他人のホテルの客室デザインと家具配置に対する模倣が著作権侵害及び不正競争行為を構成するか否かは、関連の証拠と弁論の全趣旨により総合的に判断すべき。

2021-08-24 2021年
■ 判決分類:著作権

I 他人のホテルの客室デザインと家具配置に対する模倣が著作権侵害及び不正競争行為を構成するか否かは、関連の証拠と弁論の全趣旨により総合的に判断すべき。

■ ハイライト
被上訴人(原告)は、それが経営する台北京站君品酒店(Palais de Chine Hotel、以下「君品酒店」)の客室及び家具等の配置(以下「係争著作物」)は訴外人である十月室内裝修有限公司(以下「十月公司」)にデザインを委託したもので、著作権法で保護される建築の著作物に該当し、十月公司は著作財産権(の行使)を被上訴人に独占的に許諾していること、上訴人(被告)は係争著作物を模倣し、自らが経営する台東桂田喜來登酒店(Sheraton Taitung Hotel、以下「桂田酒店」)の客室に複製するとともに、その部屋タイプ別の写真を関連のサイトに掲載しており、取引競争の倫理から外れるもので、不正競争行為を構成し、かつ被上訴人の著作財産権を侵害するものであることを主張した。知的財産裁判所は一、二審においていずれも上訴人(被告)による著作財産権の侵害と不正競争行為を認める判決を下していた。最高裁判所は、原審では1.係争著作物に独創性はあるのか、2.被上訴人(原告)は十月公司から損害賠償債権を譲り受けているのか、3.当事者間に競争関係はあるのか、という争点について関連の証拠と弁論の全趣旨が完全に斟酌されていないため、判決には理由不備という違法があると認定して、原判決を破棄し、知的財産裁判所に差し戻した。

II 判決内容の要約

最高裁判所民事判決
【裁判番号】109年度台上字第2725号
【裁判期日】2021年1月20日
【裁判事由】著作権侵害に係る財産権の争議等

上訴人 桂田璽悅酒店股份有限公司
被上訴人 雲朗観光股份有限公司

主文
上訴人の上訴棄却並びに当該訴訟費用の部分に関する原判決を破棄し、知的財産裁判所に差し戻す。

一 事実要約
被上訴人(原告)は、それが経営する台北京站君品酒店(Palais de Chine Hotel、以下「君品酒店」)の客室及び家具等の配置(以下「係争著作物」)は訴外人である十月室内裝修有限公司(以下「十月公司」)にデザインを委託したもので、著作権法で保護される建築の著作物に該当し、十月公司は著作財産権(の行使)を被上訴人に独占的に許諾していること、上訴人(被告)は係争著作物を模倣し、自らが経営する台東桂田喜來登酒店(Sheraton Taitung Hotel、以下「桂田酒店」)の客室に複製するとともに、その部屋タイプ別の写真を関連のサイトに掲載しており、取引競争の倫理から外れるもので、不正競争行為を構成し、かつ被上訴人の著作財産権を侵害するものであることを主張した。

二 両方当事者の請求内容
(一)被上訴人(原告)の請求:
1. 上訴人は連帯で500万新台湾ドルを支払え。
2. 桂田公司は模倣した客室設計及び家具を取壊して撤去し、取壊しと撤去をするまでは消費者の宿泊に供してはならない。
3. 桂田公司は係争著作物である客室デザインの写真を使用してはならない。桂田酒店の名義でネット上に掲載された係争著作権を侵害する写真を削除しなければならない。
4. 上訴人は蘋果日報、自由時報、中国時報及び聯合報の全国版1ページ目の下半分に本件の最終事実審判決書における当事者、事由及び主文を一日掲載せよ。
5. 被上訴人は担保を供託するので仮執行宣言を求める。

(二)上訴人(被告)の請求:
1. 原判決の上訴人に不利な部分を破棄する。
2. 上記の破棄部分について、被上訴人による第一審の訴え及び仮執行宣言の請求をいずれも棄却する。

三 本件の争点
1. 係争のホテル客室デザインには独創性があるのか、そして、これにより著作権法で保護される建築の著作物に該当するのか。
2. 十月公司の上訴人に対する各損害賠償債権は、被上訴人に譲与されているのか。
3. 桂田公司が君品酒店の客室デザインを高度に模倣したことは、取引秩序に影響するに足る欺瞞的な又は著しく公正さを欠く行為に該当し、公平交易法第25条に違反しているのか。

