実用新案無効審判における証拠適格性の認定-新規性又は進歩性喪失の例外に係る猶予期間
2025-01-17 2024年
■ 判決分類:特許実用意匠
I 実用新案無効審判における証拠適格性の認定-新規性又は進歩性喪失の例外に係る猶予期間
■ ハイライト
原告は2019年9月12日に「車両用外付けライト(原文:車輛之外掛式燈具)」を以って被告(知的財産局)に実用新案登録を出願し、被告は方式審査を行い、登録を許可した(以下「係争実用新案」)。その後、参加人は係争実用新案が登録査定時の専利法第120条が(実用新案に)準用すると定める専利法第22条第1項第1号、第2項の規定に違反しているとして、これに対する無効審判を請求した。被告は審理の結果、「請求項1乃至8について無効審判の請求は成り立ち、登録を取り消す」という処分を下した。原告はこれを不服として行政訴願を提起したが棄却の訴願決定が下され、手順を踏んで行政訴願を提起した。知的財産及び商事裁判所は「訴願決定及び原処分を取り消す」との判決を下した。
知的財産及び商事裁判所の判決要旨は次の通りである。
一、無効審判の答弁添付書類2、3、訴願の答弁添付書類料4は、係争実用新案が証拠2「2019年1月6日にオークションサイトに掲載された商品のウェブページ写真」に対して猶予期間を適用でき、証拠2が適格な証拠ではないことを証明するに十分である:
(一)考案が出願前に刊行物に記載されたとき、出願前に公然実施されたとき若しくは出願前に公然知られたとき、又はその考案の属する技術の分野における通常の知識を有する者が出願前の先行技術に基づいて容易に考案をすることができたときは、実用新案登録を受けることができないと、同法第120条が準用する第22条第1項、第2項に規定されており、前記規定はそれぞれ新規性及び進歩性を喪失する事情である。次に、出願人の意による公開又は意に反する公開が至った事実があったときは、その公開の事実が発生してから12ヵ月以内に特許を出願すれば、その事実は第1項各号又は前項の特許(実用新案登録)を受けることができない事情には該当しないことも、専利法第120条が準用する第22条第3項に規定されており、これは新規性及び進歩性喪失の例外の規定である。
(二)調べたところ、係争実用新案は「車両用外付けライト(原文:車輛之外掛式燈具)」であり、その出願日は2019年9月12日であった。参加人が、係争実用新案の請求項1乃至8が専利法第120条の準用する同法第22条第2項規定に該当して進歩性を有しないと主張する主な依拠は、それぞれ証拠2及び証拠2、3の組合せである。
(三)証拠2は2019年1月6日に露天オークションサイトに掲載された商品のウェブページ写真であり、そこには「【在庫あり】商品名「蟻人A1」遠近二色の外付けフォグランプ/コンパクトで優れた性能のADIフォグランプ、キャットアイランプはG8 G9 GOGORO2向け/蟻人フォグランプ(原文:【現貨】蟻人A1遠近雙色外掛式霧燈 迷你體積 性能卓越ADI霧燈、貓瞳可參考G8 G9 GOGORO2蟻人霧燈)」 等の文字や図が記載されている。そのページの下方の表示には「dr.mL/駒典科技」という黒地に白い文字があり、そのページの右側中央にある灰色の四角い枠の中には、「出品者の情報 maxawei(48789)」等の文字がある。原告による無効審判の答弁添付書類1によると、証拠2の公開されたネットオークションサイトのオークションアカウント名「maxawei」と出品者の情報があり、その情報には「maxaweiに関する情報(原文:maxawei的關於我)」と明記されており、その中のひし形の写真には「駒典科技」、「dr.mL」等の図が表示され、下方には灰色の地に白い文字で「ショップ名:駒典科技•統一番号:81458169(原文:賣場名稱:駒典科技•統一編號:81458169)」という文字が記載されており、上記のサイト情報は証拠2に示される情報と一致しているといえる。