営業秘密の侵害差止請求権に係る認定
2020/12/23 | 2020年 前のぺージに戻る    
■ 判決分類:営業秘密

I 営業秘密の侵害差止請求権に係る認定

■ ハイライト
    原告の台湾中華化学工業股份有限公司(以下:「原告公司」という)は次のように主張した。被告の張○亮(以下「被告張」という)は元来、原告公司で重要な職位にあり、原告公司の多くの重要な経営戦略及び営業秘密に接触しており、原告公司は被告張と、業務上知り得た営業秘密について「秘密保持契約」を結んでいた。原告公司は社内文書の管理と安全保管についても「文書管理規程」で規範づくりをしている。ところが被告張は離職前に無断で会社のメールアドレスを使用し、原告公司が運営上の安全並びに利益獲得に重大な損害を被るに足る、営業秘密に該当する情報を被告張の個人メールアドレスに送信し、自宅のPCに保存し、被告高鼎精密材料股份有限公司(以下「被告公司」という)に就職した後に、電子メール又は複製写真を通信ソフトで送信する等の手段で、原告公司の営業秘密を被告公司に漏洩したため、営業秘密法第11条第1項等規定により、侵害の差止めと防止を請求する。
    被告張は次のように抗弁した。被告張と原告公司が締結した「秘密保持契約」によると、営業秘密は原告公司が「機密」、「限閲(訳注:閲覧制限の意)」と標示した科学、技術、〇〇及び取引に関する情報であるが、原告公司は従業員に「文書管理規程」の内容を告知したり、知悉し確認するよう要求したりしたことがなく、また該規程により文書上に「密」或いは「密碼(訳注:パスワードの意)」、「機密」、「限閲」などの文字が書き加えられていない。「密」レベル以上のデジタル文書は、「外部ネットワークへの伝送禁止」となっているが、ファイル保存又は内部伝送時には「パスワード設定による保護」がされておらず、その他の部門がレベル分け、分類せずに他の従業員に伝送することが容認されていていた。また、係争情報は原告公司のネットワークHDDの「Public」フォルダに保存されており、「限閲」の文字は注記されておらず、被告張は社員IDとパスワードを入力せずに、会社のPCでそのフォルダ内の情報を読み取ることができるため、原告公司は係争情報について合理的な秘密保持措置を講じておらず、しかも原告公司は係争情報の秘密性と経済性に対する挙証を行っておらず、該情報は原告公司の営業秘密には該当しない。また、被告公司は、原告公司が主張するところの営業秘密情報をすでに削除したことを書面で告知しており、原告公司が主張する「侵害禁止請求権」でいうところの危険はすでに存在せず、原告公司による差止請求権の行使には根拠がない。
    知的財産裁判所は、係争情報には「秘密性」と「経済的価値」があり、しかも原告公司は係争情報について「合理的な秘密保持措置」を講じていたため、係争情報は原告公司の営業秘密であり、よって原告公司がその営業秘密の侵害の差止めと防止を行うよう請求することには理由があると認め、被告張、被告公司、被告公司の法定代理人に対して、原告公司が主張する営業秘密情報を使用、発表、又は漏洩してはならず、所持する、又は他人に所持させた原告の営業秘密情報及びその営業秘密を利用することで作成されたすべての資料及びその電子ファイルを廃棄、削除するよう判決した。

II 判決内容の要約

知的財産裁判所民事判決
【裁判番号】108年民営訴字第11号
【裁判期日】2020年1月21日
【裁判事由】営業秘密侵害差止め

原告 台湾中華化学工業股份有限公司(CHUNG HWA CHEMICAL INDUSTRIAL WORKS, LTD)
補佐人 呉旻祐 
被告 張○亮 
被告 高鼎精密材料股份有限公司(COATING P. MATERIALS CO., LTD.)
兼法定代理人 林○燦 

上記当事者間の営業秘密侵害差止事件について、当裁判所は2019年12月24日に口頭弁論を終え、次のとおり判決する。

主文
一、 被告張○亮、高鼎精密材料股份有限公司、林○燦は、原告が保有する又は所持する付表に示す営業秘密資料(00)を使用、発表、又は漏洩してはならず、且つ被告張○亮、高鼎精密材料股份有限公司、林○燦は所持する又は他人に所持させた前記原告の営業秘密資料及びそれらの営業秘密を利用することで作成されたすべての資料及びその電子ファイルを廃棄、削除しなければならない。
二、 訴訟費用は被告張○亮、高鼎精密材料股份有限公司、林○燦の連帯負担とする。
三、 本判決第一項は原告が被告張○亮、高鼎精密材料股份有限公司、林○燦に55万新台湾ドルの担保を立てた後に仮執行を行うことができるが、被告張○亮、高鼎精密材料股份有限公司、林○燦如が165万新台湾ドルの担保を立てれば、仮執行を免れることができる。

