審判理由で引用された無効審判の証拠内容が、審判請求理由で提出された証拠及び理由の範囲を逸脱しないならば、「職権審理」ではない
2026-05-22 2025年
■ 判決分類:特許実案意匠
I 審判理由で引用された無効審判の証拠内容が、審判請求理由で提出された証拠及び理由の範囲を逸脱しないならば、「職権審理」ではない
■ ハイライト
原告(特許権者)は2021年2月1日に被告に対して「ガス密度増加による材料反りを抑制する方法(原文:利用增加氣體密度抑制材料翹曲的方法)」の特許出願を行い、その特許請求の範囲(請求項)は計6項であり、被告(知的財産局)により特許された(公告番号第I740779号、以下「係争特許」という)。その後参加人(無効審判請求人)は係争特許が特許時の専利法第22条第2項規定に違反しているとして、これに対する無効審判を請求した。被告は審理の結果、「請求項1~6の無効請求は成立し、特許を無効とする」処分(以下「原処分」という)を下した。原告はこれを不服として、行政訴願を提起し、経済部は棄却することを決定した。原告はさらにこれを不服として、訴訟を提起した。知的財産及び商事裁判所は、本件には甲第4号証~甲第6号証という多数の証拠があり、各証拠をいかに組み合わせるかは、参加人がすでに提出した理由と証拠に属するものであり、特許主務官庁、即ち被告は無効審判の請求の趣旨及び争点の範囲において判断を下すことができ、原告が指摘している職権審理の事情はなく、被告は原告と参加人が陳述した後、対比において無効審判請求の理由と証拠に記載されている技術的特徴を全体的に対比して原処分を下しており、原告が主張するところの、原告に期限内に答弁する機会を与えず、被告には裁量の余地がなく、専利法第75条及び行政手続法第102条に違反しているという事情はないとして、原告の請求を棄却する判決を下した。
II 判決内容の要約
知的財産及び商事裁判所行政判決
【裁判番号】113年度行専訴字第50号
【裁判期日】2025年5月28日
【裁判事由】特許無効審判(審決取消)
原告 印能科技股份有限公司(ABLEPRINT TECHNOLOGY CO., LTD.)
被告 経済部知的財産局
参加人 歐門科技股份有限公司(Oven Technology Inc.)
上記当事者間の特許無効審判(審決取消)事件について、原告は経済部の2024年7月29日付経法字第11317303850号訴願決定を不服として、行政訴訟を提起した。本裁判所は参加人に本件被告の訴訟へ独立して参加するよう命じた。本裁判所は次の通りに判決する。
主文
一、原告の訴えを棄却する。
二、訴訟費用は原告の負担とする。
一、事実要約
原告(特許権者)は2021年2月1日に被告に対して「ガス密度増加による材料反りを抑制する方法(原文:利用增加氣體密度抑制材料翹曲的方法)」の特許出願を行い、その特許請求の範囲(請求項)は計6項であり、被告(知的財産局)により特許された(公告番号第I740779号、以下「係争特許」という)。その後参加人(無効審判請求人)は係争特許が特許時の専利法第22条第2項規定に違反しているとして、これに対する無効審判を請求した。被告は2024年1月24日付(113)智專議(二)04181字第00000000000号無効審判審決書を以って「請求項1~6の無効請求は成立し、特許を無効とする」処分(以下「原処分」という、甲第2号証)を下した。原告はこれを不服として、行政訴願を提起し、経済部は同年7月29日付経法字第00000000000号訴願決定書を以って訴願を棄却することを決定した(甲第3号証)。原告はさらにこれを不服として、本裁判所に訴訟を提起した。本裁判所は、本件訴訟の結果、訴願決定及び原処分を取り消すことを認めた場合、参加人の権利又は法律上の利益に損害を与えると認め、職権により参加人に本件被告の訴訟へ独立して参加するよう命じた。
二、両方当事者の請求内容
(一)原告の請求:訴願決定及び原処分を取り消す。
(二)被告の答弁:原告の訴えを棄却する。