無効審判の答弁添付書類3、即ち原告と駒典科技(統一番号:81458169)(訳注:統一番号は日本の法人番号に相当)が契約した証明書によると、原告と駒典科技との間で、2018年9月13日から駒典科技が露天オークションサイトにおいてアカウント名maxaweiで証拠2のウェブページに掲載された商品「蟻人遠近二色外付けフォグランプ(原文:蟻人遠近雙色外掛式霧燈)」を販売することを原告が許諾することが約定されている。経済部商工登記公司資料を検索した結果によると、駒典科技は2019年10月18日に設立された独占資本の商号であり、それは証拠2のウェブページの商品が2019年1月18日に販売を開始した後である。原告は、2018年9月13日に莊典維が露天オークションサイトにおいてアカウント名maxaweiで証拠2のウェブページに掲載された商品を販売することも許諾している。そして、原告証拠5のアカウント「maxawei」のバックエンド管理ページの記載によると、そのページには「会員アカウント」が「maxawei」、「個人資料」欄に「莊典維」が記載されていることから、原告は2018年9月13日に、莊典維が露天オークションサイトにおいてアカウント名「maxawei」で証拠2のウェブページの商品を販売することを許諾し、前記ウェブページのバックエンドには前記ネットオークション商品を莊典維が管理していることが表示されており、莊典維がなぜウェブページに当時まだ設立されていなかった駒典科技の名称を記載したのかは、原告が関与できるものではない。況してや原告証拠7によると、原告がアカウント所有者である莊典維と2019年4月4日に交わしたLineの通話記録には、「今週の蟻人は到着したか」、「蟻人のブラケット100個、ネジ200本」等の記載があり、原告が莊典維と駒典科技に露天オークションサイトにおいて商品を販売することを許諾する意が確かにあったこと、また証拠2のウェブページの商品は即ち、原告の意によりアカウント「maxawei」でオークションにかけるため公開したものであること、及び莊典維がかつて原告に対して証拠2の商品を販売するため提供するよう要求したこと等の事実を証明するものであり、無効審判の答弁添付書類3及び訴願の答弁添付資料4(即ち原告証拠6)等の証拠は、証拠2が原告の意により公開された行為であることを証明するに十分である。即ち、証拠2については、(係争実用新案の)新規性及び進歩性喪失の例外に係る猶予が適用されるものであり、係争実用新案の新規性及び進歩性の有無を判断するための適格な証拠ではない。
(四)被告は答弁添付書類3の証明書において駒典科技に許諾された販売日は2018年9月13日であり、駒典科技が設立された2019年10月18日とは異なり、駒典科技の存続期間ではなく、かつ添付書類2、3の署名日がいずれも係争実用新案の無効審判請求後であり、駒典科技有限公司と駒典科技の名称と統一番号が一致していないため、その真実性を認めがたい云々と主張している。しかし調べたところ、駒典科技の代表者である莊勝正は莊典維の父親であり、原告が無効審判の答弁添付書類3の証明書を以って、原告と莊典維又は駒典科技との間に許諾関係が存在していたことを証明することは、理に合わないところがない。駒典科技有限公司の代表者である蕭室棟は、訴外人蕭佑翔の父親であり、同社は2017年5月18日に設立され、証拠2の露天オークションサイトで商品が販売のため陳列された日よりも早く、蕭佑翔と莊典維は婚姻関係にある。原告は莊典維がネット上で証拠2に示される商品を販売することを許諾した以外に、莊典維の妻の父が経営する駒典科技有限公司が販売することも許諾して(無効審判の答弁添付資料2を参照)、莊典維が最終的に露天オークションサイトにおいてアカウント名maxaweiで証拠2のウェブページの商品を販売しており、前記ウェブページに表示されているのが駒典科技であるか、駒典科技有限公司であるかにかからわず、原告の意により、駒典科技有限公司と駒典科技に証拠2のウェブページの商品の販売を許諾し、かつ客観的に前述のアカウント名「maxawei」で公開した事実があったと確かに信じることができる。