時代の台北帝国大学で、1928年に創立され、台湾の光復(植民地からの独立)後に組織が再編成されて国立台湾大学に改名された。創立から現在まで90年間にわたって、台湾地区における最高の学府であり、世界的に有名な大学でもあり、学術研究と教育において優れた成果をあげ、無数の英才を輩出しており、その名声は高く、広く知られており、すでに国民にとって広く認識、熟知され、知名度と識別力が極めて高い著名商標である。ところが、被告許江秀芝即ち高雄市私立立功升学文理電機技能外語短期補習班(以下「立功補習班」という)、台大数位科技教育股份有限公司(以下「台大数位公司」という)は原告の許諾を得ずに、「台大」、「TAIDA 」、「台大數位學院」、「台大數位科技學院」等の文字を予備校、オンライン課程のe-ラーニング/オンライン学習プラットフォーム及び通信教育課程等の教育サービスという同一又は類似の商品又は役務において無断で使用し、オンラインショッピング取引プラットフォームのオフィシャルアカウントとし、該予備校の課程及びテキストや問題集等の教材を陳列、販売した。同一又は類似の商品又は役務において係争商標における「台大」及び「TAIDA」という識別力が極めて強い文字を単独で抽出し、分割しており、関連の消費者に誤認混同を生じさせるおそれがあり、しかも係争著名商標の識別力又は信用と名声を毀損するおそれがあるため、原告の商標権を侵害している。

二 両方当事者の請求内容
(一) 原告の請求声明 
1. 被告は「台大」、「TAIDA」という文字と同一又は類似の商標を、予備校、オンライン課程のe-ラーニング/オンライン学習プラットフォーム及び通信教育課程等の教育サービスという同一又は類似の商品又は役務において使用してはならず、並びに該商品又は役務に関連する商業文書または広告に使用してはならず、又はデジタル視聴覚メディア、電子メディア、ネットワーク又はその他の媒体等の方式を以ってこれを行ってはならない。すでに使用したものは除去しなければならない。
2. 被告立功補習班と台大数位公司は連帯で、被告台大数位公司と許進福は連帯で、原告に300万新台湾ドル及び起訴状副本が最後の被告に送達された翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。いずれか一被告がすでにその支払い義務を履行したならば、その他の被告は支払い範囲において支払い義務を免除する。
3. 請求声明第2項について勝訴判決を受けたならば、原告は担保を立てるので、仮執行宣言を申し立てる。
(二) 被告の答弁声明
1. 原告の訴えと仮執行宣言申立てをいずれも棄却する。
2. 不利な判決が下されたならば、担保を立てるので、仮執行宣言の免脱を申し立てる。

三 本件の争点
(一) 被告等に商標法第68条第2、3号の係争商標権を侵害する行為はあるのか。
(二) 被告等に商標法第70条第1号の原告商標を毀損する行為はあるのか。
(三) 原告が被告等に連帯損害賠償と侵害差止めを請求することに理由はあるのか。あるならば、賠償金はいくらなのか。

四 判決理由の要約
(一) 被告のサイト上で「台大」、「TAI-DA」等商標の文字を使用する行為は、商標法第5条の商標の使用に該当する。
被告はすでに販売を目的として、「台大」、「TAI-DA」等の文字を含む被告商標(添付図2-2のとおり)をその企業の公式サイト名並び経営する予備校、オンライン課程等のe-ラーニング/オンライン学習プラットフォーム、通信教育課程及びテキストや問題集という教材等の教育サービスに係る商品又は役務において使用し、デジタル視聴覚メディア、電子メディア、インターネット等の媒体を以って宣伝しており、それが被告の設置するオンライン学習プラットフォーム及び役務の出所を表彰するものであると消費者に認識させるに十分であり、しかも消費者が異なる役務の出所を識別、区別する主要な識別部分であり、商標法第5条に定める商標使用の行為に該当する。商標の使用であることと、消費者が実際に出所について誤認するかどうかとは別の事であり、たとえ被告が「台大」、「TAI-DA」等の文字を単独使用しなかったとしても、又はさらに「立功文教&台大數位學院、線上學習規範」等の文字を表記したとしても、商標使用の認定には影響を及ぼさず、被告の上記抗弁は採用できない。

