具体的な下位概念の商品における商標使用は、上位概念の商品並びに同じ性質の商品における使用と認定
2021-05-25 2020年
■ 判決分類:商標権
I 具体的な下位概念の商品における商標使用は、上位概念の商品並びに同じ性質の商品における使用と認定
■ ハイライト
参加人(即ち商標権者)は2012年9月7日に第8類の「手持工具(手動式のもの);スクリュードライバービット;ねじタップ;のこぎり;レンチ;…」等16項目の商品での使用を指定して「ifixit」商標の登録を出願し、登録第1583371号商標(以下「係争商標」)として登録された。その後原告は2017年9月20日に、係争商標には商標法第63条第1項第2号に規定される登録取消事由があるとして、取消審判を請求した。審理の結果、「請求不成立」の処分が出された。原告はこれを不服として行政訴願を提起したが棄却されたため、さらに行政訴訟を提起した。知的財産裁判所は「ifixit」商標が使用を指定しているスクリュードライバービット;ねじタップ…等15項目の商品(下位概念商品)の部分について原処分及び訴願決定を取り消し、被告に対しその部分について取消請求の成立として登録取消処分を行うよう命じるほか、係争商標の「手持工具(手動式のもの)」(上位概念商品)については使用されているため、取消請求を不成立とする判決を下した。判決趣旨は以下の通りである。
「商標法第63条の上記規定(訳注:第63条第1項第2号)で定められている商標が使用されていたか、又はその使用が取消事由を構成するかは、登録された商標とその指定された商品又は役務に対するものであり、実際に登録商標が使用されている商品又は役務の範囲が、登録されている指定商品又は指定役務に合致しているかに特に留意する必要がある。…さらに商品又は役務が、同類又は同グループの総括的概念、又は類似の商品又は役務の本質的な総括的概念という上位概念であって、上位概念に対する下位概念が具体的な商品又は役務であり、具体的な下位概念の商品又は役務に使用されている場合、概括的な上位概念の商品又は役務に使用されたと認定すべきであるが、その逆は使用であると認定してはならない。例えば上記の留意事項(訳注:知的財産局「登録商標使用の留意事項」)で挙げられた例については、化粧品が上位の商品であり、ファンデーションが下位の具体的商品であり、ファンデーションの使用は、登録されている化粧品での使用であると認めることができる。また銀行サービスは上位の役務であり、具体的なクレジットカード発行サービスでの使用は、使用と認定することができる」(最高行政裁判所106年度判字第163号判決)。
参加人は原処分が下される前に、その1項目の商品、即ち「SDS軸ドリルビッドワンタッチジョイント(原文:SDS鑿壁快脱接頭)」、別称「六角軸四本溝ドリルビットワンタッチアダプタ(原文:六角轉四溝快脱接桿)」しか、係争商標の使用証拠として提出していない。当該商品は第8類の上位概念である「手持工具(手動式のもの)」商品に属するが、いわゆる「SDS軸ドリルビッドワンタッチジョイント」又は「六角軸四本溝ドリルビットワンタッチアダプタ」は、クロム-バナジウム鋼を材料として製造されたもので、電気ドリルに取り付け、四本溝ドリルビットを装着するのに使用する。その用途、機能はいずれも係争商標が指定商品として登録しているその他の15項目の下位概念商品「スクリュードライバービット;ねじタップ;のこぎり;レンチ;両口レンチ;手動釘打ち機;その他締付固定用手持工具;レンチ用ヘッド;手動レンチ用ソケット;…」とは異なり、同じ性質の商品と認めることはできない。前出の2010年司法院知的財産法律座談会の趣旨(訳注:2010年5月21日司法院知的財産法律座談会行政訴訟類第1号会議決)によると、被告は参加人が使用した証拠を提出した商品について登録取消請求不成立とする処分を行うことができるが、その他15項目の部分については、使用した証拠を提出していないのならば、係争商標の登録取消処分を行わなければならない。
II 判決内容の要約
知的財産裁判所行政判決
【裁判番号】108年行商訴字第134号
【裁判期日】2020 年5月28日
【裁判事由】商標登録取消