(三)参加人の趣旨:原告の訴えを棄却する。
三、本件の争点
(一)手続き方面:原処分には専利法第75条及び行政手続法第102条規定の違反があったのか。
(二)係争特許の特許請求の範囲で特定されている「第一所定温度」と「第二所定温度」の意味をどのように解釈すべきか。
(三)甲第4、5号証の組合せは、係争特許請求項1の進歩性欠如を証明するのに足るのか。
(四)甲第4、5、6号証の組合せは、係争特許請求項2の進歩性欠如を証明するのに足るのか。
(五)甲第4、5号証の組合せは、係争特許請求項3の進歩性欠如を証明するのに足るのか。
(六)甲第4、5号証の組合せは、係争特許請求項4の進歩性欠如を証明するのに足るのか。
(七)甲第4、5号証の組合せは、係争特許請求項5の進歩性欠如を証明するのに足るのか。
(八)甲第4、5号証の組合せは、係争特許請求項6の進歩性欠如を証明するのに足るのか。
四、判決理由の要約
(一)係争特許の特許請求の範囲で特定されている「第一所定温度」と「第二所定温度」の解釈:
係争特許が解決しようとしている温度均一性の問題において、反りを効果的に抑制するためには、加工対象部品そのものの温度均一性に注目すべきである。そして係争特許の明細書には加工対象が半導体素子(係争特許明細書【0001】段落)又はウエハ(明細書第【0002】段落)であってよいとあるため、係争特許の特許請求の範囲における「第一所定温度」、「第二所定温度」は「加工対象物の異なる段階における温度」と解釈すべきであり、係争特許の技術思想と実際の応用の状況により合致し、係争特許の「半導体素子の反りを抑制する」という発明の目的をより達成できる。
(二)甲第4、5号証の組合せは、係争特許請求項1の進歩性欠如を証明するに足る:
1、「甲第5号証を主要引例として、甲第4号証をその他の引例とする」場合の技術分析:
以上をまとめると、甲第5号証のみに係争特許請求項1のすべての技術的特徴が開示されており、甲第5号証及び甲第4号証はいずれもチップ接合の技術分野に属し、かついずれも処理チャンバのガスを加圧及び加熱することでチップ接合工程を行うものであるため、機能と作用の共通性を有している。その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、当業者)が甲第5号証と甲第4号証の技術内容を組み合わせて係争特許請求項1に係る発明を完成しようとする動機付けが十分にあるため、甲第4号証と甲第5号証の組合せは係争特許請求項1の進歩性欠如を証明するに足る。
2、「甲第4号証を主要引例として、甲第5号証をその他の引例とする」場合の技術分析:
甲第4号証と甲第5号証の組合せには係争特許請求項1のすべての技術的特徴が開示されており、甲第4号証及び甲第5号証はいずれもチップ接合の技術分野に属し、かついずれも処理チャンバのガスを加圧及び加熱することでチップ接合工程を行うものであるため、機能と作用の共通性を有している。当業者が甲第4号証と甲第5号証の技術内容を組み合わせて係争特許請求項1に係る発明を完成しようとする動機付けが十分にあるため、甲第4号証と甲第5号証の組合せは係争特許請求項1の進歩性欠如を証明するに足る。
3、したがって、主要引例が甲第5号証と甲第4号証のいずれであるかにかかわらず、両引例の技術内容を全体的に判断すると、甲第4号証と甲第5号証の組合せは係争特許請求項1の進歩性欠如を証明するに足る。
(三)甲第4、5、6号証の組合せは、係争特許請求項2の進歩性欠如を証明するに足る:
甲第4、5、6号証の組合せには係争特許請求項2のすべての技術的特徴が開示されており、甲第4、5、6号証にはいずれも処理チェンバ内の圧力を特定の値にまで上昇させることが開示されており、その作用はいずれもチップの反りを防止することである(甲第4号証には実質的に暗示されており、甲第5、6号証には直接開示されている)ため、機能と作用の共通性を有している。当業者が甲第4、5、6号証の技術内容を組み合わせて係争特許請求項2に係る発明を完成しようとする動機付けが十分にあるため、甲第4、5、6号証の組合せは係争特許請求項2の進歩性欠如を証明するに足る。
