アイデア提供のみで創作に参加しなければ著作権者にあらず

2017-05-25 2016年
■ 判決分類:著作権

I アイデア提供のみで創作に参加しなければ著作権者にあらず

II 判決内容の要約

台湾台北地方裁判所刑事判決
【裁判番号】104年度智易字第17号
【裁判期日】2016年6月2日
【裁判事由】著作権法違反

告訴人 元平設計有限公司(Y&P Design International Inc.)
公訴人 台湾台北地方裁判所検察署検察官
被告人 何○如

上記被告人は著作権法違反事件について検察官から公訴(103年度偵字第9926号)を提起された。当裁判所は次のように判決する。

主文
何○如は著作権法91条第1項著作財産権侵害罪を犯したため、50日の拘留に処し、罰金へ転換するときは、1日1000新台湾ドルで換算する。

一 事実要約
何○如は2000年9月から2009年3月13日までの間、元平設計有限公司(Y&P Design International Inc.、以下「元平公司」)に在職し、離職後は六乘二有限公司(以下「六乘二公司」)の代表者に就任した。何○如はそのフェイスブックID「Patti Ho」を用いて掲載した中国信託銀行敦北支店受付カウンターの写真3枚、聯合報系(聨合報グループ)本部ビルの写真1枚、兆豊金控の手提げバック及びプレゼントの写真1枚、震旦グループ上海浦東ビルの画像1枚、台北悠遊カードの画像1枚、鹿港鎮の画像1枚(以下「係争画像等」)がいずれも元平公司が著作財産権を有する撮影及び図形の著作物であり、元平公司の同意又は許諾を得ずに他人に複製、公衆送信することを許諾してはならないと明らかに知っていた。しかしながら何○如は、無断で複製及び公衆送信の方式で他人の著作財産権を侵害する犯意に基づき2013年12月11日に台北市の自宅からネット接続設備を用いてフェイスブックのサイトにリンクし、前記の写真及び画像をそのフェイスブックのページに掲載して不特定の者の閲覧に供した。
本件は元平公司の告訴により内政部警政署保安警察第二総隊が送検し、台湾台北地方裁判所検察署検察官が取調べを行い、起訴した。

二 両方当事者の請求内容
被告人の答弁趣旨:
1.告訴人の告訴は法定告訴期限をすでに越えている。
2.係争の撮影の著作物はすでに被告人によって複製されており、これらの著作物は独創性が無く、被告人は共同著作者であり、著作権を有する。
3.係争画像はいずれも被告人が元平公司に在職していた時にプロジェクトに参加しており、一部の写真は被告人が撮影したもので、一部は画像を修正、トリミングをして改作したものであり、著作者人格権は被告人に帰属する。

三 本件の争点
被告人何○如は係争画像の著作権を有するのか。

四 判決理由の要約
1.被告人は2013年12月7日に係争画像等をフェイスブックの自分のページにアップロードし、同年月11日に発表した「0000-0000(43枚の写真)コーポレート・アイデンティティ(CI)デザインVSブランド再改造プロジェクト...」という文章において係争画像等を使用したため、告訴人は2014年2月27日に本件告訴を提起しており、告訴期限を越えてはいない。
2.係争画像、又はカメラで撮影した画像或いは美術デザイン図をコンピュータプログラムで新たに組み合わせた画像について、撮影の場所、全体の構図、色彩と光線及びポストプロダクション等の要素を参酌して総合的に考慮したところ、相当な創作の水準に達し独創性を有するもので、係争画像等がいずれも著作権法が保護する撮影の著作物及び美術の著作物であることが十分に分かる。
3.係争画像等は告訴人元平公司が震旦行股份有限公司(以下「震旦行」)、中国信託金融控股股份有限公司(以下「中国信託公司」)、台北智慧卡票証公司(以下「台北智慧卡」)、聯合報系、兆豊金融控股股份有限公司(以下「兆豊金控」)、鹿港鎮等から請け負った「CIデザイン」プロジェクトの中で完成した作品であり、係争著作物は告訴人がそのCIデザインのコンセプトを具象化して表現したものである。また証人であるカメラマンの邱○雄による審理時の証言、及び兆豊金控公司の2014年8月12日付書簡には係争画像の著作財産権が告訴人企業に所有されることが示されている。係争画像等に対して告訴人は確かに著作権を有する。
4.被告人何○如は告訴人企業の在職期間(2000年9月から2009年3月まで)において、最初の数ヵ月にデザイナーを担当したのを除き、その後は営業担当となり離職まで務めた。告訴人が提出した見積書及び告訴人企業のデザイナーの証言が証拠である。被告人の仕事は顧客との連絡であり、デザイナーの参考のために顧客の意見を伝達するものである。たとえデザインプロジェクトの会議に参加したり、若干のアイデアをデザイナーの参考に供したりしたとしても、実際にデザイン案を表現する創作過程に参加していない。さらに著作権法は概念や思想を保護するものではなく、表現を保護するものである。何○如は実際に各著作物の創作に参加しておらず、係争画像等の著作物の著作者ではなく、著作物人格権を享有してはならない。
5.被告人何○如は係争画像等がその本人の創作、撮影したものではなく、係争画像等を複製、改作、使用、公衆送信する権利はないと明らかに知っていたうえ、長期にわたって告訴人企業で営業の仕事に従事しており、著作権が告訴人の所有に帰属することを詳しく知っていたはずであるのに、告訴人の同意を得ず、無断で公衆送信の方式で複製したため、主観的に著作財産権を侵害する故意があったことは明らかである。
6.被告人何○如の行為は、著作権法第91条第1項の無断で複製して他人の著作財産権を侵害する罪、第92条の無断で公衆送信して他人の著作財産権を侵害する罪を犯している。被告人が8枚の係争画像をアップロードしたことは、単一の犯罪の決意に基づくもので、密接した時空で実施され、同じ法益を侵害し続け、各回の行為の独立性は極めて低く、包括一罪の接続関係と評価すべきであり、接続犯である。被告人が無断で告訴人の著作物を複製し、そのフェイスブックのサイトに公衆送信したことは、一行為が同時に上記の二罪に抵触した観念的競合犯であるため、刑法第55条規定により、罪状がより重い著作権法第91条第1項の無断で複製して他人の著作財産権を侵害する罪を以て処断すべきである。

五 関連条文抜粋
著作権法第91条
無断で複製することにより他人の著作財産権を侵害した者は、3年以下の懲役若しくは拘留に処し、又は75万新台湾ドル以下の罰金を科し、又はこれを併科する。
販売若しくは貸与を意図して、無断複製することにより他人の著作財産権を侵害した者は、6ヵ月以上5年以下の懲役に処し、20万新台湾ドル以上200万新台湾ドル以下の罰金を併科できる。
光ディスクに複製することにより、前項の罪を犯したものは、6ヵ月以上5年以下の懲役に処し、50万新台湾ドル以上500万新台湾ドル以下の罰金を併科できる。
著作物が個人の参考に供されたとき、又は合理的に利用されたときは、著作権侵害を構成しない。

著作権法第92条
無断で公開口述、公開放送、公開上映、公開実演、公衆送信、公開展示、改作、編集又は貸与することにより他人の著作財産権を侵害した者は、3年以下の懲役若しくは拘留に処し、又は75万新台湾ドル以下の罰金を科し、又はこれを併科する。

2016年6月2日
刑事第五法廷
裁判官 曾正龍

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