壱、原告の陳述要旨と請求声明

一、 被告張○亮(以下「被告張」)は2008年11月17日に原告公司に就職して以来、公司○○等の重要な職位にあり、原告公司の商品の販売、商品の新用途の開発、既存商品の新顧客開拓などを担当しており、同社の多くの重要な経営戦略及び営業秘密に接触し、2017年3月31日に自ら退職願を提出した。原告公司は被告張が離職して間もなく、被告張が2017年6月から原告公司の競合相手である被告高鼎精密材料股份有限公司(以下「被告公司」)に就職したとの情報を得た。原告公司はすぐに被告張の原告公司における電子メールアドレスの使用記録を詳しく調べたところ、被告張が会社の資料をその奇摩雅虎(Yahoo!台湾)の個人メールボックスに何度も転送しており、なかでも在職していた最後の3ヵ月(とくに最後の1ヵ月)にメールの転送が頻繁であった。被告張が離職する前に原告公司の重要な営業秘密を窃取、横領、無断複製又はその他の不正な手段で取得し、さらに使用、漏洩した行為は、営業秘密法違反、刑法の工商秘密妨害、背任及び著作権法違反等の罪に該当するため、桃園地方検察署の検察官はすでに被告を起訴しており、現在桃園地方裁判所で審理中である。

二、 原告公司は社内の営業秘密に対していずれも合理的な秘密保持措置を講じており、且つ主文第一項に示す資料は、この種の情報に通常関わる者が知らないものである:
(一) 被告張は2008年11月17日に「秘密保持契約」を結んでおり、当該契約の第一条に従業員(被告張を含む)は「在職期間に知り得た又は所持する営業秘密を保護してその秘密性を保持するために必要な措置を講じることに同意する」、「職務上の正当な使用以外に、甲が事前に書面で同意することなく、乙は在職中又は離職後を問わず、漏洩、告知、引渡し、又はその他の手段で第三者に移転したり、対外的に発表したり、自分又は第三者のために当該営業秘密を使用したりしてはならない」、契約第二条には「前項の営業秘密は、(A)乙が自ら開発したものか、(B)書面であるか、(C)すでに完了しているもの又はこれから修正するものか、(D)専利権(訳注:特許権、実用新案権、意匠権に相当)、商標権、著作権又はその他の知的財産権を出願又は取得しているかを問わない」、契約第三条には「記載されている又は含まれている営業秘密の研究開発物質、研究開発材料、研究開発設備、文書、資料、図表、完成品及び半製品の製造工程技術又はその他の媒体物質等は、いずれも甲が保有する。乙は離職時又は甲からの請求時にただちに甲又はそれが指定する者に引き渡すか又は関連する手続きを適宜に行わなければならず、いかなる形式のサンプル又は副本も残してはならない。」と定められている。
(二) 原告公司は「文書管理規程」も定めており、さらに社内文書の管理と安全保管について規範づくりをして、確実に実施している。それには文書機密レベルの区分が含まれ、その中で「研究開発プロジェクト計画の内容及び実施状況又は研究開発報告及びプロジェクト終了に関連する資料」、「協力企業と締結した提携覚書・提携契約書等」及び「秘密保持の価値がある文書の漏洩で、会社経営の安全や利益獲得に深刻な損害を与えるに足る者」は「機密」レベル(00等はいずれも「限閲(密)」レベルの資料)に該当し、(原告)公司は「機密」レベル資料に対していずれも関連の秘密保持に係る必要措置を定めている。
(三) 「デジタル文書」について、原告公司はさらに「(密)レベル以上のデジタル文書は外部のネットへ伝送することを禁止し、ファイル保存時、或いは内部での伝送が必要な時はパスワード設定で保護し、且つ秘密文書保管者ではない者又は許可を得ていない者は当該秘密文書の電子ファイルを保存してはならない」と規定している。原告公司の内部では機密のデジタル文書にもパスワードを設定し、一定の職位以上又は担当の従業員のみ当該デジタル文書を閲覧したり接触したりできるようにしている。
(四) 原告公司は新入社員の出社初日に、新人研修を受けるよう要求し、その中に「従業員の秘密保持義務」も含まれている。原告公司は2016年には「従業員マニュアル」も配布し、その中に「就業規則」、「文書管理規程」及び関連の秘密保持規定等が含まれている。「就業規則」第29条には「紀律遵守事項 従業員は以下の紀律事項を遵守しなければならない:二、在職期間に知り得た、又は占有した一切の技術又は資料は厳密に秘密を保持しなければならない。本人が在職しているか否かを問わず、無断使用又はいかなる手段での漏洩も決して行ってはならない。その離職時にはすべての技術資料(コピーを含む)を返却するものとする。」と規定されている。
(五) 被告張は原告公司で○○の職位にあり、一定の職位以上の者に該当し、しかも関連業務により前記デジタル文書を閲覧し、接触することができた。原告公司と被告張とが結んだ「秘密保持契約」、「文書管理規程」及び原告公司内部の「デジタル文書」に対する管理によると、被告張はなおそれら資料を「外部ネットへ伝送する」(その送信先が自身の個人メールアドレスであるかに拘わらず)ことはできず、且つ「秘密文書保管者ではない者又は許可を得ていない者は当該秘密文書の電子ファイルを保存してはならない」ことになっている。

