使用料率について利用者が異議申立できる事項、著作権主務機関が変更できる事項は使用料の算定基礎、比率又は金額のみ

2013-12-31 2012年

■ 判決分類:著作権

I 使用料率について利用者が異議申立できる事項、著作権主務機関が変更できる事項は使用料の算定基礎、比率又は金額のみ

■ ハイライト
著作権は私権であり、著作権の利用許諾とその使用料の多寡については著作権集中管理団体と利用者との間の私法関係に属し、原則的には双方が協議し、市場メカニズムによる決定を尊重すべきである。使用料率は利用者が支払う使用料を算定するための基準であり、許諾契約の重要な情報である。私権事項ではあるものの、現在市場には著作権集中管理団体と利用者の間で合意を達成できない状況が存在しうるため、著作権集中管理団体条例第25条第1項に、利用者は(集中管理団体が定めた)使用料率に異議があるときは、著作権主務機関に審議申立できると規定されている。さらに同条第4項には、著作権主務機関が集中管理団体の使用料率を審議するときは、著作権集中管理団体の定めた使用料の算定基礎、比率又は金額を変更できると規定されている。ただし、利用者が審議申立できる事項は、使用料の算定基礎、比率又は金額に限られるべきである。多くの利用者がいるとき、どの利用者が使用料を支払うべきかについては集中管理団体と利用者とで協議すべきであり、利用者が審議申立できる事項ではない。著作権主務機関が変更できる事項は、使用料の算定基礎、比率又は金額に限られるべきで、どの利用者から使用料を徴収するかについては含まれない。(資料出所:法源資訊)

II 判決内容の要約

知的財産裁判所判決
【裁判番号】101年度行著訴字第2号
【裁判期日】2012年8月22日
【裁判事由】著作権関連事務

原告 社団法人中華音楽著作権協会(Music Copyright Society of Chinese Taipei)
被告 経済部知的財産局

上記当事者間における著作権関連事務事件について、原告は2012年4月11日経訴字第10106103310号訴願決定を不服とし、行政訴訟を提起した。本裁判所は以下のように判決を下すものである。

主文
訴願決定及び原処分をいずれも取り消す。
訴訟費用は被告が負担する。

一 事実要約
原告(社団法人中華音楽著作権協会)は2010年8月11日に第6期第1回会員大会を開催し、その中で同協会が衛星放送テレビ局、ショッピングチャンネル、及び有線テレビ局に対する概括包括的使用許諾の使用料率(以下、「係争使用料率」)の改訂を決議し、2010年9月3日被告(知的財産局)に書面で報告し、2011年1月1日に公告した。その後、中華民国衛星広播電視事業商業同業公会(Satellite Television Broadcasting Association R.O.C.)等の合計40に上る同業組合、協会又は企業が係争使用料率の設定過程及び内容について、利用者との協議が行われておらず、使用料算定方法も不合理である等の事由から、著作権集中管理団体条例(以下「集中管理条例」)第25条第1項の規定に基づき、被告に対して係争使用料率の審議を申し立てた。被告は集中管理条例第25条第2項に基づき、2011年2月14日に自らのサイトで公告し、その後東森得意購股份有限公司(Eastern Home Shopping & Leisure Co.,Ltd.)等4社が次々と関連資料を提出して被告に審議申立を行い、審議過程参加人となった。さらに集中管理条例第25条第4項に基づき、2011年9月8日と同年10月19日にそれぞれ2011年第10回及び第12回著作権審議及び調停委員会を開催し、係争使用料率審議事項に対して諮問を行った。前記委員会の決議、国内経済状況、利用者側の産業の現状及び音楽の利用状況を参酌し、集中管理条例第25条第4項に基づき、原告が定めた使用料率の算定基礎及び金額の変更を決定し、2011年10月31日智著字第10016003141号書簡を以て審議結果を原告、審議申立人及び審議過程参加人に通知した。原告はこれを不服として行政訴願を提起したが、経済部が2012年4月11日に経訴字第10106103310号決定書を以て棄却したため、原告はすぐに本裁判所に対して行政訴訟を提起した。

