専利無効審判処分の取消訴訟は、裁判所による実体判決が確定した場合、既判力があり、当事者も拘束を受けるはずであり、後の訴訟の裁判所も当該確定判決の趣旨と相反する判断をしてはならない

2021-11-23 2021年
■ 判決分類:専利権

I 専利無効審判処分の取消訴訟は、裁判所による実体判決が確定した場合、既判力があり、当事者も拘束を受けるはずであり、後の訴訟の裁判所も当該確定判決の趣旨と相反する判断をしてはならない
 
II 判決内容の要約

知的財産裁判所行政判決
【判決番号】109年度行専訴字第39号
【裁判期日】2021年1月27日
【判決事由】実用新案無効審判

原告 水順股份有限公司
被告 経済部知的財産局
参加人 聯府塑膠股份有限公司

前記当事者による実用新案無効審判事件について、原告が経済部2020年6月17日経訴字第10906305500号訴願決定を不服として行政訴訟を提起し、本裁判所より当事者に被告の訴訟への独立参加を命じて、以下のとおり判決を下す。

主文
原告の訴えを棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。

一 事実要約
原告は以前2016年1月15日に「整理箱枠組みの組み合わせ構造」をもって被告に実用新案登録出願し、被告は実用新案を許可すると同時に、実用新案第M521054号証書(以下「係争実用新案」という)を交付した。その後参加人(無効審判請求人)が係争実用新案は許可時点の専利法第120条準用第22条第1項第1号及び第1項第1号及び第2項規定違反だとして、無効審判を請求したため、原告は内容訂正し、請求項1を削除した。
被告にて審査した結果「2016年12月13日の訂正事項(すなわち、請求項1の削除)について、訂正許可」さらに、「請求項1についての無効審判請求却」、「請求項2についての無効審判請求成立、取り消すべき」、「請求項3から請求項5についての無効審判請求不成立」の処分を下した。しかし、無効審判請求人は前記無効審判請求不成立の処分を不服とし、訴願を提起した。経済部にて審査認定の結果「原処分における『請求項3から請求項5についての無効審判請求不成立』の部分を取り消し、原処分機関が6か月以内新たに適法の処分を下すべき」との決定(以下、「第一回訴願決定」という)を下した。原告はこの決定をなお不服とし行政訴訟を申し立てたが、当裁判所は106年度行専訴字第96号の行政判決にて原告の訴え及び最高行政法院108年度判字第478号にて、上告を棄却し確定した(以下、前案訴訟」という)。被告はただちに第一回訴願決定及び前案訴訟の判決趣旨に基づきあらたに審査したうえで「請求項3から請求項5についての無効審判請求成立、取り消すべき」との処分(以下「元処分」という)を下した。原告はこれを不服として、訴願を提起したが、経済部は「訴願を棄却」する決定(以下「訴願決定」という)を下した。原告はこれを不服として、本裁判所に訴訟を提起した。

二 双方当事者の請求内容
(一)原告の請求:原処分及び訴願決定を共に破棄する。
(二)被告の請求:原告の訴えを棄却する。

三 本件の争点
106年度行専訴字第96号判決の証拠第2、3、4号の組み合わせが、係争実用新案請求項3から5に進歩性がないことを十分証明できるとの認定は、本案に対する拘束力を有するか?
(一)原告主張の理由:省略。判決理由の説明を参照。
(二)被告答弁の理由:省略。判決理由の説明を参照。

四 判決理由要約
(一)行政訴訟法第213条によれば「訴訟物が終局判決により決定された場合は、確定力を有する。」ものであり、よって、訴訟物が終局判決で確定した場合、その後当事者は、当該確定判決趣旨と相反する主張ができず、裁判所も当該確定判決趣旨と相反する判断をしてはならない。
(二)さらに、行政訴訟法第105条第1項第3号における、提訴は訴状にて「訴訟物及びその原因、事実を示さなければならない」の規定から、原因と事実は訴訟物そのものではないが、その働きは訴訟物範囲の画定にあることがわかる。よって、無効審判の処分について取消訴訟を提起する場合、当該主張の原因と事実範囲における当該処分の合法性は訴訟物取り消しの内容に限る。もし、取消訴訟が裁判所の実体判決で違法性がなく原告の訴えを棄却し確定した場合、行政処分の合法性は、すでに審理を尽くしており、その原因と事実を法律に含ませた後の法的効果の確認も既判力効果が生じるので、当該取消訴訟の当事者もその拘束を受けるはずであり、後に受理した裁判所も法律と事実状態とも変更がない状況においては、前訴訟の判決の訴訟物に対する確認をその裁判の基礎とすべきであり、当該確定判決と相反する内容の判断をしてはならず、これがすなわち取消訴訟既判力確認の効果である。

(三)参加人は2016年6月17日に係争実用新案が新規性、進歩性を有しない事実について無効審判を請求し、原告は2016年9月10日と同12月31日に係争実用新案の登録請求範囲の訂正書類を提出した。被告は審査した結果「2016年12月13日の訂正事項の訂正許可」、「請求項2についての無効審判請求成立、取り消すべき」、「請求項3から請求項5についての無効審判請求不成立」、「請求項1についての無効審判請求棄却」の処分を下した。参加人はこれを不服として、前掲無効審判請求不成立の部分について、行政訴訟を申し立て、経済部により第一回訴願決定が下された。原告はなおこれを不服として、行政訴訟を提起したが、前案訴訟判決が確定していた。被告はただちに第一回訴願決定及び前案訴訟の判決趣旨に基づき、証拠第2、3、4号の組み合わせが係争実用新案請求項3から請求項5に進歩性がないことを証明できるとの争点について審理したうえで、2020年2月25日に原処分を下した。原告はなおこれを不服として訴願を提起したが、経済部が2020年6月17日に訴願の決定を下した。原告はこれを不服として、本件の訴訟を提起した。よって、証拠第2、3、4号の組み合わせが係争実用新案請求項3から5に進歩性がないことを証明できるかの確認が、前案訴訟判決趣旨範囲において、すでに拘束力を生じている以上、新しい事実または法律変更がない前提において、当事者はこの効力を受けるべきである。当裁判所は前案訴訟の判決における訴訟物に対する確認を審理基礎とすべきであり、前案訴訟の判決内容と相反する判断をすることはできない。

(四)以上をまとめると、前案訴訟が確定判決において、証拠第2、3、4の組み合わせが係争実用新案請求項第3から5に進歩性がないことを十分証明できると認めたことは、本件に対しても拘束力を有する。よって、被告が第一回訴願決定及び前案訴訟の確定判決趣旨に基づき再審査を行って「請求項第3から5についての無効審判請求成立、取り消すべき」との処分を下したことは、法との不一致がなく、不合理なところは見当たらない。訴願決定維持にも間違いはない。原告による前記内容の主張、訴願決定及び原処分の取り消しはともに理由がなく、棄却すべきである。
以上から論結し、原告の訴えに理由がないため、知的財産裁判所案件審理法第1条、行政訴訟法第98条第1項前段により、主文のとおり判決を下す。

2021年1月27日
知的財産裁判所第三法廷
審判長裁判官 蔡惠如
裁判官 吳俊龍
裁判官 何若薇
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