「好神拖」と「真神拖」との商標大戦!

2020-11-23 2020年
■ 判決分類:商標権

I 「好神拖」と「真神拖」との商標大戦!

■ ハイライト
承宏国際股份有限公司は2010年より「妙煮婦真神拖」を名称として、各大手プラットホームでモップを販売しており、且つPRとして司会者鄭弘儀を招聘した。しかし業者がかつて知的財産局に「真神拖」商標を登録出願したが、帝凱国際實業股份有限公司が登録している「好神拖」商標と極めて類似するので、拒絶された。「好神拖」もこのため承宏を《商標法》違反として提訴した。新北地方裁判所は、斟酌したところ承宏は2010年に「妙煮婦真神」商標を取得し、その後に「拖」をつけてモップ商品販売の意味としたが、主観的に「好神拖」商標侵害の犯意があると認定することが難しいので、最終的に承宏の責任者江孝宏に無罪判決を下した。案件はやはり上訴できる。

II 判決内容の要約

台湾新北地方裁判所刑事判決
【裁判番号】108年智易字第46号
【裁判期日】2020年02月11日
【裁判事由】商標法

公訴人 台湾新北地方検察署検察官
被告人 江孝宏

上記被告人は商標法違反事件で、検察官より公訴を提起されていた(108年度偵續一字第6号)。本裁判所は次のとおり判決する:

主文   
江孝宏無罪の判決を下す。  

判決理由の要約 
一、公訴趣旨は以下のとおりである。:被告人江孝宏は洋豐股份有限公司(所在地:新北市○○区○○路0号8F、現在承宏国際股份有限公司に名称変更、以下洋豐公司という)の責任者であり、商標登録番号00000000号「好神拖」の登録商標は、帝凱国際實業股份有限公司(以下告訴人会社という)が経済部知的財産局(以下知財局という)に登録を出願し、2008年12月1日に知財局の登録公告を経て商標権を取得し、モップ、モップ絞り器、バケツ等商品に指定使用し、現在も商標権存続期間であることを知っていた。また被告人はかつて「真神拖」商標をもって知財局に登録を出願したが、2009年11月5日に当該商標が「好神拖」登録商標と類似するので、知財局から棄却された。被告人はまた「妙煮婦真神拖」をもって知財局に登録を出願したが、2010年1月25日に当該商標が「好神拖」登録商標と類似するので、知財局から棄却された。被告人は訴願を提起して経済部に棄却された後、更に再び行政訴訟を提起した。しかし知的財産裁判所は99年度行商訴字第179号判決をもって棄却した。つまり、被告人は「真神拖」、「妙煮婦真神拖」が「好神拖」登録商標と類似することを知りながら、あえて告訴人会社の同意または許諾を得ずに、2010年間某日から2018年3月12日に警察当局に摘発される時まで、「好神拖」登録商標に類似する「妙煮婦真神拖」商標を使用してモップ類商品を販売し、且つ前記商品販売情報を「PChome」、「MOMO購物網」、「東森購物網」等販売プラットホームに掲載し、消費者に誤認混同を生じさせたので、被告人は商標法第95条第3号の商標権侵害罪を犯したと認定した。