三、 被告張が転送した原告公司の電子メール00とそれが収集した原告公司の商品・顧客に関する情報は、多くが機密レベルに該当する原告公司の重要営業秘密を含むものであり、いずれもその秘密性によって実在的又は潜在的な経済的価値を有するため、それら資料の漏洩によって原告公司が運営上の安全並びに利益獲得に重大な損害を被るに足る。桃園地方検察署がすでに被告張から押収した原告の営業秘密以外に、被告張は離職前に大量の原告営業秘密を窃取している。即ち、被告張は離職前に許可を得ず原告公司の社内メールアドレスを使用して、無断で個人メールアドレスに転送し、又は別途自宅のデスクトップPCに原告の営業秘密を複製し、しかも被告公司に就職した後に、個人の外部メールアドレスから被告公司の配布した会社のメールアドレスに転送して複製した。また被告張は2017年4月14日に00のような原告の営業秘密を許可なく撮影し、その画像をLineの通信アプリを通じて被告公司に漏洩し、これにより原告公司の営業秘密は漏洩された。被告張は2017年6月28日午後12時12分以前の某時に営業秘密00でスライドを製作し、2017年6月28日午後12時12分に電子メールで被告公司の00及び00等の人物に送信し、これにより原告公司の営業秘密は漏洩された。

四、 被告張は原告公司に対して契約に基づき秘密保持の義務があり、その後被告張は被告公司に就職した後、調査局は被告公司の社内電子メールアドレスの受信フォルダから上記の原告公司の営業秘密情報が記載された電子メールを押収しており、被告公司は確かに事実を知っており、かつ違法に上記原告公司の営業秘密を取得し、しかもこれにより原告公司の00等を含む関連の企画を知っていたことを証明するに足る。したがって被告張は明らかに窃取、無断複製、秘密保守義務違反等の不正な手段で原告の営業秘密を取得、使用、漏洩した。被告公司及び法定代表者である被告林○燦(以下「被告林」)は上記原告公司の営業秘密が不正取得されたことを明確に知っており、被告等が原告の営業秘密を侵害した行為は明確である。原告は係争営業秘密の保有者であり、営業秘密法第11条第1条等の規定により、侵害の差止め並びに防止を請求することができる。
                                                                                                                                                                                               
五、 請求声明:主文の第一項に示されるように、原告は現金又はそれと同価値の00銀行の無記名譲渡可能定期預金証書を担保として立てるので、仮執行宣言を申し立てる。

弐、被告張の陳述要旨と答弁声明

一、 「秘密保持契約」第一、二条の約定によると、原告公司が営業秘密であると特定するものは、被告張が原告公司に在職しているときに業務の関係で取得した又は知り得たものであり、原告公司によって「機密」、「限閲」又はその他の同様の文字が標示された科学、技術、〇〇及び取引に関する情報に限られている。ただし、00情報については、客観的にみて合理的な保護措置が講じられていない。原告公司の「文書管理規程」は2009年5月11日に改訂されているが、被告張が就職してから離職するまでの間、原告公司は従業員に「文書管理規程」の内容を告知したり、知悉し確認するよう要求したりしたことがない。原告公司は「文書管理規程」でも文書を処理しており、文書には「密」又は「密碼」等の文字があるとしているが、そのうち00文書について、原告公司は「機密」、「限閲」又はその他の同様の文字を標示していない。(密)レベル以上のデジタル文書については、外部ネットへの伝送が禁止されているが、原告公司はファイル保存時又は内部伝送時にパスワードを設定するという保護措置を講じていない。主観的にみると、原告公司は00情報を保護する意思がなく、原告公司はその情報について分類やレベル標示を行っておらず、会社の情報処理について、その他の部門がレベル分けや分類をせずに、その他の従業員に伝送することを容認していた。被告張が就職した初日、原告のその他の従業員は00情報を被告張に提供し、その後管理職者00、同僚00等の人物はかつて電子メールで被告張の職務とは関係のない情報を提供し、しかも送信者は送信時にファイルにパスワードを設定して原告公司が実施する「文書管理規程」規定を遵守しようとはしなかった。ましてや原告公司が被告張に支給したPCは立ち上げるとファイル内の情報をみるのに社員IDと「パスワード」を入力しなくても、すぐに実行することができた。よって上記ファイルにはレベル分け、分類がなされ、合理的な保護措置を講じてきたという原告公司の主張は明らかに信じがたい。よって被告は事後にそれらの転送したことも、その営業秘密を侵害していない。