二 双方当事者の請求内容
(一)原告の主張:
被告が原告に有線テレビ局からの使用料徴収を禁止したことは、法律の留保の原則に違反し、法律に定められてない制限を追加するものであり、重大な越権裁量にあたる。審議過程には重大な瑕疵があるという違法がみられるため、原処分を取り消すべきである。音楽著作の使用料率の審議に関して、被告には原告が公告した使用料率の算定基礎、比率又は金額に対してのみ審議する権利があり、これは集中管理条例第25条第4項からみて明白である。これ以外の事項について、被告にはいかなる審議、変更の権限もない。原処分は原告に有線テレビ局からの公開放送にともなう使用料の徴収を禁止するものであり、これは原告が公告した使用料徴収の枠組を破壊するもので、集中管理条例に基づいて被告が審議できる範囲を越えており、明らかに法律の留保の原則に違反し、原告が集中管理条例第24条第1項前段に基づいて使用料率を決定する権利を違法に制限している。また被告が原公告使用料率を「有線テレビの部分」に実施することを禁止するのは、集中管理条例第25条第8項に違反している。並びに1.訴願決定及び原処分をいずれも取り消すこと、2.訴訟費用を被告が負担することを請求する。

(二)被告の答弁:
1.集中管理条例第25条第4項でいうところの「使用料率の算定基礎」とは、集中管理団体が定める算定基礎(例えば、前年度事業収入、前年度広告総収入とロイヤリティ総收入の合計額等)のみを指すものではなく、使用料率の全体の枠組と適用範囲も含まれるものである。主務機関に集中管理団体の設定した使用料率の枠組と適用範囲を変更する権利がないのであれば、集中管理団体は自らに有利な方法で使用料を徴収できてしまい、それを受ける側の利用者にとっては極めて不公平であることを、先ず述べるものである。
2.原告が2011年1月1日に公告した「衛星放送テレビ局」及び「ショッピングチャンネル」に対する使用料徴収の枠組とは、元来実務的に慣行されていた「一階段の使用料徴収枠組」、即ち「衛星放送テレビ局/ショッピングチャンネルから有線テレビ局」及び「有線テレビ局から視聴者」における公開放送は一律にその源頭側(即ち衛星放送テレビ局/ショッピングチャンネル)に使用許諾するという方式から、「二階段の使用料徴収枠組」、即ち「衛星放送テレビ局/ショッピングチャンネルから有線テレビ局」、「有線テレビ局から視聴者」という相異なる公開放送行為により段階に分け、それぞれ衛星放送テレビ局、ショッピングチャンネル及び有線テレビ局に対する使用料率を定める方式へと変更されたものである。被告は双方の意見及び審議委員会の専門家の意見を斟酌し、さらには台湾における従来の許諾実施状況を考慮して、集中管理条例第25条第4条に基づき、原告が公告した「二段階の使用料徴収枠組」を元来の「一段階の使用料徴収枠組」に戻すことを決定した。また、この使用料徴収枠組を回復した後は、有線テレビ局が支払う使用料は大部分が衛星放送テレビ及びショッピングチャンネルが支払う使用料で取って代えることができ、該項目の使用料率設定は必要がないため、集中管理条例第25条第8項に基づいて実施を禁止した。さもなくば二重徴収の状況が発生してしまう。ただし、有線テレビ局が放送する「自社制作チャンネル番組」及び「海外チャンネル番組」については衛星放送テレビ局及びショッピングチャンネルが有線テレビ局に替わって使用許諾を受けた範囲に含まれないため、被告は原告に使用料徴収及び使用料率設定を決定する権利があることを考慮し、係争処分において原告に該部分の使用料率を別途設定し、有線テレビ局から使用料を徴収することを要求している。1.原告の請求を棄却すること、2.訴訟費用を原告が負担することを請求するものである。