(二) 被告が同一又は類似の商品又は役務に、係争商標「台大」、「TAIDA」の商標文字を使用したことで、関連する消費者に誤認混同を生じさせるおそれがあり、商標法第68条第3号の商標権侵害行為を構成している。
1. 商標法第68条第3号には「商標権者の同意を得ずに、販売を目的として、次に掲げる各号のいずれかの情況がある場合、商標権の侵害となる:3.同一又は類似の商品又は役務に、登録商標と類似する商標を使用し、関連する消費者に誤認混同を生じさせるおそれがある場合」と規定されている。またいわゆる「誤認混同のおそれ」とは、商標が関連する消費者にそれが表彰する商品の出所又は生産の主体に対して誤認混同を生じさせるおそれをいう。また商標が消費者に与える印象が、関連する消費者に異なる出所の商品又は役務に対して混同させ、同一の出所であると誤認させる、又は両商標の使用者の間に関連企業、使用許諾関係、加盟関係又はその他これらに類する関係が存在すると誤認させる可能性があることをいう。二商標における誤認混同のおそれの有無の判断については、商標識別力の強弱、商標の類否及びその類似度、商品又は役務の類否及びその類似度、先権利者の多角化経営の状況、実際の誤認混同の状況、関連する消費者の各商標に対する熟知度、係争商標の出願が善意であるか否か、その他の誤認混同に関する要素等を参酌し、関連する誤認混同のおそれに至るか否かを総合的に認定すべきである。ここで本件の関連する誤認混同の要素を次のとおり判断する。
(1) 係争商標は「台大」、「TAI-DA」等の文字を含む被告商標(添付図2-2)とは同一ではないが、高度に類似する:
たとえ「台大」及び「TAI-DA」という文字が被告商標の使用する図案に占める割合が大きくなくても、その「台大」及び「TAI-DA」のフォントは色が鮮明であり、また消費者が称呼するときの識別の主要部分の一つであり、もしそれが同一又は類似の役務に標示され、通常の知識経験を有する消費者が購買時に通常の注意を払うならば、両役務が同一の出所からのものであると誤認する、又は出所が異なるが関連があると誤認する可能性があり、類似の商標に該当し、類似度は高い。
(2) 使用を指定する商品又は役務は同一又は高度に類似のものである:
両者は同じく教育課程又は補習という役務に該当し、同一又は類似の商標を使用するならば、一般的社会通念及び市場での取引状況により、関連する消費者にそれの出所が同一である、又は異なるが関連するものであると容易に誤認させるため、同一又は類似の商品又は役務に該当し、類似度は高い。
(3) 商標に対する熟知度と識別力の強弱:
係争商標の文字「台大」は全国的に有名な大学「国立台湾大学」の略称であり、しかも係争商標の「台大」、「TAIDA」(英訳名称)は独創性があり、使用を指定する商品又は役務とは直接的な関連性がなく、関連する消費者がこれを見ればすぐに表彰する商品又は役務の標識であるとみなす。さらに係争商標は2002年から学術教育、研究等の商品又は役務の分野で使用することを指定されており、すでに我が国の関連する事業体又は消費者から広く認知され、熟知されている。並びに経済部知的財産局は多くの案件の査定書において著名であると認めており、ファイルに記録されている。一方、本件の被告商標「立功寶寶」が2004年に商標権を取得して以来、南部地区における予備校等の関連する入学試験又は資格試験の教育サービスに使用することを指定されており、関連する消費者の熟知度は低く、被告が自ら変更したり、被告商標に付記したりして(添付図2-2のとおり)使用することで、係争商標の識別力が希釈されてしまう。
(4) 被告は善意によるものではない:
被告はいずれも長期にわたって予備校業務を経営しており、「台大」、「TAIDA」が原告の学校名の略称であり、しかも登録を許可された著名商標であることを明らかに知っていたはずである。潜在的消費者グループの注意を惹くためサイトやオフィシャルアカウントに使用し、しかも被告は自ら変更したり、被告商標に付記したりすることで(添付図2-2のとおり)、関連する消費者に誤認混同を生じさせるおそれがあり、商標法第63条第1項第1号の規定に違反している。原告は被告商標について取消処分を請求し、知的財産局は2020年3月24日に(109)智商00349字第10980171120 号処分書を以って被告商標(訳注:処分書によると取り消されたのは添付図2-1の第01130278号商標)の登録を取り消した。これについては上記商標の取消処分書がファイルにあり参照でき(当裁判所ファイル二第217乃至223頁)、被告が「台大」、「TAI-DA」等の文字を含む被告商標を使用することは善意によるものではないと認められる。
2. サイトに使用されている文字「台大」は、いずれも被告台大数位公司の全名又は台大數位科技教育等の名称であり、単独で「台大」、「臺大」、「TAIDA」等の文字を使用したことはなく、通常の消費者がサイトで全体の情報から、係争商標が表彰する原告とは関係がないことは明確に判断でき、しかも全体的に観察すると、消費者は被告が提供する商品又は役務で消費者が試験を通じて原告等の著名で優秀な大学又は大学院に入学することを出助けするものだと認識できるのみで、被告の商品又は役務が原告と関連性があることを表彰するものではないため、係争商標と同一又は類似するという事情はない等々と被告は抗弁している。ただし調べたところ、次のとおりである:
(1) 関連する商標の類否とその類似度の判断は、商標の図案全体を観察しなければならず、つまり現在の商品又は役務に係る消費者の目の前に全体の図案を示して観察すべきである。ただし、商標の図案の一部が特に注意を惹き、この部分について商標の識別機能が特に顕著である場合は、この部分について比較観察して、両商標の類否を判断してもよく、これは単純に商標を分割してそれぞれ比較するものとは異なる(最高行政裁判所73年度判字第1144号判決を参照)。
(2) 調べたところ、被告商標(添付図2-2)の「立功寶寶」に標示されたアルファベットの「TAI- DA」と漢字の「台大」は、特に消費者の注意を惹くとともに、印象に残り、その他の商標と区別し、出所を識別する主要で顕著な部分である。外観、称呼及び観念を問わず、いずれも係争商標の「台大」、「TAIDA」という文字と同じであり、「台大」と「TAI-DA」という文字が被告商標の使用する図案に占める割合が大きくなくても、その「台大」と「TAI-DA」というフォントは色が鮮明であり、また消費者が称呼するときの識別の主要部分であり、しかも係争商標は高い識別力を有し、また一般の消費者が広く認知して熟知している。たとえ被告が「台大」、「TAIDA」等の文字を単独で使用していなくても、その主要部分の観察から消費者が両商標は同一又は関連する出所のものであると誤って連想して誤認するのに十分であり、高度に類似する商標であるため、全体観察により消費者は被告が提供する商品又は役務で消費者が原告に入学することを出助けするものだと認識できるのみで、被告の商品又は役務が原告と関連性があることを表彰するものではなく、係争商標と被告商標とは同一又は類似のものではない、と被告は主張しているが、採用できない。
3. 原告が本件の関連する消費者に誤認混同を生じさせるおそれについて挙証しておらず、しかも被告公司は設立されてから、消費者から双方には提携又は許諾の関係があるか問合せを受けたことはなく、明らかに消費者は被告と原告の違いを分かっており、いかなる誤った連想も生じさせない等と被告は主張している。しかしながら、商標法第68条に規定される「関連する消費者に誤認混同を生じさせるおそれ」は客観的に消費者に誤認混同させるおそれがあるだけで十分であり、実際に誤認混同の事実が発生する必要はない。

(三) 被告が原告の著名商標と同一又は類似する商標を使用したことで、係争商標の識別力又は信用・名声を毀損するおそれがあり、商標法第70条第1号の商標権侵害の行為を構成している:
1. いわゆる「著名商標の識別力を毀損するおそれ」とは、著名商標の識別力が希釈される可能性があり、即ち著名商標を特定の商品又は役務に使用するとき、本来は特定の一つの出所だけ連想されることができたが、許諾を受けていない第三者の使用行為により、当該商標がかつて単一の出所を強烈に示すという特徴と吸引力が徐々に弱まったり、分散されたり、最終的にかつて単一の出所を強烈に示していた商標が二種類又はそれ以上の出所を示す商標になる、又は商標が一般大衆に単一の連想又は独創的なイメージを残すことができなくなることをいう。またいわゆる「著名商標の信用・名声を毀損するおそれ」とは、他人の著名商標と同一又は類似の商標を使用する行為によって、著名商標の表彰する品質又はイメージに対する減損や負の連想をもたらし、その信用・名声を毀損する可能性があることをいう。また、他人の著名商標にある文字を盗用してすることで、関連する消費者の認知において、当該著名商標とそれが表彰する商品又は役務の出所との間の関連性が希釈化された場合、すなわち商標の識別力を毀損するおそれがあり、同一又は類似の商品又は役務での使用を要件としない。これは最高裁判所106年度台上字第2088号判決趣旨を参照できる。
2. 調べたところ、被告は係争商標が著名商標であることを明らかに知りながら、「台大」、「TAI-DA」等の文字と同一又は類似の被告商標を、同一又は類似の予備校、オンライン課程等のe-ラーニング/オンライン学習プラットフォーム、通信教育課程及びテキストや問題集という教材等の教育サービスに係る商品又は役務において使用し、消費者にそれが原告と関連性を有すると認知させ、係争著名商標とそれが表彰する商品又は役務の出所との間の関連性が希釈化される可能性があり、すでに商標の識別力を毀損するおそれがある。しかも被告が経営する業務範囲は係争商標が指定する商品又は役務が同じ又は類似の分野であり、係争著名商標が特定の商品又は役務に使用されたとき出所の連想を弱めたり、分散させたりして、その特性を低下させる可能性がある。ましてや、被告が販売するオンライン課程及びテキストや問題集という教材等はいずれも試験(合格)を目的とするものであり、学術と教育の研究を目的とするものではなく、原告は高等教育の学府であり教育と学術研究に従事しているという消費者が熟知するところとは異なるため、被告が係争著名商標「台大」、「TAIDA」を使用して予備校課程を販売することで、係争商標が表彰する品質とイメージに減損や負の連想をもたらし、係争商標の信用・名声を毀損するおそれがある。したがって、被告の行為が商標法第70条第1号の商標権侵害を構成しているとする原告の主張は根拠があるものである。

(四) 原告は被告立功補習班、台大数位公司及び許進福に連帯で損害賠償を請求することができ、その賠償額の計算は以下のとおりである。
1. 「 商標権者は、故意又は過失によりその商標権を侵害されたときに、損害賠償を請求することができる。」、また「商標権者が損害賠償を請求するとき、次に掲げる各号のいずれかの方法により、その損害を計算することができる。:2.商標権侵害行為によって得た利益による。商標権を侵害した者がそのコスト又は必要経費について立証できない場合は、該商品を販売して得た収入の全部を所得利益とする。 3.押収した商標権侵害に係る商品の小売り単価の 1500 倍以下の金額。但し、押収した商品が 1500 個を超える場合は、その総額を賠償額とする。」と商標法第69条第3項、第71条第1項第2、3号にそれぞれ規定されている。また民法第185条には「数人が共同の不法行為によって他人の権利を侵害したときは、連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者が加害者であるかを知ることができないときも、同様とする。教唆者及び幇助者は、共同行為者とみなす。」と規定されており、さらに公司法(会社法)第23条第2項には「会社の代表者が会社の業務執行につき、法令に違反して他人に損害を与えたときは、その他人に対して会社と連帯して賠償責任を負わなければならない。」とも規定されている。
本件被告立功補習班、台大数位公司にはいずれも係争商標の文字を使用して共同で原告商標権を侵害した行為があり、かつ商標法第68条第3号及び同法第70条第1号の商標権侵害行為を構成していることは、前に述べたとおりである。