二、 答弁声明:原告の訴えを棄却する。不利な判決が下されたときは、担保を立てるので仮執行宣言の免脱を申し立てる。

参、被告公司、被告林の陳述要旨と答弁声明

一、 原告証拠11号3.2.9において、「デジタル文書:(密)レベル以上のデジタル文書は外部のネットへ伝送することを禁止し、ファイル保存時或いは内部での伝送が必要な時はパスワードで保護し、且つ秘密文書保管者ではない者又は許可を得ていない者は当該秘密文書の電子ファイルを保存してはならない」と規定されている。ただし、00に示される内容にはパスワード設定の状況が明示されておらず、00電子メールが保護されていないことがわかる。それらの文書にパスワードが設定されていたならば、被告張はどのようにそれらの文書を個人のメールアドレスに転送できたのか。たとえ原告公司「就業規則」第29条に「従業員は以下の紀律事項を遵守しなければならない:二、在職期間に知り得た、又は占有した一切の技術又は資料は厳密に秘密を保持しなければならない。本人が在職しているか否かを問わず、無断使用又はいかなる手段での漏洩も決して行ってはならない。その離職時にはすべての技術資料(コピーを含む)を返却するものとする。」と規定されていても、「いわゆる知り得た、又は占有した一切の技術又は資料」を従業員に知らしめる必要があり、そうでなければ曖昧模糊としており、具体的に確定できるものではなく、従業員に遵守するよう期待することは難しく、この「就業規則」を以って、原告が合理的な保護措置を講じていたとはいえない。

二、 原告公司は00がどのような秘密性によって経済的価値を有するかについて挙証を行っていない。しかも訴状に記載されている複製の期日がそれぞれ2017年3月24日、同年月13日である、被告張が離職前に自身の個人メールアドレスに転送した文書には、「機密レベル」、「限閲(密)」の標示やパスワード設定がなく、原告はこれら2件の文書に合理的な保護措置を講じていなかったことが分かる。

三、 被告張はすでに被告公司に在職しているが、被告張が自ら職を求めて被告公司に連絡するまで、被告公司はそれと接触したことがなく、しかも被告公司が張を採用した理由はその学歴によるものである。被告公司は台湾において00製品の製造に関しては先駆者であり、市場シェア及び市場価格はいずれも原告公司よりも高く、被告公司は00を以って00製品を製造しており、原告公司と被告公司の製品はその製造工程、成分及び原料の出所が明らかに異なり、被告公司による被告張の任用は原告の営業秘密とは関係がない。

四、 被告公司は2018年1月9日付けで原告公司にすでに00を削除したことを告知する返信を出しており、原告公司が本件訴訟を以って得ようとする結果はすでに実現しており、原告公司が提訴して「侵害禁止請求権」を主張するいわゆる危険は存在せず、原告による営業秘密法第11条規定に基づく差止請求権の行使には根拠がない。

五、 答弁声明:原告の訴えを棄却する。不利な判決が下されたときは、担保を立てるので仮執行宣言の免脱を申し立てる。

■ 判決理由の要約

壱、00は営業秘密の要件に適合:

一、 「『本法でいうところの営業秘密は、方法、技術、製造工程、配合、プログラム、設計又はその他の生産、販売、経営に用いることができる情報であり、次の要件に該当するものである。一、この種の情報に通常関わる者が知らないもの。二、その秘密性によって実在的又は潜在的な経済的価値を有するもの。三、保有者がすでに合理的な秘密保持措置を講じているもの。』と営業秘密法第2条に明文化されている。そして、『秘密性(この種の情報に通常関わる者が知らない)、経済的価値(その秘密性によって実在的又は潜在的な経済的価値を有する)、秘密保持措置(保有者がすでに合理的な秘密保持措置を講じている)があり、しかも生産、販売、経営に用いることができる情報は、営業秘密法第2条で規定されているものに該当し、同法の保護対象である営業秘密とすることができる』(最高裁判所107年度台上字第2458号民事判決趣旨を参照)(訳注:営業秘密の三要件である「秘密性」、「経済性(経済的価値)」、「合理的な保密措施」はそれぞれ日本でいう「非公知性」、「有用性」、「秘密管理性」に相当)。次に、営業秘密法第2条が規定するいわゆる『営業秘密』は方法、技術、製造工程、配合、プログラム、設計又はその他の生産、販売、経営に用いることができる情報であり、そして(一)この種の情報に通常関わる者が知らないもの、(二)その秘密性によって実在的又は潜在的な経済的価値を有するもの、(三)保有者がすでに合理的な秘密保持措置を講じているもの、を満たすものであって始めて該当する。…さらに調べたところ、再抗告人が実施している『文書管理規程』第3.1.1、3.1.2条には『機密』、『限閲(密)』に分類される具体的事項の文書が明記されており、第3.2、3.3条にはそれらの文書の保管、制限及び閲覧・使用等について明記されており、第3.2.9条のデジタル文書に『(密)レベル以上のデジタル文書は外部のネットへ伝送することを禁止し、ファイル保存時、或いは内部での伝送が必要な時はパスワード設定で保護し、且つ秘密文書保管者ではない者又は許可を得ていない者は当該秘密文書の電子ファイルを保存してはならない』ことが含まれており、その営業秘密の範囲及び保管、使用等の管制方法を明確に定めており、さらに再抗告人はその内部で機密文書に対してパスワードを設定しており、従業員の部門、職位によりそれがアクセスできるファイルの権限が設定されていると主張している。もし虚言でなければ、再抗告人が、張○亮の伝送した係争メール情報には、その重要な顧客である力麗公司のメール情報が含まれており、その会社運営の安全及び利益獲得が深刻な影響を被るに足る…機密文書であり、しかもそれは合理的な秘密保持措置を講じており、それは保護を受けるべき営業秘密であると主張することは、全く無稽であるか否かについては疑いの余地がない。」(本件に関する仮の地位を定める処分申立事件の最高裁判所107年度台抗字第687号民事決定、当裁判所108年度民抗更(一)字第1号民事決定の趣旨を参照)。よって最高裁判所及び当裁判所はすでに主文第一項に示すところの00は原告公司の営業秘密であると認定している。