(四)甲第4、5号証の組合せは、係争特許請求項3の進歩性欠如を証明するに足る:
甲第4、5号証の組合せには係争特許請求項3「工程(b)における少なくとも1種類のガスが所定量のガス分子を有し、前記所定量のガス分子により前記処理チェンバが所定圧力を維持し、前記所定量のガス分子により前記処理チェンバ内のガス温度の均一性を制御する、請求項1に記載のガス密度増加により材料反りを抑制する方法」のすべての技術的特徴が開示されており、甲第4、5号証にはいずれも処理チェンバ内の圧力を特定の値にまで上昇させることが開示されており、甲第4号証には「材料反りを抑制する」ことが開示されていないが、当業者にとって、複数のチップがより高いガスの押圧力を受けてその反りを抑制できることは、甲第4号証が実質的に暗示している内容であり、その作用はいずれもチップの反り防止であり、そして甲第5号証には反り防止が直接開示されているため、甲第4、5号証は機能と作用の共通性を有している。当業者が甲第4、5号証の技術内容を組み合わせて係争特許請求項3に係る発明を完成しようとする動機付けが十分にあるため、甲第4、5号証の組合せは係争特許請求項3の進歩性欠如を証明するに足る。
(五)甲第4、5号証の組合せは、係争特許請求項4の進歩性欠如を証明するに足る:
甲第4、5号証の組合せには係争特許請求項4「前記処理チャンバ内の前記第一所定温度が60℃乃至1500℃の範囲内に設定される、請求項1に記載のガス密度増加により材料反りを抑制する方法」のすべての技術的特徴が開示されており、甲第4、5号証にはいずれも処理チェンバ内の圧力を特定の値にまで上昇させることが開示されており、その作用はいずれもチップの反りを防止することである(甲第4号証には実質的に暗示されており、甲第5号証には直接開示されている)ため、機能と作用の共通性を有している。当業者が甲第4、5号証の技術内容を組み合わせて係争特許請求項4に係る発明を完成しようとする動機付けが十分にあるため、甲第4、5号証の組合せは係争特許請求項4の進歩性欠如を証明するに足る。
(六)甲第4、5号証の組合せは、係争特許請求項5の進歩性欠如を証明するに足る:
甲第4、5号証の組合せには係争特許請求項5「前記処理チャンバ内の前記第二所定温度が25℃超、100℃以下の範囲内に設定され、前記第二所定温度が前記第一所定温度よりも低い、請求項1に記載のガス密度増加により材料反りを抑制する方法」のすべての技術的特徴が開示されている。甲第4、5号証にはいずれも処理チェンバ内の圧力を特定の値にまで上昇させることが開示されており、その作用はいずれもチップの反りを防止することである(甲第4号証には実質的に暗示されており、甲第5号証には直接開示されている)ため、機能と作用の共通性を有している。当業者が甲第4、5号証の技術内容を組み合わせて係争特許請求項5に係る発明を完成しようとする動機付けが十分にあるため、甲第4、5号証の組合せは係争特許請求項5の進歩性欠如を証明するに足る。
(七)甲第4、5号証の組合せは、係争特許請求項6の進歩性欠如を証明するに足る:
甲第4、5号証の組合せには係争特許請求項6「前記処理チェンバ内の前記所定圧力が1.3気圧(atm)より高く、100気圧(atm)より低い範囲内に設定される、請求項1に記載のガス密度増加により材料反りを抑制する方法」のすべての技術的特徴が開示されている。甲第4、5号証にはいずれも処理チェンバ内の圧力を特定の値にまで上昇させることが開示されており、その作用はいずれもチップの反りを防止することである(甲第4号証には実質的に暗示されており、甲第5号証には直接開示されている)ため、機能と作用の共通性を有している。当業者が甲第4、5号証の技術内容を組み合わせて係争特許請求項6に係る発明を完成しようとする動機付けが十分にあるため、甲第4、5号証の組合せは係争特許請求項6の進歩性欠如を証明するに足る。