原告 IFIXIT CORPORATION(原文:美商艾非斯克特股份有限公司)
被告 経済部知的財産局
参加人 呉〇城
上記当事者間の商標登録取消事件について、原告は経済部2019年9月17日経訴字第10806311050号訴願決定を不服とし、行政訴訟を提起した。当裁判所は参加人に独立して本件被告の訴訟に参加するよう命じた。当裁判所は、次のとおり判決する。
主文
原処分及び訴願決定における「『ifixit』商標の指定商品であるスクリュードライバービット;ねじタップ;のこぎり;レンチ;両口レンチ;手動釘打ち機;その他締付固定用手持工具;レンチ用ヘッド;手動レンチ用ソケット;手動式ジャッキ;金属製ベルト用伸張具(手持工具);つめ車;ねじ切り工具(手持工具);せん孔用工具(手持工具);丸のみ(手持工具)の部分について登録取消請求を不成立とする」という部分を取り消す。
上記取消部分について、被告は「『ifixit』商標の指定商品であるスクリュードライバービット;ねじタップ;のこぎり;レンチ;両口レンチ;手動釘打ち機;その他締付固定用手持工具;レンチ用ヘッド;手動レンチ用ソケット;手動式ジャッキ;金属製ベルト用伸張具(手持工具);つめ車;ねじ切り工具(手持工具);せん孔用工具(手持工具);丸のみ(手持工具)」に対して取消請求の成立として登録取消処分を行わなければならない。
原告の他の請求を棄却する。
一 事実要約
参加人は2012年9月7日に当時の商標法施行細則第19条で定める商品及び役務の区分表第8類「手持工具(手動式のもの);スクリュードライバービット;ねじタップ;のこぎり;レンチ;両口レンチ;手動釘打ち機;その他締付固定用手持工具;レンチ用ヘッド;手動レンチ用ソケット;手動式ジャッキ;金属製ベルト用伸張具(手持工具);つめ車;ねじ切り工具(手持工具);せん孔用工具(手持工具);丸のみ(手持工具)」商品での使用を指定して、「ifixit」商標の登録を被告に出願した。被告は審査した結果、登録第1583371号商標(以下「係争商標」、図案は本判決の添付図に示すとおり)として登録を許可した。その後原告は2017年9月20日に係争商標には商標法第63条第1項第2号に規定される登録取消事由があるとして、被告に取消審判を請求した。被告は審理した結果、係争商標には前述の商標法規定は適用されないと認定し、2019年3月26日中台廃字第L01060460号商標取消請求処分書を以って「請求不成立」の処分を行った。原告はこれを不服として行政訴願を提起したが、経済部から同年9月17日經訴字第10806311050号決定を以って棄却されたため、さらに当裁判所に行政訴訟を提起した。当裁判所は本件判決の結果によって、原処分及び訴願決定の取消しが認められた場合、参加人の権利及び法律上の利益に影響をもたらすため、職権に基づき、参加人に本件被告の訴訟に独立して参加するよう命じた。
二 両方当事者の請求内容
(一)原告の主張理由:原処分と訴願決定を取り消す。被告は係争商標の登録取消処分を行わなければならない。
(二)被告の答弁理由:原告の請求を棄却する。
三 本件の争点
係争商標には商標法第63条第1項第2号に定められる登録取消事由があるのか。
四 判決理由の要約
(一)商標法第63条第1項第2号には「商標登録後に次に掲げる事情の一に該当するものは、商標主務機関が職権又は請求によりその登録を取り消さなければならない。:…二、正当な理由なくして未使用又は使用の停止が継続して3年経過したもの。但し、使用権者が使用しているときは、この限りでない」と定められている。また、同法第5条には、商標の使用とは、販売を目的として、商標を商品又はその包装容器に用いる状況、又は商標を付した商品を所持、展示、販売、輸出又は輸入する状況、又は商標を提供する役務と関連する物品に用いる状況、又は商標を商品又は役務と関連する商業文書又は広告に用いる状況があるもの、又は以上の状況をデジタルマルチメディア、電子メディア、インターネット又はその他媒介物の方式で行うものであって、関連する消費者にそれが商標であると認識させることができることをいうと、規定されている。また同法第67条第3項で準用される第57条第3項には、商標権者が提出する使用に関する証拠は、商標が実際に使用されていることを証明でき、さらに一般的な商習慣に適合しなければならないと規定されている。