二、 合理的な秘密保持措置の部分:
(一) 「営業秘密法第2条第3号に規定されている『保有者がすでに合理的な秘密保持措置を講じている』とは、保有者がその人材力、財力で、社会が通常可能な方法又は技術により、公然と知られていない情報を、必要に応じて分類、レベル分けして、異なる授権された職務レベルの者に知らせることをいう。これはコンピュータの情報の保護において、ユーザーのすべてに授権されたIDとパスワードを設置する等の管制措置がとくに汎用されている。」(最高裁判所102年度台上字第235号民事判決の趣意を参照)、「いわゆる合理的な秘密保持措置とは、営業秘密の保有者が主観的に保護の意思があり、かつ客観的に秘密保持の積極的な作為があり、当該情報を秘密として守る意思があることを他人に理解させることをいう。例えば、当該営業秘密と接触する可能性のある従業員と秘密保持契約を締結し、当該営業秘密の接触者を管制し、文書には『機密』又は『限閲』等の注記を付し、営業秘密の資料に対しては、ロックをかけ、パスワードを設定し、保全措置(訪問客が機密保管場所に近づかないよう制限するなど)を講じる等であり、合理的な秘密保持措置を講じているか否かは、秘密保持契約の締結である必要はなく、営業秘密の保有者が客観的に一定の行為を為して、情報を営業秘密として保護する意思があることを理解させ、当該情報が任意に接触できない方法で管制されていれば、十分である。」(当裁判所103年度民営上字第5号民事判決の趣旨を参照、最高裁判所104年度台上字第1838号民事決定差戻上訴確定)により、原告公司が客観的に一定の行為を為し、被告張に原告公司が当該資料を営業秘密として保護する意思があることを理解させており、当該資料が任意に接触できない方法で管制されており、当該資料は原告公司の営業秘密と認めるに十分であり、原告公司の秘密保持規定又は「秘密保持契約」に適合する必要はなく、また「機密」又は「密」と標示する必要もなく、さらには資料又はファイルが「Public」という名称のフォルダからのものであったからといって、それが原告公司の営業秘密ではないと即断するものではない。
(二) 原告公司は「文書管理規程」も定めており、第3節「作業内容」では社内文書の管理と安全保管について規範づくりをし、原告公司は「機密」及び「限閲(密)」レベルの資料についていずれも関連の秘密保持必要措置を規定しているため、原告公司の定めた「文書管理規程」の上記内容に適合する場合はいずれも、原告公司によって「機密」及び「限閲(密)」資料と位置付けられ、実際に当該文書に「機密」又は「限閲(密)」と注記されているものに限らない。
(三) 「デジタル文書」に対して、原告公司は「文書管理規程」で機密デジタル文書に対する規範を定めており、パスワード設定で保護し、特定の階級以上又は担当の従業員しか当該デジタル文書に接触できず、前述の「外部ネットワークへの伝送禁止」、「パスワードによる保護」はいずれも原告公司が処分できる事項であり、原告公司の従業員が被告張に転送した時に、もし処分の権限がある者が、被告張は漏洩しないと信頼していたため、又は被告張による資料取得が便利であるために、パスワードを設定しなかった、又は被告張の個人メールアドレスに送信したとしても、これにより、被告張がパスワードを設定せずに外部に伝送してもよいということではなく、また当該資料が原告公司の営業秘密ではないので、被告張が任意に外部に漏洩したり、個人のメールアドレスに送信したり、又は被告張が当該秘密文書の電子ファイルを保存したりする権限を有するということでもない。これらの電子メールの「入」と「出」は別のことであり、たとえ被告張の個人メールアドレスに送られ、かつパスワード設定がなされていなかったとしても、被告張が任意に送信又は漏洩してもよいというものではない。
(四) 原告公司の「従業員マニュアル」に「就業規則」、「文書管理規程」及び関連の秘密保持規定等が含まれている。「就業規則」第29条には遵守すべき紀律事項が「従業員は以下の紀律事項を遵守しなければならない:二、在職期間に知り得た、又は占有した一切の技術又は資料は厳密に秘密を保持しなければならない。本人が在職しているか否かを問わず、無断使用又はいかなる手段での漏洩も決して行ってはならない。その離職時にはすべての技術資料(コピーを含む)を返却するものとする。」と規定され、「一切の技術又は資料」はいずれも厳密に秘密を保持しなければならないことが明確に含まれている。
(五) 以上をまとめると、原告公司は主張する営業秘密に対して、いずれも合理的な秘密保持措置を講じており、かつそれらの情報はこの種の情報に通常関わる者が知らないものである。被告張は原告公司で○○の職位にあり、一定の職位以上の者に該当し、しかも関連業務を担当していたため00資料を閲覧し、接触することができた。ただし、原告公司の上記規定、「従業員マニュアル」、「秘密保持契約」により、被告張はなお、それら資料を外部に漏洩したり、外部ネットへ伝送したり、自身の個人メールアドレスに送信したり、その電子ファイルを保存したりしてはならない。
(六) 原告公司は被告張が在職期間に原告公司のコンピュータにログインする際に、入力していた従業員ID番号、アドレス、パスワード等のログイン、ログアウトの追跡記録を提出すべきであり、また原告公司は従業員が個人メールアドレスで会社の仕事を処理することを禁止しておらず、かつ原告公司は被告張が個人メールアドレスで会社の情報を受け取り、会社の仕事を処理していたこと黙認していた云々と、被告は答弁している。ただし調べたところ、次のとおりである。
1.「営業秘密法第2条第3号で定めるところの『保有者がすでに合理的な秘密保持措置を講じている』とは、営業秘密保有者がすでに合理的な努力を払い、他人が当該営業秘密を容易に取得、使用又は漏洩できないようすることをいい、また営業秘密の保有者が主観的に保護の意思を有し、かつ客観的に秘密保持を行っていればすでに十分であり、秘密保持は『一分の隙もない』という程度に達する必要はない。つまり、営業秘密の保有者はその人材力、財力及び営業情報の性質により、社会が通常可能な手段又は技術で、任意に接触できない方法で管制し、秘密保持の目的を達成できるならば、即ち『合理的な秘密保持措置』に該当する」(最高裁判所108年度台上字第1608号刑事判決の趣旨を参照)。よって営業秘密法でいうところの「合理的な秘密保持措置」は一分の隙もなく、究極のハイテク水準のレベルに達する必要はなく、原告公司がその他の「一分の隙もない」秘密保持措置や被告張のいう「追跡記録」を提出する必要はない。
2.原告公司は個人メールアドレスで会社の情報を受け、会社の仕事を処理することを黙認していた云々という被告の主張について調べたところ、被告張が提出した証拠はいずれも原告公司又は原告公司の法定代表者を代表する権限がある電子メールではなく、それらの送信者に原告公司の営業秘密を処分するどのような権限があるのかについては被告により挙証されていない。

