商標の争い!宝来文創による盗用の訴え 鼎泰豊は合法的な使用

2017-12-22 2017年
■ 判決分類:著作権

I 商標の争い!宝来文創による盗用の訴え 鼎泰豊は合法的な使用

■ ハイライト
宝来文創は、2008年より鼎泰豊の包仔(バオザイ)、籠仔(ロンザイ)等マスコットキャラクター及び関連製品を設計、製造し、鼎泰豊に委託販売していたが、著作権者は宝来文創である。また、翌年、鼎泰豊の要求に応じて、包仔、籠仔の「立体商標」を鼎泰豊に譲渡したが、「平面商標」権は譲渡しなかったので、鼎泰豊が無断で平面商標を出願したと指摘し、鼎泰豊及び楊紀華が著作権法に違反するとして自訴を提起した。

台北地裁で審理した結果、鼎泰豊による平面商標の出願登録は、宝来文創の同意を得ていたほか、双方の提携期間において、宝来文創に品切れがあり、鼎泰豊が自ら包仔、籠仔商品の開発、製造販売をしていることを同社も知っていたほか、告訴提起前に使用してはならない旨を通知したこともなかったと認定し、鼎泰豊に無罪の判決を下した。

II 判決内容の要約

台湾台北地方裁判所刑事判決
【裁判番号】104年度自字第88号
【裁判期日】2017年02月22日
【裁判事由】著作権法違反

自訴人   宝来文創開発股份有限公司
被告人    鼎泰豊小吃店股份有限公司
兼代表者  楊紀華

上記被告人等の著作権法違反事件につき、自訴人が自訴を提起したため、本裁判所は、次の通り判決する。

主文
鼎泰豊小吃店股份有限公司、楊紀華はともに無罪である。

一 事実要約
1. 自訴人である宝来文創公司は、2008年8月、9月頃、「Q版包仔」美術著作物及び「Q版籠仔」美術著作物の設計を完成させた。自訴人宝来文創公司は2008年11月25日に、被告人楊紀華を会社の代表者とする被告人鼎泰豊公司と「鼎泰豊商品開発互恵合作契約」(以下係争提携契約書という)を締結し、係争美術著作物をもって製造する「鼎泰豊記念商品」の販売について提携し、提携期間を2009年2月1日より2011年7月31日までと約定した。被告人鼎泰豊公司は2015年8月ごろ、自訴人宝来文創公司に双方の提携関係終了を通知した後、係争契約に基づく提携企画の遂行をしなかった。
2. 自訴人宝来文創公司は、2015年9月2日になり始めて、被告人楊紀華及び被告人鼎泰豊公司がその同意を得ないで、無断で係争美術著作物を複製、改作し、且つ2009年9月21日に添付一、添付二に示す複製、改作図形をもって、経済部知的財産局に商標区分043、030類の商標登録を出願し、同局からそれぞれ2010年5月16日、2010年7月1日に登録番号00000000号、00000000号、00000000号、00000000号として公告されたほか、当該複製、改作図形において、自訴人宝来文創公司が係争美術著作物の著作者であると表示していないことを発見した。

二 両方当事者の請求内容
(一)自訴人による請求の趣旨:
被告人楊紀華は、著作権法第91条第1項の複製方法による他人の著作財産権侵害の罪、同法第92条の無断改作による他人の著作財産権侵害の罪、及び同法第93条第1号の著作者の人格権侵害の罪を犯したので、被告人鼎泰豊公司も著作権法第101条により罰金を科さなければならない。
(二)被告人による請求の趣旨:著作権法違反の犯行否認。

三 本件の争点
1. 被告人鼎泰豊公司による包仔、籠仔の商標出願は、自訴人の同意を得たのか?
2. 被告人楊紀華には自訴人の著作権を侵害する主観的な故意があったか?
3. 被告人楊紀華は著作権法第93条第1号の著作者の人格権侵害の罪を犯したか?
(一)原告による主張の理由:省略。判決理由の説明参照。
(二)被告人による答弁の理由:省略。判決理由の説明参照。