(二)調べたところ、係争商標の図案は簡単なデザインが施された外国語「ifixit」で構成されており、「手持工具(手動式のもの);スクリュードライバービット;ねじタップ;のこぎり;レンチ;両口レンチ;手動釘打ち機;その他締付固定用手持工具;レンチ用ヘッド;手動レンチ用ソケット;手動式ジャッキ;金属製ベルト用伸張具(手持工具);つめ車;ねじ切り工具(手持工具);せん孔用工具(手持工具);丸のみ(手持工具)」商品での使用が指定されている。原告は2017年9月20日に、係争商標には商標法第63条第1項第2号に定められる状況があるとして、被告に登録の取消を請求した。本件の争点は明らかに、参加人が本件登録取消請求日(2017年9月20日)より前3年間に、係争商標を前述の指定商品に使用した事実があるかどうかである。
(三)当裁判所が文書にて照会した結果、瑋泰公司が2017年9月営業税申告の売上には、買受人である偉博公司が発行した取消請求審判答弁添付文書4の統一発票があり、事業体である偉博公司が当該発票に基づいて申告して売上税額からの控除を行っている等の状況を知り得た。当裁判所の2020年4月15日付書簡、財政部中区国税局2020年4月17日付書簡、財政部中区国税局台中分局2020年4月20日付書簡がある(当裁判所ファイル第221乃至231頁を参照)。以上の事実証拠をまとめると、本件の取消請求日である2017年9月20日より前の3年間に暐泰公司には係争商標を「SDS軸ドリルビッドワンタッチジョイント」という商品に使用した事実が確かにある。さらに調べたところ、係争商標はSDS軸ドリルビッドワンタッチジョイントという商品に使用され、売買双方の暐泰公司と偉博公司は取引時に提出した発注書、出荷伝票、商品の写真があり、統一発票で売上、購入を申告した事実があったことは前述したとおりである。よって原告は参加人が提出した証拠資料は訴訟に際して作成したものである等と根拠もなく疑い、それが事実であることを証明する具体的な事実証拠も提出していない。このため、原告は上記使用に係る証拠資料は、取消請求を知ってから、使用し作成した可能性があると主張しているが、採用できない。
(四)「SDS軸ドリルビッドワンタッチジョイント」商品が手持工具(手動式のもの)である以外に、参加人の使用に係る証拠は手持工具(手動式のもの)を除く15項目の商品を使用したことを証明できず、その他15項目商品の登録を取り消すべきである:
1.参加人が提出した使用の証拠について、SDS軸ドリルビッドワンタッチジョイントは手持工具(手動式のもの)に帰属できるが、係争商標の指定商品は16項目に上り、参加人は第8類の上位概念である「手持工具(手動式のもの)」の使用の証拠を提出しただけで、下位概念であるその他の15項目の商品とは性質が異なるため、当裁判所はなおその他の15項目の商品について取消事由があるかを審理すべきである。
2. 次に「商標法第63条の上記規定(訳注:第63条第1項第2号)で定められている商標が使用されていたか、又はその使用が取消事由を構成するかは、登録された商標とその指定された商品又は役務に対するものであり、実際に登録商標が使用されている商品又は役務の範囲が、登録されている指定商品又は指定役務に合致しているかに特に留意する必要がある。…さらに商品又は役務が、同類又は同グループの総括的概念、又は類似の商品又は役務の本質的な総括的概念という上位概念であって、上位概念に対する下位概念が具体的な商品又は役務であり、具体的な下位概念の商品又は役務に使用されている場合、概括的な上位概念の商品又は役務に使用されたと認定すべきであるが、その逆は使用であると認定してはならない。例えば上記の留意事項(訳注:知的財産局「登録商標使用の留意事項」)で挙げられた例については、化粧品が上位の商品であり、ファンデーションが下位の具体的商品であり、ファンデーションの使用は、登録されている化粧品での使用であると認めることができる。また銀行サービスは上位の役務であり、具体的なクレジットカード発行サービスでの使用は、使用と認定することができる」(最高行政裁判所106年度判字第163号判決)とある。