二、調べたところ、被告人は販売の目的で、「妙煮婦真神拖」の識別性がある文字を、その販売している販売モップ商品に関する広告に使用し、これは「妙煮婦真神拖」が商標であると関連消費者に認識させるに十分なので、商標法第5条規定の商標使用である。被告人は既に2010年7月13日に「妙煮婦真神」商標を登録出願し、その後2011年10月16日に知財局の登録公告を経て商標権を取得しており、且つ被告人が販売しているものはモップ類商品であるので、被告人は本件発生期間に、権利行使の考えに基づいて「妙煮婦真神」登録商標を使用しており、且つその後販売商品の性質が家庭用モップであるため「拖」の字を付け、商品本体の性質及び用途について説明し、且つウェブページにおいて「360°手押し式回転モップ」、「妙煮婦手押し式回転モップ」、「真新式魔法モップセット」、「足踏み式回転モップ」、「360°手押し式回転モップ」等のモップ商品機能を形容する文言を付記したが、これは一般的商業販売の合理的方法であり、告訴人会社は「好神拖」商標権を享有しているというだけで、モップ商品販売時に他人による「拖」の字の使用を禁止してはならず、または一方的に「拖」の字の後に「把」の字を付記するよう要求してはならない。更に、被告人が販売したモップ商品のウェブページを見れば、一部の「妙煮婦」と「真神拖」について分離または別途使用の情況があるが、被告人の前記ウェブページにはいずれも1996年8月1日、1998年4月1日に登録した「妙煮婦」、「MASTER WOK及び図妙煮婦」登録商標があり、字体、図案も明確であり、且ついずれも「真神拖」の左側または上側にあり、ウェブページを全体的に観察すれば、明確にその販売しているモップ商品のブランド及び出所(即ち「妙煮婦」)を表示することができ、また被告人が販売している他のモップ商品ではないもの、即ち「妙煮婦」登録商標と商品名称、例えば「妙煮婦カラフルな白いセラミックの焦げ付き防止ポット」、「妙煮婦シーリングスティック」、「妙煮婦チタンナイフ」、「妙煮婦真空保存袋」、「妙煮婦去污霸」、「妙煮婦濃縮液洗濯槽クリーナー」等は、更に「妙煮婦真神」登録商標をもって「妙煮婦真神切- 勁」商品を販売していて、被告人は同一の販売方法により、その「妙煮婦真神」登録商標を使用し、且つその後に「拖」の字をつけてモップ商品を販売した。被告人が「妙煮婦」と「真神拖」を分離し、または別途使用し、且つ「神拖」の2 字を併せて使用したことにより、被告人には主観的に「好神拖」登録商標を侵害する犯意があると認定することは、速断に過ぎると考えられる。

更に告訴代理人呂紹瑋弁護士が取調べ時に述べたことによると、告訴人会社が2017年6月頃に洋豐公司が「妙煮婦真神拖」モップ商品を販売していることを発見し、且つ書簡により処理をインターネットプラットホームに要請した後、洋豐公司の従業員が2017年12月頃にインターネットプラットホームから通知を受け取った後に、その販売しているモップの商品名称を「妙煮婦真神脫」に変更し、被告人は同年12月21日に知財局に「妙煮婦真神脫」商標を登録出願し、2018年8月1日に登記公告の許可を得て商標権を取得し(登録/審決番号:00000000号)、モップ等商品に指定使用しており、存続期間は2028年7月31日までである。よって、もし被告人に確かに「好神拖」登録商標にただ乗りして、その販売しているモップ商品が告訴人会社が製造している関連商品であると一般消費者に誤認させる意図があった場合、引続き「妙煮婦真神拖」、または他の売り手のように「雷神拖」、「真省拖」、「美神拖把」、「大神拖」、「拖神」等同音または類似文字をもって「好神拖」登録商標の知名度にただ乗りしてもよかったはずであり、先ず多くの広告コストを「妙煮婦」ブランド及び「妙煮婦真神拖」モップにかけて、商品の知名度を向上させた後に、たくさんの資金、時間をかけて従来販売していたモップ商品名称を「妙煮婦真神脫」に変更する必要はないと考えられる。被告人は主観的に「妙煮婦真神」商標権を行使する考えで、且つモップ商品販売のため「妙煮婦真神拖」商標を使用したのであり、「好神拖」登録商標を侵害する犯意はなかった。

以上をまとめると、本件公訴人が訴訟の証明として提出した証拠は、通常一般の人々が疑いをもつほどのものではなく、被告人が確かに公訴の要旨のように商標法第95条第3号に違反して商標権侵害犯行が事実であると確信できる程度に達していないので、本裁判所は当然被告人有罪の確信を形成することはなく、被告人の犯罪について証明することができないので、前記説明を見れば、当然被告人無罪の判決を下すものである。

2020年2月11日
刑事第四法廷裁判官  洪振峰
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