音楽著作権協会のカラオケ使用報酬の引き上げについて、知的財産裁判所による不許可の判決

2014-05-15 2011年

■ 判決分類:著作権

I 音楽著作権協会のカラオケ使用報酬の引き上げについて、知的財産裁判所による不許可の判決

■ ハイライト
2008年12月中旬、台湾音楽著作権協会の董事会の決議では、パソコンカラオケの使用報酬を、本来の毎年1台1,200台湾ドルから、大幅に2,000台湾ドルに引き上げ、その増加率が67%に達するが、知的財産局が許可しなかった。両機関はこの問題で訴訟を行ったが、知的財産裁判所は、台湾音楽著作権協会の増加率が、明らかにその管理している音楽著作の数量とは比べものにならないほど少なく、具体的な市場占有率が提出される前は、知的財産局の値上げの不許可には、法による根拠があると認定し、当該協会の敗訴を判決した。
経済部知的財産局が台湾音楽著作権協会に発送した書簡では、もし値上げする場合、まず実際にユーザーが当該協会の音楽著作物を利用した数量及び使用意見を了解または調査する必要があり、そうすることにより市場規制に該当する旨を返答した。
よって、台湾音楽著作権協会では2009年1月20日に「カラオケ業者と音楽仲介団体の使用報酬協議会」が開催され、音楽仲介団体が自ら各パソコンカラオケ業者と協議し、各仲介団体での著作を使用した市場占有率の結果が判明する前は、使用報酬を調整してはならないとの一致した認識が達成した。
ところが、台湾音楽著作権協会はその後、以前の当該協会の決議を引用し、2009年1月1日にカラオケの使用費を引き上げると発表した。知的財産局は同年4月2日に書簡を発送し、当該協会がカラオケの使用費を、本来の毎年1台1,200台湾ドルから、大幅に2,000台湾ドルに引き上げることを禁止する旨の行政処分を下した。
知的財産局は、台湾には3つの音楽仲介団体があるが、調べたところ、台湾音楽著作権協会が管理している楽曲は4,874曲だけで、中華音楽著作権協会(MUST)では1,700万曲あり、台湾音楽著作権者聯合総会(MCAT)では2.5万曲もある。現在、MUSTとMCATの毎年のカラオケ1台の使用費はそれぞれ3,000台湾ドルである。台湾音楽著作権協会が所有している歌で利用されている状況は相対的に少なく、もし値上げにこだわるのであれば、MUSTとMCATの使用費と比較して、明らかにバランスが取れないものである。
公益を考慮し、公平、合理的なユーザーによる料金負担原則を実行するために、知的財産裁判所の判決では、知的財産局が当該協会による値上げを禁止したことには、法による根拠がある。
知的財産裁判所の話しによると、台湾音楽著作権協会が管理している音楽著作物は、確かにMUSTとMCATの数量とは比べものにならないほど少ない。知的財産局が値上げを禁止した行政処分は、合法で、且つ合理的である。本件は上訴することができる。【2010-03-02 工商時報 A16版記者張国仁/台北報道】

II 判決内容の要約

基礎データ

知的財産裁判所の行政判決
【裁判番号】98年度行著訴字第1号
【裁判期日】2010年2月11日
【裁判事由】著作権に関する事務

原   告 社団法人台湾音楽著作権協会
被   告 経済部知的財産局

主文
原告の訴えを棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。

一 事実要約
原告は2008年12月17日に当該協会2008年12月10日付第3回第3次臨時董事会の会議記録を添付し、前記会議提案4の決議では、当該協会が2009年1月1日よりパソコンカラオケの使用報酬を、本来の毎年1台1,200台湾ドルから、2,000台湾ドルに引き上げる旨を審査の参考に被告に送付した。被告は2008年12月31日付智著字第09700112430号書簡により、市場規制に該当するために、実際にユーザーが当該協会の音楽著作物を利用した状況及び使用意見を了解または調査するよう原告に要求した。更に2009年2月11日付慧著字第09816000460号書簡により、2009年1月20日に開催された「カラオケ業者と音楽仲介団体の使用報酬協議」の共識に基づき、前記音楽仲介団体が自ら各パソコンカラオケ業者と協議し、各仲介団体での著作を使用した市場占有率の結果が判明する前は、使用報酬を調整してはならないよう原告に要請した。しかし原告は当該会2008年12月10日の第3回第3次臨時董事会会議の決議により、パソコンカラオケの使用報酬を引き上げたので、被告は著作権仲介団体条例第38条第4項の規定により、2009年4月2日付智著字第09816000940号書簡で原告の現行の1台1,200台湾ドルを、2,000台湾ドルに引き上げることを禁止する旨の行政処分を下した。原告はこれを不服として訴願を提起したが、棄却と決定されたので、本裁判所に行政訴訟を提起した。

二 両方当事者の請求内容
原告の主張:訴願決定及び原処分の取消の請求。
被告の主張:原告の訴えを棄却することの請求。

三 本件の争点
被告は原告の使用報酬比率の引き上げを禁止することができるかどうか?法的根拠は何なのか?合理性があるかどうか?

