明細書で充分に明確な説明がなされている場合、図面説明に瑕疵があっても、なお専利法第26条第2項規定違反ではない。

2018-02-22 2017年
判決分類:専利権

Ⅰ 明細書で充分に明確な説明がなされている場合、図面説明に瑕疵があっても、なお専利法第26条第2項規定違反ではない。

■ ハイライト
 参加人(係争実用新案権者)は2013年10月4日に実用新案を出願し、被告(知的財産局)の形式審査を経て実用新案権(以下「係争実用新案」という)を付与された。その後、原告(無効審判請求人)が専利法第120条準用第26条第2項に基づき、無効審判を請求した。案件は被告によって審査され、無効審判不成立処分とされた。原告はこれを不服として、訴願を提起し、経済部によって棄却された後、さらにこれを不服として、知的財産裁判所に行政訴訟を提起したが、同裁判所による審理の後、原告の訴えが棄却された。

 原告は、係争実用新案明細書における側接面112位置が2013年専利法第120条準用第26条第2項の規定に違反すると指摘した。

 知的財産裁判所の判決
 係争実用新案図面に表示が適切でない箇所はあるものの、明細書の記載にと相反しておらず、しかも当該技術分野において通常の知識を有する者であれば、明細書の内容から理解できる。よって、図面内容に適切でない箇所はあっても、係争実用新案は2013年専利法第120条準用第26条第2項の規定違反に至らない。以上をまとめると、訴願手続の決定が維持されたことにも違反や誤りはない。原告の訴えに理由はなく、棄却すべきである(資料出所:TIPO知的財産権電子新聞)。

Ⅱ 判決内容の要約

知的財産裁判所行政判決
【裁判番号】105年度行商訴字第71号
【裁判期日】2017年02月09日
【裁判事由】実用新案無効審判

原告 鑫茂機械工業股份有限公司
被告 経済部知的財産局
参加人 陳裕坤

 前記当事者らによる実用新案無効審判事件について、原告が経済部が下した2016年7月28日付経訴字第10506308270号訴願決定に不服のため、行政訴訟を提起した。当裁判所より独立当事者として被告に命じて係る訴訟に参加させ、以下のとおり判決する。

主文
原告の訴えを棄却する。
訴訟費用は被告の負担とする。

一 事実要約
 参加人陳裕坤は以前被告対して、実用新案を出願し、被告の形式審査を経て実用新案権が付与された。その後、原告が無効審判を請求し、被告が審査した結果、「請求項1から6項の無効審判不成立」の処分を下した。原告はこれを不服として、訴願を提起したが、経済部が訴願決定により、これを棄却した。原告はなおこれを不服として、当裁判所に訴訟を提起した。

二 両方当事者の請求内容
(一)原告の請求:1.原処分及び原訴願決定を共に取消す。2.被告が係争実用新案について、請求項1から6項の無効審判成立、実用新案権取消し処分を下す。
(二)被告の請求:原告の訴えを棄却する。

三 本件の争点
係争実用新案請求項は明細書及び図面によって裏付けられているか?
係争実用新案の請求項は進歩性を有するか?
(一)原告主張の理由:略。判決内容の説明を参照。
(二)被告答弁の理由:略。判決内容の説明を参照。

四 判決理由の要約
(一)係争実用新案は次の点により、2013年専利法第120条準用第26条第2項の規定に違反していない。
原告は係争実用新案請求項1に規定された「各刃物台に一つの外縁面と、2つの側接面を有する」の内容が不明確であると主張した。その理由として、請求項の文字から側接面の数は外縁面(刃物台)数の2倍になるはずだが、図面で刃物台と、側接面の数が同じ(いずれも6つ)と表示したことは、明らかに規定の不明確であり、明細書と図面によって裏付けられていないと述べた。

 調べによると、係争実用新案請求項1「各刃物台に一つの外縁面と、2つの側接面を有する」文字の内容から、確かに側接面の数は、外縁面(刃物台)数の2倍と理解される。明細書で明確に記載した内容は、請求項の記載と食い違うところがない。しかも、請求項を明確に裏付けている。よって、係る考案が属する技術分野の当業者が請求項に記載の「各刃物台に一つの外縁面と、2つの側接面を有する」という内容を、理解できなかったり、または不明確が生じる恐れはない。

 原告は、図面の内容で側接面の数が同じ(いずれも6つ)と表示したことは、明らかに請求項の記載内容に一致しない云々と主張している。しかし、図面の内容は、明細書に記載した技術内容の補助に過ぎない。明細書の記載が考案の技術内容を明確、かつ、充分に説明していれば、明細書の記載内容に依拠にすべきである。係争実用新案図面に表示が適切でない箇所があるものの、明細書の記載に抵触していない、しかも当業者であれば、明細書の内容から理解可能である。よって、図面に表示が適切でない箇所はあっても、係争実用新案は2013年専利法第120条準用第26条第2項の規定違反に至らない。