(八)原処分に、専利法第75条及び行政手続法第102条規定の違反はない:
参考人が提出した無効審判請求理由書(原文:舉發理由書)及び原処分が引用した甲第4、5号証の内容の対比:
1、無効審判請求理由書では甲第4号証の明細書【0012】、【0055】乃至【0062】、【0063】乃至【0068】段落が引用され、原処分では甲第4号証の明細書【0066】、【0061】段落が引用されており、よって原処分は無効審判請求理由書が指摘する甲第4号証の範囲から逸脱していない。
2、無効審判請求理由書では甲第5号証の明細書【0064】段落(図8と図9に示されている接合過程の解釈に用いられている)、【0066】乃至【0074】段落(図8と図9に合わせて、工程A3~A5《等温加圧、等圧加熱、等温等圧》を説明するのに用いられている)、【0072】段落(特に1~2行目では、加熱機構151の昇温とウェハWの加熱の過程が描述されている)、【0075】段落(工程A6《圧力維持温度下降》について描述されており、加熱機構151の温度下降、ウェハWの冷却及び第三の温度T3の設定が含まれる)、【0089】段落(工程B2において、ウェハWがいかに間接的に加熱されるかの説明に用いられている)、図8、図9(フローチャート及び説明図で、接合過程における圧力と温度の変化を説明するのに用いられている)、及び図10(接合工程におけるウェハWの状態を説明するのに用いられている)が引用されている。原処分では甲第5号証の明細書【0066】、【0069】、【0072】、【0073】、【0075】、【0076】、【0089】段落、図8及び図9が引用されている。【0076】を除き、原処分は無効審判請求理由書が指摘する甲第5号証の範囲から逸脱していない。
3、甲第4号証と甲第5号証は出願人が同じであり、両者の発明内容の核心部分(密閉された処理チャンバ、載置台、加熱機構及びガス供給機構を利用して、ガスの加熱と加圧によりチップと基板の接合において基板の反りを回避することを実現できる)、装置結構の核心部分(両者の選択図はいずれも図7であり、構造の符号も完全に一致している)、基本的な操作原理は類似性が極めて高く、製造工程における加熱と加圧の時系列に差異があるにすぎない。原処分第8乃至9頁の理由(五)、1.、(6)には、甲第4号証と甲第5号証は関連性が高いことが述べられており、甲第5号証と甲第4号証の開示する技術内容の相互運用性を説明することを旨としている。両者の明細書の技術内容は高度に類似し、一部は完全に同じである。よって甲第5号証と甲第4号証で共通する技術内容と係争特許請求項1の部分の素子とについて対比を行うことは、参加人の無効審判請求理由の範囲(例えば甲第5号証と甲第4号証が開示している基板の反り防止に係る技術内容は、いずれも係争特許請求項1の要件番号1Aに対応し、甲第5号証と甲第4号証が開示している処理チェンバ100は、いずれも係争特許請求項1の要件番号1Bに対応している)を越えているとは言い難い。たとえ本裁判所が斟酌した結果、甲第5号証の実施例一(図9)を採用しなかったとしても、甲第5号証のもう一つの実施例二(図16)には係争特許請求項1の要件番号1C、1Dと完全に一致する製造工程が開示されているため、本裁判所は知的財産事件審理法第6条第4項規定により、当事者に甲第5号証の図16について意見を述べるよう命じて、これを判決の根拠とすることができる。
