特許無効審判事件が知的財産案件審理法第33条第1項に基づき新証拠を提出したものでなければ、特許権者は行政救済期間に訂正を申請できない
2018-05-24 2017年
■ 判決分類:専利権
I 特許無効審判事件が知的財産案件審理法第33条第1項に基づき新証拠を提出したものでなければ、特許権者は行政救済期間に訂正を申請できない
■ ハイライト
最高行政裁判所は判決において次のとおり指摘している。
一 係争特許が専利法第22条規定違反によりその特許権を取り消されるべきか否かは、法に基づき無効審判請求人が提出した証拠で証明されるべきであり、特許権者も答弁して特許主務機関に供してもよい。さらに当裁判所2015年度4月第1回裁判長合同会議決議において、特許権者は行政救済期間に訂正を提出してもよく、無効審判段階しかこれを行うができないとは制限しないという見解が出された。ただしこの決議は、知的財産案件審理法第33条第1項に定められる当事者が行政訴訟手続き中に新証拠を提出できるという事情に対して行われたものである。もし前記の事情がなく、該決議において言及されたものでなければ、特許救済手続きの進行に有利となるよう特許権者はなお無効審判段階にて訂正の申請を提出しなければならない。
二 さらに調べたところ、係争特許の無効審判証拠2、証拠4は本件無効審判事件の無効審判段階で提出されたものであり、本件は審理法第33条第1項規定における当事者が行政訴訟手続き中に新証拠を提出した事情には該当せず、防御方法において上訴人に請求項訂正の機会をさらに与えるべきとする手続き上の利益の問題はない。さらに、上記当裁判所決議の見解によると、特許権者は特許訂正の主務機関である知的財産局に訂正申請を提出する必要があり、知的財産局において訂正という行政処分を行って始めて無効審判の対象としての特許権となるが、本件上訴人は原審において係争特許の訂正申請を提出しないと述べており、上訴人が上訴時に請求項の訂正を求めることは許されない。以上をまとめると、上訴人が法令違背により原判決を破棄するよう請求することには理由がなく、棄却すべきである。
II 判決内容の要約
最高行政裁判所判決
【裁判番号】106年度判字第136号
【裁判期日】2017年3月16日
【裁判事由】特許無効審判
上訴人 台達電子工業股份有限公司(DELTA ELECTRONICS, INC.)
被上訴人 経済部知的財産局
参加人 元山科技工業股份有限公司(YEN SUN TECHNOLOGY CORP.)
上記当事者間における特許無効審判事件について、上訴人は2015年11月30日付の知的財産裁判所104年度行專更(一)字第1号行政判決に対して上訴を提起した。当裁判所は次のとおり判決する。
主文
上訴を棄却する。
上訴審の訴訟費用は上訴人の負担とする。
一 事実要約
上訴人は被上訴人に対して2005年12月2日付けで「スタータ構造及びその製造方法(原文:定子結構及其製造方法)」の特許出願を行い、被上訴人は第00000000号として審査し許可査定を下した後、第I265666号特許証書(以下「係争特許」)を発給した。その後参加人は係争特許が許可時の専利法第22条第1項第1号及び第4項規定に違反しているとして、これに対する無効審判を請求した。間もなく上訴人は2009年8月20日付けで係争特許の特許請求の範囲に係る訂正本(訂正版)を提出し、被上訴人は審理した結果、(訂正を)許可すべきでないと認め、公告本(公告版)を以って審理を行い、係争特許は許可時の専利法第22条第1項第1号及び第4項規定に違反しているとして、2010年4月12日付(99)智專三(二)04099字第09920233130号無効審判審決書を発し「無効審判請求は成立し、特許権を取り消す」との処分を下した。上訴人はこれを不服として行政訴願を提起し、経済部は2010年10月28日付経訴字第09906063490号訴願決定を以って「原処分を取り消し、原処分機関は改めて適法の処分をなす」との決定を下した。その後被上訴人が再審理を行っている間に、上訴人は2010年12月10日付けで特許請求の範囲の訂正本を提出し、被上訴人は訂正を許可して公告した。