四 判決理由の要約 
(一)被告人鼎泰豊公司による包仔、籠仔の商標出願は、自訴人の同意を得たものである。
1. 被告人鼎泰豊公司の資訊部責任者、即ち証人張躍騰は、本裁判所の審理時に次の通り証言した。2009年7月14日に受け取ったメールで理解したことは、宝来文創公司が鼎泰豊公司による商標出願に同意したということであり、このほか、係争美術著作物の商標登録出願書類を閲覧した部分や、また自訴人公司のセールスマン徐維志が2009年7月14日に証人張躍騰に送付した電子メールから分かるように、被告人鼎泰豊公司は確かに、商標登録出願の件について自訴人に問い合わせたことがあり、自訴人も同意の意思表示をしていた。
2. 自訴人は被告人鼎泰豊公司と、その後2009年7月27日に立体商標登録出願同意書を締結し、それにおいて「同意者である宝来国際有限公司(以下甲という)は、鼎泰豊公司の包仔、籠仔フィギュア著作物の所有権者である。鼎泰豊包仔、籠仔フィギュア著作物は、中国語:鼎泰豊、英語:DIN TAI FUNG及び日本語:ディンタイフォンを組み合わせた立体商標であり(以下鼎泰豊包仔、籠仔立体商標という)、鼎泰豊小吃店股份有限公司(以下乙という)がこれを小籠包等飲食周辺役務の販売に使用して、順次ブランドの価値を拡大し、企業イメージがアップしている。よって、乙のブラントの完全な保護ニーズに応じて、乙が鼎泰豊包仔、籠仔立体商標を小籠包等飲食周辺役務及び商品に使用するために立体商標として登録出願することに同意した。前記商標出願に同意する指定商品は、この商標存続期間において甲が製造を独占する。」とした記載は、被告人鼎泰豊公司による包仔、籠仔立体商標の登録出願だけに同意したことを意味する模様である。しかし、前記同意書においては包仔、籠仔「フィギュア」のような立体化キャラクター人形について述べただけで、その他の平面図形商品に一切言及していないため、自訴人が被告人鼎泰豊公司による平面商標登録出願に同意したことを排除することは難しい。ましてや、証人張躍騰の証言、及び前記電子メールに基づけば「商標」だけを述べていて、平面商標または立体商標に限定していないほか、商標登録を受けようとする図形が、他人が著作権を有する著作物であれば、もとより著作財産権者による同意の証明書類の提供を必要としないので、この同意書をもって、自訴人が被告人鼎泰豊公司に同意した商標登録出願の対象が包仔、籠仔の立体商標に限るとは認定し難い。
3. これに準じて、被告人鼎泰豊公司が自訴人との提携期間内において、経済部知的財産局に対し、043、030商標区分の商標登録を出願し、同局よりそれぞれ2010年5月16日、2010年7月1日に登録番号00000000号、00000000号、00000000号、00000000号を、ドリンク店、軽食店などの指定商品に使用する商標として取得したことは、自訴人会社の同意を得て、はじめて被告人鼎泰豊公司が商標登録を出願したことであるから、自訴人が指摘したような、著作権侵害の法律規定により論断する余地がない。

(二)被告人楊紀華に、自訴人の著作財産権を侵害する主観的な故意はない。
1.著作権法第91条第1項の複製方法による他人の著作財産権侵害、及び第92条の無断な改作方法による他人の著作財産権侵害の罪の成立は、ともに行為者に故意があることを構成要件とする。被告人鼎泰豊公司は自訴人による前記の同意を得て、包仔、籠仔図形の商標出願登録をしたのにもかかわらず、自訴人は2015年12月17日に本件の自訴を提起した。本件自訴提起前に、明確に被告人楊紀華または鼎泰豊公司に包仔及び籠仔図形を使用してはならない旨を通知したことがないので、被告人楊紀華に主観的に他人の著作財産権侵害の故意があるとは認定し難い。
2.連邦国際専利商標事務所(以下連邦事務所という)の担当者である劉德信の、本裁判所の審理における証言から分かるように、被告人鼎泰豊公司はまず証人劉德信の勤める事務所に平面商標の出願を依頼し、その後立体商標登録出願のために前記立体商標同意書を締結した。本裁判所は、証人劉德信が証言した立体商標の登録出願過程及び同意書の締結過程から、被告人楊紀華に平面商標出願過程において自訴人による前記係争美術著作財産権を侵害する主観的な故意があったと推知することができない。
3.更に、連邦事務所による本裁判所への返信に、被告人鼎泰豊公司による包仔、籠仔平面商標登録出願の委任状が付されていたが、それには自訴人及び被告人鼎泰豊公司がどのように平面商標を約定するかの規定がなく、本裁判所は、被告人楊紀華が平面商標の出願過程において意見を示したか、自訴人による前記係争美術著作財産権であることを知りながら、これを侵害する主観的な故意があったのかを推知することもできない。

(三)被告人楊紀華に著作権法第93条第1号違反の疑いがある部分:
著作人格権とは、著作者がその著作物について人格的、精神的利益の保護を受けることができる権利をいう。自訴人は、包仔及び籠仔図形の著作財産権者に過ぎず、著作者ではないので(「Q版包仔」、「Q版籠仔」等図形は、証人顏淑美が自訴人公司に勤めていた期間に設計、描いたものである。顏淑美が自訴人と2006年8月17日に締結した秘密保持契約書第6条によれば、知的財産権の部分については、使用者がこれを有すると約定したが、著作者の部分について特別な約定がなかった。よって、著作権法第11条第1項の規定によれば、証人顏淑美が職務上完成させた包仔及び籠仔図形も被用者である顏淑美が著作者である)、自訴人が、被告人楊紀華による氏名表示権侵害を理由に、被告人楊紀華が著作権法第93条第1号の罪に違反するとしたことには根拠がない。

(四)前記により、被告人楊紀華には、複製方法による他人の著作財産権侵害、及び無断の改作方法による他人の著作財産権侵害の犯罪故意がないので、被告人鼎泰豊公司が前記包仔及び籠仔図形の設計を平面商標として商標登録出願した行為をもって、直ちに被告人楊紀華に他人の著作財産権を侵害する主観的な故意があったとは認定し難い。よって、被告人楊紀華の犯罪を証明できなければ、法により被告人楊紀華に対して無罪の判決を下さなければならない。また、被告人鼎泰豊公司の代表者に就いている被告人楊紀華の犯罪が証明されなければ、被告人鼎泰豊公司を同法第101条第1項により処罰する余地もないので、当然、無罪の判決を下さなければならない。

以上を総じて、刑事訴訟法第343条、第301条第1項により、主文の通り判決しなければならない。

2017年2月22日
刑事第八法廷審判長裁判官  林秋宜
裁判官  莊書雯
裁判官  余欣璇
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