(二)証拠2、3の組み合わせでは、請求項1から6に進歩性がないことを証明できない。
証拠2、3とも、係争実用新案請求項1「前記2つのカッター軸が本体と連動して回転するとき、それぞれの刃物台のカッターが様々な位置の研削表面をえぐることができる」に係る技術特徴を開示していない。よって、示唆、教示または動機づけがない場合、係る考案に属する技術分野の当業者には、単なる証拠2、3に開示された技術だけで、係争実用新案請求項1の考案を容易に完成させることはできない。よって、証拠2、3を組合わせただけでは係争実用新案請求項1が進歩性を有しないことを証明できない。

 証拠2、3の組み合わせが係争実用新案請求項1が進歩性を有しないことを裏付けることができない以上、請求項1に付属する請求項2から6が進歩性を有しないことも証明できない。

(三)証拠2、5の組み合わせでは、請求項1から6に進歩性がないことを証明できない。
証拠2、5とも、係争実用新案請求項1「前記2つのカッター軸が本体と連動して回転するとき、それぞれの刃物台のカッターが様々な位置の研削表面をえぐることができる」に係る技術特徴を開示していない。よって、証拠2、5の組み合わせでは、係争実用新案請求項1が進歩性を有しないことを証明できない。

 証拠2、5の組み合わせが係争実用新案請求項1が進歩性を有しないことを証明できない以上、請求項1に付属する請求項2から6が進歩性を有しないことも証明できない。

(四)証拠2、7または証拠2、8の組み合わせでは、請求項1から6に進歩性がないことを証明できない。
 
 証拠7、8とも、係争実用新案請求項1「前記2つのカッター軸が本体と連動して回転するとき、それぞれの刃物台のカッターが様々な位置の研削表面をえぐることができる」という技術特徴を開示していない。

 よって、証拠2、7または証拠2、8の組み合わせでは、請求項1に進歩性がないことを証明できない。

 証拠2、7または証拠2、8の組み合わせが係争実用新案請求項1に進歩性がないことを証明できない以上、請求項1の従属請求項2から6が進歩性を有しないことも証明できない。

(五)証拠2、9の組み合わせでは、請求項1から6に進歩性がないことを証明できない。
証拠2、9とも、係争実用新案請求項1「前記2つのカッター軸が本体と連動して回転するとき、それぞれの刃物台のカッターが様々な位置の研削表面をえぐることができる」という技術特徴を開示していない。示唆、教示または動機づけがない場合、係る考案に属する技術分野の当業者は、単なる証拠2、9を組み合わせるだけで、係争実用新案請求項1の考案を容易に完成させることができない。よって、証拠2、9の組み合わせでは、請求項1に進歩性がないことを裏付けることができない。

 証拠2、9の組み合わせが係争実用新案請求項1に進歩性がないことを証明できない以上、請求項1の従属請求項2から6が進歩性を有しないことも証明できない。

(六)証拠2と、係争実用新案の先行技術との組み合わせでは、請求項1から6に進歩性がないことを証明できない。
 
証拠2と、係争実用新案の先行技術とも係争実用新案請求項1「前記2つのカッター軸が本体と連動して回転するとき、それぞれの刃物台のカッターが様々な位置の研削表面をえぐることができる」という技術特徴を開示していない。よって、証拠2と、係争実用新案の先行技術との組み合わせには、請求項1に進歩性がないことを証明できない。

 証拠2と、係争実用新案の先行技術との組み合わせが係争実用新案請求項1に進歩性がないことを証明できない以上、請求項1の従属請求項2から6が進歩性を有しないことも証明できない。

(七)証拠3、証拠3、7または証拠3、8の組み合わせでは、請求項1から6に進歩性がないことを証明できない。
前述のとおり、証拠3、7、8及び9も、係争実用新案請求項1「前記2つのカッター軸が本体と連動して回転するとき、それぞれの刃物台のカッターが様々な位置の研削表面をえぐることができる」という技術特徴を開示していない。

 よって、証拠3、証拠3、7の組み合わせ、証拠3、8の組み合わせ、証拠3、8の組み合わせ、または証拠3、9の組み合わせでは、請求項1に進歩性がないことを証明できない。

 証拠3、証拠3、7の組み合わせ、証拠3、8の組み合わせまたは証拠3、9の組み合わせが係争実用新案請求項1に進歩性を有しないことが証明できない以上、請求項1の従属請求項2から6が進歩性を有しないことも証明できない。

(八)以上をまとめると、係争実用新案請求項1から6は専利法第102条準用第26条第2項の規定に違反していない。さらに、証拠2とそれぞれ証拠3、5、7、8、9及び係争実用新案の先行技術との組み合わせ、または証拠3単独で、あるいは証拠3とそれぞれ証拠7、8、9との組み合わせはすべて係争実用新案請求項1から6に進歩性がないことを裏付けることができない。よって、原処分の「請求項1から6無効審判不成立」に係る処分に、違反や間違いはない。訴願手続の決定が維持されたことも不適切なところはない。原告がいたずらに前述理由をもって、原処分及び訴願決定の取消し、及び被告に係争実用新案査定の取消しを求めたことには理由がなく、棄却すべきである。

 以上を総じて論結すると、本件原告の訴えには理由がないので、知的財産案件審理法第1条、行政訴訟法第98条第1項前段により、主文のとおり判決を下す。

2017年2月9日
知的財産裁判所第2法廷
審判長裁判官 李維心
裁判官 熊誦梅
裁判官 蔡如琪
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