当事者が互いに意思を表示して一致したときは、それが明示か黙示かを論ぜず契約は直ちに成立すると、民法第153条第1項に規定されている。また物品に売価を表示して陳列したときは申込みと見なすと、同法第154条第2項に規定されている。無効審判の答弁添付書類2、3の内容はいずれも原告が駒典科技有限公司と駒典科技に2018年9月13日から「蟻人A1遠近二色外付けフォグランプ」の販売を許諾するというもので、その許諾した販売日は駒典科技有限公司の設立日と駒典科技の設立日の間であり、アカウント名「maxawei」はまず駒典科技有限公司を出品者とし、その後駒典科技を出品者に変更したとしても、販売の申込みはなお存続する。たとえ、駒典科技有限公司と駒典科技の名称と統一番号が一致しなくても、いずれも原告の意により駒典科技有限公司と駒典科技が販売することを許諾し、かつアカウント名「maxawei」で公開した事実は変わらない。たとえ無効審判の答弁添付資料2と添付資料3等の証明書が原告による係争実用新案の出願日より後に契約が交わされ、事後の確認という行為にすぎなかったとしても、双方の契約がすでに成立していた事実に疑いの余地はない。況して証拠2の商品のウェブページにはすでに売価が表示され、陳列されていた事実があり、不特定の消費者に対する公開の申込みと見なすことができ、このように解釈すると、証拠2は係争実用新案の出願人の意による公開行為であると認めることができ、かつ係争実用新案の出願人は公開事実の発生後12ヵ月以内に実用新案登録を出願しており、係争実用新案は新規性及び進歩性喪失の例外である猶予が適用され、言い換えれば、証拠2は係争実用新案の新規性及び進歩性の有無を判断するための適格な先行技術ではない。
二、まとめ
公開の事実は、専利公報でなされた公開以外に、もし (1)出願人がその公開後12ヵ月以内に特許(実用新案登録)を出願した、(2)出願人の意による公開又は意に反する公開である、という2つの要件を満たすとき、その発明(考案)は新規性又は進歩性喪失の例外に係る猶予が適用され、その公開の事実に関する技術内容は、特許(実用新案登録)出願に係る発明(考案)の新規性又は進歩性の有無の判断における先行技術とはならない。
II 判決内容の要約
知的財産及び商事裁判所行政判決
【裁判番号】112年度行専訴字第38号
【裁判期日】2024年2月1日
【裁判事由】実用新案無効審判
原告 林毓珉
被告 経済部知的財産局
参加人 施若驊
上記当事者間の実用新案登録無効審判事件について、原告は経済部2023年7月10日經訴字第11217303830号訴願決定を不服とし、行政訴訟を提起し、本裁判所は参加人に訴訟への参加を命じた。本裁判所は次の通り判決する。
主文
訴願決定及び原処分を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
一 事実要約
原告は2019年9月12日に「車両用外付けライト(原文:車輛之外掛式燈具)」を以って被告(知的財産局)に実用新案登録を出願し、実用新案登録請求の範囲における請求項の数は8であった。被告は第108212130号出願として方式審査を行い、登録査定を下し、M588636号実用新案証書(以下、「係争実用新案」)を交付した。その後、参加人は係争実用新案が登録査定時の専利法第120条が(実用新案に)準用すると定める専利法第22条第1項第1号、第2項の規定に該当し、実用新案登録要件に違反しているとして、これに対する無効審判を請求した。被告は審理の結果、係争実用新案は登録査定時の専利法第120条が準用する第22条第2項に該当し、実用新案登録を受けることができないと認め、2023年3月9日に「請求項1乃至8について無効審判の請求は成り立ち、登録を取り消す」という処分を下した。原告はこれを不服として行政訴願を提起したが、さらに経済部から棄却の訴願決定が下され、これを不服として、最後に本件行政訴願を提起した。
