「誠品」商標を侵害して引越し会社を設立、知的財産裁判所は二審で300万新台湾ドルの賠償命令判決

2022-04-20 2021年
■ 判決分類:商標権

I 「誠品」商標を侵害して引越し会社を設立、知的財産裁判所は二審で300万新台湾ドルの賠償命令判決

知的財産裁判所は二審判決において、「誠品搬家公司」及び「誠品優質包裝公司」が長年にわたり「誠品」ブランドの成果を不当に享受してきたと認め、「誠品搬家公司」、「誠品優質包裝公司」並びに両社の代表者である陳山福に対して、300万新台湾ドルの賠償金支払いとともに、社名の変更、「誠品」商標と類似する図案を含む看板、名刺、広告、ウェブサイト及びその他の販促を目的として物品の除去と廃棄を命じる判決を下した。

II 判決内容の要約

知的財産裁判所民事判決
【裁判番号】109年民商上字第8号
【裁判期日】2021年1月7日
【裁判事由】商標権侵害行為排除(差止)等

上訴人 誠品股份有限公司
法定代理人 呉旻潔
被上訴人 誠品優質包裝有限公司
被上訴人 誠品搬家有限公司
被上訴人 陳山福 

上記当事者間の商標権侵害行為排除(差止)等事件について、上訴人は2020年1月31日当裁判所107年度民商訴字第43号第一審判決に対して上訴を提起し、当裁判所は2020年12月10日に口頭弁論を終結し、次のとおり判決する。

主文
原判決を取り消す。
被上訴人誠品優質包裝有限公司、誠品搬家有限公司及び陳山福は上訴人が所有する登録第44981号、第121827号、第143088号、第1628657号、第1641282号商標と同一の又は類似する図案を付表一に示す役務区分に使用してはならず、並びに上記商標と同一の又は類似する図案を含む看板、名刺、広告、ウェブサイト及びその他の販売のための物品の除去と廃棄をしなければならない。
被上訴人誠品優質包裝有限公司、誠品搬家有限公司及び陳山福は「誠品」と同一の又は類似する文字を社名の一部に使用してはならず、並びに社名を「誠品」と同一の又は類似する文字の含まない名称に変更しなければならない。
被上訴人誠品優質包裝有限公司、誠品搬家有限公司はそれぞれ被上訴人陳山福と連帯で上訴人に対し、300万新台湾ドル及びいずれも2018年7月10日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
上記被上訴人のいずれか一名が支払ったとき、他の被上訴人はその支払い範囲において、同じく支払義務を免じる。
第一、二審の訴訟費用は被上訴人の負担とする。
本判決第4項について、上訴人が被上訴人のために100万新台湾ドルを担保として供託した後に仮執行を行ってもよい。ただし、被上訴人が上訴人のために100万新台湾ドルを担保として供託した後に、仮執行を免脱できる。

一 両方当事者の請求内容
(一)上訴人の請求:
1、原判決を取り消す。
2、被上訴人誠品優質包裝有限公司、誠品搬家有限公司及び陳山福は上訴人が所有する登録第44981号、第121827号、第143088号、第1628657号、第1641282号、第01760631號、第01760632号、第01790227号、第02063590号商標と同一の又は類似する図案を付表一に示す役務区分に使用してはならず、並びに上記商標と同一の又は類似する図案を含む看板、名刺、広告、ウェブサイト及びその他の販売のための物品の除去と廃棄をしなければならない
3、被上訴人誠品優質包裝有限公司、誠品搬家有限公司及び陳山福は「誠品」と同一の又は類似する文字を社名の一部に使用してはならず、並びに社名を「誠品」と同一の又は類似する文字の含まない名称に変更しなければならない。
4、被上訴人誠品優質包裝有限公司、誠品搬家有限公司はそれぞれ被上訴人陳山福と連帯で上訴人に対し、300万新台湾ドル及びいずれも訴状副本送達の翌日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
5、上記被上訴人のいずれか一名が支払ったとき、他の被上訴人はその支払い範囲において、同じく支払義務を免じる。
6、第一、二審の訴訟費用は被上訴人の負担とする
7、上訴人は担保を供託するので、仮執行宣言を求める。
(二)被上訴人の請求:
1、上訴を棄却する。
2、第二審の訴訟費用は上訴人の負担とする。
3、担保を供託するので、仮執行免脱の宣言を求める。

