秘密保持契約を結んだ被告人が許諾を得ずに、知得した営業秘密について事情を知らない第三者である事務所に実用新案登録出願を委託して取得したため、営業秘密法に違反
2019/12/26 | 2019年 前のぺージに戻る    
■ 判決分類:営業秘密法

I 秘密保持契約を結んだ被告人が許諾を得ずに、知得した営業秘密について事情を知らない第三者である事務所に実用新案登録出願を委託して取得したため、営業秘密法に違反

■ ハイライト
日月光半導体製造股份有限公司(Advanced Semiconductor Engineering, Inc.、以下「日月光公司」)は製品の歩留まり率と製造工程の水準を高めて、顧客からの受注を増やすため、新型無塵衣(シューズ)の静電気放電(Electrostatic Discharge、略称ESD)防護技術を開発した。被告人陳○○は2013年8月7日に宏久科技有限公司(Hugeteck Co.,Ltd.、以下「宏久公司」)を代表して日月光公司と「新型無塵衣(シューズ)」の調達に関する秘密保持契約を結んだ。日月光公司は2014年4月8日に「新型無塵衣(シューズ)」等の営業秘密を含む関連資料を電子メールで宏久公司に送り、宏久公司はそれらの情報を受け取った後、陳○○に渡した。陳○○と「宏久公司」はそれが製作した「新型無塵衣(シューズ)」のサンプルを日月光公司の従業員に渡してテストしたが、何度もテストで不合格となった後、宏久公司は日月光公司に対して「新型無塵衣(シューズ)」の調達業務から撤退することを申し出た。同年、陳○○は取得した「新型無塵衣(シューズ)」の営業秘密を以て三立事務所を通じ経済部の知的財産局に対して実用新案登録の出願を行い、2015年1月11日に実用新案第 M2493272号「導電ウェビングが接続された全身スーツ型無塵衣(原文:導電織帶連接全身式無塵衣)」、及び実用新案第M4932813号「導電ウェビングが接続された無塵シューズ(原文:導電織帶連接無塵鞋)」等の実用新案を取得した。その後日月光公司は陳○○が知得した「新式無塵衣(シューズ)」に関する営業秘密を違法に使用したことを確認し、法務部調査局の航業調査処高雄調査站(Kaohsiung Station, Marine Affairs Field Office)に告訴した。
一審裁判所(台湾橋頭地方裁判所104年智訴字第13号刑事判決)は被告人陳○○の行為が営業秘密法第13条の1第1項第2号にある他人の営業秘密を所持し、許諾を得ずに当該営業秘密を複製、使用する罪を犯しているとして、(被告人陳○○に対して)1年6ヵ月の懲役に処した。被告人「宏久公司」に対してはその代表者である被告人陳○○が業務執行につき営業秘密法第13条の1第1項第2号にある他人の営業秘密を所持し、許諾を得ずに当該営業秘密を複製、使用する罪を犯しているため、営業秘密法第13条の4により、営業秘密法第13条の1第1項に定める罰金200万新台湾ドルを科した。
二審裁判所(知的財産裁判所107年度刑智上訴字第13号刑事判決)は同じく被告人陳○○の行為が営業秘密法第13条の1第1項第2号にある他人の営業秘密を所持する罪を犯していると認定したが、被告人陳○○は営業秘密を「複製」せずに、営業秘密を使用、漏洩したほか、犯行を認めており、日月光公司と和解が成立していることから、(原判決を)取り消して被告人陳○○、宏久公司に対して執行猶予の判決を下した。

II 判決内容の要約

知的財産裁判所刑事判決
【裁判番号】107年度刑智上訴字第13号
【裁判期日】2019年2月27日
【裁判事由】営業秘密法違反

上 訴 人 宏久科技有限公司
即ち被告人
代 表 者  陳○○
選任弁護人  余德正弁護士
            劉昱玟弁護士
上  訴  人  陳○○
即ち被告人  
選任弁護人  余德正弁護士
                  劉昱玟弁護士
                  林堯順弁護士

判決主文:
1.原判決を取り消す。 
2.陳○○は営業秘密法第13条の1第1項第2号の罪を犯したため、懲役1年2ヵ月に処す。(この裁判確定の日から)3年間その刑の執行を猶予する。並びにこの判決確定後6ヵ月以内に公庫に20万新台湾ドルを納付せよ。また猶予期間内に保護観察に付す。並びに猶予期間内に指定の政府機関、政府機構、行政法人、コミュニティ又はその他の公益を目的とする組織又は団体において40時間の社会奉仕をしなければならない。
3.宏久科技有限公司はその代表者が業務執行につき営業秘密法第13条の1第1項第2号の罪を犯したため、180万新台湾ドルの罰金を科す。(この裁判確定の日から)2年間その刑の執行を猶予する。

一 事実の要約
被告人陳○○は宏久科技有限公司(「宏久公司」)の代表者であり、陳○○は自己の不法な利益を意図して、被告人宏久公司を代表して日月光公司の調達業務に参与した過程において日月光公司の「新型無塵衣(シューズ)」に関する営業秘密を知得して所持し、日月光公司の許諾を得ずに知的財産局に実用新案権登録を出願したことにより、営業秘密法第13条の1第1項第2号の罪を犯した。