三 本件の争点
集中管理条例第25條第4項に規定されるところの「使用料率の算定基礎」には、使用料の全体の枠組と適用範囲も含まれるのか否か。

四 判決理由の要約
著作権は私権であり、著作権の利用許諾とその使用料の多寡については集中管理団体と利用者との間の私法関係に属し、原則的には双方が協議し、市場メカニズムによる決定を尊重すべきである。使用料率は利用者が支払う使用料の算定基礎であり、許諾契約の重要な情報である。私権事項ではあるものの、現在市場には集中管理団体と利用者の間で合意を達成できない状況が存在しうるため、もし適切な調和システムを以て解決に協力しなければ、使用許諾契約の締結が遅れ、著作を使用できない状況も発生してしまう。従って、集中管理団体と利用者との間で合意を達成できないときは、著作権主務機関が協力するのが好ましいため、集中管理団体条例第25条第1項に、利用者(利用者の団体を含む)は(集中管理団体が定めた)使用料率に異議があるときは、著作権主務機関に審議を申し立てることができると規定されている。さらに同条第4項には、著作権主務機関が集中管理団体の使用料率を審議するときは、著作権集中管理団体の定めた使用料率の算定基礎、比率又は金額を変更できると規定されている。しかしながら、集中管理条例第25条第4項の改正理由にはすでに、それが変更できる「使用料率の算定基礎、比率又は金額」の例として「例えば、ラジオ局とテレビ局の公開放送に対する使用料がチャンネルの属性に基づいて区分されていないとき、審議においてさらに細分化できる、坪数による元来の使用料算定方法を、審議において部屋数による使用料算定方法に変更できる等」が示されている。利用者が集中管理条例第25條第1条で審議申立できる事項は、使用料の算定基礎、比率又は金額に限られるべきである。多くの利用者がいるとき、どの利用者が使用料を支払うべきかを明確にすることで初めて使用許諾と交渉のコストを簡素化でき、利用者と集中管理団体が得る利益を最大化にすることができ、つまりこれは集中管理団体と利用者とで協議すべき事項であり、利用者が審議申立できる事項ではない。被告が集中管理条例第25条第4項に基づいて変更できる事項は、使用料の算定基礎、比率又は金額に限られるべきで、どの利用者から使用料を徴収するかについては含まれない。況してや著作権法の公開放送の定義によると、衛星放送テレビ局のアップリンク/ダウンリンク(訳注:ここでは衛星放送テレビ局から衛星へ信号を送信するアップリンクと衛星から有線テレビ局へ信号を送信するダウンリンク)という行為と、有線テレビ局が衛星から受信した信号をケーブルシステムで視聴者に伝送する行為は、いずれも公開放送に該当する。原告は元来、これら2種類の公開放送行為にそれぞれ使用料率を設定することができ、二重徴収の問題がないため、原処分が原告に有線テレビ局からの公開放送(衛星放送テレビ局とショッピングチャンネルからの番組の部分)における使用料徴収を禁止したことには、法的根拠がない。著作が衛星放送テレビ局の公開放送によって、著作利用の経済利益が実質的に発生する利用行為は「有線テレビ局から視聴者まで」の段階にあるが、原処分が決定した添付資料に示される衛星放送テレビ局等チャンネルに対する使用料率値上げは「有線テレビ局から視聴者まで」の部分で発生する使用料を含む総和である。原告が「二段階の使用料徴収枠組」に変更して有線テレビ局から使用料を徴収することを希望するのであれば、被告が決定した添付資料に示される衛星放送テレビ局等チャンネルに対する使用料率が合理的であるか否か、二重徴収の状況が有るか無いかについて別途審議する必要がある。

以上をまとめると、本件の原処分が原告に対して有線テレビ局からの公開放送(衛星放送テレビ局及びショッピングチャンネルの部分で、自社制作チャンネル番組及び海外チャンネル番組は含まない)における使用料徴収を禁止したことは法律に適合せず、訴願決定も糾正されていないため、法に適合しない。原処分と訴願決定を取り消すという原告からの請求には理由があり、許可すべきものである。

上記論結に基づき、本件原告の請求には理由があるため、行政訴訟法第98条第1項前段により、主文の通り判決を下すものである。

2012年8月22日
知的財産裁判所第一法廷
裁判長 李得灶
裁判官 蔡惠如
裁判官 林欣蓉
2012年8月24日
書記官 周其祥
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