3.調べたところ、係争商標は第8類の「手持工具(手動式のもの);スクリュードライバービット;ねじタップ;のこぎり;レンチ;両口レンチ;手動釘打ち機;その他締付固定用手持工具;レンチ用ヘッド;手動レンチ用ソケット;手動式ジャッキ;金属製ベルト用伸張具(手持工具);つめ車;ねじ切り工具(手持工具);せん孔用工具(手持工具);丸のみ(手持工具)」等16項目商品での使用が登録されている。また参加人は原処分が下される前に、その1項目の商品、即ち「六角軸四本溝ドリルビットワンタッチアダプタ」(原告証拠5、即ち乙証1-3添付資料2を参照)、別称「SDS軸ドリルビッドワンタッチジョイント」(原告資料4、即ち乙証1-3添付資料1を参照)しか、係争商標の使用証拠として提出していない。前出の2010年司法院知的財産法律座談会の趣旨(訳注:2010年5月21日司法院知的財産法律座談会行政訴訟類第1号会議決)によると、被告は参加人が使用した証拠を提出した商品についてのみ登録取消請求不成立とする処分を行うことができるが、その他15項目の部分については、使用した証拠を提出していないのならば、係争商標の登録取消処分を行わなければならない。
4.また、原告が調査機関に委託して行った調査によると、市場では「六角軸四本溝ドリルビットワンタッチアダプタ」又は「SDS軸ドリルビッドワンタッチジョイント」を除く係争商標の指定商品の販売が見当たらなかった。したがって当裁判所は参加者が本件の取消請求日(106年9月20日)より前の3年間に係争商標が「スクリュードライバービット;ねじタップ;のこぎり;レンチ;両口レンチ;手動釘打ち機;その他締付固定用手持工具;レンチ用ヘッド;手動レンチ用ソケット;手動式ジャッキ;金属製ベルト用伸張具(手持工具);つめ車;ねじ切り工具(手持工具);せん孔用工具(手持工具);丸のみ(手持工具)」等15項目の指定商品に使用された事実はなかったと認める。
(五)以上のことから、係争商標が使用を指定する商品であるスクリュードライバービット;ねじタップ;のこぎり;レンチ;両口レンチ;手動釘打ち機;その他締付固定用手持工具;レンチ用ヘッド;手動レンチ用ソケット;手動式ジャッキ;金属製ベルト用伸張具(手持工具);つめ車;ねじ切り工具(手持工具);せん孔用工具(手持工具);丸のみ(手持工具)の部分については、商標法第63条第1項第2号に規定する登録取消事由があるため、原処分及び訴願決定における当該部分の取消請求の不成立に関する部分を取り消し、かつ上記部分については、本件の事実証拠が明確であるため、行政訴訟法第200条第3号の規定により、被告に「係争商標が使用を指定するスクリュードライバービット;ねじタップ;のこぎり;レンチ;両口レンチ;手動釘打ち機;その他締付固定用手持工具;レンチ用ヘッド;手動レンチ用ソケット;手動式ジャッキ;金属製ベルト用伸張具(手持工具);つめ車;ねじ切り工具(手持工具);せん孔用工具(手持工具);丸のみ(手持工具)の商品」の部分について取消請求の成立として登録取消処分を行うよう命じる。原処分及び訴願決定のその他の部分については、誤りがないため、原告の他の訴えを棄却する。
以上の次第で、本件原告の訴えには一部に理由があり、一部に理由がない。よって知的財産案件審理法第1条,行政訴訟法第200条第3号、第104条,民事訴訟法第79条により、主文のとおり判決する。
2020年5月28日
知的財産裁判所第二法廷
裁判長 汪漢卿
裁判官 林洲富
裁判官 曾啓謀
添付図
係争商標図
登録第1583371号
出願日:2012年9月7日
登録日:2013年6月16日
公告日:2013年6月16日
使用指定区分:(第008類)
手持工具(手動式のもの);スクリュードライバービット;ねじタップ;のこぎり;レンチ;両口レンチ;手動釘打ち機;その他締付固定用手持工具;レンチ用ヘッド;手動レンチ用ソケット;手動式ジャッキ;金属製ベルト用伸張具(手持工具);つめ車;ねじ切り工具(手持工具);せん孔用工具(手持工具);丸のみ(手持工具)。