二 本件の争点
(一)上訴人は上訴手続きにおいて、上訴理由書(五)の付表一に示される番号6乃至9商標を追加したことは合法か。
(二)被上訴人には上訴人の登録商標を使用する行為があったか。商標法第68条第1、2、3号規定は適用されるか。
(三)上訴人の上訴理由書(五)の付表一に示される番号1乃至9商標は、著名商標か。
(四)被上訴人が上訴人の登録商標が著名であることを明らかに知りながら「誠品」の二文字を社名に使用したことで、関連する消費者に誤認混同を生じさせるおそれがある、又は当該商標の識別性又は信用・名声に毀損するおそれがあり、商標法第70条第1号、第2号規定に違反しているか。
(五)もし規定に違反しており、上訴人が商標法第71条第1項第2、3、4号及び公平交易法第30、31条及び民法第179条の規定により損害賠償を請求するならば、その損害はいかに算出するか。

三 判決理由の要約
(一)被上訴人には上訴人の登録商標を使用する行為があったか。商標法第68条第1、2、3号規定は適用されるか。
1、被上訴人は現時点で「誠品」二文字の商標登録を許可されていない。誠品搬家公司は2019年7月5日に「誠品」二文字を主要識別部分とする商標について知的財産局に商標登録を出願したが、知的財産局は審査した結果、上訴人の商標と同様に、見る人の注意を惹き識別できる「誠品」という文字を含み、通常の知識経験を有する関連の消費者が購買時に通常の注意を払ったとき、両役務が同一の又は関連する出所からのものであると混同して誤認する可能性があると認めて、先に拒絶査定を通知した。本件被上訴人誠品搬家公司は引越し業務を経営しており、サービス業に属し、そして被上訴人誠品包裝公司は物品の固縛、包装及びこん包サービスを提供しており、それもサービス業に属する。それらは上記業務を経営するとき、それらの企業サイト又はフェイスブックに社名である「誠品優質包裝有限公司」、「誠品搬家有限公司」を掲載しているほかに、「誠品」の二文字を単独で標示し、字体を大きくして識別の主体としている。引越しサービスを提供するトラックの前面と側面には「誠品」の二文字だけが標示され、作業員が着用する制服には大きな「誠品」の二文字がマークとして使用され、引っ越す顧客に提供するこん包用の段ボール箱外面にも同様に大きな「誠品」の二文字が標示されて識別とされている。上記証拠から、被上訴人が対外的にサービスを提供するときには、「誠品」の二文字を標示し、社名と併記しておらず、前記文字の使用は社名の使用ではないことが十分に分かり、その使用形式により関連する消費者に与える一見したときの印象は、「誠品」の二文字を商品又は役務の提供者を識別する依拠とするものであり、その作用は商標と同じであり、自ずと商標の使用行為に該当する。
2、本件被上訴人誠品包裝公司は2002年7月16日に設立され、誠品搬家公司は2006年11月22日に設立された。これ以前に上訴人はすでに登録第44981号商標(第8類の文具、図書及びその商品の輸出入等役務での使用を指定)、登録第121827号商標(第35類の広告、企画、広報活動の企画、図書、文具の輸出入代理等役務での使用を指定)、さらには登録第143088号商標(第39類の貨物、コンテナの積卸し、倉庫保管、貨物輸送前のこん包、固縛等役務での使用を指定)を有していた。被上訴人誠品搬家公司及び誠品包裝公司が提供している役務も商標区分において第39類に属する。被上訴人が提供する役務と上訴人の登録第143088号商標が使用を指定している第39類の貨物、コンテナの積卸し、倉庫保管、貨物輸送前のこん包、固縛等役務とは、たとえ同じでなくても、類似している。前述の被上訴人による商標の使用行為については、その主な識別文字が「誠品」の二文字であり、これは上訴人の登録商標と同じであり、たとえ被上訴人が使用する字体を行書にしたり、隷書にしたりして、上訴人が使用する文字とやや異なっていても、わが国の消費者にとって、上記の細微な違いはなお両者が類似を構成する商標であるという一見したときの印象を妨げるものではない。
3、本件被上訴人は営業に使用するトラックの外部、段ボール箱の外面及びサイトのいずれにおいても目立つ比率で「誠品」二文字を標示し、上訴人が所有する登録第143088号商標も貨物運送及びこん包、固縛業務の従事に使用されており、消費者が時間と場所を異にして両商標を観覧したとき、両商標の商品又は役務が同一の出所からものと誤認する、又は両商標の使用者の間に関連企業、使用許諾関係、加盟関係又はその他これらに類する関係が存在すると誤認させる可能性が極めて高く、商標法第68条第2号、第3号違反を構成するものである。
4、本件被上訴人が業務を経営するとき、それが対外的に使用する業務のための設備又は業務上使用する文書資料等にはいずれも明らかに「誠品」を商標としており、消費者が役務の出所を識別する依拠として提供されているため、自ずと商標法第36条第1号に規定される公正使用は適用されない。また本件被上訴人は「誠品」を商標として使用し、さらには社名にしたとき、上訴人はそれよりもだいぶ前に「誠品」商標を登録しており、つまり被上訴人が「誠品」二文字を使用したのは上訴人が商標を登録した後であり、いわゆる先使用の状況ともいえない。