2. 被告立功補習班はいかなる共同権利侵害行為も行っておらず、そのサイトにある被告台大数位公司にリンクしている商標の文字と図案はいずれも被告台大数位公司が作成して提供したものであり、被告立功補習班は単純にサイトの空間を被告台大数位公司がリンク又は広告の設置に使用するのに提供したため、被告立功補習班はサイトの空間を提供したにすぎず、いわゆる商標権侵害の行為ではない等々と、被告は抗弁している。しかしながら、「民事上の共同権利侵害行為と刑事上の共同正犯とは、その構成要件が全く同じではなく、共同権利侵害行為者間に意思連絡の必要はなく、数人が故意に他人の権利を不法に侵害し、各行為者の行為がいずれも損害の生じた共同原因であるならば、いわゆる行為は共同に関わり、共同権利侵害行為が成立するに十分であり、民法第185条第1項前段の規定により、各加害行為者は被害者に対してすべての損害の連帯賠償責任を負わなければならない。」(最高裁判所101年度台上字第1767号民事判決趣旨を参照)。調べたところ、被告立功補習班は被告台大数位公司と契約を結び、被告台大数位公司が授業課程を同時に撮影したあと、デジタルクラウド課程の設置とポストプロダクションの処理を行うことを許諾しており、それらの間には提携関係がある。これは被告が2018年12月3日付弁護士書簡において自ら認めるものであり、ファイルされている(当裁判所ファイル一第83頁)。被告立功補習班はさらにそれが出願した被告商標「立功寶寶」を被告台大数位公司が被告立功補習班の業務を宣伝するのに使用するために提供しており、しかもその被告商標は変更され、係争商標「台大」、「TAI-DA」等文字が加えられている(添付図2-2のとおり)ため、被告台大数位公司及び立功補習班の上記行為はいずれも係争商標侵害の共同原因であり、たとえサイト上で係争商標を侵害している図案又は文字が被告台大数位公司によって作成又は提供されたものであったとしても、なお被告立功補習班は共同権利侵害行為の責任を負うべきもので、被告台大数位公司と連帯賠償責任を負わなければならないため、被告の上記抗弁は採用できない。
3. 原告は商標法第71条第1項第2号、第3号規定の方法のうち一つを選んで、その賠償額を算出して請求できる。調べたところ、以下のとおりである。
(1) 商標法第71条第1項第2号について:被告台大数位公司の2009年から2018年までの毎年の営業収益に基づいて損害を算出すると、その累計純営業収益135,165,404新台湾ドル(当裁判所ファイル二第115頁)に達し、原告が請求する賠償額を大きく上回るため、損害賠償額の依拠とするに十分であると原告は主張している。しかしながら、損害賠償の債は損害を補填することを旨としており、商標法第71条第1項第2号はコストと必要経費の挙証責任が倒置されている規定であるが、なおその営業収益と行為者の商標侵害との間に相当な因果関係があることを前提とすべきであり、被告台大数位公司が経営する予備校業務にはオンライン課程の提供が含まれ、クラウド課程、試験参考書、テキストや問題集という教材等の教育サービス又は商品等を販売しており、消費者が購買契約を締結するか否かは教師の資質と教材そのものによるもので、係争商標が被告台大数位公司の営業収益に100%貢献したとは認めがたい。よって、原告が被告台大数位公司の累計営業収益をその商標権侵害で得た利益とすることは明らかに合理的ではない。
(2) 商標法第71条第1項第3号について:被告台大数位公司はショッピングサイトである蝦皮購物網站、PChome網路商城に陳列販売したクラウド課程の価格が8,800新台湾ドル~35,800新台湾ドルであったため、商標法第71条第1項第3号規定により、クラウド課程8,800新台湾ドルの1,500倍で計算し、被告の得た利益は13,200,000新台湾ドルであると原告は主張している。ただし調べたところ、原告が提出した公証書類の内容をみると、前述のクラウド補習課程の資料及び価格基準は記載されているものの、被告は予備校、オンライン課程のe-ラーニング/オンライン学習プラットフォーム並びにネットショッピングサイトのオフィシャルIDに係争商標を使用して、対外的に客引きや販売の広告に用いているにすぎず、個別の商品又は役務上に用いたものではない。被告台大数位公司が販売するデジタル化されたクラウド課程には係争商標を含む被告商標(添付図2-2)が含まれておらず、被告立功補習班が販売する商品は実体の補習課程及び教材であるが、その商品に係争商標の文字を含む被告商標を含むことを原告は挙証していない。よって、上記クラウド課程が原告の係争商品を侵害している商品であるとは認めがたく、その課程の販売価格である8,800新台湾ドルの1,500倍を以ってその賠償額を計算することは難しい。