四 判決理由の要約
また「主務官庁は仲介団体の運営及び財産状況により、必要があると認定した時、業務執行の方法を変更し、またはその他の必要な処置をするよう仲介団体に命じることができる。」と同条例第38条第4項に規定されている。
従って、仲介団体はその実際の使用報酬を変更するには、同条例第38条第4項で言う仲介団体の業務運営の執行事項である。また我国の著作権仲介団体の制度では、行政機関が監督、指導を行う許可制が採用されており、著作権仲介団体条例の立法目的を貫徹、実行し、市場の秩序を維持し、著作権仲介団体に違法または不当な事情があることを避けるために、著作権仲介団体条例の第38条第4項では著作権仲介団体の不当な業務執行を禁止することができる旨を主務官庁に許諾している。
また原告は市場占有率の統計を提供できず、原告が管理している楽曲の数量は約4,874曲(またはその称するところでは、最近既に6,092曲に増加した)であり、その他の二つの音楽著作仲介団体には及ばず、即ち社団法人中華音楽著作権協会(MUST)が管理している楽曲の数量は1,700万曲で(18万6,000曲程の中国語楽曲を含む)、社団法人台湾音楽著作権者聯合総会(MCAT)が管理している楽曲の数量は25,473曲の楽曲であり、当該2つの仲介団体が実際に受け取っている使用報酬は毎年パソコンカラオケ1台につき3,000台湾ドルであるが、本件原告はパソコンカラオケの実際に受け取っている使用報酬を毎年の1台1,200台湾ドルから、2,000台湾ドルに引き上げることを決定したので、明らかにその管理している音楽著作の数量とは比べものにならないほど少ない。また前記の通り、本件原告がその実際の使用報酬を変更したことは、同条例第38条第4項で言う仲介団体の業務運営の執行事項である。よって、被告は音楽文化の交流を促進し、公益に基づき、著作権仲介団体条例第38条第4項の規定により、2009年4月2日付智著字第09816000940号書簡で原告の1台1,200台湾ドルを、2,000台湾ドルに引き上げることを禁止する旨の行政処分を下したことに違法な部分がない。

中華民国99年2月11日
知的財産裁判所第二廷
審判長裁判官 陳国成
裁判官  蔡惠如
裁判官  陳忠行

五 関連条文抜粋
著作権仲介団体条例(2010年2月10日修正前の条文)

第3条 本条例用語の定義は以下の通り︰
一、著作権仲介団体 (以下は仲介団体と称する) ︰同種類著作の著作財産権者は本条例により登記で成立され、著作財産権者のために、その著作財産権を管理し、且つ仲介団体の名義で、権利を行使し、義務を履行する社団法人を言う。
二、著作権仲介業務 (以下は仲介業務と称する) ︰仲介団体の名義で、ユーザーと個別許諾契約または概括的許諾契約を締結し、且つ使用報酬を受け取り、配分する業務を指す。
三、使用報酬率︰使用報酬計算の基準またはその比率を指す。
四、管理費︰仲介団体が仲介業務を執行し、著作財産権者から受け取る費用である。
五、個別許諾契約︰仲介団体とユーザーとの約定で、仲介団体がその管理している特定な著作財産権をユーザーに許諾し、ユーザーが使用報酬を支払う契約を言う。
六、概括的許諾契約︰仲介団体とユーザーとの約定で、仲介団体がその管理している全部の著作財産権を一定期間内に回数を問わずに利用することをユーザーに許諾し、ユーザーが使用報酬を支払う契約を言う。
七、管理契約︰著作財産権者と仲介団体との約定で、仲介団体がその著作財産権を管理し、且つ受け取った使用報酬を著作財産権者に配分する契約を指す。

第4条 仲介団体の設立は、発起人が申請書を添付し、下記事項と共に主務官庁に許可を申請する︰
一、発起人の名簿。発起人の姓名または名称、国籍、出生年、月、日、住所もしくは居所、事務所或いは営業所の所在地及びその享有している著作財産権の著作名称及び著作類別を記入する。
二、定款。
三、使用報酬の受取及び配分方法。
四、使用報酬率及び管理費の比率または金額。
五、個別許諾契約、概括的許諾契約及び管理契約の見本。
六、その他の主務官庁が指定した書類。
発起人は少なくとも三十人以上とし、その中、半数以上が中華民国人で、且つ国内に住所があるべきである。
第一項の申請書には設立の許可を申請する旨を記入し、発起人全体が署名または捺印しなければならない。
主務官庁は仲介団体の許可申請を審査する時、審議に使用報酬率を著作権及び調解委員会に提出しなければならない。

第15条 総会は第一回会議は発起人が招集する外、董事会が招集し、毎年少なくとも一回を招集する。
総会の決議は特別な規定があることを除き、表決権総数の過半数の会員が出席し、出席表決権の過半数の同意でなければならない。
下記事項は表決権総数の過半数の会員が出席し、出席表決権者の三分の二以上の同意を得なければならない︰
一、定款の変更。
二、使用報酬の受取及び配分方法の変更。
三、使用報酬率の変更及び管理費の比率または金額の変更。
四、個別許諾契約、概括的許諾契約または管理契約見本の変更。
会員には平等な表決権がある。但し定款に別の規定がある場合は、その規定に従う。
第二項及び第三項の出席数及び同意数では、定款により高い規定がある場合は、その規定に従う。
仲介団体解散の決議は、民法第五十七条の規定を適用する。
第三項第三号により変更した使用報酬率がもとの基準より高い時は、主務官庁に報告し、著作権及び調解委員会の審査に提出しなければならない。

第38条 仲介団体は法令または定款の規定により、書類を完備または作成しなければならなず、主務官庁は随時担当者を派遣し検査しまたは期限通り報告するよう命じることができる。主務官庁もまた随時担当者を派遣しその業務及び財務状況を検査することができる。
主務官庁は前項の査証または検査をする時、証明書類、証憑、書類及び関連資料の提出を仲介団体に命じることができ、かつ受取後の一ヶ月に返還する。
主務官庁が前二項により査証、検査または命令をした場合、妨害または拒絶してはならない。
主務官庁は仲介団体の運営及び財産状況により、必要がある時は、業務執行方法を変更し、またはその他の必要な処置を仲介団体に命じることができる。
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