二 両方当事者の請求内容
(一)原告の請求:訴願決定及び原処分を取り消す。
(二)被告の答弁:原告の請求を棄却する。
三 本件の争点
1.無効審判の証拠2は適格な証拠であるのか。
2.無効審判の答弁添付書類2、3及び訴願の答弁添付資料4(即ち原告証拠6)は、係争実用新案が証拠2に対して猶予期間を適用できることを証明するに十分であるのか。
3.証拠2は、係争実用新案請求項1乃至8が専利法第120条の準用する第22条第2項の規定に該当し、進歩性が欠如することを証明するに十分であるか否か。
4.証拠2、3の組合せは、係争実用新案請求項1乃至8が専利法第120条の準用する第22条第2項の規定に該当し、進歩性が欠如することを証明するに十分であるか否か。
(一)原告の請求の原因:省略;判決理由の説明を参照。
(二)被告の主張の理由:省略;判決理由の説明を参照。
四 判決理由の要約
本裁判所が心証を得た理由:
(一)自然法則を利用した技術的思想のうち、物品の形状、構造又は組合せに係る創作であり、産業上利用することのできる考案は、法により実用新案登録を出願することができるが、考案が出願前に刊行物に記載されたとき、出願前に公然実施されたとき若しくは出願前に公然知られたとき、又はその考案の属する技術の分野における通常の知識を有する者が出願前の先行技術に基づいて容易に考案をすることができたときは、実用新案登録を受けることができないと、同法第120条が準用する第22条第1項、第2項に規定されており、前記規定はそれぞれ新規性及び進歩性を喪失する事情である。次に、出願人の意による公開又は意に反する公開が至った事実があったときは、その公開の事実が発生してから12ヵ月以内に特許を出願すれば、その事実は第1項各号又は前項の特許(実用新案登録)を受けることができない事情には該当しないことも、専利法第120条が準用する第22条第3項に規定されており、これは新規性及び進歩性喪失の例外の規定である。「新規性又は進歩性喪失の例外」に係る猶予とは、特許出願前の特定の期間において出願人に特定の事情により公開に至った事実があったときは、その公開の事実により特許出願に係る発明の新規性又は進歩性が喪失して特許を取得できないという状況に至らないことをいう。これにより、出願人の意による公開又は意に反する公開に至った事実があるときは、その公開の事実が発生してから12ヵ月以内に特許を出願すれば、その発明に新規性又は進歩性喪失の例外に係るが適用され、公開の事実と関連する技術内容は特許出願に係る発明の新規性又は進歩性の有無を判断する先行技術とはならない。いわゆる「出願人の意による公開」とは、公開が出願人の意思によるもので、出願人自らがなしたものとは限らない。この状況の公開の行為主体には出願人、出願人が委任、同意、指示した者等を含む。…もし他人が出願前に公開の事実を有するならば、その公開が前述の2つの状況に該当するか否か、即ち特許出願に係る発明に猶予が適用されるか否かについて、出願人が公開の事実、事実の発生日を説明し、関連の証明する書面を提出して証明しなければならない。これは専利審査基準第第二篇第三章4.5「新規性又は進歩性喪失の例外が適用される状況」における規定である。
(二)調べたところ、係争実用新案である「車両用外付けライト(原文:車輛之外掛式燈具)」は、実用新案登録請求の範囲における請求項の数が8であり、請求項1が独立項、その他が従属項である。係争実用新案の車両用外付けライトは、一つの発光モジュールを含む。前記発光モジュールはケース内に設けられた一つの基板と、前記基板上に設けられた一つの近距離LEDと、前記基板上に設けられた一つの遠距離LEDとを含む。前記近距離LEDと前記遠距離LEDが同じ基板上に設けられることで、大幅にサイズを小さくすることができ、前記外付けライトを補助照明として用いるニーズに応えて車両の様々な位置に設置でき、大きなライトのタイプ、範囲、明度等の不足を補うことができる。運転者は必要に応じて前記近距離LEDと前記遠距離LEDを切り換えて、近距離ライト又は遠距離ライトとすることができ、しかもその遠距離ライトはフォグランプとしての効果があり、山道の夜間走行に適している。
