Taobaoより模倣品購入後転売、販売した男に裁判所から損害賠償金NT$199,800の判決
2021-11-23 2021年
■ 判決分類:商標権
I Taobaoより模倣品購入後転売、販売した男に裁判所から損害賠償金NT$199,800の判決
■ ハイライト
男性阿強(通称)が2020年頃、中国Taobaoウェブサイトからadidas及びNIKEの服飾模倣品を購入した後、3点NT$1,000の価格で苗栗の街で露店を出店していたところ、初日に警察当局の取り締りを受けて、儲けたNT$1,000を没収された。その後、刑事部分において商標法違反のため、有期懲役4ヶ月に処され、民事部分においてはadidasから賠償請求されたため、裁判官よりがNT$199,800賠償せよとの判決が下された。
II 判決内容の要約
台湾苗栗地方裁判所刑事判決
【裁判番号】109年智簡上字第4号
【裁判期日】2021年01月19日
【裁判事由】商標法違反
上記被告人による商標法違反の件について、上訴人が本裁判所苗栗簡易法廷109年度苗智簡字第8号、2020年9月3日第一審簡易判決(簡易判決による処刑申立案件番号:台湾苗栗地方検察署109年度偵字第4339号)を不服として上訴したので、本裁判所管轄の第二審合議法廷は、以下のとおり判決を下す。
主文
上訴を棄却する。
事実及び理由
一、本裁判所で審理した結果、被告人熊自強(以下被告人という)が商標法第97条商標権侵害商品不法販売罪を犯したので、刑事訴訟法第449条第1項前段、第3項、第454条第2項等規定に基づき、被告人に有期懲役4ヶ月に処し、罰金に転換する場合、1日NT$1,000で換算するとした第一審簡易判決は、事実の認定、法律の適用において共に違反及び誤用がなく、量刑も妥当であり、維持すべきだと認めた。よって当該判決書に記載された犯罪事実、証拠及び理由を引用する。
二、検察官の上訴趣旨の要約は次のとおりである。原判決の有期懲役4ヶ月の処刑は、量刑が軽すぎるので、罪刑相当原則を満たすため、刑事訴訟法第344条第1項により上訴を提起し、救済を求める。
三、調べたところ、次のとおりである。
本件第一審簡易判決の量刑理由は次のとおりである。「被告人の責任を基礎とし、警察での取り調べでは犯罪動機として経済的困窮によって模造品衣服の販売に至った経緯を述べており、被告人の業種が商業(露天商で)、かろうじて生活を維持できている程度の家庭経済状況であることや、また、学歴も高卒であり(審理ファイル第13、16頁参照)、犯罪後の警察の取り調べ及び審理のときも犯行を認めたが、告訴人アディダス社、被害者台湾ナイキ商業有限公司と賠償または和解などに至らなかった損害の態様であることを審酌した。さらに、被告人が本件以前にすでに2回の商標法違反で裁判所からの論罪科刑記録が残っている状況をを参酌した。」以上に鑑みて、刑法第57条各号に挙げられた状況はすでに斟酌されており、量刑についても法違反はなく、言い渡された刑罰と犯罪内容とを照らしても、重すぎまたは軽すぎのところは見れない。よって、当裁判所も原審の職権行使について、尊重すべきである。以上をまとめると、原審の判決には違法または不当なところがないので、検察官の上訴には理由がなく、棄却すべきである。
以上から論断し、刑事訴訟法第455の1第1項、同第3項法、第368条、第373条に基づき主文どおり判決する。
2021年1月19日
刑事第四法廷審判長 裁判官 羅貞元
裁判官 申惟中
裁判官 郭世顏
台湾苗栗地方裁判所刑事附帶民事訴訟判決
【裁判字号】109年智簡上附民字第3号
【裁判期日】2021年01月19日
【裁判事由】損害賠償請求
原告 ドイツ企業阿迪達斯公司(adidas AG)
被告人 熊自強
主文
被告人は原告にNT$199,800支払わなければならず、2020年12月4日より弁済日まで、週ごとに年利率5%で利息を計算する。
原告のその他の訴えを棄却する。
本判決第1項は仮執行できるものとするが、ただし被告人がNT$199,800を原告のために供託した場合は、仮執行を免ずることができる。
原告が提訴したその他の仮執行請求をすべて棄却する。
事実及び理由
一、原告提訴主張:
被告人には台湾苗栗地方検察署109年度偵字第4399号簡易判決による処刑書に記載の商標権侵害の犯行がったので、原告は商標法第97条第3項、第70条第1項第3号及び民法第195条第1項後段規定に基づき、損害賠償及び原告の名誉回復を請求し、被告人に損害賠償金NT$ 432,900、計算式:(1000/3=333.3、333×1300倍=432,900)を請求し、並びに被告人自らの費用で商標権侵害の刑事付帯民事訴訟判決書全文を新聞紙に掲載するよう請求した。
二、被告人の答弁:原告の賠償請求額は高すぎて、負担できない云々。
三、心証を得た理由:
(一)商標権者が故意または過失により侵害を受けた場合、損害賠償請求できることは、商標法第69条に明文で規定されている。さらに、商標権者は損害賠償請求と同時に、次に示す各号のいずれかに基づき、その損害を請求することができる。一、民法第216条規定。ただし、証拠原則に基づく損害を証明できない場合、商標権者はその商標登録によって通常得られる利益から侵害を受けた後同一商標の使用によって得た利益を差し引き、その差額を被った損害とすることができる。二、商標権侵害で得た利益。商標権侵害者がそのコストまたは必要経費を挙証できない場合は、当該商品販売の収入全額を得た利益とする。三、摘発された商標権侵害商品の小売単価の1500倍以下の額。ただし、摘発された商品が1500点を超える場合は、その総額で賠償額を定める。四、商標権者が他人に使用許諾することで得られるロイヤリティをその損害とすることは、商標法第71条第1項に明文で規定されている。これらによれば、被告人による原告の商標権侵害行為について、原告が商標法第71条第1項第3号規定に基づき、原告に対して損害賠償責任を請求しあtことには根拠ある。一方、いわゆる「小売単価」とは、他人の商標権を侵害した商品の実際の販売単価を言い、商標権者自身の商品の小売単価または卸売価格ではない(最高裁判所95年度台上字第295号民事判決趣旨を参照)とされている。当裁判所での刑事審理のとき、被告人が証言した売値は衣服3点で千元云々によれば、原告が平均小売単価NT$333(算式:1000÷3=333〈小数点以下四捨五入〉)を損害賠償計算の根拠として主張したことには、根拠があると認めるべきである。さらに、被告人が本件の違法販売により、原告商標権を侵害した期間、商品数量、利益獲得状況など、商標権者すなわち原告の営業権及び収益への影響程度と、市場における原告の経済的地位、被告人の年齢、身分、地位、知識程度及び経済状況等を参酌した上で、平均小売単価の600倍をもって、賠償額を計算することは妥当である。当裁判所は、当該商品の平均小売単価NT$333を賠償額の基礎として採用する。よって、原告が前掲規定に基づき、被告人に賠償額合計NT$199,800(算式:333元×600 =199,800)を請求したことには、理由がある。
(二)被告人が販売しようとしたものは廉価で粗悪な模倣商品であり、原告の真正商品とは差があり、消費者に誤認されることはなく、原告の社会評価もこれによって減損されてはいない。よって、原告の権利侵害行為による損害は財産上の損害のみにとどまり、原告の名誉が損害を被ったとは認めがたい。さらに、名誉の侵害を受けたものは、名誉回復の適切な処分の請求ができ、いわゆる適切な処分とは、当該処分が客観上に被害者の名誉を回復できるものであり、かつ、必要であるものを指す(最高裁判所86年度台上字第3706号民事判決趣旨参照)。原告はその名誉が被告人の前記行為によってどのように侵害されたかについて挙証及び証明していないことから、民法第195条第1項後段規定に基づき、被告人に対し、本件の刑事付帯民事訴訟判決書全内容を自由時報、聯合報、中国時報及びデイリーアップルに掲載するようにと請求したことには根拠の裏付けがないと言える。よって、当裁判所にて前記情状を斟酌した上で、原告が主張する方式での新聞掲載の必要はないと認める。よって、この部分の請求はすべて棄却する。
四、従って、本件原告の権利侵害行為法律関係に基づく、被告人に対する商標権
侵害に関わる賠償請求権はすべて成立するので、原告による商標権法第69条第3項、同第71第1項第3号規定に基づいた、原告への損害賠償金NT$199,800の請求、及び本訴状謄本送達の翌日から弁済日まで、年率百分の5の利息を加算して支払うべきとの請求に理由があるので、許可すべきである。また、この範囲を超える部分には理由がないので、棄却すべきである。
2021年1月19日
刑事第四法廷審判長 裁判官 羅貞元
裁判官 申惟中
裁判官 郭世顏