(3) 以上により、原告が受けた損害額を推計することは難しいため、原告が商標法第71条第1項の被害者の損害証明責任を軽減し挙証責任を(侵害者に)転換する立法趣旨、及び民事訴訟法第222条第2項の規定に基づいて、当裁判所が情状を斟酌して決定する損害賠償額(本裁判所ファイル二第113頁)を請求することには法に合わないところがなく、当裁判所は規定によりこれを斟酌すべきである。
4. 当裁判所は、被告立功補習班、台大数位公司がいずれも係争商標の文字をその企業公式サイト名並び経営する予備校、オンライン課程等のe-ラーニング/オンライン学習プラットフォーム、通信教育課程及びテキストや問題集という教材等の教育サービスに係る商品又は役務において使用し、デジタル視聴覚メディア、電子メディア、インターネット等の媒体を以って宣伝しており、これにより原告と関連性がある営業主体であることを表彰しており、消費者に認識混同を生じさせ、被告から課程を購入させたり、オンライン課程サービスを使用させたりする機会を増やす可能性があり、しかも被告立功補習班、台大数位公司はいずれも営利を目的としており、係争商標にただ乗りして予備校業務の営利事業を経営するのに使用して、消費者に係争商標に対して予備校業務を経営する営利事業を連想させ、係争商標の識別力又は信用と名声を毀損するおそれがあることを斟酌し、また被告立功補習班に当裁判所は被告台大数位公司との業務往来に関するすべての営業資料、帳簿、財務諸表等の書類を提出するよう命じた(当裁判所ファイル二第39頁)が、それが提出できなかった事情を参酌するとともに、被告台大数位公司の税金申告資料に示される営業収益、コスト及び費用等の損益、被告立功補習班及び台大数位公司の経営規模、権利侵害の期間、故意の侵害の態樣、及び係争商標の本件損害賠償額に対する貢献度等を総合的に考慮して、当裁判所は被告台大数位公司、立功補習班が共同で原告商標権を侵害した損害賠償額は100万新台湾ドルが妥当であると認め、これを超える範囲の請求には理由がなく、棄却すべきである。

(五) 原告は商標法第69条第1項規により侵害差止請求:
調べたところ、被告台大数位公司、立功補習班は確かに原告の係争商標権を侵害したことは前述したとおりであり、しかも原告と被告台大数位公司、立功補習班はいずれもクラウド又はオンライン課程業務に従事しており、係争商標は継続して侵害される可能性があり、事前に予防が必要であると原告が主張することには根拠がある。よって、原告が商標法第69条第1項規定により、被告台大数位公司、立功補習班はいずれも「台大」、「TAIDA」の文字と同一又は類似の商標を、予備校、オンライン課程のe-ラーニング/オンライン学習プラットフォーム及び通信教育課程等の教育サービスという同一又は類似の商品又は役務において使用してはならず、並びに該商品又は役務に関連する商業文書または広告に使用してはならず、又はデジタル視聴覚メディア、電子メディア、インターネット又はその他の媒体等の方式を以ってこれを行ってはならず、すでに使用したものは除去しなければならないと請求することには根拠がある。

本件原告の訴えには一部に理由があり、一部に理由がなく、智慧財産案件審理法(知的財産案件審理法)第1条,民事訴訟法第79条、第85条第2項、第390条第2項、第392条第2項に基づき、主文のとおり判決する。

2020年5月11日
知的財産裁判所第三法廷
裁判官  呉俊龍
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