参加人は、係争実用新案の請求項1乃至8が専利法第120条の準用する同法第22条第2項に該当し、進歩性を有しないことを主張し、それぞれ証拠2、及び証拠2、3の組合せを主張の主な依拠とした。調べたところ、証拠2は2019年1月6日の商品の写真であり、その公開日は係争実用新案の出願日(2019年9月12日)よりも早いため、係争実用新案と対比する適格な先行技術である。証拠2の商品は遠近機能を有する外付けフォグランプである。また証拠3は2017年1月11日に公告された台湾第M535287号実用新案「メンテナンスに便利なLEDフォグランプ(原文:便於維修之LED霧燈)」であり、その公告日も係争実用新案の出願日よりも早いため、係争実用新案と対比する適格な先行技術とすることができる。調べたところ、証拠3にはメンテナンスに便利なLEDフォグランプが開示されている。
(三)証拠2は適格な証拠ではない:
1. 証拠2のウェブページ下方の表示には「dr.mL/駒典科技」とあり、ウェブページの右側中央には、「出品者の情報 maxawei (48789)」等の文字が記載されている。原告と駒典科技が契約した証明書によると、原告と駒典科技との間で、2018年9月13日から駒典科技が露天オークションサイトにおいてアカウント名maxaweiで証拠2のウェブページに掲載された商品を販売することを原告が許諾することが約定されている。駒典科技は2019年10月18日に設立され、それは証拠2のウェブページの商品が2019年1月18日に販売を開始した後である。ただし、原告は2018年9月13日に、莊典維が露天オークションサイトにおいてアカウント名maxaweiで証拠2のウェブページの商品を販売することも許諾している。証拠2の証拠2のウェブページの商品は即ち、原告の意によりアカウント「maxawei」でオークションにかけるため公開したものであること、及び莊典維がかつて原告に対して証拠2の商品を販売するため提供するよう要求したこと等の事実は、証拠2が原告の意により公開された行為であることを証明するに十分である証拠である。即ち、証拠2については、(係争実用新案の)新規性及び進歩性喪失の例外に係る猶予が適用されるものであり、係争実用新案の新規性及び進歩性の有無を判断するための適格な証拠ではない。
2. 被告は証明書において駒典科技に許諾された販売日は2018年9月13日であり、駒典科技が設立された2019年10月18日とは異なり、その真実性を認めがたい云々と主張している。ただし、たとえ証明書が原告による係争実用新案の出願日より後に契約が交わされ、事後の確認という行為にすぎなかったとしても、双方の契約がすでに成立していた事実に疑いの余地はない。況して証拠2の商品のウェブページにはすでに売価が表示され、陳列されていた事実があり、不特定の消費者に対する公開の(契約)申込と見なすことができ、これに基づき解釈すると、証拠2は係争実用新案の出願人の意による公開行為であると認めることができ、かつ係争実用新案の出願人は公開事実の発生後12ヵ月以内に実用新案登録を出願しており、係争実用新案は新規性及び進歩性喪失の例外に係る猶予が適用され、言い換えれば、証拠2は係争実用新案の新規性及び進歩性の有無を判断するための適格な先行技術ではない。
3. 被告はさらに、本件商品が最初に現れたのは2018年12月1日であり、証明書の許諾日は2018年9月13日であり、許諾当時にいかなる商品も無かったことを証明するに十分であるため、証明書の内容は事実ではない云々と主張した。しかし商品は生産から公開までに時間差があることは一般常識であり、たとえ許諾日2018年9月13日から最初に商品が現れた2018年12月1日までに商品がなかったとしても、原告が猶予期間の権利を主張することには影響がなく、契約成立の事実にも影響はない。