4、参加人は無効審判の段階において甲第4号証乃至甲第6号証を提出しており、いずれが最も近い先行技術であるについて具体的に指摘していないが、それが主張する具体的な事実と、各具体的な事実と証拠との関係に対する説明から見て、参加人は当時、甲第4号証を主要引例、甲第5、6号証をその他の引例としていたはずである。原処分第4乃至16頁の理由「(五)争点の判断」により、被告は甲第5号証を主要引例、甲第4、6号証をその他の引例としている。もちろん参加人の無効審判請求理由と被告が行った原処分は、主要引例及び行われた技術的特徴の対比に違いがあるが、本件は甲第4号証乃至甲第6号証という多数の引例が存在し、各引例をいかに組み合せるかは、参加人がすでに提出している理由と証拠に属するものである。特許主務官庁、即ち被告は無効審判の請求の趣旨及び争点の範囲において判断を下すことができ、原告が指摘している職権審理の事情はなく、被告は原告と参加人が陳述した後、対比において無効審判請求の理由と証拠に記載されている技術的特徴を全体的に対比して原処分を下しており、原告が主張するところの、期限内に答弁する機会を与えず、被告には裁量の余地がなく、専利法第75条及び行政手続法第102条に違反しているという事情はない。さらに、参加人は本裁判所の審理において、甲第5号証を主要引例とすることを表明しており(本裁判所ファイル二第150頁)、本裁判所は項目毎に各争点について詳細に列挙し、当事者に意見を陳述するよう命じており、準備手続き及び口頭弁論手続きにおいて、当事者による口頭弁論を詳細に行い、双方及び参加人はこの紛争に関して、本裁判所の審理において十分な攻防を行った。本裁判所は主要引例が甲第5号証であるか、甲第4号証であるかに関わらず、全体的な技術的特徴の対比を通じて、甲第4号証及び甲第5号証の組合せが係争特許請求項1の進歩性欠如を証明するに足ると認定する。
5、特許に無効審判が請求された場合、特許権者は訂正するか否かを自ら評価しなければならず、とくに無効審判請求が成立する可能性がある特許権について特許権者が訂正を提出し、訂正関連規定に適合するならば、その特許は存続できる機会を得ることができるようにしており、行政訴訟において特許権者の訂正権を保障すべきか否かは、特許権者、無効審判請求人及び一般大衆の間で相反する利益のバランスに関わると同時に、当事者の紛争の一回的解決及び訴訟経済を考慮して、知的財産事件審理制度が行われており、裁判所は民事事件において特許の有効性を自ら判断することができ、かつ行政事件においては同一の無効理由で提出された新証拠を審理することができ(知的財産事件審理法第41条、第70条規定を参照)、各方面の利益保障を調和させ、手続きの公正さを維持するため、本裁判所は原告に主要引例が甲第4号証と甲第5号証のいずれであるかによって、技術的な評価に違いはあるのかを質問している。かりに原告が原処分の段階において甲第5号証を主要引例とすることを知っていたならば、原告は訂正した可能性があったのか。原告は、主要引例が異なると、思考過程に必ず違いが生じ、かつ抽象的に訂正の可能性が必ず存在し、本件の具体的なケースにおいて当事者と討論する必要がある等々と主張している(本裁判所ファイル第151頁)。その後の訴状において、訴訟手続き中に権利の範囲を訂正することがもはや不可能になったため、訂正に対する利益が当然影響を受け、そして訴願手続きや訴訟手続きによって意見陳述の機会が与えられたからといって、被告の手続き上の瑕疵が自動的に修正されるわけではない云々と主張している。本件被告及び参加人は依然として無効審判の証拠を援用しているため、本裁判所は争点を説明し、当事者に対し係争特許の有効性について十分に議論する機会を与えており、また、原告に訂正を行う可能性について尋ねたところ、原告は自ら評価した後、特許権の訂正の具体的な要求を表明していない。したがって、本裁判所は本件のすべての事実証拠に基づいて係争特許の有効性を直接判断することができ、被告に差し戻して主要な証拠の優先順位について改めて処分させる必要はない。
6、原告はまた、原処分では直接第TZ000000000A、CZ000000000A、CZ000000000A号を補助証拠として引用して、係争特許請求項2の進歩性欠如を認定しており、参加人が主張する理由と証拠を越え、原告に答弁するように通知もしていない云々と主張している。
