未許諾のキャラクター図案を無断で使用、有名レストランが著作権法違反

2019-10-24 2019年
■ 判決分類:著作権

I 未許諾のキャラクター図案を無断で使用、有名レストランが著作権法違反

■ ハイライト
有名レストラン、鼎泰豊小吃店股份有限公司(Din Tai Fung Restaurant Inc.、以下「鼎泰豊」)はかつて寶來文創開発股份有限公司(Polylight Design Co., Ltd.、以下「寶來公司」)と提携したことがあり、当時寶來公司の女性デザイナー(顔○○)によってデザインされた「包仔」、「籠仔」及び「鼎仔」等のキャラクターが鼎泰豊の使用に供された。双方の提携が終了した後、顔○○は鼎泰豊に転職し、寶來公司の許諾を得ずに無断で2013年3月に鼎泰豊の新年会イベントで「鼎仔」使用して、権利侵害で告訴された。
寶來公司によると、「包仔」、「籠仔」及び「鼎仔」の3つのキャラクターは顔○○が寶來公司に在職していた時に製作したもので、双方が締結した秘密保持誓約書に基づき、デザイナーが在職期間中にデザインした物品の著作権は寶來公司が所有する。しかしながら鼎泰豊は関連のキャラクターを子ども用食器、鳳梨酥(パイナップルケーキ)の包装箱等の物品に無断で使用して販売した。また鼎泰豊は寶來公司との提携を終了した後に「鼎仔」で登録商標を出願したり、複製して横断幕を製作したりしたため、(寶來公司は)顔○○、鼎泰豊及びその代表者である楊○○を相手取り「著作権法」違反で告訴した。
検察官は鼎泰豊と寶來公司との提携に関する資料に基づいて、鼎泰豊が子ども用食器等の物品を製造して販売した事を寶來公司は当時知っていたが反対しなかった状況を確認し、これは黙認に等しく、この部分については不起訴処分とした。ただし、顔○○が寶來公司の同意を得ずに無断で新年会の横断幕に「鼎仔」の絵を描いた事は複製罪を構成しており、鼎泰豊は法に基づき連帯責任を負う必要がある。よって(検察は)「著作権法」違反で鼎泰豊と顔○○を起訴した。
裁判官は以下のように認定した。顔○○は寶來公司に在職していた期間に秘密保持誓約書に署名しており、在職期間に創作したいかなる著作物についても著作権は寶來公司が所有することを明らかに知っていたが、鼎泰豊に転職した後、寶來公司の許諾を得ずに「鼎仔」の図案を新年会のイベントに無断で使用したため、故意に複製した動機があったことは明白である。さらに寶來公司と鼎泰豊との間でフィギュアの立体商標登録に関する同意書が締結された事については、その範囲が「包仔」と「籠仔」に限られ、「鼎仔」は含まれていない。よって顔○○による権利侵害の犯行は明らかである。顔○○が最終的に罪を認め、後悔の念を示していることを斟酌して、拘留30日、罰金3万新台湾ドルへの転換も可とする比較的軽い刑に処し、鼎泰豊には罰金6万新台湾ドルを科した。さらに上訴できる。(蘋果即時–2019年3月18日)

II 判決内容の要約

台湾台北地方裁判所刑事判決
【裁判番号】107年度智易字第33号
【裁判期日】2019年2月26日
【裁判事由】著作権法違反

公訴人 台湾台北地方検察署検察官
被告人 鼎泰豊小吃店股份有限公司
代表者 楊紀華
被告人 顔淑美

上記被告人の著作権法違反事件について、検察官は公訴(107年度偵字第6555号、106年度偵字第6997号)を提起し、当裁判所は次のとおり判決する:

主文
顔淑美は無断で複製する方法で他人の著作財産権を侵害したため、30日の拘留に処し、罰金に転換するときは1日1000台湾ドルで換算する。
鼎泰豊小吃店股份有限公司の被用者が業務の遂行により、無断で複製する方法で他人の著作財産権を侵害した罪を犯したため、罰金6万新台湾ドルを科す。