(二)上訴人の上訴理由書(五)の付表一に示される番号1乃至9商標は、著名商標か。
1、本件上訴人が所有する係争「誠品」商標はそれぞれ中央標準局(知的財産局の前身)の1993年11月22日付審決書、1993年11月26日付審決書、1998年7月17日付審決書、知的財産局の2000年9月19日付審決書、台北高等行政裁判所の89年度訴字第1196号判決において著名商標であると認められている。台北高等行政裁判所89年度訴字第1196号判決は2001年5月3日に判決が下されており、ここから、上記審決書及び判決書の「誠品」商標は、上記判決が下される以前の「誠品」商標であることがわかる。台北高等行政裁判所が2001年90年5月3日に判決を下す以前に、上訴人はすでに登録第44981号商標、第121827号商標及び第143088号「誠品」商標を登録しており、中央標準局の審決書には「…『誠品』の二文字は…それぞれ書店、画廊、芸術文芸スペース、家具インテリア店、高級ギフト及び家庭用生活用品を提供し…それが『誠品』を以って表彰する信用と名声は、一般大衆が熟知するものではないとはいえない。…登録異議被申立人は同じ中国語『誠品』を以って…性質が関連する各種紳士婦人服、子供服等商品に使用することを指定しており、客観的に一般消費者にそれが表彰する商品の生産/販売の主体又は出所に対して誤認混同をもたらし、購入させるおそれがある…」と記載され、審決書には「…また調べたところ中国語『誠品』は登録異議申立人(つまり本件上訴人)が1989年に設立された当初から、各種書籍、雑誌、文献翻訳、出版、発行業務、百貨、図書、芸術品、図書、手工芸品の輸出入、国際会議の準備企画、画廊、芸術文芸イベント/展覧会/コンテスト入場券の代理販売、講座代理開催業務等のサービスを提供するサービス標章として使用されており、…当該標章が表彰する商品の信用・名声及び品質は一般消費者が知悉するところではないとはいえず、…被申立人は誠品がデザインしたサービス標章に類似したものを…サービス標章として登録出願し、ビジネス向け電話秘書業務での使用を指定しており、客観的に、一般消費者にその表彰する営業サービスの出所に対して申立人の経営を連想させないとは言い難く…」と記載され、審決書には「…調べたところ、登録異議申立人(本件上訴人)『誠品股份有限公司』は…1989年から『誠品及び図eslite』、『誠品及び図Champion』、『誠品及び図CHERNGPIIN』等標章図案を以って書店、レストラン、画廊、高級品店、…等を含む多種の商品及び役務での使用を指定しており、当該異議申立ての根拠とする標章(引用標章)が表彰する信用・名声はすでに国内関連事業体及び消費者から広く認知され著名標章の程度に達しており…、被申立人が同じ中国語『誠品』を…商標図案として登録出願し、音響スピーカー、アンプ等商品での使用を指定することにより、客観的に、公衆がその表彰する商品の出所又は生産主体に対して誤認混同をもたらすおそれがあり…」と記載され、さらに台北高等行政裁判所89年度訴字第1196号判決には「…今日の時点で、確かに参加人(本件上訴人)の『誠品』著名標章の名声・信用はすでに確立されており、その知名度は確かにうなぎ上りの勢いを呈している。現在の角度からみて、裁判所は当然誠品の信用・名声によってその商標専用権の排他的効力が多数の商品又は役務の分野に跨っていると認める…」と記載されている。