(1)原処分作成時の専利審査基準(2017年版)第二篇第三章「特許要件」3.6「審査の留意事項」(5)には「特許出願に係る発明が進歩性を有しないと認定する時は、原則的には関連の先行技術である引用文献を添付すべきである。ただし、その先行技術が一般知識(本章3.2.1「その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者」を参照)であれば、引用文献を添付する必要はないが、拒絶理由通知書及び拒絶査定書には十分に理由を明記すべきである。」と規定されている。
(2)原処分第12頁の理由㈤、2.、(2)において係争特許請求項2で特定されている材料の反りを抑制するのに用いる加圧ガスが空気及び/又は窒素であることは一般知識であり、審査基準における前記規定でいう十分に理由を説明することに適合するものであると認め、被告は係争特許の先行技術3件(即ちTZ000000000A、CZ000000000A、CZ000000000A)を補助証拠として提供し、係争特許の出願前に空気又は窒素を加圧ガスとすることは、当該技術分野の文献に多数開示されており、一般知識に該当し、前記審査基準の規定に適合することを説明している。況してや被告は同じ段落で「以上の先行技術である特許文献は、処理チェンバの加圧ガスに空気又は窒素を使用することは出願当時の通常の知識であることを証明するのに用いるもので、証拠1に開示される加圧ガスを証明するのに用いる補助証拠であり、係争特許を対比する新証拠ではない」と説明しているため、原告の前記主張は確かに採用できるものではない。
(3)原告は、被告が無効審判の段階で参加人に対し原証拠の完全な中国語訳を提出するよう命じず、原処分を下したと主張し、その根拠として最高行政裁判所104年度判字第78号行政判決の見解を引用した。しかしながら、専利審査基準第五篇第一章「専利権の無効審判」4.3.2.2.2.2「外国語証拠とその中国語訳文」には「証明書類が外国語である場合は、審理時に、必要に応じて出願人に対して中国語訳文又は抄訳文を添付するよう通知することができる。証拠が外国語書証である場合は、無効審判請求人に対して当該証拠の事実に関する部分の中国語訳文又は抄訳文を添付するよう通知することができる。外国語書証に対比するに足る図面が明確に開示されている場合は、中国語訳文の添付は必要としない。中国語訳文が外国語と一致しない、又は無効審判請求人が中国語訳文を補充提出していない場合は、依然として証拠に基づいて審理しなければならない。」と規定されている。これにより外国語証拠の中国語訳文については、審判官が必要がないと認めるならば、無効審判請求人に添付するよう通知する必要はなく、かつ中国語訳文が外国語と一致しない、又は無効審判請求人が中国語訳文を補充提出していない場合は、依然として証拠に基づいて審理しなければならず、外国語証拠を排除するものではない。また前記最高行政裁判所の判決では、当該事件の参加人が正確な中国語訳文を提出せず、無効審判の審決処分、訴願決定及び第一審裁判所の判決がいずれも誤った証拠事実に基づくもので、かつその判断の基盤を揺るがすに十分であり、その結論が正確であるとは言い難いため、一審判決を破棄すると指摘している。本件参加人は本裁判所の審理において始めて中国語訳文を提出しているが、甲第5号証の技術についての判断の正当性に影響しないこととは異なる。よって原告のこの部分の主張はなお採用できない。
五、以上の次第で、全体的な技術的特徴の対比により、甲第4号証、甲第5号証の組合せ又は甲第4、5、6号証の組合せが係争特許請求項1乃至6の進歩性欠如を証明するに足り、かつ原処分は専利法第75条及び行政手続法第102条規定に違反しておらず、被告による上記係争特許請求項に対する無効審判請求成立の処分は、合法であり、訴願決定を維持することも法規に合わないものではなく、原告が取消しを請求することには理由がなく、棄却すべきである。知的財産事件審理法第2条、行政訴訟法第98条第1項前段により、主文の通り判決する。
2025年5月28日
知的財産第一法廷
裁判長 汪漢卿
裁判官 陳端宜
裁判官 蔡惠如