4. 被告はさらに、もし原告が猶予の適用を主張するならば、公開の事実、事実の発生日を説明し、関連の証明する書面を提出して証明しなければならない云々と主張している。ただし、公開の事実の発生日は、公開の技術内容が記載された期日又は関連の証明する書面により認定されなければならない。公開の事実が発生した年、四半期、年月、二週又は週しか認定できないときは、その年の初日、その四半期の初日、その年月の初日、その二週の第一週の初日、又はその週の初日を以って(公開の事実の発生日を)推定する。推定日が特許出願前 12 ヵ月より早くなければ(出願前12ヵ月以内)、猶予は適用され、出願人に公開の事実発生日を説明するよう改めて通知する必要はない。推定日が出願前 12 ヵ月より早ければ猶予は適用されず、もし出願人がその発明には猶予が適用されると考えるならば、公開の事実、事実の発生日を説明し、関連の証明する書面を提出して証明しなければならない(専利審査基準第二篇特許の実体審査第3章特許要件の4.3節を参照)。本件係争実用新案の出願日は2019年9月12日であり、これから推算する猶予期間は2018年9月13日から2019年9月12日までとなり、証拠2の公開日は2019年1月6日であり、係争実用新案の出願日の12ヵ月より早いというものではなく、原告に公開事実の発生日の説明を通知する必要はなく、被告の前記主張は採用するに十分ではない。
(四)証拠2は、係争実用新案請求項1乃至8が専利法第120条の準用する第22条第2項の規定に該当し、進歩性が欠如することを証明するに十分でない:
前述した通り、証拠2は係争実用新案の新規性及び進歩性の有無を判断するための適格な先行技術ではなく、証拠能力がないため、これにより係争実用新案請求項1乃至8の進歩性欠如を証明できない。
(五)証拠2、3は、係争実用新案請求項1乃至8が専利法第120条の準用する第22条第2項の規定に該当し、進歩性が欠如することを証明するに十分でない:
1. 証拠2は適格な証拠ではなく、証拠3には係争実用新案の請求項1の「前記基板上に設けられた一つの近距離LEDと、前記基板上に設けられた一つの遠距離LED」という技術的特徴が開示されておらず、近距離LEDと遠距離LEDを同じ基板の上に設けることで、大幅にサイズを小さくし、外付けライトを補助照明として用いるニーズに応えて車両の様々な位置に設置でき、大きなライトのタイプ、範囲、明度等の不足を補うという効果を達成できない。係争実用新案の請求項1は、その考案の属する技術の分野における通常の知識を有する者が出願前の先行技術に基づいて容易に考案をすることができるものではないため、証拠2、3は係争実用新案請求項1の進歩性欠如を証明するに十分でないことがわかる。
2. 係争実用新案請求項2乃至8は直接的又は間接的に係争実用新案請求項1に従属するものであり、係争実用新案請求項1のすべての技術的特徴を含んでいる。証拠2、3は係争実用新案請求項1の進歩性欠如を証明するに十分でなく、証拠2、3は係争実用新案請求項2乃至8の進歩性欠如を証明するにも十分でない。
以上をまとめると、証拠2は適格な証拠ではなく、即ち証拠2は係争実用新案請求項1乃至8が専利法第120条の準用する第22条第2項の規定に該当し、進歩性が欠如することを証明するに十分でなく、かつ証拠2、3の組合せも、係争実用新案請求項1乃至8の進歩性欠如を証明するに十分でない。よって被告が、係争実用新案が専利法第120条の準用する第22条第2項の規定に該当し、進歩性を有しないと認定して、係争実用新案に対する無効審判の請求は成り立ち、(登録を)取り消すという処分を下したことには誤りがある。訴願決定において原告の訴願を棄却したことも不当である。原告が請求する原処分と訴願決定の取消しには理由があり、許可すべきである。
2024年2月1日
知的財産第二法廷
裁判長 彭洪英
裁判官 曾啓謀
裁判官 汪漢卿