さらに2005年11月15日には再び訴外人誠品時尚婚紗攝影有限公司が「誠品時尚婚妙」商標の登録出願を行い、結婚写真撮影サービス提供における使用を指定したが、これもまた知的財産局に、上訴人の著名商標「誠品」に類似しているとして拒絶査定されている。上記行政機関及び司法機関の見解をみると、いずれも「誠品」標章はすでに著名の程度に達しており、一般消費者又は関連の消費者に知悉され、他人が同一の又は類似の商標を「各種紳士婦人服、子供服」、「ビジネス向け電話秘書業務」、「音響スピーカー、アンプ」又は「結婚写真撮影」等の異なる区分の商品又は役務での使用を指定すると、客観的になお公衆はそれが表彰する商品の出所又は生産の主体に対して誤認混同をもたらすおそれがあり、しかも上訴人「誠品」商標又は標章の排他的効力の範囲はすでに多数の商品又は役務の分野に広がっている。言い換えると、2001年5月3日より前に、上訴人の「誠品」商標はすでに著名商標に該当し、これは確認できる事実である。
2、上記行政及び司法の見解において上訴人の商標又はサービス標章に言及するとき、いずれも「誠品」標章又は商標と総称し、明確な登録番号については示していない。上記行政訴訟事件の見解で言及された上訴人商標登録番号に第44908号(第8類の図書書、文具の輸出入等業務での使用を指定)、第44981号(本件争議の客体の一つ)、第53505号(第1類の書籍、雑誌、文具販売代理業務での使用を指定)、第53556号(第1類の芸術文芸イベントの開催及び代理開催業務での使用を指定)、第53557号(第1類の画廊での使用を指定)、第55087号(第6類の委託建設の国民住宅及び商業ビルの賃貸販売業務での使用を指定)、及び登録第56144号(第12類の各種国際会議の準備企画での使用を指定)、第56147号(第12類の不動産投資等業務での使用を指定)、第56148号(第12類の住宅賃貸販売等業務での使用を指定)等約二十余件のサービス標章専用権等が含まれていることを参酌するならば、上記行政及び司法の見解でいうところの「誠品」商標又は標章はなお総称であり、特定の登録番号の商標に限るものではないことが分かる。言い換えると、上記行政及び司法の見解は、上訴人が登録する商標の数量が多く、しかも多角経営をしているため、いったん他人が「誠品」二文字を商標として使用すると、誤認混同をもたらすおそれが生じてしまうため、上訴人の「誠品」という二文字の商標又は標章はすでに著名であり、他人が少しでも便乗しようとすると、上訴人の信用・名声に影響を及ぼす可能性があると認めている。このため、本件被上訴人が2002年7月16日に誠品包裝公司を設立、2006年11月22日に誠品搬家公司を設立した時点で、上訴人の「誠品」商標がすでに著名商標であったことに、ほとんど疑義は生じない。さらに言えば、少なくとも被上訴人誠品搬家公司、誠品包裝公司が設立される前に、本判決書第20頁図表番号1、2、3に示される「誠品」商標又は標章はすでに著名商標であった。図表番号4乃至9商標はその登録時期がいずれも被上訴人誠品包裝公司、誠品搬家公司が設立された後であり、本件争議において商標法第70条第1号、第2号の適用には関係ないため、暫しこれらの商標が著名商標であるかは審理しない。