三、 秘密性及び経済性の部分について
 「いわゆる経済性とは、生産、製造、経営、販売に用いることができる情報をいい、また経済利益や商業的価値をもたらすことができる情報も経済性がある」(当裁判所103年度民営上字第5号民事判決の趣旨を参照、最高裁判所104年度台上字第1838号民事決定の差戻上訴確定)。また「企業内部の営業秘密は、概ね『商業性営業秘密』と『技術性営業秘密』という二つのタイプに分類できる。前者には企業の顧客リスト、販売拠点、商品販売価格、仕入れコスト、取引最低価格、人事管理、コスト分析等の経営と関係のある情報であり、後者は特定の産業が研究開発した又は革新した技術に関係のある機密であり、方法、技術、製造工程及び配合等が含まれる。本件上訴人が主張する『金属ボールバルブ加工図』及び『当該図に記載されているデータ資料』は、『技術性営業秘密』に該当する」(当裁判所103年度民営上字第5号民事判決の趣旨参照、最高裁判所104 年度台上字第1838号民事判決差戻上訴確定)。よって、原告公司の00はいずれも「商業性営業秘密」であり、公開されたルートから容易に取得できるものではなく、00は秘密性と経済性を有する。

弐、被告3名はいずれも原告公司の営業秘密(00)を所持したことがあり、原告公司の主文第一項に示された営業秘密を侵害するおそれがある。

一、 「営業秘密は知的財産権の一環にあり、営業秘密を保障し、産業の倫理と競争秩序を維持し、社会公共の利益と調和を図るため、専門法による規範が必要であり、これは営業秘密法第1条の規定により明らかである。営業秘密には相当の独占性と排他性があり、その保護に期間の制限はなく、その秘密性が失われるまでは、侵害又は侵害のおそれがあるとき、被害者は営業秘密法第11条第1項規定に基づき、その差止め又は防止を請求できる。この請求権は約定を待たず、法により請求することができる。競業禁止約款とは、雇用主がその商業機密、営業利益を保護したり、その競争優位を維持したりするため、被用者と在職期間又は離職後の一定の期間、一定の地域において、それと同一又は類似の業務を行うために雇用されたり経営したりしてはならないとするものである。この種の約款は必要性があり、しかも制限する範囲が合理的な程度を越えず過当ではないものであって、当事者は始めて拘束を受け、両者の保護する客体、要件、規範目的は同じではない。よって企業がその営業秘密の保護という目的を達成するために、競業避止約款を以って離職従業員の職業選択権を制限しても、営業秘密法第11条第1項規定による権利に影響しない。もしその営業秘密が侵害を受ける、又は侵害のおそれがあるならば、離職従業員の職業選択を合理的に制限することは、当該侵害の差止め又は防止に必要な方法であり、たとえ約定の競業避止期間が満了となっても、なお上記条項の請求を行えないものではない。」(最高裁判所104年度台上字第1589号民事判決の趣旨参照)。