一 事実要約
顔淑美は2006年8月17日から2011年5月6日まで寶來文創開発股份有限公司(以下「寶來公司」)に在職し、商品デザインを担当していた。離職後は2011年11月から2013年9月まで鼎泰豊小吃店股份有限公司(以下「鼎泰豊」)で雇用された。顔淑美は自身が2008年8月にデザインを完成した美術の著作物「鼎仔」について、寶來公司と交わした秘密保持誓約書の約定により著作財産権は寶來公司が所有することを明らかに知りながら、なお著作権法違反の犯意に基づいて、鼎泰豊に在職していた2013年3月27日より前の某時に、鼎泰豊のために複製して職務上の成果とし、当該年度の新年会イベントにて使用した。その後寶來公司は2016年9月13日に、鼎泰豊が許諾を受けずに「鼎仔」を鼎泰豊の商標として登録を出願したとして台北地検署に告訴した。顔淑美は2018年3月16日の取調べにおいて、かつて「鼎仔」を複製して2013年の新年会イベントに使用した事情を供述したため、その時始めて上記事情が分かった。本案は台湾台北地方検察署の検察官が取調べを行い起訴した。

二 判決理由の要約
1.手続き部分:
親告罪であるため、被害者は検察官又は司法警察官に告訴しておらず、裁判所の審理中に、たとえ告訴を補充できたとしても、なお検察官又は司法警察官にこれを行い、その後検察官又は司法警察官から、当該告訴状又は告訴の旨を述べる事情聴取記録を裁判所に補充提出しなければならず、これを以って始めて合法の告訴といえる(最高裁判所1984年度台上字第4314号判例を参照)。本件被告人が2018年3月16日の取調べにおいてかつて「鼎仔」を複製して2013年の新年会イベントで使用したこと等は、2018年3月27日に検察官から告訴人の寶來公司の代表者である徐華文に通知された。寶來公司は2018年9月19日に台北地検署に告訴を補充し、さらに当裁判所に補充提出された。寶來公司からの刑事告訴状はファイルに添付されており参照できる。寶來公司が告訴を提起した日時は該社が前述犯罪事実を知り得てから6ヵ月以内であったため、その告訴は合法である。寶來公司の代表者である徐華文が鼎泰豊の新年会イベントに参加したことがあり、さらに2014年8月23日に被告人顔淑美に対して「鼎仔」等の関連する電子ファイルを送り整理するよう請求しており、況して「鼎仔」は鼎泰豊が発行した葉書にも使用されており、寶來公司は早い時期から被告人顔淑美が「鼎仔」を複製し、鼎泰豊で使用していた行為を知っていたはずであり、前記告訴は時効が成立している云々と、弁護人は主張しているが、調べたところ、弁護人が前文で指摘しているものはいずれも被告人による「鼎仔」の複製と2013年新年会イベントでの使用を寶來公司が知っていた事を証明できず、寶來公司が2016年9月13日に提出した告訴の趣旨も鼎泰豊が「鼎仔」を複製して商標登録しようとした部分についてのみであり、寶來公司は被告人による「鼎仔」の複製と2013年新年会イベントでの使用については確かに知らなかったことが分かる。弁護人の主張は採用できない。

2.実体部分:
被告人顔淑美は、寶來公司には被告人顔淑美による鼎泰豊での「鼎仔」の使用について黙示による同意という形の許諾があり、また主観的に権利侵害の故意はなく、公正な利用(フェアユース)の範疇にある云々と主張している。調べたところ、以下のとおりである。