(三)被上訴人が上訴人の登録商標が著名であることを明らかに知りながら「誠品」の二文字を社名に使用したことで、関連する消費者に誤認混同を生じさせるおそれがある、又は当該商標の識別性又は信用・名声に毀損するおそれがあり、商標法第70条第1号、第2号規定に違反しているか。
1、前述したように、本件上訴人が所有する誠品商標は、行政及び司法機関に著名商標であると認定されている。その審決書では、上訴人が「誠品」商標を以って表彰する信用と名声は、一般消費者が熟知するものではないとはいえないと認められ、台北高等行政裁判所89年度訴字第1196号判決書で、上訴人の「誠品」著名標章の名声・信用はすでに確立されており、誠品の信用・名声によってその商標専用権の排他的効力は多数の商品又は役務の分野に跨っていると認められており、上記審決書及び判決はいずれも、上訴人の「誠品」商標の知名度はそれが使用を指定している商品又は役務の関連消費者に限られず、さらに異なる商品又は役務の分野(例えば前述した「各種紳士婦人服、子供服」、「ビジネス向け電話秘書業務」、「音響スピーカー、アンプ」又は「結婚写真撮影」等)にも及ぶと認めていることが分かる。さらに2001年3月7日に報道された陳水扁総統(当時)が上訴人を「生日快樂(ハッピーバースデー)」と祝ったニュース、並びに当日の報道の中で誠品のサイトと誠品物流のオンライン化等の情報が記載されていることから、上訴人の誠品商標は関連消費者の範囲だけで著名であったか、又は一般消費者の範囲にも及んでいたのかに関わらず、いずれも商標法第70条第1号、第2号に規定される「著名商標」に該当することに、ほとんど疑義は生じない。本件被上訴人誠品包裝公司及び誠品搬家公司が設立される前に、上訴人の「誠品」商標はすでに行政及び司法機関から著名商標であると認定されている。さらに探求すべきことは、被上訴人が「誠品」を社名とした時点で、「誠品」の二文字が上訴人の所有する著名商標であると明らかに知っていたかどうかである。調べたところ、被上訴人が2010年に訴外人である財団法人崔媽媽基金のインタビューを受けた際、「誠品書店」の名を借りて、「引越し業界の誠品」を自称しており、その後自らのブログ、フェイスブック、サイトにおいて上記文言を使用しており、被上訴人誠品包裝公司、誠品搬家公司はいずれも設立時に上訴人の著名商標「誠品」が存在する事実を明らかに知っていたことが十分に分かる。しかも誠品という一言がわが国の一般消費者にとって品質を表すものであると知っていたからこそ、「誠品書店に名を借りる」、「引越し業界における誠品」など便乗するための文言を使用する動機付け及び利益があることが分かる。さらに、被上訴人誠品搬家公司の英語名は「Champion Moving Company」が使用され、これも上訴人が1991年7月17日に登録を出願した登録第56079号商標(第12類の土地及び定着物の価値鑑定サービスでの使用を指定)、第56080号商標(第12類のビル清掃サービスでの使用を指定)の「誠品及び図Champion」におけるアルファベット部分「Champion」と同じであり、被上訴人は上訴人の商標の中の文字を社名及び英語名としたことで、上訴人の「誠品」という著名商標の存在を明らかに知っていたことを証明できる。被上訴人は業界では有名ブランドをセルフモチベーションとする宣伝の手法はよくあることで、これにより便乗の意図があったと認定できない云々と述べているが、調べたところ、被上訴人が挙げている「コーヒー業界のエルメス」、「牛乳業界のLV」、「法曹界のgoogle」等訴外人の宣伝資料又は報道について、実際に使用されている商標はそれぞれ「LIFORME」、「高大牧場」、「Lawsnote」であり、それらが「エルメス」、「LV」、「google」等商標を使用する目的はセルフモチベーションにあり、本件被上訴人が直接「誠品」の二文字を商標として使用し、「誠品」の二文字を社名とする事情とは異なり、被上訴人のこの部分の主張も採用できない。
2、本件被上訴人誠品包裝公司、誠品搬家公司が設立を登記する前に、上訴人の「誠品」商標はすでに行政機関、司法機関から著名商標と認定されており、被上訴人はこのため「誠品書店の名を借りる」と述べ、「引越し業界の誠品」を自称しており、被上訴人がいうような会社設立後に上訴人の商標が著名商標になったという事情はない。本件被上訴人誠品包裝公司、誠品搬家公司が設立された時点で、上訴人の「誠品」商標はすでに区分を越えて、しかも一般消費者に知られる著名商標となっており、かつそれは被上訴人が明らかに知るところであり、被上訴人が今もなお上訴人の著名商標における文字を自らの社名としていることから、事実上の遡及(tatbestandliche Rückanknüpfung)が適用され、被上訴人はなお現行商標法第70条第1号、第2号規定の適用を認めるべきである。