二、 次に「いわゆる侵害のおそれとは、侵害がまだ発生しておらず、現在既存の危険な状況について判断して、その商標権には侵害される可能性があり、事前に防止する必要があるものをいう。侵害者の主観的な故意又は過失を要件とするものではない」(最高裁判所103年度台上字第2040号民事判決の趣旨参照)、「いわゆる侵害のおそれとは、侵害がまだ発生しておらず、現在すでに危険な状況が存在すると判断でき、その商標専用権が侵害される可能性があり、事前に防止する必要があるものをいうが、かつて侵害が発生したことで、継続的に侵害されるおそれがある必要はない」(最高裁判所87年度台上字第2319号民事判決の趣旨参照)により、営業秘密の侵害防止は同一の解釈をすべきであり、被告等に「侵害のおそれ」があるだけで、たとえかつて実際に原告公司の営業秘密が侵害されたことがなくても、現在すでに危険な状況が存在すると判断でき、その営業秘密が侵害される可能性があるならば、事前に防止する必要があり、しかもこの請求権は約定を待つ必要がなく、法に基づいて請求することができる。また、「次の状況の一つに該当するものは、営業秘密の侵害となる。一、 不正な手段により営業秘密を取得したとき。 二、それが前号に該当する営業秘密であることを知っていながら、又は重大な過失によりそのことを知らずに、その営業秘密を取得し、使用又は漏洩したとき。三、 営業秘密を取得した後に、それが第 1 号の営業秘密であることを知りながら、又は重大な過失により知らず、それを使用又は漏洩したとき。 四、法律行為によって取得した営業秘密を、不正な手段で使用又は漏洩したとき。」と営業秘密法第10条第1項第1乃至4号に定められている。よってたとえ現在所持又は知悉してなくても、将来他人の営業秘密を違法に「取得」又は「使用」する可能性があるときは、他人の営業秘密を侵害する危険があり、同法第11条第1項後段の侵害防止請求の対象となる。

三、 さらに「わが国の民法の法人は、法人実在説を採用しており、その対外的な一切の事務は、いずれもその代表者によって代表されるものであり、代表者が法人を代表して為される行為は即ち法人の行為である。もしその行為が他人の権利を侵害し、しかも民法で定める権利侵害行為の構成要件を満たすならば、法人は自ずと被害者に対して権利侵害行為による損害賠償責任を負うべきである。原審はこれに着目しておらず、被上訴人公司はいずれも法人であり、それは民法第184条、第185条で定める権利侵害行為の責任を負う必要がないことには、議論の余地がある」(最高裁判所102 年度台上字第1556号民事判決の趣旨参照)ことにより、被告公司も営業秘密侵害の差止め及び防止を請求する対象とすることができる。

四、 さらに「係争ファイルを送信した後、被上訴人がすでに削除したか否かは積極的事実に該当し、それは挙証する責任を負う。原審は被上訴人によるこの挙証を経ずに、係争ファイルはすでに存在しないとする被上訴人の抗弁を採用できると認めており、速断の嫌いがある」(最高裁判所106年度台上字第55号民事判決の趣旨参照)ことから、たとえ被告公司が原告公司に対して原告公司が主張する営業秘密の資料を削除したと通知したとしても、なおそれがすでに完全に削除したという事実を証明しておらず、その主張を採用できない。ただし、被告公司の当該通知は原告公司が本件で主張する営業秘密がすでに被告公司の実力支配下に入っていることを証明するに十分であり、さもなければ被告公司が削除することはできない。また、「相手方はすでに申立人証拠12のメールアドレス画面を提出し、抗告人は長期にわたって張○亮が個人のメールアドレスで作業を処理することを容認していた等と述べている。しかしながら調べたところ、張○亮が提出した削除画面には2019年1月24日と記載されており、昨今の技術ではメールの内容を複製して別に保存することは極めて簡単であり、すでに受信フォルダ内のメールを削除した画面を以って、張○亮及び高鼎公司がバックアップの資料を保存しているかどうかを証明できない。また張○亮は秘密保持契約に基づき抗告人公司の営業秘密に対して秘密保持の責任を負うべきであり、たとえ抗告人がたまに仕事の都合で作業の資料を張○亮が個人メールアドレスに転送するのを阻止しなかったからといって、張○亮が離職する直前に抗告人のメールを大量に個人メールアドレスに転送することに同意したものではない。」(当裁判所108年度民抗更(一)字第1号民事決定の趣旨参照、最高裁判所108 年度台抗字第870 号民事決定差戻再抗告確定)ことから、原告公司が被告に侵害差止めを請求することには理由があり、許可すべきである。