被上訴人は係争特許について2010年12月10日付特許請求の範囲の訂正本を以って審理を行い、2012年12月10日付(101)智專三(二)04099字第10121397980号無効審判審決書を以ってなお「無効審判請求は成立し、特許権を取り消す」との処分を下した。上訴人はこれを不服として行政訴願を提起したが棄却されたため、知的財産裁判所(以下「原審」)に行政訴訟を提起した。その後原審は102年度行專訴字第84号行政判決を以って請求を棄却したため、上訴人は上訴を提起し、さらに当裁判所は104年度判字第78号判決を以って前記判決を取り消し、原審の審理に差し戻した。原審が請求棄却の判決を下したため、上訴人はなおこれを不服として上訴を提起した。
二 両方当事者の請求内容
(一)上訴人の請求:原処分及び訴願決定を取り消す。
(二)被上訴人の請求:上訴人の原審における請求を棄却する。
三 本件の争点
本件無効審判事件の無効審判段階において上訴人から請求項の訂正がすでに提出されており、さらに請求項訂正の機会という手続き上の利益を与えるべきか否か。
(一)上訴人の主張理由:省略。判決理由の説明を参照。
(二)被上訴人の答弁理由:省略。判決理由の説明を参照。
四 判決理由の要約
当裁判所2015年度4月第1回裁判長合同会議の決議によると、特許権者は行政救済期間において訂正を提出してもよいとする見解が出され、無効審判段階でしか訂正できないという制限はすでにないが、この決議は知的財産案件審理法(以下「審理法」)第33条第1項規定における当事者が行政訴訟手続き中に新証拠を提出してもよいという事情に対するものである。もし上記の事情がなく、該決議において言及されたものでなければ、特許権者はなお無効審判段階で訂正を申請しなければならず、それによって特許救済手続きの進行に有利となり、特許権者が行政救済期間中に幾度も訂正を申請して訴訟が延滞するにはいたらない。調べたところ、係争特許に対する無効審判の証拠2、証拠4は本件無効審判事件の無効審判段階に提出されたものであり、本件には審理法第33条第1項の規定における当事者が行政訴訟手続き中に新証拠を提出した事情はなく、防御方法において上訴人に請求項訂正の機会をさらに与えなければならない手続き上の利益の問題はない。また上記当裁判所決議の見解により、特許権者は特許訂正の主務機関である知的財産局に訂正を申請しなければならず、知的財産局が訂正の行政処分をして始めて無効審判の対象である特許権となる。ただし、本件上訴人は原審においてすでに係争特許の訂正申請を再び提出しない意向を表示しており(原審ファイル第167頁)、上訴人が上訴時において請求項の訂正を請求することは認められない。
証拠2は確かに係争特許の請求項12で特定されている全ての技術的特徴をすでに開示している。原判決は請求項12が開放式の移行句である「含む」でその特許請求の範囲を特定しており、第一カバーを外すステップをさらに有することを排除しておらず、たとえ証拠2の第一のモールド型は取り外す必要があったとしても、証拠2は確かに係争特許の請求項12で特定されている全ての技術的特徴をすでに開示しており、証拠2は請求項12の新規性欠如を証明できると認め、判決には理由の不備や理由の齟齬という違法はない。
証拠2は係争特許の請求項12が新規性を有しないことを証明するのに十分である。当裁判所2013年度8月第1回裁判長合同会議の決議(一)でいう2013年1月1日施行專利法が改正される前の「專利整體性原則(訳註:専利全体を一つとして扱う原則)」及び「全案准駁原則(訳註:請求項毎ではなく専利全体に対して無効審判請求の成立・不成立を決定する原則)」に基づいて、係争特許請求項13乃至23に関する進歩性の有無については述べる必要はない。
したがって、上訴の論旨は以前からの主張に拘り、原判決には法令の違背があると主張し、破棄を請求したことには理由がないため、棄却すべきである。
以上の次第で、本件上訴には理由がない。知的財産案件審理法第1条及び行政訴訟法第255条第1項、第98条第1項前段により、主文のとおり判決する。
2017年3月16日
裁判長 林茂權
裁判官 胡方新
裁判官 鄭忠仁
裁判官 帥嘉寶
裁判官 劉介中