(四)被上訴人が上記規定に違反して、上訴人が損害賠償を請求するならば、その損害はいかに算出するか。
1、上訴人は2018年1月になって始めて被上訴人の権利侵害行為の事実を知り、同年3月に内容証明郵便を出し、6月に提訴したとしており、上記事実については2018年1月31日に台北地方裁判所所属の民間公証人蔡宜樺が作成した公証書、弁護士書簡及び訴状があり調べることができ、事実であると信じることができる。本件上訴人は商標法第69条規定により権利侵害行為の損害賠償を請求する場合、当該条文第4項規定によると、それが賠償請求できる短期有効期間は2016年から起算し、長期有効期間は権利侵害行為事実が発生した時点、即ち被上訴人誠品包裝公司が設立された2002年、搬家公司が設立された2006年から起算する。
2、本件被上訴人は対外的に業務を行う時、業務のための設備であるトラックに単独で「誠品」の二文字を標示するほか、提供する運送用段ボールの外面、従業員の制服にも単独で「誠品」の二文字を標示しており、「誠品」の二文字を商品及び役務の出所を識別する依拠として標示していることは、明らかに商標の使用行為に該当する。また「誠品」二文字は上訴人が1989年にすでに登録している商標であり、その中の登録第143088号商標(登録出願日1999年3月4日)も第39類の貨物輸送、こん包、固縛等業務での使用を指定しており、被上訴人が上訴人の登録した先の商標と同じものを自らの営業の商標として使用し、同一の又は高度に類似する業務を経営することは、商標法第68条第1号、第2号及び第3号規定に違反しており、これにより上訴人が同法第69条規定により侵害の差止め(排除)と損害賠償を請求することには根拠がある。
3、上訴人はさらに、被上訴人が上訴人の著名商標「誠品」を社名とすることは、商標法第70条第1号、第2号規定に違反しており、同時に商標法第69条規定を援用して損害賠償を請求する等と主張している。最高裁判所106年度台上字第2088号民事判決趣旨に示された事実上の遡及原則を参酌して、本件上訴人のこの部分の主張を認めるべきであり、採用できるものである。
4、当裁判所は上訴人が主張する「誠品」商標がすでに法に基づき登録され、商標権を取得しているため、公平交易法(日本の独占禁止法と不正競争禁止法に相当)第22条第1項第2号の著名役務表徴の侵害に関する規定を適用せず、よって公平交易法第25条を適用して規範を補充する余地もない。
5、本件上訴人が請求する損害賠償額についてそれぞれ次のように述べる:
(1)商標法第71条第1項第2号規定の部分:
当裁判所は、上訴人の原審での請求により財政部北区国税局基隆分局から書簡で取り寄せられた被上訴人誠品包裝公司の2003年3月15日以降の、誠品搬家公司の2006年11月22日以降の営業税(訳注:日本の消費税に相当)及び営利事業所得税(訳注:日本の法人税に相当)の申告関連資料、並びに上訴人の当裁判所の審理における申立により財政部北区国税局基隆分局から書簡で取り寄せられた被上訴人誠品包裝公司及び誠品搬家公司の2018年から2020年6月までの仕入売上証明書類明細資料表(Input/ Output Documentary Evidence Data)、事業体売上高及び税額申告書(Declaration of Sales and Business Tax by a Business Entity)等資料に基づいて算出したところ、誠品搬家公司の2010年度から2019年度まで(2010年度より前の資料及び2020年度の資料は提供されていない)の純売上高は計**新台湾ドル、売上原価は計**新台湾ドル、粗利益は計**新台湾ドル;誠品包裝公司の2010年度から2019年度までの純売上高は計**新台湾ドル、売上原価は計**新台湾ドル、粗利益は計**新台湾ドルとなった(2010年度より前の資料及び2020年度の資料は提供されていない)。誠品搬家公司と誠品包裝公司の2010年度から2019年度までの粗利益を合計すると**新台湾ドルとなる。被上訴人は労務の提供をその業務内容としており、動産の性質を有する商品の販売とは異なり、被上訴人が国税局に申告した売上原価において若干の項目について「誠品」商標の使用により控除を主張することができるが、この部分については解析のしようがない。本判決は最も緩い基準を採用し、即ちすべての売上原価を控除する。このような状況において、被上訴人の利益はなお前述の**新台湾ドルである。