四 判決理由の要約
1. 著作権法でいうところの著作物とは、文学、科学、芸術若しくはその他学術の範囲に属する創作物であると、著作権法第3条第1項第1号に規定されている。いわゆる創作とは、著作者の思想又は感情の表現であり、しかも一定の表現形式を有し、独創性を有する必要がある。いわゆる独創性とは、著作者が独立して完成した創作が、特定の内容と創意の表現を備えて、当該著作物の個性と独自性を表現するに足るものであり、他人の著作物を摸倣するものではないことを指す。
2. 上訴人は、係争著作物は業界で汎用されている配置を参考し、既製品を調達したもので、その家具の外観、選択、サイズ、採光照明、動線のアレンジ等は独創性が欠如している云々と抗弁し、家具カタログの公正証書、書籍、交通部観光局のホテル格付表等を証拠として提出した。上記説明によると、係争著作物が独創性を有するのか、被上訴人が著作財産権を主張できるのかについて、原判決は上訴人の上記防御方法及び証拠を採用しなかった理由を説明せずに、係争著作物が著作権法の保護を受ける建築の著作物であるとすぐに認定しており、これには検討の余地がある。
3. 被上訴人は2014年12月に上訴人が係争著作物を模倣した行為を発見し、すでに2015年4月には十月公司と変更の契約を結び、係争著作物の著作財産権は被許諾者に専属するものとなり、2009年3月26日に遡って発効とした等の事情は、すでに原審で認定されている。十月公司は上訴人が係争著作財産権を侵害した事実が発生した後に始めて係争著作財産権が遡って被上訴人に許諾されている。もしそうならば、元来、十月公司が有する上訴人に対する各損害賠償債権が被上訴人に譲渡されているか否かは、被上訴人が著作財産権侵害の各規定により請求することができるか否かに関わるものであり、原判決は変更契約の内容のみを以って、被上訴人は係争著作物の著作財産権により請求できると認定しており、なお速断の嫌いがある。
4. 公平交易法第25条に「本法に別段の規定がある場合を除き、企業はその他取引秩序に影響するに足る欺瞞的な又は著しく公正さを欠く行為を行ってはならない」と規定され、これは不正競争(不公平競争)行為の概括規定である。行為が不正競争を構成するのかは、行為者と取引相手との取引行為、及び市場における能率競争の侵害の有無、から判断できる。企業が他人の有名な商品の外観又は表徴(トレードドレス)を高度に模倣して、積極的に他人の著名な広告又は取引上の信用・名声等にただ乗りする方法で、その努力の成果を搾取したり、積極的な欺瞞又は消極的な重要取引情報の隠匿によって他人を錯誤させる方法で取引行為に従事したりして、全体の取引秩序を総合的に考慮し、すでに民事の法律関係において双方の当事者間の利益分配又はリスク負担が極度に不均衡である事情が認められたとき、上記条文の規定に合致すると認めることができる。ただし企業の行為が欺瞞的な又は著しく公正さを欠くものではない、又は市場における能率競争に妨害がない、又は取引秩序に影響するに足るものではない場合、当該条文は適用されない。
5. 上訴人は、桂田酒店と君品酒店との地理的位置、客層、経営方針のいずれも異なり、代替又は競争の関係はないこと、客室の内装は消費者がこだわる要素又はホテルを選択する要素ではないこと等を繰り返し主張するとともに、蓋洛普徵信股份有限公司による旅館客室デザイン独創性調査報告、開業許可申請説明書、運営計画書、交通部観光局のデータ、プレゼンテーション資料、業界関連書籍等を証拠として提出している。桂田公司が君品酒店の客室デザインを高度に模倣したことは、取引秩序に影響するに足る欺瞞的な又は著しく公正さを欠く行為に該当するか否かは、関連する証拠の調査結果と弁論の全趣旨を斟酌して認定すべきであり、これは上訴人が公平交易法第25条に違反していないと抗弁することに密接にかかわっており、検討の必要がある。原審は前記抗弁及び証拠を斟酌せず、徒に台湾の面積が小さく、観光地の往来が便利であるため、双方には高度の競争関係があると推論して、上訴人に不利な認定を行っている。上記規定を不当に適用しているほか、判決には理由不備の違法がある。
6. 結論:本件上訴には理由がある。民事訴訟法第477条第1項、第478条第2項により、主文のとおり判決する。

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