二 本件の争点
(一)係争「新型無塵衣(シューズ)」は日月光公司の営業秘密に該当するのか。
(二)そうならば、被告人陳○○は営業秘密法第13条の1第1項第2号の罪を犯しているのか。

三 判決理由の要約
(一)営業秘密の判断に係る要件は、「経済性」(有用性)、「秘密性」(非公知性)、所有者が「合理的な秘密保持措置」(秘密管理性)を採っていること等であり、それらを満たして始めて該当する。いわゆる「経済性」とは、生産、製造、経営、販売に用いる情報を指し、また経済的利益や商業的価値を生み出す情報でもある。「秘密性」については、企業内部の営業秘密は概ね「商業上の営業秘密」と「技術上の営業秘密」の2タイプに分類でき、前者は主に企業の顧客リスト、販売拠点、商品価格、仕入れコスト、取引最低価格、人事管理、コスト分析等の経営に係る情報を含み、後者は主に方法、技術、製造工程及び配合等のような特定な産業の研究開発又は革新技術に関する機密を含み、所有者が整理、分析して、市場において又は専門分野において通常の方法により取得できない情報をいう。いわゆる「秘密保持措置」とは、営業秘密の所有者が主観的に保護の意向を持ち、かつ他人に当該情報が秘密であり守る意思があることを理解させるよう客観的に秘密保持の積極的作為を行うことをいう。例えば、当該営業秘密と接触できる従業員と秘密保持契約を結んだり、当該営業秘密と接触できる者を管制したり、文書上に「機密」又は「閲覧制限」等の注記を記したり、営業秘密の資料を施錠できる場所に保管したり、パスワードを設定したり、保全措置(例えば、訪問客が機密保管場所に近づくことを制限)を採ること等が挙げられる。営業秘密の所有者が客観的に一定の行為を行い、他人に当該情報を営業秘密として保護する意向があることを理解させ、当該情報が随意的にアクセスできない方法で管制されていたならば、それに該当する。
1.証人の供述及び(日月光公司の)「新型無塵衣(シューズ)」特許出願の明細書公開資料から、日月光公司の新型無塵衣(シューズ)は作業対象物が人体から発生される静電気によって破壊されないようにしながら、作業員の操作にも影響がなく、製品の歩留まり率と製造工程の効率を高め、生産に使用できる技術、製造工程に関連する情報で、経済的な価値を有することが分かる。
2.証人の供述から、被告人陳○○が代表する宏久公司は日月光公司と秘密保持契約を結んでおり、証人が「新型無塵衣(シューズ)」備考説明資料を被告人に提供した時に、当該資料にはすでに特許を出願していること、試作に参加するメーカーは秘密保持契約を締結しなければならないこと等が明記されていたことが分かり、これらの関連資料は通常このような情報にアクセスする者が知得できるものではなく、秘密性を有することが分かる。
3.日月光公司はすでに宏久公司と秘密保持契約を結んでおり、日月光公司の従業員は被告人陳○○から「新型無塵衣(シューズ)」業務について問合せを受ける過程においても再三被告人宏久公司がすでに秘密保持契約を結んでいることを確認していることから、日月光公司が主観的にそれらの情報を保護しようとする意向があることは明らかであり、客観的にも秘密保持契約と従業員による確認という積極的作為があり、日月光公司が「新型無塵衣(シューズ)」に関連する情報について必要な保護措置を採っていたと認めることができる。
4.被告人陳○○は日月光公司の従業員から口頭で説明され、提示された無塵衣、鞋のサンプル及び送られてきた「新型無塵衣・シューズの規格の備考説明資料」等の電子メールから得られた「新型無塵衣(シューズ)」の情報については、経済的価値と秘密性があり、日月光公司は必要な秘密保持措置を採っていたため、日月光公司の営業秘密であると認めることができる。
(二)被告人陳○○が代表する被告人宏久公司は日月光公司とすでに秘密保持契約を結んでおり、即ち前出の日月光公司から取得した「新型無塵衣(シューズ)」に関する資料は日月光公司の営業秘密であることを知っており、なお自分の不法利益を意図しており、それらの知得して所持した営業秘密を三立事務所及び担当者に知らせて係争実用新案の登録出願したことは、営業秘密法第13条の1第1項第2号に定められる他人の営業秘密を知得、所持して、許諾を得ずに当該営業秘密を使用、漏洩する罪を犯しており、その漏洩という低度の行為は使用という高度の行為によって吸収され、別途論罪しない。被告人が懲役以上の刑を宣告されたことはなく、しかも事後に犯行を認めていることから、執行を猶予することが妥当である。被告人宏久公司はその代表者である被告人陳○○が業務執行につき営業秘密法第13条の1第1項第2号の罪を犯しているため、同法第13条の4の規定により、被告人宏久公司に当該条の罰金を科すものであるが、宏久公司がすでに日月光公司と和解していることから、2年の執行猶予を宣告した。

2019年2月27日
知的財産裁判所第三法廷
裁判長 蔡惠如
裁判官 蕭文學
裁判官 杜惠錦