(1)被告人顔淑美は2006年8月17日に寶來公司と秘密保持誓約書を交わした。当該誓約書第6条には「甲(即ち顔淑美)は乙(即ち寶來公司)に在職する期間において、職務上で完成した専利(訳註:特許、実用新案、意匠を含む)、著作物又はその他知的財産について、その権利はいずれも乙が所有し、甲は異議を唱えてはならない。」と約定されている。当約定の記載によると、被告人顔淑美は主観的に寶來公司での在職期間内に創作したいかなる著作物についても、寶來公司による使用、採用の有無に関わらず、いずれも寶來公司が所有し、寶來公司の許諾を得ずに複製、使用してはならないことを知っていたはずである。被告人顔淑美は鼎泰豊での在職期間において、寶來公司の許諾を得ず、即ち無断で「鼎仔」を鼎泰豐公司の2013年新年会イベントに使用した。たとえ被告人顔淑美が秘密保持誓約書の内容を完全に理解していなかったとしても、「鼎仔」を複製する前に寶來公司又は鼎泰豐の法務担当に問い合わせるべきだったが、これを行わず、直接「鼎仔」を鼎泰豊の新年会イベントに使用しており、主観的に複製の故意があったことは明らかである。況して寶來公司は鼎泰豊と関連のフィギュア商品について立体商標登録同意書を取り交わしているが、同意書で許諾する範囲は美術の著作物「包仔」と「籠仔」のみで、「鼎仔」は含まれていない。これはすでに鼎泰豊の代理人が審理において述べているものであり、被告人顔淑美及び被告人鼎泰豊が2013年新年イベントの前後に寶來公司に通知せず「鼎仔」を使用した事情は、寶來公司が2013年に鼎泰豊が「鼎仔」の使用について黙示による同意を行ったとは認めがたい。さらに新年会イベントは鼎泰豊が対外的には販促、宣伝を行い、対内的には従業員の組織に対する帰属意識を構築するための活動であり、広義的な商業行為に該当する。企業のフィギュアマスコットは企業宣伝の一環であり、販促、宣伝、コーポレート・アイデンティティ(CI)確立という目的を持っている。また企業が商品を販促するための手段でもあり、営利の特徴を有する。被告人顔淑美は前後して寶來公司と鼎泰豊に在職しており、寶來公司の在職期間に創作した著作物を鼎泰豊にて使用し、鼎泰豊のフィギュア、シンボルとししてもよいか否かについては、善良な管理者の注意義務を妥当に斟酌すべきであり、使用の程度が軽微であることを以って免責することはできず、公正の使用の範疇にあるとは認めがたい。

(2)論罪科刑:被告人顔淑美の行為は、著作権法第91条第1項の無断で複製する方法により他人の著作財産権を侵害する罪を犯すものである。被告人鼎泰豊はその被用者が業務の遂行により著作権法第91条第1項の無断で複製する方法により他人の著作財産権を侵害する罪を犯したことにより、同法第101条第1項の規定に基づき、同法第91条第1項に定める罰金刑を科す。被告人顔淑美による無断で複製して合法的許諾を受けていない他人の著作財産権(侵害)行為が、著作権者の権益を侵害するだけではなく、わが国の知的財産権保護の国際的イメージを破壊するものであることも斟酌すると、確かに褒められるものではなく、非難すべきである。ただし被告人顔淑美が犯行後に犯行を認め、犯行後の態度もなお受け入れられるものであることを考慮し、併せてその犯罪の動機、目的及び手段、家庭の経済状況、知識の程度等の一切の情状を参酌し、主文に示す刑に量刑するとともに、罰金への転換の換算基準を告知した。また前述の犯罪の情状を参酌して、被告人鼎泰豊には主文に示す罰金を科して、危機感を高める。

3.以上の次第で、刑事訴訟法第299条第1項前段、著作権法第91条第1項、第101条第1項,刑法第11条前段、第41条第1項前段により、主文のとおり判決する。

本件は検察官蕭奕弘が取調べと起訴を行い、検察官王盛輝が法廷で公務を執行した。

2019年2月26日
刑事第十法廷 裁判官  林抜群
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