五、 被告公司は、原告公司の上記営業秘密は被告公司に入っていない云々と主張しているが、調べたところ、被告公司は原告公司にすでに原告公司が主張する営業秘密の資料を削除したと通知しており、これは原告公司が本件で主張する営業秘密がすでに被告公司の実力支配下に入ったことを証明するに十分であり、さもなければ被告公司は削除することはできない。被告公司と被告公司の当該会社電子メールはすでに被告公司の実力支配下にあるため、被告公司のこの部分の主張は事実に合わない。経験法則および論理法則を斟酌して、被告張が被告公司の使用に供しなければ、原告公司の上記営業秘密が被告公司の実力支配下にあるわけがなく、したがって被告張が原告公司の営業秘密を被告公司の従業員に引渡し、漏洩をしたということであり、被告公司の使用に供する、又は被告公司に引渡し、漏洩をしていないが、漏洩、引渡しの危険があり、このため被告公司が取得、使用をする危険もある。さらに、被告公司及びその法定代表者即ち被告林は事実行為を以って取得、使用の危険があり、又は法律行為(例えば販売)を以って原告公司の上記営業秘密に係る商品又はそれら営業秘密そのもの又は関連資料を、他人に引渡し又は漏洩する危険があり、これは被告等にいかなる故意又は過失があるかよって影響を受けるものではない。況して被告張は00を所持し、被告公司も00を実力支配して所持したことがあり、被告等がバックアップする可能性がないものではなく、しかも被告張は現在被告公司に在職しており、被告公司は被告張に対して事実上影響力があり、況してや被告公司と原告公司の業務は似ている。したがって被告張がそれらの原告公司の営業秘密を被告公司又は他人に引き渡す又は漏洩する危険がある。

六、 「当事者は民事訴訟法第193条第1項規定により、訴訟関係について事実上の陳述をしなければならず、又は同法第195条第2項規定により相手方の提出した事実に対して、陳述しなければならず、いずれも裁判所に対して提出する攻撃又は防御の方法である。その他の補強証拠がなければ、なお事実認定の根拠として認定することは難しい。張○亮はその上司、即ち再抗告人の従業員はかつて多数回にわたり見積書、契約書、特定の顧客の規格等の情報を直接自分の個人メールアドレスに送ったことがあり、長期にわたって個人メールアドレスに会社の情報を送ることを容認してきた等と抗弁しており、再抗告人は否認し、その他の補強証拠はなかった」(最高裁判所107年度台抗字第687号民事決定の趣旨参照)。次に「黙示の承諾は、契約申込の受諾者の挙動であり、又はその他の事情で間接的にその承諾の意思を推知するに十分であるものであり、それによって始めて認められる。単純な沈黙ならば、取引上の慣例又は特定の人たちの特別な事情を除き、承諾と認められるに十分な場合以外は承諾と認めてはならない」という最高裁判所著有21年上字第1598号民事判例を参照できる。また「いわゆる黙示の意思表示は、表意者の挙動又はその他の事情であり、間接的にその効果意思を推知できるものをいう。単純な沈黙ならば、特別な事情を除き、社会観念によって一定の意思がある場合以外は沈黙の意思表示とすることができない」という最高裁判所著有29年上字第762号民事判例を参照できる。さらに「単純な沈黙は、黙示の意思表示とは異なり、権利の無い占有者の使用に対して異議を唱えていないのは、単純に沈黙して制止しなかったというだけで、なんら法律効果はもたらさず、また継続使用を黙認し同意するものではない。上訴人は、すでに数十年使用しており、共有者は異議を唱えておらず、すでに黙示の同意があると推論でき、権利のない占有ではない云々と主張しているが、これも採用できない」(最高裁判所92年度台上字第1999号民事決定の趣旨参照)。よって(一)被告張が提出した証拠は訴外人00が原告公司の関連資料を被告張の個人メールアドレスに送った事情を説明できるかもしれないが、訴外人00は原告公司の法定代理人ではない。即ち訴外人00が、原告公司の営業秘密を処分したり、又は原告公司が自身の営業秘密の権利を縮減又は放棄したりできるどのような法律上の地位を有するのかについて、被告張は挙証していない。(二)また訴外人00のどのような挙動又はその他の事情を以って、被告張が00を被告公司の会社メールアドレス、被告公司の従業員、被告張の個人メールアドレス、被告張の自宅パソコンへ転送することに黙示の同意を行ったと間接的に推知できるのかについて、被告張は挙証していない。(三)一歩譲って、訴外人00が原告公司の上記営業秘密を処分できる権限を有する人物だったとしても、前述「外部ネットワークへの伝送禁止」、「パスワード設定による保護」はいずれも原告公司が処分できる事項であって、それらの電子メールの「入」と「出」は別のことであり、たとえそれらの被告張の個人メールアドレスに送られ、しかもパスワードが設定されていなかったとしても、それは被告張が任意に送信又は漏洩できることを示すものではない。

七、 以上をまとめると、被告等3名は原告公司の主文第一項に示した営業秘密を侵害するおそれがあり、被告は少なくとも主文第一項に示した営業秘密を違法所持しており、従って原告がその営業秘密の侵害を差止め、防止するよう請求することには理由がある。

参、結論:本件原告の訴えには理由があり、許可されるべきである。双方はいずれも担保を立てるので仮執行宣言及び仮執行宣言免脱を申し立てるとしており、それぞれ相当の担保の金額を斟酌して定め許可するものである。本件の事実証拠はすでに明確であり、双方のその他の攻撃防御の方法及び挙証は判決結果に影響しないため、別途逐一論述しない。

2020年1月21日
知的財産裁判所第三法廷
裁判官 伍偉華
書記官 呉祉瑩