ただし、前述のとおり、本件上訴人は商標法第69条の権利損害行為に対する損害賠償請求権に関する規定により被上訴人に損害賠償を請求でき、同条第4項規定により、上訴人は2016年から現在までの金額のみ請求でき、それ以前の請求は時効が成立するため請求できない。したがってこの計算により、被上訴人誠品搬家公司は2016年から2019年までの粗利益が計**新台湾ドル、誠品包裝公司の粗利益が計**新台湾ドルであり、両者の合計は**新台湾ドルとなる。また商標法第71条第1項第2号ではすでに権利を侵害した者の所得から原価又は必要経費を控除した金額を賠償額とすると定められている。被上訴人の2016年から2019年までの売上高から売上原価を控除した後、なお粗利益が**新台湾ドルあるため、上訴人はこの条文規定により被上訴人に対して連帯で300万新台湾ドルを賠償するよう請求でき、すでに上記粗利益の総額に照らし合わせて根拠があるものであり、許可すべきである。
(2)商標法第71条第1項第3号規定の部分
前述したとおり、本件被上訴人は引越し及びこん包の労務サービスを提供しており、それが徴収するサービス料は引越しの距離、運送貨物量の多寡、使用車両のトン数、物品の性質(例えばピアノ)、階数又はエレベータの有無等の要素に応じて異なり、画一的な料金体制ではない。よって上訴人はサービスの単価に関する証明資料を提供することができず、上訴人は本号規定を引用して「商品」の販売単価の1500倍又は実際の販売数量でその賠償額を算出することを主張しているが、その根拠となる証拠資料を当裁判所が参照するために供していないため、この部分の主張はなお十分に明確であるとは認めがたい。
(3)商標法第71条第1項第4号規定の部分
本件上訴人は他人に商標使用を許諾していないという状況にあり、上訴人が2020年11月2日に提出した上訴理由書(八)に添付した上訴人証拠40は定型化された000商標使用許諾申請書であり、これによると商標使用許諾のロイヤリティは販売価格に生産量の*%を乗じた金額とすると記載されている。また上訴人証拠41も定型化された000商標使用許諾申請書であり、それにも商標使用許諾のロイヤリティ計算式は同じく数量に商品価格の*%を乗じた金額とすると記載されている。上記商標使用許諾のロイヤリティ計算式は本件上訴人が他人に商標の使用を許諾して徴収しているロイヤリティではなく、本号規定により本件上訴人がロイヤリティ損害に相当する賠償の依拠としてはならず、上訴人が他人のロイヤリティ計算式を本件のロイヤリティ損害に相当する参考資料とし、商標法第71条第1項第4号規定により被上訴人に損害賠償を請求することはなお採用できない。
(4)被上訴人は許可を得ずに、無断で上訴人が登録する商標と同じものを会社の販売のための識別として用いたことは、性質上、商標の使用行為に該当する。これにより減少した支出(即ち得た所得)は本来支払うべきロイヤリティの額より低くないはずである。被上訴人は現在も上訴人の著名商標に含まれる文字を社名として使用し続け、しかも販促目的で上訴人の登録商標の文字と同じものをその日常業務において使用し続けており、上訴人が被上訴人にロイヤリティに相当する不当利得を返還するよう請求することには理由がある。不当利得に関する請求権は、その消滅時効が15年であり、被上訴人誠品包裝公司が2002年に設立され、誠品搬家公司が2006年に設立され、上訴人は2018年になって本件訴訟を提起したため、被上訴人誠品包裝公司に対しては2003年に起算することになり、それ以前の請求権は消滅時効が成立している。誠品搬家公司に対しては、その不当利得請求権の消滅時効が成立していないので、上訴人は民法第179条規定によりそれに対して請求できる。ただし財政部北区国税局基隆分局の書簡に添付された帳簿資料は2010年からしかないため、上記資料が示す起点は上訴人の請求の時効期間内にあり、前述資料により、上訴人が提出した訴外人のロイヤリティ計算比率の中間値を計算の基礎(即ち売上高の*%)とし、上訴人が不当利得請求権について被上訴人誠品搬家公司に対して請求できる金額は**新台湾ドル(売上高総額**新台湾ドルのx%)であり、被上訴人誠品包裝公司に対して請求できる金額は**新台湾ドル(売上高総額**新台湾ドルのx%)であり、両者の合計は**新台湾ドルとなる。もし上訴人が提出した訴外人のロイヤリティ計算比率の最低値を計算の基礎(即ち売上高の*%)とすると、上訴人が被上訴人誠品搬家公司に対して請求できる金額は**新台湾ドル(売上高総額**新台湾ドルのx%)であり、被上訴人誠品包裝公司に対して請求できる金額は**新台湾ドル(売上高総額**新台湾ドルのx%)であり、両者の合計は**新台湾ドルとなる。ただし上記金額はロイヤリティの基準計算より被上訴人が得た不当利得より低くはなく、もし被上訴人の粗利益がその不当利得の範囲であると認めたならば、その計算で得られた総額はそれぞれ**新台湾ドル(誠品搬家公司の部分)及び**新台湾ドル(誠品包裝公司の部分)であり、両者の合計は**新台湾ドルとなり、この金額は上訴人が請求する300万新台湾ドルよりはるかに高く、上訴人が被上訴人に連帯で300万新台湾ドルを賠償するよう請求することには根拠があり、許可すべきである。
(5)本件被上訴人陳山福はそれぞれ誠品搬家公司と誠品包裝公司の法定代理人であり、それは各社とともにそれぞれ上訴人の商標を侵害したため、それぞれ各社と連帯で上訴人に対して損害賠償責任を負うべきである。上訴人は公司法(会社法)第23条規定により、被上訴人陳山福が上記会社とそれぞれ連帯賠償責任を負うよう請求して、その一方が損害を賠償した場合、他方はその賠償範囲内においてその責任の請求を免れるよう請求することには根拠があり、許可すべきである。
(6)本件被上訴人誠品搬家公司、誠品包裝公司は上訴人の「誠品」商標が著名商標であることを明らかに知りながら、上訴人の著名商標の文字を社名として使用したことは、商標法第70条第1号、第2号の商標権を侵害したと見なす不法行為を構成しており、すでに詳述している。上訴人が被上訴人誠品搬家公司、誠品包裝公司に対して、上訴人の著名商標の文字を社名として使用しない、又はその他営業のための文書、施設に係争商標の文字と同一の又は類似のものを使用しないよう請求すること、並びに上記商標図案と同一の又は類似のものを含む看板、名刺、広告、ウェブサイト及びその他の販売のための物品の除去と廃棄をするよう請求することには根拠があり、許可すべきである。
(五)以上をまとめると、本件上訴人は、被上訴人が許可を得ずに上訴人の登録商標と同一の又は類似の商標を同一の又は類似の商品又は役務において使用し、関連する消費者に混同誤認を生じさせるおそれがあり、その登録する先の商標権を侵害し、商標法第68条第1号、第2号、第3号規定に違反し、商標法第69条規定により被上訴人の侵害行為を除去し、損害を賠償するよう請求した。さらに被上訴人は明らかに上訴人の登録商標が著名商標だと知りながら、上訴人の著名商標の文字を社名に使用したことは、関連する消費者に誤認混同をもたらすおそれがあり、上訴人の信用・名声を毀損するおそれがあり、商標法第70条第1号、第2号規定に違反していると主張し、同法第69条規定により権利侵害行為の除去を請求するとともに、損害賠償を請求した。調べたところ、根拠がないものではない。上訴人はさらに民法第179条規定により、被上訴人が連帯で権利侵害行為により生じた不当利得を返還するように請求したことにも根拠がある。上訴人が、被上訴人誠品搬家公司と被上訴人陳山福との間、被上訴人誠品包裝公司と被上訴人陳山福との間には300万新台湾ドルの範囲内で不真正連帯賠償責任を負うよう請求すること、並びに被上訴人に対して上訴人の著名商標の文字を社名として使用してはならない、又はその他営業のための文書、施設に使用してならないと請求し、かつ係争商標を含む現存の施設、例えば看板、名刺、広告又はその他の販売のための物品等の廃棄をするよう請求することには理由があり、これも許可すべきである。また、本件上訴人は同じ目的で複数の法律関係を主張し、当裁判所にその一つの声明により判決するよう請求しており、その各項の主張における公平交易法の部分については当裁判所から棄却の告知がされているが、その他の商標法第68条、第70条、第69条、第71条及び民法第179条の主張については、当裁判所が審理した結果、採用できると認められ許可されている。その訴えの目的は達せられており、その中棄却部分については主文においてさらに告知する必要はない。

以上の次第で、本件上訴には理由があり、知的財産案件審理法第1条,民事訴訟法第450条、第78条に基づき、主文のとおり判決する。

2021年1月7日
知的財産裁判所第二法廷
裁判長 汪漢卿
裁判官 林欣蓉
裁判官 彭洪英
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